25 / 37
第24話
しおりを挟む
「まず、うちのセルバを見てほしい。」
彼の指差す方を言われた通りに見ると、屋上で何やら先ほど画面にうつっていた執事服の男性ーきっと彼の名前がセルバというのだろうーが私達に手を振っている。
だが、翔平が手を振り返すと、突然手を下げてしゃがんだ。
そして。そのまま彼は屋上から飛び降りた。
未菜の口から声にならない悲鳴が出る。
がしかし、セルバは平然と着地した。
「へへへっ、凄いでしょ。ちなみに、さっきの光もセルバが出したよー。
つまりこれ、俺が作ったアンドロイドってわけ。
…どう?……賢い未菜ちゃんなら、本当はどっかでわかってたんじゃないのぉ~??」
私の前で、現れたセルバを警戒するように立っている零斗を眺める。
ー今まで一緒だった彼が、人ではないって言いたいのか?
ずっと一緒に生活してきたのに?
残念ながらどんなにそれを信じたくなくても、さっきまでが嘘のようにピッタリと止まってしまった血や、おかしな方向に曲がっていても何事もない様に平然と動く腕を見れば、疑いようがなかった。
ーいや、本当は。
もっと前からおかしな所に気づいていた。
出会った時から全くと言ってもいいほど見た目が変わらない所。
何をやらせても人間離れしてできる所。
そして、零斗が来る前に度々やって来ていた他の執事たちへの違和感。
何も知らない零斗の過去。
でも、それに気づいてしまったら、聞いちゃったら、何かが終わっちゃう気がして。
2人で誤魔化しあっていたんだ。…いや?2人?
私が一緒にいたのは零斗って人?
それとも、両親の作ったプログラム?
だんだんと頭が真っ白になっていく。
そんな私に向かって、少しずつ翔平が近づいて来ているのを感じた。
だが、私はそこから何かに絡みつかれているかの様に一歩も動くことが出来ない。
「あぁ、なんてかわいそうな未菜ちゃん。…安心して?
君の執事はちゃんと、世界を救う素晴らしい研究に役立てるよ。
それに、被害者の未菜ちゃんにはきちんとした人間の執事をあげよう。」
まだ、私の前に立っている零斗はこっちへ近づいて来る翔平に警戒を続けている。
ー私のことなんて、見向きもしないで。
れいとー…ねぇ、れい…と、おねがいっ……たす…っ、け…てっ……
私の意識はそこで途切れた。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎翔平side♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
トサリと音を立てて未菜が倒れたのに気づいた標的は、ずっと俺を見張っていたのからようやく目を離した。
「安心して。未菜には何もしてないから。キャパオーバーで倒れたんだよ、色々ありすぎてさ。
…さあ、次は君の番だ。
…いやぁ、でもしかし、非常事態になると限られた機能をフル活用して守りに特化するんだな。未菜を未菜として認識してなかったよね。君らしくもなくさ。
やっと君がアンドロイドだって心から認識出来たよ。
…何?話が長いって?…うん、でしょうよ。
でも、もういいよ。俺も大変だったよ、わかる?
君を自然に、確実に。俺の前に留めておくこと。
あ、気づいた?逃げようとしてる?…もう無理でしょ。時間かかったよやっぱ。
君が犯した1つのミス。
さっき開けた脳内フォルダ。あれさぁ……」
ドサッ
MO-18は音を立てて地面に崩れ落ちた。
地面に落ちたままの未菜の携帯の画面では、セルバがにっこりと微笑んでいた。
彼の指差す方を言われた通りに見ると、屋上で何やら先ほど画面にうつっていた執事服の男性ーきっと彼の名前がセルバというのだろうーが私達に手を振っている。
だが、翔平が手を振り返すと、突然手を下げてしゃがんだ。
そして。そのまま彼は屋上から飛び降りた。
未菜の口から声にならない悲鳴が出る。
がしかし、セルバは平然と着地した。
「へへへっ、凄いでしょ。ちなみに、さっきの光もセルバが出したよー。
つまりこれ、俺が作ったアンドロイドってわけ。
…どう?……賢い未菜ちゃんなら、本当はどっかでわかってたんじゃないのぉ~??」
私の前で、現れたセルバを警戒するように立っている零斗を眺める。
ー今まで一緒だった彼が、人ではないって言いたいのか?
ずっと一緒に生活してきたのに?
残念ながらどんなにそれを信じたくなくても、さっきまでが嘘のようにピッタリと止まってしまった血や、おかしな方向に曲がっていても何事もない様に平然と動く腕を見れば、疑いようがなかった。
ーいや、本当は。
もっと前からおかしな所に気づいていた。
出会った時から全くと言ってもいいほど見た目が変わらない所。
何をやらせても人間離れしてできる所。
そして、零斗が来る前に度々やって来ていた他の執事たちへの違和感。
何も知らない零斗の過去。
でも、それに気づいてしまったら、聞いちゃったら、何かが終わっちゃう気がして。
2人で誤魔化しあっていたんだ。…いや?2人?
私が一緒にいたのは零斗って人?
それとも、両親の作ったプログラム?
だんだんと頭が真っ白になっていく。
そんな私に向かって、少しずつ翔平が近づいて来ているのを感じた。
だが、私はそこから何かに絡みつかれているかの様に一歩も動くことが出来ない。
「あぁ、なんてかわいそうな未菜ちゃん。…安心して?
君の執事はちゃんと、世界を救う素晴らしい研究に役立てるよ。
それに、被害者の未菜ちゃんにはきちんとした人間の執事をあげよう。」
まだ、私の前に立っている零斗はこっちへ近づいて来る翔平に警戒を続けている。
ー私のことなんて、見向きもしないで。
れいとー…ねぇ、れい…と、おねがいっ……たす…っ、け…てっ……
私の意識はそこで途切れた。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎翔平side♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
トサリと音を立てて未菜が倒れたのに気づいた標的は、ずっと俺を見張っていたのからようやく目を離した。
「安心して。未菜には何もしてないから。キャパオーバーで倒れたんだよ、色々ありすぎてさ。
…さあ、次は君の番だ。
…いやぁ、でもしかし、非常事態になると限られた機能をフル活用して守りに特化するんだな。未菜を未菜として認識してなかったよね。君らしくもなくさ。
やっと君がアンドロイドだって心から認識出来たよ。
…何?話が長いって?…うん、でしょうよ。
でも、もういいよ。俺も大変だったよ、わかる?
君を自然に、確実に。俺の前に留めておくこと。
あ、気づいた?逃げようとしてる?…もう無理でしょ。時間かかったよやっぱ。
君が犯した1つのミス。
さっき開けた脳内フォルダ。あれさぁ……」
ドサッ
MO-18は音を立てて地面に崩れ落ちた。
地面に落ちたままの未菜の携帯の画面では、セルバがにっこりと微笑んでいた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。
立坂雪花
恋愛
夏休み、小日向美和(35歳)は
小学一年生の娘、碧に
キャンプに連れて行ってほしいと
お願いされる。
キャンプなんて、したことないし……
と思いながらもネットで安心快適な
キャンプ場を調べ、必要なものをチェックしながら娘のために準備をし、出発する。
だが、当日簡単に立てられると思っていた
テントに四苦八苦していた。
そんな時に現れたのが、
元子育て番組の体操のお兄さんであり
全国のキャンプ場を巡り、
筋トレしている動画を撮るのが趣味の
加賀谷大地さん(32)で――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる