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第11話
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駅に私がついた時には、すでに約束の時刻から10分が経っていた。
普段の癖とは恐ろしい。つい、いつもの時間の感覚で出てきてしまったのである。
「ごめんっ、結構待った?」
壁に寄りかかり、携帯を触っていた彼が顔を上げ柔らかく微笑む。
「いや?さっききたところ。」
ほぉ………返ってきたセリフに思わず感動する。
「ん?どうしたの?」
「いや……なんか憧れの会話だったっていうか………」
モゴモゴいうと、彼は少し可笑しそうに笑う。
「デート、憧れてる?」
制服とは違い、私服の彼は心なしか大人っぽく、あまい。
気がつくと私はコクンと頷いていた。
「……じゃあ今日さ、参考書見に行ったらちょっとデートしよっか。」
いつもとは違う彼の雰囲気に、限りなく恋愛経験値が低い私は、確実に飲み込まれていった。
本屋から出た彼が提案したのは水族館。
本屋でパンフレットをジッと見ていると、「行ったことないの?」と彼が聞いてくれたのである。
正直、小さい頃からあまり遊びに行ったことがないから憧れていた。
そのことを伝えると、翔平はもったいないっ!と驚いていた。
零斗にねだってみようか…と小さい頃は考えたこともよくあった。
しかし、忙しい彼をわずらわせるのは子供ながらによくないと思っていたのである。
「ん、水族館でいい?」
彼に顔を覗き込まれて、慌てて頷いた。
彼と話しているとあっという間に水族館についた。
思っていたよりかも翔平と私は話が合う。
私は発明家の両親の影響か、SFチックな世界観や近未来風の映画や本、漫画などが好きだ。
彼も意外にもそのジャンルに詳しかったのである。
話弾みながらエントランスのチケット売り場を「大人二枚で」と翔平が通ろうとすると、スタッフさんが「カップルさんならカップル割がおススメですよー」と勧めてきた。
「いやいy………」
慌てて手をブンブン振って否定しようとした私を押しのけ、翔平は「カップルです」
と私の肩を引き寄せる。
っっっひーーーーーっ!っちかいちかいっ!!!
「はい、オッケーですぅ!!
カップルさん達には、こちらのハートのイルカキーホルダーをプレゼントしてまぁす!」
何やらやたらテンションの高いスタッフさんにもらったのは、イルカの下のハートが2つ繋げて1つになるキーホルダー。
「こういうのはノリで乗り切っちゃった方がお得なんだよ!」
少し得意げな様子で割引を獲得した翔平は、「せっかくだしこれつけようよ!」
と提案した。
私達はそれぞれ自分の携帯にキーホルダーをつけた。
「うわぁーーーー!!サメおっきいぃーーー!!」
思わず水槽に張り付いて見入ってしまう。
水槽を泳ぐ大きなサメの迫力に胸が踊る。
私は小さな子供のように体験コーナーやイルカショーではしゃぎまくった。
その度に翔平も一緒になって盛り上がってくれる。
「実は俺も遊びに来るのは初めてで……」
と少し照れくさそうに彼は言っていたが、遊び以外で水族館に来る用事があるだろうか。
疑問に思ったが、目の前のイルカに目を奪われてすぐにその疑問は消え失せた。
「あっ、あのイルカのぬいぐるみかわいいっっ!!」
未菜が見つけたのは、売店に置いてあったクッションサイズのイルカのぬいぐるみ。
クリクリした大きな目がキュートだ。
……零斗に買って行こうかな。
思わずぬいぐるみを握り、立ち止まる。
「…自分に?それとも………執事さんに?」
横では、翔平が私の顔を覗き込んでいる。
「…いや?かわいいなって思って。」
クッションを置いてその場を離れる。
ー楽しんで行ってらっしゃいませー
零斗の声が頭に響いた。
普段の癖とは恐ろしい。つい、いつもの時間の感覚で出てきてしまったのである。
「ごめんっ、結構待った?」
壁に寄りかかり、携帯を触っていた彼が顔を上げ柔らかく微笑む。
「いや?さっききたところ。」
ほぉ………返ってきたセリフに思わず感動する。
「ん?どうしたの?」
「いや……なんか憧れの会話だったっていうか………」
モゴモゴいうと、彼は少し可笑しそうに笑う。
「デート、憧れてる?」
制服とは違い、私服の彼は心なしか大人っぽく、あまい。
気がつくと私はコクンと頷いていた。
「……じゃあ今日さ、参考書見に行ったらちょっとデートしよっか。」
いつもとは違う彼の雰囲気に、限りなく恋愛経験値が低い私は、確実に飲み込まれていった。
本屋から出た彼が提案したのは水族館。
本屋でパンフレットをジッと見ていると、「行ったことないの?」と彼が聞いてくれたのである。
正直、小さい頃からあまり遊びに行ったことがないから憧れていた。
そのことを伝えると、翔平はもったいないっ!と驚いていた。
零斗にねだってみようか…と小さい頃は考えたこともよくあった。
しかし、忙しい彼をわずらわせるのは子供ながらによくないと思っていたのである。
「ん、水族館でいい?」
彼に顔を覗き込まれて、慌てて頷いた。
彼と話しているとあっという間に水族館についた。
思っていたよりかも翔平と私は話が合う。
私は発明家の両親の影響か、SFチックな世界観や近未来風の映画や本、漫画などが好きだ。
彼も意外にもそのジャンルに詳しかったのである。
話弾みながらエントランスのチケット売り場を「大人二枚で」と翔平が通ろうとすると、スタッフさんが「カップルさんならカップル割がおススメですよー」と勧めてきた。
「いやいy………」
慌てて手をブンブン振って否定しようとした私を押しのけ、翔平は「カップルです」
と私の肩を引き寄せる。
っっっひーーーーーっ!っちかいちかいっ!!!
「はい、オッケーですぅ!!
カップルさん達には、こちらのハートのイルカキーホルダーをプレゼントしてまぁす!」
何やらやたらテンションの高いスタッフさんにもらったのは、イルカの下のハートが2つ繋げて1つになるキーホルダー。
「こういうのはノリで乗り切っちゃった方がお得なんだよ!」
少し得意げな様子で割引を獲得した翔平は、「せっかくだしこれつけようよ!」
と提案した。
私達はそれぞれ自分の携帯にキーホルダーをつけた。
「うわぁーーーー!!サメおっきいぃーーー!!」
思わず水槽に張り付いて見入ってしまう。
水槽を泳ぐ大きなサメの迫力に胸が踊る。
私は小さな子供のように体験コーナーやイルカショーではしゃぎまくった。
その度に翔平も一緒になって盛り上がってくれる。
「実は俺も遊びに来るのは初めてで……」
と少し照れくさそうに彼は言っていたが、遊び以外で水族館に来る用事があるだろうか。
疑問に思ったが、目の前のイルカに目を奪われてすぐにその疑問は消え失せた。
「あっ、あのイルカのぬいぐるみかわいいっっ!!」
未菜が見つけたのは、売店に置いてあったクッションサイズのイルカのぬいぐるみ。
クリクリした大きな目がキュートだ。
……零斗に買って行こうかな。
思わずぬいぐるみを握り、立ち止まる。
「…自分に?それとも………執事さんに?」
横では、翔平が私の顔を覗き込んでいる。
「…いや?かわいいなって思って。」
クッションを置いてその場を離れる。
ー楽しんで行ってらっしゃいませー
零斗の声が頭に響いた。
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