359 / 368
本編
新しいお友達と遊ぶんだよ
しおりを挟む
余所者冒険者達がお友達になりました。今は自己紹介をしています。
「俺は魔法剣士ユーシャ。って言っても魔法は補助レベルだけどな。前衛をしてる」
「私は魔導士のマホ。後衛よ」
「ボクはインテ。小人族だから小さく見えても成人してるから。大学の研究の為に同行してるけど弓が使えるからね、一応中衛を担当してる」
「はいはーい!オレはラント、武闘家だぜ!魔法はからっきしだけど近接戦闘なら任せとけ!」
「あ、わたくしはヒーラです。各地の神域で祈りを捧げる為に同行しています。戦うのは苦手なので回復や料理で皆様をサポートしております」
「最後はあっしかぁ。あっしはトーコだよん。ぶいぶい~♪罠解除ならお任せあれ~」
ここに来て初めて冒険者らしいパーティー構成です。
三巳は『おー』と感嘆の声を上げて、後ろ脚だけで器用に立つと、前脚の肉球をポシポシ叩き合わせます。そして三巳に対して祈りを捧げたそうな目で見るヒーラから視線を逸らします。
三巳達も軽く自己紹介と、念入りにお正月以外のお祈り禁止令を言い渡し、場を改めました。
『んー。そいじゃあ、道の安全が確認出来るまでは此処で三巳達と釣りするんで良い?』
「おう。何か悪いな、急に来て」
『非常事態なら仕方ないんだよ。危険回避大事絶対。安全第一で旅してな』
申し訳なさそうなユーシャに、三巳はニッコリして気にするなの気持ちを込めて尻尾を一振りします。
「釣り道具はあるのか」
ログが尋ねれば、ユーシャ達は荷物袋から携帯式の釣り道具を出して見せました。
「旅じゃ食糧確保の必需品だぜ」
ドヤ顔で言うラントです。
けれども三巳の目は荷物袋の方に釘付けです。
『それで荷物運んでるのか?大変そうなんだよ』
どうやら道着入れみたいな大きな袋が、長時間持ち歩くのに不便そうに見えた様です。
ラントはそれにニカッとした苦笑で返して片手を振ります。
「おー、オレ達じゃ空間収納が施された鞄は高級過ぎて持てねぇよ。つか貴重過ぎて金持ち位しか持ってねーし」
『空間魔法……?良くわかんないけど、そうじゃなくて、登山リュックとかのが楽くないのか?』
「登山……??修行僧用の鞄か??」
何やら鞄の知識がお互いに違う所為で上手く伝わっていません。
そこで三巳は尻尾収納から山観光の時に使ったリュックを出してみました。
それに喰いついた目は其々違う所を見ています。
「尻尾に空間収納魔法!?さ、流石神族ね……」
「ああっ、神の御業に祈りを捧げられないなんてっ」
「何だそれ。背負い籠みたいだな」
「けど収納スペースが各所にあって機能的だ」
やいのやいのと三巳とリュックを囲んでじっくり見始めます。
『これは日帰り用だけど、お泊り用のもミランダの雑貨屋さんにいっぱいあるんだよ』
「これで日帰り用!?いや、しかしこの余計な羽の不必要性を考えればファッション的か。という事はお泊り用には羽は無いのか?」
インテの分析に三巳はちょっと(これだから男の子は)的な目を向けて頷きます。
『んー。じゃあ今日一番美味しくお魚料理出来た人にプレゼントするんだよ』
「「「なんだって!?」」」
三巳の提案に一斉に目の色が変わりました。そして其々をライバル視して釣り竿を握りしめます。
「誰が勝っても恨みっこ無しだ」
「分かってるわ」
「神の施しを一般人に取られるなど、神の僕の名折れです。本気で行かせて貰います」
という訳で一斉に川に釣り竿を投げ入れました。
そんな彼等を尻目にログはのっしのっしとその場を離れます。そして川上の少し段差が出来ている岩場に静かに腰を下ろしました。
三巳はレオの元に戻ると一緒に何処に竿を落とすか相談します。
「取り敢えずそこの木陰で着替えとけ。その間に準備してるからよ」
『うにゅ。お願いするんだよ』
レオの目はログの位置決めと竿捌きを観察していました。そして半端なやり方じゃ敵わないと悟ります。徐に指を鳴らすと何とレオの斜め前の空間が円を描くように歪みました。
レオはそこに手を入れて戻します。するとその手には釣り竿とルアーが握られていました。
そうです。レオも空間収納を会得していたのです。そして海側圏出身者として本格的な釣り道具を一式持っていたのです。
「あー!凄い!かっちょいい!」
着替えを終えて戻った三巳の目は、準備を素早く終えたレオに釘付けです。ちょっぴしハートマークが飛んで見えるのはご愛嬌です。
「ほらよ。釣り場に行ったら静かにな」
「うにゅ。釣りの心得はログに教わっているんだよ」
レオに渡された道具を受け取り、尻尾でお口を塞いでみせます。
けれども渡された道具を見て直ぐに顔を輝かせました。
「んにゅああああ!!これっ!これっ!三巳の!?三巳の!?」
レオに渡されたのは三巳専用にカスタマイズしたレオとお揃いの釣り道具一式だったのです。
いきなりのプレゼントに三巳のテンションはマックスを超えました。
「落ち着け」
尻尾のブンブカが過去最速をマークした所で、レオに額を押されて止められます。
「うにゅ。ごめんなんだよ」
神妙に謝る三巳ですが、興奮が勝ち過ぎてニヨニヨ顔が止まりません。更には尻尾の振りを無理矢理抑えた事で体全体がバイブレーションの様に震えてしまうのでした。
「俺は魔法剣士ユーシャ。って言っても魔法は補助レベルだけどな。前衛をしてる」
「私は魔導士のマホ。後衛よ」
「ボクはインテ。小人族だから小さく見えても成人してるから。大学の研究の為に同行してるけど弓が使えるからね、一応中衛を担当してる」
「はいはーい!オレはラント、武闘家だぜ!魔法はからっきしだけど近接戦闘なら任せとけ!」
「あ、わたくしはヒーラです。各地の神域で祈りを捧げる為に同行しています。戦うのは苦手なので回復や料理で皆様をサポートしております」
「最後はあっしかぁ。あっしはトーコだよん。ぶいぶい~♪罠解除ならお任せあれ~」
ここに来て初めて冒険者らしいパーティー構成です。
三巳は『おー』と感嘆の声を上げて、後ろ脚だけで器用に立つと、前脚の肉球をポシポシ叩き合わせます。そして三巳に対して祈りを捧げたそうな目で見るヒーラから視線を逸らします。
三巳達も軽く自己紹介と、念入りにお正月以外のお祈り禁止令を言い渡し、場を改めました。
『んー。そいじゃあ、道の安全が確認出来るまでは此処で三巳達と釣りするんで良い?』
「おう。何か悪いな、急に来て」
『非常事態なら仕方ないんだよ。危険回避大事絶対。安全第一で旅してな』
申し訳なさそうなユーシャに、三巳はニッコリして気にするなの気持ちを込めて尻尾を一振りします。
「釣り道具はあるのか」
ログが尋ねれば、ユーシャ達は荷物袋から携帯式の釣り道具を出して見せました。
「旅じゃ食糧確保の必需品だぜ」
ドヤ顔で言うラントです。
けれども三巳の目は荷物袋の方に釘付けです。
『それで荷物運んでるのか?大変そうなんだよ』
どうやら道着入れみたいな大きな袋が、長時間持ち歩くのに不便そうに見えた様です。
ラントはそれにニカッとした苦笑で返して片手を振ります。
「おー、オレ達じゃ空間収納が施された鞄は高級過ぎて持てねぇよ。つか貴重過ぎて金持ち位しか持ってねーし」
『空間魔法……?良くわかんないけど、そうじゃなくて、登山リュックとかのが楽くないのか?』
「登山……??修行僧用の鞄か??」
何やら鞄の知識がお互いに違う所為で上手く伝わっていません。
そこで三巳は尻尾収納から山観光の時に使ったリュックを出してみました。
それに喰いついた目は其々違う所を見ています。
「尻尾に空間収納魔法!?さ、流石神族ね……」
「ああっ、神の御業に祈りを捧げられないなんてっ」
「何だそれ。背負い籠みたいだな」
「けど収納スペースが各所にあって機能的だ」
やいのやいのと三巳とリュックを囲んでじっくり見始めます。
『これは日帰り用だけど、お泊り用のもミランダの雑貨屋さんにいっぱいあるんだよ』
「これで日帰り用!?いや、しかしこの余計な羽の不必要性を考えればファッション的か。という事はお泊り用には羽は無いのか?」
インテの分析に三巳はちょっと(これだから男の子は)的な目を向けて頷きます。
『んー。じゃあ今日一番美味しくお魚料理出来た人にプレゼントするんだよ』
「「「なんだって!?」」」
三巳の提案に一斉に目の色が変わりました。そして其々をライバル視して釣り竿を握りしめます。
「誰が勝っても恨みっこ無しだ」
「分かってるわ」
「神の施しを一般人に取られるなど、神の僕の名折れです。本気で行かせて貰います」
という訳で一斉に川に釣り竿を投げ入れました。
そんな彼等を尻目にログはのっしのっしとその場を離れます。そして川上の少し段差が出来ている岩場に静かに腰を下ろしました。
三巳はレオの元に戻ると一緒に何処に竿を落とすか相談します。
「取り敢えずそこの木陰で着替えとけ。その間に準備してるからよ」
『うにゅ。お願いするんだよ』
レオの目はログの位置決めと竿捌きを観察していました。そして半端なやり方じゃ敵わないと悟ります。徐に指を鳴らすと何とレオの斜め前の空間が円を描くように歪みました。
レオはそこに手を入れて戻します。するとその手には釣り竿とルアーが握られていました。
そうです。レオも空間収納を会得していたのです。そして海側圏出身者として本格的な釣り道具を一式持っていたのです。
「あー!凄い!かっちょいい!」
着替えを終えて戻った三巳の目は、準備を素早く終えたレオに釘付けです。ちょっぴしハートマークが飛んで見えるのはご愛嬌です。
「ほらよ。釣り場に行ったら静かにな」
「うにゅ。釣りの心得はログに教わっているんだよ」
レオに渡された道具を受け取り、尻尾でお口を塞いでみせます。
けれども渡された道具を見て直ぐに顔を輝かせました。
「んにゅああああ!!これっ!これっ!三巳の!?三巳の!?」
レオに渡されたのは三巳専用にカスタマイズしたレオとお揃いの釣り道具一式だったのです。
いきなりのプレゼントに三巳のテンションはマックスを超えました。
「落ち着け」
尻尾のブンブカが過去最速をマークした所で、レオに額を押されて止められます。
「うにゅ。ごめんなんだよ」
神妙に謝る三巳ですが、興奮が勝ち過ぎてニヨニヨ顔が止まりません。更には尻尾の振りを無理矢理抑えた事で体全体がバイブレーションの様に震えてしまうのでした。
10
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる