「大事な人だよ」 その意味は?

あーむす。

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第15話

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「未菜様、お目覚めの時間でございます。」

「ん~、いやぁ~、あとちょっと~」

「…仕方ありませんね、それなら……」

零斗は未菜の布団の中に、スルリとその白い手を忍び込ませた。
そしてその手を巧みに動かし………

「イイイイイヤヤァァァァァアアアアア!!!」
未菜はまもなくベットから滑り落ちてきた。

「ちょっと、零斗っ!!くすぐるのやめてよっ!!」
「起きない未菜様が悪いと思います。
…朝食の準備はできていますので。
もうお目覚めになったようなので、失礼致します。」

普段となんら変わらない涼しい顔で零斗は出て行った。
……久しぶりにやってきた、いつも通りの朝だ。
はじめてのケンカからの仲直り、とでも言ったところだろうか。


ーあの男と楽しそうに笑いあう未菜様を想像するだけで、何かが焼けるように痛いのです。ー
そうして近づく零斗の体温。
彼の手が私の背中にまわされて……


ガチャリ。
「……未菜様、ニヤニヤしてたらまた遅れますよ?」
ガチャン。

……そんなに私ニヤついてたのか。
私はのそのそとベットから這い出た。


             
                     ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎



トウチャクシマシタ、オジョウサマ。

いつもと変わらない、生徒達で溢れる学園。
朝ニマニマしていたのから一転、昨日起こったもう一つの事件に私は頭を悩ませていた。

(…翔平に謝らなきゃ。)

あの後メールで今日はごめんね、と謝ると、気にしないで、と返信が来たっきりだった。
勝手に帰ったことももちろんだが、私の中では、自分が零斗を忘れるために優しい翔平に甘えようとしていたことが、どうしようもなく失礼な行為だったと気づいたのだ。

私は教室でずっと翔平が来るのを待っていた。
ーだが。

「なんだー、上坂は休みか。珍しいこともあるもんだな。」
朝礼が終わっても彼は来ない。

……まさか、あの後何かあったとか?
突然、焦りと罪悪感のようなものが心の中に押し寄せて来た。

そこから一日中今か今かと彼の登校を待っていたが、結局放課後まで彼はやって来なかった。
…これは聞きに言ってみるのが早いかな。

放課後、私は先生に翔平の欠席理由を聞きに行くことにした。

「あぁ、上坂は熱を出したそうだ。あいつ、1人暮らしだし大変だろうな。
うん、大宮、もし良かったらプリント渡しがてらお見舞いにでも行ってくれないか?」

すごくニヤニヤしながら私にプリントを渡す先生。


…うん、これ、完璧誤解されたパターン。
てか、教師がやすやす女子を男子の家にいかすってどーなのよ。
内心ツッコミつつも了承したのであった。



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