「大事な人だよ」 その意味は?

あーむす。

文字の大きさ
上 下
28 / 37

第27話

しおりを挟む
2人は頷き合うと、楓の方が口を開いた。

「…えっとね。正直、私達も戸惑っているの。零斗に機械の使い方なんてプログラムしてないもの。だって、自分で勝手にプログラムいじられたら困るじゃない?
しかも、未菜の話を聞いてると、零斗ったら沢山命令違反してるわ。
翔平って子の話、一切報告受けてないもの。」

「あれだけは成功作だと思ってたんだけど…」と言い合いながらまた2人はあっちで喋り出している。

…成功作?今の言い方だと、今回の件で 零斗は失敗作認定されたということだろうか。
確かに2人が言うように、零斗は自身に入れられた命令に背くという通常では絶対にありえない行動を取っている。
しかし。零斗の目的が1人になった私を育てることであるのならば、結果的に良かったのではないか。
さらに、私に命の危険が及んだ時の緊急システムは悲しくなるほど完璧に作動している。
私には、零斗が失敗作というレッテルを貼られる意味がわからなかった。
私のために今まできっと必要最低限以上のことをしてくれた零斗を悪く言われるのは悔しかった。

「…ねぇ、今までの執事と零斗は一体どこが違ったの?」

まだまだ話し合っている2人に問いかける。

「えぇ…とそれは…逆に何だか言いにくいんだけど…もう、どうしていいのかわからなくなっちゃってね。」

『王子様モード』を取り付けたの。彼女は至って真面目な顔でそう言った。

「女の子って、王子様に憧れるじゃない?だから、王子様が迎えに来たらきっと未菜も喜ぶかなって思って。」

「それまでは足りない機能の補充や優しさなんかを重視していたんだけどな。」
さっきから黙っていた哲也も口を開く。

王子様?いや、なんか違う気が……
まぁ、確かに最初の頃は王子様らしかったのかもしれない、うん。
私も一発で落ちたし。

私のために作られた零斗ー。
本物の王子様になることを、命令より優先したんだね。

ブーッ

突然未菜の携帯が鳴る。
メールだ。翔平からの。

『ボタンは見つけた。未菜ちゃん、本当に役に立ってくれたよ。ありがとう。
お幸せにね。』

メールを一緒に見ていた2人は大きくため息をつく。

「もう、なに、ボタンってなに!?」

もう何度目かわからない重いから口が開かれた。

ーロボットには絶対、メンテナンス用のシャットダウンスイッチがつけられているの。
アンドロイドの心臓とも言える部分。そのボタンが見つかったのかもしれない。
一度押されると、もう一度そこを押されないと動かない上に、脳内プログラム改造も行える。零斗はそのまま奴らに利用されるかもしれない…ー

それはー零斗が零斗で無くなるのと同じ。

確かに、零斗はプログラムなのかもしれない。

でもー
私と零斗の約束だけは、嘘じゃないって信じたい。

「…2人とも。零斗の居場所は調べられる?」
覚悟は決まった。

「本気…なんだな?」

頷くと、2人は近くのコンピュータを凄い勢いで叩き始めた。

私は零斗の部屋をでて、自分の準備を始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。

立坂雪花
恋愛
夏休み、小日向美和(35歳)は 小学一年生の娘、碧に キャンプに連れて行ってほしいと お願いされる。 キャンプなんて、したことないし…… と思いながらもネットで安心快適な キャンプ場を調べ、必要なものをチェックしながら娘のために準備をし、出発する。 だが、当日簡単に立てられると思っていた テントに四苦八苦していた。 そんな時に現れたのが、 元子育て番組の体操のお兄さんであり 全国のキャンプ場を巡り、 筋トレしている動画を撮るのが趣味の 加賀谷大地さん(32)で――。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...