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第21話
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パタンー。
古ぼけたドアを閉めると、俺ー上坂翔平は真っ先に携帯を開く。
メールが二件。
1つは未菜から。俺は迷わずもう一件のメールを開いた。
『もうすぐデータを送る』
たったそれだけの簡潔すぎるものだったが、彼にとっては十分に理解できるものだった。
いよいよ作戦決行の日ーアンドロイドMO-18を手に入れる日が決まったのだ。
俺は唯一側に置いているアンドロイド、セルバに声をかける。
「おい、出てこい。届いてるんだろ?」
すると、狭い押入れからゴソゴソと男性が出てきた。
「はい、届いております。…今、お渡ししましょうか?」
「あぁ、頼む。」
俺の言葉を聞くと、セルバは自らの服を脱ぎ、上半身を露わにした。
そしてなんの躊躇いもなくーセルバは自らの腹を強く殴った。
腹は衝撃で軽くへこむと、すぐ跳ね返ってきて、腹部がタンスの引き出しのように飛び出してきた。
その箱に自分の手を突っ込み、中から紙の書類を取り出す。
「どうぞ」
いつもと変わらない平然とした顔でセルバは俺に書類を手渡した。
ーMO-18奪取計画ー
書類を受け取りながら自らのつくったアンドロイドをながめる。
セルバは俺の作った数あるアンドロイドの中でも最高傑作だ。
様々な機能を搭載していて、なんならMO-18にも負けている気はしない。
これにも会話に応じて表情をつけたりする機能にかなり力を入れて人間らしくしたつもりだ。
いったい、何が足りないんだろう…
「作戦、成功するといいですね。」
にこりと微笑んだこいつを一瞥し、今度はMO-18奪取計画の方に考えを巡らす。
この時点で、すでに彼の頭の中にはサンドラの顔しか浮かんでいなかった。
やっと、もらえた俺の役目。
絶対に成功したい。しなきゃいけない。
彼の携帯が鳴る。
ーキタイシテルヨ、ショーヘイ。ー
古ぼけたアパートから、また話し声が聞こえてきた。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎零斗side♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
今日は未菜様は元気だっただろうか。
零斗は今か今かと未菜の到着を待ちわびていた。
トウチャクシマシタ、オジョウサマ。
未菜が帰って来ると言う信号を受ける前からずっと門の側で待っていた零斗にとって、未菜にとってはいつも通りでも、とても遅い帰りだったように錯覚する。
昨日まであんなに苦しそうだった未菜様は、今となっては元気そうに私の方に駆け寄ってきた。
「零斗っ、ただいまっ!」
大きな目をめいいっぱい細めて彼女は笑う。
あぁ、もう。
自然とつられて私まで頰がゆるんでしまう。
…本当は気づいているんだ。
風邪を翔平がうつしたと言ってたのは、未菜が自らの意思でお見舞いに行ったからだってこと。
彼女は自分の元から羽ばたこうとしてるってこと。
翔平の狙いは私ー私のアンドロイドデータなのだから、逆に未菜様から離れた方が彼女は安全だってことも。
でも、それでも私が未菜様を守りたい。
「お帰りなさいませ、未菜様。」
近づいてきた未菜様にそっと近寄り、優しく抱きしめる。
この脆い体が壊れないように。この偽りだらけの中築いてきた関係が、崩れないように。
「えっ、零斗?」
少し戸惑ったような未菜様の声。
「…もう少し、このままでもいいですか?」
小さく尋ねると、少し躊躇うように動いた後、腕の中の彼女の頭がコクリと動いた。
この時間がずっと続くことを祈った。
古ぼけたドアを閉めると、俺ー上坂翔平は真っ先に携帯を開く。
メールが二件。
1つは未菜から。俺は迷わずもう一件のメールを開いた。
『もうすぐデータを送る』
たったそれだけの簡潔すぎるものだったが、彼にとっては十分に理解できるものだった。
いよいよ作戦決行の日ーアンドロイドMO-18を手に入れる日が決まったのだ。
俺は唯一側に置いているアンドロイド、セルバに声をかける。
「おい、出てこい。届いてるんだろ?」
すると、狭い押入れからゴソゴソと男性が出てきた。
「はい、届いております。…今、お渡ししましょうか?」
「あぁ、頼む。」
俺の言葉を聞くと、セルバは自らの服を脱ぎ、上半身を露わにした。
そしてなんの躊躇いもなくーセルバは自らの腹を強く殴った。
腹は衝撃で軽くへこむと、すぐ跳ね返ってきて、腹部がタンスの引き出しのように飛び出してきた。
その箱に自分の手を突っ込み、中から紙の書類を取り出す。
「どうぞ」
いつもと変わらない平然とした顔でセルバは俺に書類を手渡した。
ーMO-18奪取計画ー
書類を受け取りながら自らのつくったアンドロイドをながめる。
セルバは俺の作った数あるアンドロイドの中でも最高傑作だ。
様々な機能を搭載していて、なんならMO-18にも負けている気はしない。
これにも会話に応じて表情をつけたりする機能にかなり力を入れて人間らしくしたつもりだ。
いったい、何が足りないんだろう…
「作戦、成功するといいですね。」
にこりと微笑んだこいつを一瞥し、今度はMO-18奪取計画の方に考えを巡らす。
この時点で、すでに彼の頭の中にはサンドラの顔しか浮かんでいなかった。
やっと、もらえた俺の役目。
絶対に成功したい。しなきゃいけない。
彼の携帯が鳴る。
ーキタイシテルヨ、ショーヘイ。ー
古ぼけたアパートから、また話し声が聞こえてきた。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎零斗side♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
今日は未菜様は元気だっただろうか。
零斗は今か今かと未菜の到着を待ちわびていた。
トウチャクシマシタ、オジョウサマ。
未菜が帰って来ると言う信号を受ける前からずっと門の側で待っていた零斗にとって、未菜にとってはいつも通りでも、とても遅い帰りだったように錯覚する。
昨日まであんなに苦しそうだった未菜様は、今となっては元気そうに私の方に駆け寄ってきた。
「零斗っ、ただいまっ!」
大きな目をめいいっぱい細めて彼女は笑う。
あぁ、もう。
自然とつられて私まで頰がゆるんでしまう。
…本当は気づいているんだ。
風邪を翔平がうつしたと言ってたのは、未菜が自らの意思でお見舞いに行ったからだってこと。
彼女は自分の元から羽ばたこうとしてるってこと。
翔平の狙いは私ー私のアンドロイドデータなのだから、逆に未菜様から離れた方が彼女は安全だってことも。
でも、それでも私が未菜様を守りたい。
「お帰りなさいませ、未菜様。」
近づいてきた未菜様にそっと近寄り、優しく抱きしめる。
この脆い体が壊れないように。この偽りだらけの中築いてきた関係が、崩れないように。
「えっ、零斗?」
少し戸惑ったような未菜様の声。
「…もう少し、このままでもいいですか?」
小さく尋ねると、少し躊躇うように動いた後、腕の中の彼女の頭がコクリと動いた。
この時間がずっと続くことを祈った。
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