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本編
レオと遊ぼう♪
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チュンチュン。ピーピー。コケコッコ。
鳥の奏でる歌声で三巳の朝は始まります。
「んにゅ~……あと、5……年……」
いえ、今日は始まりませんでした。
夢の世界から戻れない三巳は、両手で大好きな温もりを抱き締めているのです。つまり気持ち良過ぎて起きれないのです。
「5年は長えな」
三巳の寝言に、温もり湯たんぽになっていたレオが困った風にハッキリ言いました。
ガッシリホールドされて動けないレオは、勿論三巳のベッドで寝ている訳ではありません。三巳が寝ぼけてレオの布団に潜り込んだのです。
「んは!またやっちゃったんだよ!」
大好きなレオの声を間近で聞いて、さしもの三巳も目が覚めました。
「おはよーレオ」
「毎日言ってんな、それ」
どうやら常習犯のようです。
レオも寝ぼけていたのを知っているので敢えて咎めたりしていません。それが三巳を増長させているのも理解しています。
「んにゅぅー……。レオの匂いと温もりは魔性なんだよ……」
けれども懐かれると無下に出来ません。
レオは未だにしがみ付いて温もりを享受する三巳の背中をポンポンと叩きます。
「ほら、起きろ」
「んにゅ……」
レオはガッチリホールドされているので、三巳が起きなければ動けません。
三巳もわかってはいても毎日名残惜しい思いです。断腸の思いでノソノソゆっくりレオから離れてベッドから降りました。
温もりから離れ、尻尾も耳もわかり易くションモリしています。
レオは上半身を起こして足だけ降ろすと、片手を三巳の顔に伸ばします。
「んな顔すんなって」
そう言って伸ばした手で軽くオデコを弾くと、今度こそレオもベッドから離れました。
「ほら、朝は顔を洗うんだろ」
「んにゅ!」
三巳のオデコを弾いた手がそのまま後頭部を撫でて、前へと押し出します。
三巳もそれに逆らわずに素直に進みました。
洗顔もご飯とお味噌汁とお漬け物な朝食も済んだ三巳は腕を組んで考えています。
「今日は何しよー」
真剣にレオと何して遊ぶか考えていたのです。
「春は魚も美味いよな」
そこにレオがポツリと、けれども三巳にちゃんと聞こえるように呟きます。
レオの言葉は聞き逃さない三巳は耳をピンと上げました。
「んむ。今日は魚釣り日和」
という訳で日程が決まりです。
「釣り仲間も誘う?三巳はレオと2人きりも嬉しいんだよ」
「その釣り仲間ってのは釣果は良いんだよな」
「うにゅ。名人がいる」
「へえ、そりゃ楽しみだ。誘ってこうぜ」
「んにゅ。皆と一緒も楽しいんだよ」
お互いに恋心は多分恐らく無いだろう2人です。誰かと一緒するのに断る理由はありません。
とは言え山の民だってお仕事してるんです。この日は残念ながら一緒出来る人がいませんでした。
「うーにゅ。残念なんだよ。ロンは行く気だったのにお仕事でしょって怒られちゃって、申し訳ない」
いえ、正確には行けるけれど周りが行かせてくれなかったのです。ロンなどは奥さんが良い笑顔で凄んで若干怖がっていました。
「今まで1人も捕まらなかったなんて無かったのになー。なんでだろ」
三巳は不思議そうに首を傾げます。
レオは何やら目配せされたので何となく事情を理解していました。
(何処でもああいう世話焼きっているもんだな。俺達には関係無いってのによ)
けれどもそれを三巳に伝えたりしません。ただ何となく遠くを見てしまいます。
「そうだな」
そしてそう言って三巳の頭を撫でます。
「にゅ。まー、そーいう日もある。ログはもう出掛けてたし、きっとどっかの釣りスポットにいる筈なんだよ」
「例の釣り名人か?」
「うにゅ。にゅっふっふー♪今の三巳なら千里眼で何処にいるか探せるんだよ!」
そう言って早速覚えたての千里眼を発動しました。
するとログは直ぐに見つかります。
「今日は篩の森の川の下流にいる。結界に近いけど、大丈夫かな……」
そしてそこは余所者が迷い込む危険地帯でした。
三巳は注意深くログの周りを確認します。すると茂みの奥に動く気配を見つけました。
「にゅあ!?知らない人!怖いの持ってる!危険ー!」
それが何かを知り、三巳は毛という毛を逆立てて飛び上がります。見えた景色は釣りをするログに近寄る余所者冒険者達だったのです。冒険者達の手には武器が握られています。幸いログにはまだ気付いていませんが時間の問題でしょう。
直ぐに小型本性に戻った三巳は神託を使います。
『ログ!怖い人達近寄ってる!気を付けて!』
「わかってる。こっちには気付いて無い様だがな。殺気立ちやがって。お陰で魚が怯えて釣れやしねえ」
三巳の新しい力を聞いていたログは驚かず、しかも慌てず返します。
これにビックリするのは三巳です。
『気付いてたのか』
「当たり前よ。釣りってのは如何に気配を消せるかってんだ」
つまり釣れない現状に不満が募っている様子です。
『怖く無いのか?』
「釣り人ってのぁ恐れてちゃ始まんねえのよ」
千里眼で見えてるログが竿を持ったまま余所者冒険者達の気配に体を向けました。
それと同時に余所者冒険者達もログに気付きます。手に持つ武器を握り締めたのがわかりました。
『ロ、ログ!!』
一触即発の事態に青褪めた三巳は、レオに一度視線を送ると一直線にログの元へと駆けて行くのでした。
鳥の奏でる歌声で三巳の朝は始まります。
「んにゅ~……あと、5……年……」
いえ、今日は始まりませんでした。
夢の世界から戻れない三巳は、両手で大好きな温もりを抱き締めているのです。つまり気持ち良過ぎて起きれないのです。
「5年は長えな」
三巳の寝言に、温もり湯たんぽになっていたレオが困った風にハッキリ言いました。
ガッシリホールドされて動けないレオは、勿論三巳のベッドで寝ている訳ではありません。三巳が寝ぼけてレオの布団に潜り込んだのです。
「んは!またやっちゃったんだよ!」
大好きなレオの声を間近で聞いて、さしもの三巳も目が覚めました。
「おはよーレオ」
「毎日言ってんな、それ」
どうやら常習犯のようです。
レオも寝ぼけていたのを知っているので敢えて咎めたりしていません。それが三巳を増長させているのも理解しています。
「んにゅぅー……。レオの匂いと温もりは魔性なんだよ……」
けれども懐かれると無下に出来ません。
レオは未だにしがみ付いて温もりを享受する三巳の背中をポンポンと叩きます。
「ほら、起きろ」
「んにゅ……」
レオはガッチリホールドされているので、三巳が起きなければ動けません。
三巳もわかってはいても毎日名残惜しい思いです。断腸の思いでノソノソゆっくりレオから離れてベッドから降りました。
温もりから離れ、尻尾も耳もわかり易くションモリしています。
レオは上半身を起こして足だけ降ろすと、片手を三巳の顔に伸ばします。
「んな顔すんなって」
そう言って伸ばした手で軽くオデコを弾くと、今度こそレオもベッドから離れました。
「ほら、朝は顔を洗うんだろ」
「んにゅ!」
三巳のオデコを弾いた手がそのまま後頭部を撫でて、前へと押し出します。
三巳もそれに逆らわずに素直に進みました。
洗顔もご飯とお味噌汁とお漬け物な朝食も済んだ三巳は腕を組んで考えています。
「今日は何しよー」
真剣にレオと何して遊ぶか考えていたのです。
「春は魚も美味いよな」
そこにレオがポツリと、けれども三巳にちゃんと聞こえるように呟きます。
レオの言葉は聞き逃さない三巳は耳をピンと上げました。
「んむ。今日は魚釣り日和」
という訳で日程が決まりです。
「釣り仲間も誘う?三巳はレオと2人きりも嬉しいんだよ」
「その釣り仲間ってのは釣果は良いんだよな」
「うにゅ。名人がいる」
「へえ、そりゃ楽しみだ。誘ってこうぜ」
「んにゅ。皆と一緒も楽しいんだよ」
お互いに恋心は多分恐らく無いだろう2人です。誰かと一緒するのに断る理由はありません。
とは言え山の民だってお仕事してるんです。この日は残念ながら一緒出来る人がいませんでした。
「うーにゅ。残念なんだよ。ロンは行く気だったのにお仕事でしょって怒られちゃって、申し訳ない」
いえ、正確には行けるけれど周りが行かせてくれなかったのです。ロンなどは奥さんが良い笑顔で凄んで若干怖がっていました。
「今まで1人も捕まらなかったなんて無かったのになー。なんでだろ」
三巳は不思議そうに首を傾げます。
レオは何やら目配せされたので何となく事情を理解していました。
(何処でもああいう世話焼きっているもんだな。俺達には関係無いってのによ)
けれどもそれを三巳に伝えたりしません。ただ何となく遠くを見てしまいます。
「そうだな」
そしてそう言って三巳の頭を撫でます。
「にゅ。まー、そーいう日もある。ログはもう出掛けてたし、きっとどっかの釣りスポットにいる筈なんだよ」
「例の釣り名人か?」
「うにゅ。にゅっふっふー♪今の三巳なら千里眼で何処にいるか探せるんだよ!」
そう言って早速覚えたての千里眼を発動しました。
するとログは直ぐに見つかります。
「今日は篩の森の川の下流にいる。結界に近いけど、大丈夫かな……」
そしてそこは余所者が迷い込む危険地帯でした。
三巳は注意深くログの周りを確認します。すると茂みの奥に動く気配を見つけました。
「にゅあ!?知らない人!怖いの持ってる!危険ー!」
それが何かを知り、三巳は毛という毛を逆立てて飛び上がります。見えた景色は釣りをするログに近寄る余所者冒険者達だったのです。冒険者達の手には武器が握られています。幸いログにはまだ気付いていませんが時間の問題でしょう。
直ぐに小型本性に戻った三巳は神託を使います。
『ログ!怖い人達近寄ってる!気を付けて!』
「わかってる。こっちには気付いて無い様だがな。殺気立ちやがって。お陰で魚が怯えて釣れやしねえ」
三巳の新しい力を聞いていたログは驚かず、しかも慌てず返します。
これにビックリするのは三巳です。
『気付いてたのか』
「当たり前よ。釣りってのは如何に気配を消せるかってんだ」
つまり釣れない現状に不満が募っている様子です。
『怖く無いのか?』
「釣り人ってのぁ恐れてちゃ始まんねえのよ」
千里眼で見えてるログが竿を持ったまま余所者冒険者達の気配に体を向けました。
それと同時に余所者冒険者達もログに気付きます。手に持つ武器を握り締めたのがわかりました。
『ロ、ログ!!』
一触即発の事態に青褪めた三巳は、レオに一度視線を送ると一直線にログの元へと駆けて行くのでした。
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