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第35話
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「…もしもし?」
聞き慣れた、低いんだけど、少し掠れたような甘い声。
「遅くにごめんね、翔平。起こしちゃったかな。」
私が前に進む前に、彼と話しておかなきゃいけない気がした。
「あのね、私、明日から学校にこないの。だからサヨナラの挨拶をしようと思って。」
翔平、どうしてあんなことしたの。私と遊びに行って笑ってたの、全部嘘だったの?
聞きたいことは沢山あった。でも、それを聞いたら電話を切られるかもしれない。
だから1番言いたい別れの挨拶を一息でまくしたてる。
すると、少し驚いたような声で、
「え、うそ。俺も。今日で学校やめた。」
え、うそ。なんで。
全く同じクエスチョンが頭の上に飛ぶ。
「…いや。それより。…未菜。謝って済むことじゃないけど本当にごめん。
俺、色んなことで未菜を裏切った。」
驚きで一瞬忘れかけてた事実を思い出し、気まずい沈黙が広がる。
「…そうだね。…でもさ、お陰で真実はわかったから、結果的にはオッケーかも。」
そう言ったのは事実であった。皮肉にもこの事件のおかげで、零斗への気持ちを再確認し、覚悟することができたんだから。
「…俺、今度は未菜と零斗みたいに、セルバと信頼関係をつくっていきたい。
そして今度は誰も傷つけないように、間違わないように、もっと自分の力を磨いていきたい。」
だから専門的なことをもっと勉強していこうって思って。と彼は言った。
「私もっ、もっと零斗と居られるように。もっと理解し合えるように。
勉強をしに行くの。」
勢いこんでいうと、彼は同じだね、といって笑い声をだした。
あの、共通の話題で盛り上がったあの時のように。
…あぁ、あの時はちゃんと翔平として楽しんでくれてたんだね。
「…ちなみに君達はさ、ちゃんとあの後くっついたんだよね?」
突然痛いところを突いて来たので、
「零斗は私に恋愛感情なんて持ってないよ。大事っては言ってくれたけどさ。」
あっけらかんと聞こえるように心がけていうと、
「そっかぁ…まぁ、しばらく会えなくなるんだから、伝えられることは伝えておきなよ?
俺、勉強の途中でイギリスにも行く予定だから、その時はまた色々話せると嬉しいな…なんて思う。…あんなことしててずうずうしいかな、やっぱり。
…まぁ、それはさておき。
俺、未菜に会えてよかった。大事なこと俺に教えてくれて、ありがとう。」
なんだか、あの時は私を利用しようとして優しくしていたのかと思っていたが、こうして電話で話していると、翔平自体が優しい人なんだろうって思った。
「ごめん、零斗に変わってくれる?」
そう言われて零斗を呼び出すと、零斗は携帯をひったくるようにして奪い取り、そのままそそくさと自室へと向かっていった。
「…一体何のようですか?私に。」
急ぎ足で歩きながら、ぶっきらぼうになるのを隠そうともせずにいう。
正直、話することなんてないし、話したくもない相手なのだが。
「いやー、この間のお礼をしようと思って。」
「それなら結構です。これからは道を間違えないでくださいね。それと、もう私にもかかわらないでください。」
淡々というと、
「本当に俺には態度悪いよね~、悲しいなぁ~」
全く傷ついてなんかないようにいう。…だめだ、やっぱりこいつムカつく。
「あぁ、待って、切らないで。お礼に忠告しようと思ったんだよ。
君が未菜のことどういう目で見てるかなんて知らないけどさ、俺は異性として好きだから。
君がお嬢様大事ーとかいってボサボサしてると、俺、遠慮なく奪いに行くからね?
運のいいことにしばらく君達離れてくれるみたいだし。
君がいけないイギリスまで行って、未菜と仲良くお勉強しようと思ってるから。」
「…本当に余計なお世話ですね、ですから私に恋愛感情などは…」
「多分それ言い切っちゃうと、そのうち後悔することになると思うよ?」
まぁせいぜい明日まで仲良く楽しんでね。
そう言って楽しそうに笑う声は、いつも聞いてた嫌味っぽいものとは違うような気がした。
「用事はそれだけですか?」
自室まで辿り着き、ドアノブを握りながら尋ねると、
「あ、そうそう。おれ、未菜とキスしたんだ。」
バキバキバキッ
じゃあね~~
ツーッ、ツーッ
零斗がドアノブをひねり壊すのと同時に電話が切れた。
未菜の出発の時刻は刻一刻と近づいて来ていた。
聞き慣れた、低いんだけど、少し掠れたような甘い声。
「遅くにごめんね、翔平。起こしちゃったかな。」
私が前に進む前に、彼と話しておかなきゃいけない気がした。
「あのね、私、明日から学校にこないの。だからサヨナラの挨拶をしようと思って。」
翔平、どうしてあんなことしたの。私と遊びに行って笑ってたの、全部嘘だったの?
聞きたいことは沢山あった。でも、それを聞いたら電話を切られるかもしれない。
だから1番言いたい別れの挨拶を一息でまくしたてる。
すると、少し驚いたような声で、
「え、うそ。俺も。今日で学校やめた。」
え、うそ。なんで。
全く同じクエスチョンが頭の上に飛ぶ。
「…いや。それより。…未菜。謝って済むことじゃないけど本当にごめん。
俺、色んなことで未菜を裏切った。」
驚きで一瞬忘れかけてた事実を思い出し、気まずい沈黙が広がる。
「…そうだね。…でもさ、お陰で真実はわかったから、結果的にはオッケーかも。」
そう言ったのは事実であった。皮肉にもこの事件のおかげで、零斗への気持ちを再確認し、覚悟することができたんだから。
「…俺、今度は未菜と零斗みたいに、セルバと信頼関係をつくっていきたい。
そして今度は誰も傷つけないように、間違わないように、もっと自分の力を磨いていきたい。」
だから専門的なことをもっと勉強していこうって思って。と彼は言った。
「私もっ、もっと零斗と居られるように。もっと理解し合えるように。
勉強をしに行くの。」
勢いこんでいうと、彼は同じだね、といって笑い声をだした。
あの、共通の話題で盛り上がったあの時のように。
…あぁ、あの時はちゃんと翔平として楽しんでくれてたんだね。
「…ちなみに君達はさ、ちゃんとあの後くっついたんだよね?」
突然痛いところを突いて来たので、
「零斗は私に恋愛感情なんて持ってないよ。大事っては言ってくれたけどさ。」
あっけらかんと聞こえるように心がけていうと、
「そっかぁ…まぁ、しばらく会えなくなるんだから、伝えられることは伝えておきなよ?
俺、勉強の途中でイギリスにも行く予定だから、その時はまた色々話せると嬉しいな…なんて思う。…あんなことしててずうずうしいかな、やっぱり。
…まぁ、それはさておき。
俺、未菜に会えてよかった。大事なこと俺に教えてくれて、ありがとう。」
なんだか、あの時は私を利用しようとして優しくしていたのかと思っていたが、こうして電話で話していると、翔平自体が優しい人なんだろうって思った。
「ごめん、零斗に変わってくれる?」
そう言われて零斗を呼び出すと、零斗は携帯をひったくるようにして奪い取り、そのままそそくさと自室へと向かっていった。
「…一体何のようですか?私に。」
急ぎ足で歩きながら、ぶっきらぼうになるのを隠そうともせずにいう。
正直、話することなんてないし、話したくもない相手なのだが。
「いやー、この間のお礼をしようと思って。」
「それなら結構です。これからは道を間違えないでくださいね。それと、もう私にもかかわらないでください。」
淡々というと、
「本当に俺には態度悪いよね~、悲しいなぁ~」
全く傷ついてなんかないようにいう。…だめだ、やっぱりこいつムカつく。
「あぁ、待って、切らないで。お礼に忠告しようと思ったんだよ。
君が未菜のことどういう目で見てるかなんて知らないけどさ、俺は異性として好きだから。
君がお嬢様大事ーとかいってボサボサしてると、俺、遠慮なく奪いに行くからね?
運のいいことにしばらく君達離れてくれるみたいだし。
君がいけないイギリスまで行って、未菜と仲良くお勉強しようと思ってるから。」
「…本当に余計なお世話ですね、ですから私に恋愛感情などは…」
「多分それ言い切っちゃうと、そのうち後悔することになると思うよ?」
まぁせいぜい明日まで仲良く楽しんでね。
そう言って楽しそうに笑う声は、いつも聞いてた嫌味っぽいものとは違うような気がした。
「用事はそれだけですか?」
自室まで辿り着き、ドアノブを握りながら尋ねると、
「あ、そうそう。おれ、未菜とキスしたんだ。」
バキバキバキッ
じゃあね~~
ツーッ、ツーッ
零斗がドアノブをひねり壊すのと同時に電話が切れた。
未菜の出発の時刻は刻一刻と近づいて来ていた。
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