「大事な人だよ」 その意味は?

あーむす。

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第32話

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「…ねぇ、未菜。まだ零斗と一緒にいたい?」

まだ半泣きの未菜はもちろんとでも言うように頷く。

「だって、私零斗とずっと一緒だって約束したもの。」

その言葉を予想していたように、両親は続ける。

「最初に言った通り、零斗は今日、回収するつもりだったんだけど…。
でもね、あなた達見てて、考えが変わった。
だから、あなたが零斗をちゃんと理解出来るようになるなら、考え直そうと思って。」

一度は衝撃を受けたが、後半の言葉ですぐに立ち直った。
…零斗といるためならなんでもする。
画面に向けて頷いて見せると

「なら、あなたには一度、一人で私達のところに来てもらいたいの。
そこで、アンドロイドやAIについて、あなた自身が勉強してほしい。
きっと今のあなたの実力なら、我が研究所でも歓迎して見習いとして受け入れられると思うわ。
…それとね。忘れちゃいけないのは、誰がなんと言おうと零斗は機械なの。
実際、戸惑うこともあったでしょう?今まで。
本気でずっと一緒に言おうと思うなら、その現実から目を背けちゃダメ。
現実を見てから、その後を決めなさい。その間、零斗には社会で活動してもらうわ。
具体的には大学に行ってもらうつもり。お互い、人間とアンドロイドのことを理解してほしいの。それができるなら…」
「絶対やるっ!だからっ!!」

二人は勢い込んで答えた私を見てクスクス笑う。

「ねぇ、未菜、あなた零斗のことそう言う意味で好きなんでしょう?」

バレバレじゃない、そう言われてみるみる頰が赤くなる。
誤魔化しようがないほどに。

でもね。両親はさらに続ける。

「親として言わせてもらうと、反対するわ。零斗はあくまでも機械。
自分へ向けられるあの忠誠心も疑っちゃうこともあるだろうし、なんといっても女としての幸せを感じられないもの。子供がほしいって思った時のことも考えて。」

そういう意味でも、一度零斗と距離を置いて見てほしい。

そう告げられた。


私の初恋は難しすぎる。
そうはっきりと実感した瞬間だった。

…それでも。今の私は零斗以外との未来なんて考えられない。

「私、イギリスに行く。」

そう告げると、わかっていたかのように「詳しい予定は後でつたえるわ。」
と言われた。











零斗の部屋を出ると、ドアのすぐ横で零斗が待っていた。

「家族水入らずはいかがでしたか?」

少し嬉しそうに彼はいう。

「…うん。私今まで正直両親には大事にされてないんだと思ってたの。ずっとほったらかしだったし。でも、ちゃんと愛されてたんだなって思った。
それでね、私、イギリスに行くことにしたの。高校はあっちのところへ転入して、お父さんとお母さんのところで機械の勉強をするつもり。」

そう言っている間零斗は軽く目を瞑り、頷きながら聞いていた。

「…はい、とてもよい選択だと思います。私は未菜様の幸せをお祈りしてますね。」

そういうと、彼は少し言いにくそうに尋ねてきた。

「…では、私はいつ解任となるのでしょうか…?」

その質問に一瞬驚いたが、恐る恐るといった様子でこちらを見上げる零斗をみると、驚きは薄れてあたたかい気持ちになった。

「…ねぇ、零斗。零斗はまだ私と一緒にいたい?」

少し意地悪をしてみたりなんてしちゃう。

「…私は未菜様の…」

いつでも私の意見を最優先してくれる零斗だけど、今聞きたいのは。

「…私は零斗の気持ちが聞きたいのっ!!」

アンドロイドとか、命令とかそんなんじゃなくて、零斗自身の考えていることが知りたい。
じっと床を見つめていた零斗は、小さく、しかし確実に聞こえる声で

「…未菜様と一緒にいたいです。」

ぽそりと呟いた。
思わずニンマリと笑ってしまいたくなるがぐっとこらえる。

「なになにっ!?きこえなぁいっ!!」

そう言って顔を近づけると、

「だから、未菜様といたいって言ってるんですっ!!
…ていうか、何度も言ってるでしょうこれっ!」

こっちを向いて吐き捨てるようにいうと、夕食にしますよっ、と言ってさっさと歩いていってしまう。

「…ねーぇ、れいとっ!」

もう一度零斗を呼び止める。

「…何ですか?」

身構えたように振り返る零斗。

「…私達、絶対ずっと一緒なんだからねっ!!!」

私の大好きな笑顔で彼は頷いた。
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