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第18話
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翔平の部屋を飛び出した未菜は、ただひたすらに帰路を急いでいた。
(…何が起きたの?…なんで?)
ただひたすらにわからない。
覚えているのは、彼の熱い体温と一瞬触れたものの感触だけだ。
ー零斗。
彼の体温が伝わった瞬間も、それが触れた時も。
何故か脳裏には零斗がうつる。
零斗じゃない。零斗じゃない。あれは零斗じゃない。
何度も何度も、私にしつこいほどにわからせる。
何かが怖くて、逃げ出したくて。
でも、だからといって、零斗にも会いたくないような。
それでも、私は零斗の待つ家に向かって一直線に急いでいる。
ドアをぶち破るような勢いで開けて駆け込んだ。
「お帰りなさいませ、未菜様。今日は未菜様の好きなハンバーグですよ。」
そこには、いつものように私を出迎える彼がいた。心なしか今日は少し自慢気だ。
彼を見るだけで胸から何か飛び出してきそうになる。
「…未菜様?どうかなさいましたか?」
…私はにっこりと笑顔で返す。
「…もう、お腹空いちゃった!!早く食べたいっ!」
普段は察しのいい彼にも、これだけはバレないように。
大好きな彼だからこそ、これだけはバレないように。
私は彼のつくった美味しい食事をたくさん食べた。
翌朝。
「未菜様、未菜様?大丈夫ですか?」
いつもと違う、優しい起こし方。
れいと、れいと……
「うなされてましたよ、顔色も良くないですし…」
彼の冷たい手が額に触れるのが心地よい。
あぁ、翔平のがうつったのか。
ぼんやりした頭で考えた。
まぁ、でもいいか。
翔平にも会いにくいし、零斗がいてくれるし…
穏やかな気持ちのまま、再びすぅっと意識が遠のいた。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢零斗side♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
……参ったな。
未菜様は私の手を掴んだまま、スヤスヤと気持ち良さそうな寝息を立てていた。
具合が悪かったから、昨日もどこかおかしかったのか。
謎も解けたところで、繋がれたら手を解こうと試みる。
しかし、手は離れず、寧ろ今度は彼女の首元に強く引きつけられた。
…きっと、私の体温は冷たく気持ちが良いのだろう。
いつもより温かい彼女の体温が伝わってくる。
ぎゅっとさらに首元へ強く押し付けられると、滑らかで気持ちの良い人肌が手のひらに吸い付く。
こちらから首筋に沿って手をゆっくりと動かしていくと、彼女はふにゃりと柔らかく笑った。
自然と何かに引きつけられるかのように顔が近づいていき
寸前のところでパッと離れた。
(…何が起きたの?…なんで?)
ただひたすらにわからない。
覚えているのは、彼の熱い体温と一瞬触れたものの感触だけだ。
ー零斗。
彼の体温が伝わった瞬間も、それが触れた時も。
何故か脳裏には零斗がうつる。
零斗じゃない。零斗じゃない。あれは零斗じゃない。
何度も何度も、私にしつこいほどにわからせる。
何かが怖くて、逃げ出したくて。
でも、だからといって、零斗にも会いたくないような。
それでも、私は零斗の待つ家に向かって一直線に急いでいる。
ドアをぶち破るような勢いで開けて駆け込んだ。
「お帰りなさいませ、未菜様。今日は未菜様の好きなハンバーグですよ。」
そこには、いつものように私を出迎える彼がいた。心なしか今日は少し自慢気だ。
彼を見るだけで胸から何か飛び出してきそうになる。
「…未菜様?どうかなさいましたか?」
…私はにっこりと笑顔で返す。
「…もう、お腹空いちゃった!!早く食べたいっ!」
普段は察しのいい彼にも、これだけはバレないように。
大好きな彼だからこそ、これだけはバレないように。
私は彼のつくった美味しい食事をたくさん食べた。
翌朝。
「未菜様、未菜様?大丈夫ですか?」
いつもと違う、優しい起こし方。
れいと、れいと……
「うなされてましたよ、顔色も良くないですし…」
彼の冷たい手が額に触れるのが心地よい。
あぁ、翔平のがうつったのか。
ぼんやりした頭で考えた。
まぁ、でもいいか。
翔平にも会いにくいし、零斗がいてくれるし…
穏やかな気持ちのまま、再びすぅっと意識が遠のいた。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢零斗side♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
……参ったな。
未菜様は私の手を掴んだまま、スヤスヤと気持ち良さそうな寝息を立てていた。
具合が悪かったから、昨日もどこかおかしかったのか。
謎も解けたところで、繋がれたら手を解こうと試みる。
しかし、手は離れず、寧ろ今度は彼女の首元に強く引きつけられた。
…きっと、私の体温は冷たく気持ちが良いのだろう。
いつもより温かい彼女の体温が伝わってくる。
ぎゅっとさらに首元へ強く押し付けられると、滑らかで気持ちの良い人肌が手のひらに吸い付く。
こちらから首筋に沿って手をゆっくりと動かしていくと、彼女はふにゃりと柔らかく笑った。
自然と何かに引きつけられるかのように顔が近づいていき
寸前のところでパッと離れた。
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