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第31話
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未菜と零斗は零斗の部屋のパソコンの前で画面と対峙していた。
まだ帰宅してすぐのため、零斗はまだボロボロである。
画面には、また未菜の両親の姿が映し出された。
先程の通話開始時とは違い、今回は最初から真面目な顔つきだった。
「…零斗。まず今までに独断行動を反省しなさい。あなたの勝手な行動で未菜が危険な目にあった。」
「…大変申し訳ございません。」
深々と零斗は頭を下げる。
「うん。あと、聞きたいこともあるわ。」
今度は未菜にその顔が向けられた。
「未菜。あなた、このパソコンのコード、どうして知ってたの?
零斗がロックしてないはずはないだろうし…」
両親の視線がチラリと零斗に向いたが、彼は教えていない、とでも言うように静かに首を振った。
「…知ってたわけじゃないんだけど。コード、だから零斗の大切な言葉かなって。
零斗の宝物だって言ってたこのペンダントに書いてたから……」
きれいでしょ、そう言ってペンダントを取り出すと、今日何度目かわからない2人の驚いた顔を見た。
「…ええっと…待って。……じゃあ、零斗が持ってたボタンはなんなの?
偽物…ってこと?」
その言葉を聞いてすぐ感づいた。
…つまり…これは、アンドロイドの心臓であるボタン……
「…ちょっ、ちょっっ、ちょっと零斗っ!これっ、じゃあ……」
思わず隣の零斗の腕を揺さぶる。
されるがままの零斗が曲がった腕を振り回されてるせいか激しくグラグラ揺れながら、
「だってっ、絶対安全な場所に身につけときなさい、って言われたから…」
必死に画面に訴えているが、
「どこが安全な場所なのよっ!自分から手放すなんてっ、そんなアンドロイド前代未聞だわっ!」
すでに楓は真っ赤になりながら叫んでおり、哲也はキャパオーバーなのか後ろの方で何故か笑いこげている。
「私が絶対に守り抜く未菜様が1番安全ですよ。
それに、未菜様がいなくなったらこの心臓が動いていても意味がないですし……」
私が期待しているような意味は何もないのはわかっているが、思春期真っ盛りの女子高生にはこの言葉に平常心を保つのは不可能だった。
「えっ、じゃあ、翔平が見つけたボタンは何だったの?」
話をずらそうと思って聞くと、零斗はさらりと答えた。
「あれは私が後で付け足した自爆装置のボタンですよ。私だけでなく周囲も吹き飛ばすので、未菜様の敵まで一網打尽です。
…あ、もちろんあの時、未菜様にまで被害が及ばないということはあらゆる角度から何重にも調べてありますからね。」
少し誇らしげな様子まで見せている。
…待って。それじゃあ。
「零斗っ、もしじゃあ、翔平がボタンを押してたら…」
「まぁ、私と翔平とセルバは仲良く消え去っていたでしょうね。」
平然としたまま恐ろしいことを言ってのける。
自分のことをなんとも零斗は思ってないの…?
もしかしたら、あの時零斗はいなくなってたかもしれないのに…
「…ずっと一緒にいるって、約束したじゃんばかっ!!!!」
零斗がいなくなったら、私はどうすればいいの?
じわじわと視界が滲んでいく。
「…未菜様。悲しませてしまって、またこんな事件に巻き込んでしまって申し訳ありません。
でも、私ちゃんと戻ってきましたよ。ちょっと不安もありましたが。
翔平がちゃんとした人間でよかった。彼も、大切な人がいたようですし……」
子供をあやすようにして未菜の頭を撫でている零斗の姿を見て、しばらく様子を伺っていた両親が口を開いた。
「ねぇ、零斗。ちょっと家族で話したいことがあるの。席、外してくれる?」
「かしこまりました。」
そういうと零斗は未菜の頭を最後に優しく撫でたあと、部屋を後にした。
まだ帰宅してすぐのため、零斗はまだボロボロである。
画面には、また未菜の両親の姿が映し出された。
先程の通話開始時とは違い、今回は最初から真面目な顔つきだった。
「…零斗。まず今までに独断行動を反省しなさい。あなたの勝手な行動で未菜が危険な目にあった。」
「…大変申し訳ございません。」
深々と零斗は頭を下げる。
「うん。あと、聞きたいこともあるわ。」
今度は未菜にその顔が向けられた。
「未菜。あなた、このパソコンのコード、どうして知ってたの?
零斗がロックしてないはずはないだろうし…」
両親の視線がチラリと零斗に向いたが、彼は教えていない、とでも言うように静かに首を振った。
「…知ってたわけじゃないんだけど。コード、だから零斗の大切な言葉かなって。
零斗の宝物だって言ってたこのペンダントに書いてたから……」
きれいでしょ、そう言ってペンダントを取り出すと、今日何度目かわからない2人の驚いた顔を見た。
「…ええっと…待って。……じゃあ、零斗が持ってたボタンはなんなの?
偽物…ってこと?」
その言葉を聞いてすぐ感づいた。
…つまり…これは、アンドロイドの心臓であるボタン……
「…ちょっ、ちょっっ、ちょっと零斗っ!これっ、じゃあ……」
思わず隣の零斗の腕を揺さぶる。
されるがままの零斗が曲がった腕を振り回されてるせいか激しくグラグラ揺れながら、
「だってっ、絶対安全な場所に身につけときなさい、って言われたから…」
必死に画面に訴えているが、
「どこが安全な場所なのよっ!自分から手放すなんてっ、そんなアンドロイド前代未聞だわっ!」
すでに楓は真っ赤になりながら叫んでおり、哲也はキャパオーバーなのか後ろの方で何故か笑いこげている。
「私が絶対に守り抜く未菜様が1番安全ですよ。
それに、未菜様がいなくなったらこの心臓が動いていても意味がないですし……」
私が期待しているような意味は何もないのはわかっているが、思春期真っ盛りの女子高生にはこの言葉に平常心を保つのは不可能だった。
「えっ、じゃあ、翔平が見つけたボタンは何だったの?」
話をずらそうと思って聞くと、零斗はさらりと答えた。
「あれは私が後で付け足した自爆装置のボタンですよ。私だけでなく周囲も吹き飛ばすので、未菜様の敵まで一網打尽です。
…あ、もちろんあの時、未菜様にまで被害が及ばないということはあらゆる角度から何重にも調べてありますからね。」
少し誇らしげな様子まで見せている。
…待って。それじゃあ。
「零斗っ、もしじゃあ、翔平がボタンを押してたら…」
「まぁ、私と翔平とセルバは仲良く消え去っていたでしょうね。」
平然としたまま恐ろしいことを言ってのける。
自分のことをなんとも零斗は思ってないの…?
もしかしたら、あの時零斗はいなくなってたかもしれないのに…
「…ずっと一緒にいるって、約束したじゃんばかっ!!!!」
零斗がいなくなったら、私はどうすればいいの?
じわじわと視界が滲んでいく。
「…未菜様。悲しませてしまって、またこんな事件に巻き込んでしまって申し訳ありません。
でも、私ちゃんと戻ってきましたよ。ちょっと不安もありましたが。
翔平がちゃんとした人間でよかった。彼も、大切な人がいたようですし……」
子供をあやすようにして未菜の頭を撫でている零斗の姿を見て、しばらく様子を伺っていた両親が口を開いた。
「ねぇ、零斗。ちょっと家族で話したいことがあるの。席、外してくれる?」
「かしこまりました。」
そういうと零斗は未菜の頭を最後に優しく撫でたあと、部屋を後にした。
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