「大事な人だよ」 その意味は?

あーむす。

文字の大きさ
上 下
16 / 37

第15話

しおりを挟む
「未菜様、お目覚めの時間でございます。」

「ん~、いやぁ~、あとちょっと~」

「…仕方ありませんね、それなら……」

零斗は未菜の布団の中に、スルリとその白い手を忍び込ませた。
そしてその手を巧みに動かし………

「イイイイイヤヤァァァァァアアアアア!!!」
未菜はまもなくベットから滑り落ちてきた。

「ちょっと、零斗っ!!くすぐるのやめてよっ!!」
「起きない未菜様が悪いと思います。
…朝食の準備はできていますので。
もうお目覚めになったようなので、失礼致します。」

普段となんら変わらない涼しい顔で零斗は出て行った。
……久しぶりにやってきた、いつも通りの朝だ。
はじめてのケンカからの仲直り、とでも言ったところだろうか。


ーあの男と楽しそうに笑いあう未菜様を想像するだけで、何かが焼けるように痛いのです。ー
そうして近づく零斗の体温。
彼の手が私の背中にまわされて……


ガチャリ。
「……未菜様、ニヤニヤしてたらまた遅れますよ?」
ガチャン。

……そんなに私ニヤついてたのか。
私はのそのそとベットから這い出た。


             
                     ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎



トウチャクシマシタ、オジョウサマ。

いつもと変わらない、生徒達で溢れる学園。
朝ニマニマしていたのから一転、昨日起こったもう一つの事件に私は頭を悩ませていた。

(…翔平に謝らなきゃ。)

あの後メールで今日はごめんね、と謝ると、気にしないで、と返信が来たっきりだった。
勝手に帰ったことももちろんだが、私の中では、自分が零斗を忘れるために優しい翔平に甘えようとしていたことが、どうしようもなく失礼な行為だったと気づいたのだ。

私は教室でずっと翔平が来るのを待っていた。
ーだが。

「なんだー、上坂は休みか。珍しいこともあるもんだな。」
朝礼が終わっても彼は来ない。

……まさか、あの後何かあったとか?
突然、焦りと罪悪感のようなものが心の中に押し寄せて来た。

そこから一日中今か今かと彼の登校を待っていたが、結局放課後まで彼はやって来なかった。
…これは聞きに言ってみるのが早いかな。

放課後、私は先生に翔平の欠席理由を聞きに行くことにした。

「あぁ、上坂は熱を出したそうだ。あいつ、1人暮らしだし大変だろうな。
うん、大宮、もし良かったらプリント渡しがてらお見舞いにでも行ってくれないか?」

すごくニヤニヤしながら私にプリントを渡す先生。


…うん、これ、完璧誤解されたパターン。
てか、教師がやすやす女子を男子の家にいかすってどーなのよ。
内心ツッコミつつも了承したのであった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。

立坂雪花
恋愛
夏休み、小日向美和(35歳)は 小学一年生の娘、碧に キャンプに連れて行ってほしいと お願いされる。 キャンプなんて、したことないし…… と思いながらもネットで安心快適な キャンプ場を調べ、必要なものをチェックしながら娘のために準備をし、出発する。 だが、当日簡単に立てられると思っていた テントに四苦八苦していた。 そんな時に現れたのが、 元子育て番組の体操のお兄さんであり 全国のキャンプ場を巡り、 筋トレしている動画を撮るのが趣味の 加賀谷大地さん(32)で――。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...