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本編
サラマンダー+リヴァイアサン=?
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山には沢山の種族が住んでいます。
精霊や妖精等という括りの他、人型や獣型など種族を超えた括りもあります。
さて、山には竜種と龍種がいます。
言わずと知れた竜種のサラマンダーのサラちゃん。そして龍種のリヴァイアサンのチロチロです。
事の発端は山の民達の、
「そう言えば来年は辰年だわね」
と言う言葉です。
普段は周囲の言葉など聞いてもいませんが、何故かその言葉だけやたらと耳に響いて聞こえました。
『辰……我の年か』
サラちゃんが満更でも無さそうに天を見上げて呟きます。
『辰。龍の時代か。出番だ』
チロチロも川の底でトグロを巻いてクフリと照れています。
実際には神族では無い彼等に年神の様な仕事はありません。ありませんが妙にソワソワするのです。
『どれ、翌年に備えてウォーミングアップするか』
普段は火口付近でまったり過ごすサラちゃんが立ち上がり、バサリとその大きな羽を広げました。
『……毛玉神の山を守らないでもない』
普段は川から出ないチロチロがノソリとその長い巨体を陸に上げました。
『『うん?』』
そこで両者は気付きます。
同時に動き出した者が居る事に。
サラちゃんは精霊らしい尊大さでバサリと羽ばたき、太陽を背に地上を見下ろします。見るべきは気になる気配のする川辺です。
チロチロは尾っぽの方で巨体を支えて、長い体を高く持ち上げ天を見上げます。太陽に映る影にそれは居ると確信しています。
『ほう。龍種か』
『竜種か』
互いに互いを呼んだのは同時。交わされた視線は鋭い雷光を伴い、交わる中点で火花が散ります。
まさに一触即発の空気です。
此処が三巳の山で無ければの話ですが。
『我の他にも居るのは知っていたが!いやはや、会うのは初めてだな!』
『初めてだ』
『我は火口。汝は川底とな。確かに会わぬ訳だ。しかしこうして相まみえるのも縁。来年は我等の年だし話さぬか?』
『良いだろう』
こうして竜と龍の邂逅はとっても穏やかになされました。
チロチロはサラちゃんが降り立ちやすい川原へと移動し、サラちゃんはチロチロの尾っぽ誘導に従って静かに降ります。
ズシリと地に脚を付けると両者の体格差が良くわかります。
トグロを巻いたチロチロを見下ろすサラちゃんは、竜らしくズッシリとしています。しかしチロチロも全長でいうならサラちゃんを悠に凌ぎます。巻き付かれたらサラちゃんも堪ったものではありません。
『来年はこの山を守護しようと思うのだ』
『奇遇だ』
『何とお主もそうであったか!それは良い!ここはコンビを組むのも良いな』
『水を守護出来る』
『我は火だな。竜と龍。火と水。対極のチームで面白い。三巳様風で言えばチームドラドラだな』
サラちゃんはお腹を叩いて愉快そうにカラカラと笑います。
『っふ……。想像出来るな』
チロチロも楽しそうに笑う三巳を想像して口端をあげます。
『しかしそれならば他に居るともっと面白いであろう』
燻る炎を抑えるかの様にお腹を摩るサラちゃんは、知り合いの竜達を思い浮かべます。
チロチロもそれは良い考えだとばかりに頷き、知り合いの龍達を思い浮かべました。
『神龍は無理がある』
『当たり前だ』
いきなり神に連なる名が出てサラちゃんも真顔で肯定です。
『違う属性が良いのではないか?』
『地、もしくは土。風。雷。光に闇か』
『おお!良いではないか!シルフィードなどは良く通るから声を掛けてみよう』
『知り合いは土竜だけだ。しかし普段は山の外に住む』
『竜種の方のだな。人族は動物の方も土竜と言うからややこしいな』
同じ字に同じ読みをする珍しいパターンです。
チロチロは遠い昔に畑に出た巨大土竜……紛らわしいので動物の方はモグラとします。そのモグラを土竜と勘違いした農民によって広まったと、嘆かわし気に話す知り合いの土竜を思います。そして眉間に皺を寄せて神妙に頷きました。
『まあ良い。我等は互いを判るからな。これで風と土か。あと雷と光と闇だが』
『人格者でないと山には入れん』
『だなぁ。竜種は血の気が多いのが多いのが困ったものだ』
『龍種もだ』
お互いに「ううむ」と腕を組んで、いえ、チロチロは腕が無いのでトグロを引き締めて唸りを上げます。
『まあ現状我等だけでも山だけなら問題なかろう。仲間は順次募集の方向で頑張ろうではないか!』
『良いだろう』
こうしてサラちゃんとチロチロによる、山の守護隊コンビドラドラの結成はなされました。
今後、もしも各属性が揃った場合、赤、青、緑、黄色、白、黒という色合いとうカラフルな色合いになるでしょう。そしてそれを知った三巳が「レンジャーじゃん!」と子供向け番組を思い出して笑いそうです。
果たして山の守護戦隊ドラドラは、誕生するのでしょうか。それはまだ誰も知らない未来のお話です。
精霊や妖精等という括りの他、人型や獣型など種族を超えた括りもあります。
さて、山には竜種と龍種がいます。
言わずと知れた竜種のサラマンダーのサラちゃん。そして龍種のリヴァイアサンのチロチロです。
事の発端は山の民達の、
「そう言えば来年は辰年だわね」
と言う言葉です。
普段は周囲の言葉など聞いてもいませんが、何故かその言葉だけやたらと耳に響いて聞こえました。
『辰……我の年か』
サラちゃんが満更でも無さそうに天を見上げて呟きます。
『辰。龍の時代か。出番だ』
チロチロも川の底でトグロを巻いてクフリと照れています。
実際には神族では無い彼等に年神の様な仕事はありません。ありませんが妙にソワソワするのです。
『どれ、翌年に備えてウォーミングアップするか』
普段は火口付近でまったり過ごすサラちゃんが立ち上がり、バサリとその大きな羽を広げました。
『……毛玉神の山を守らないでもない』
普段は川から出ないチロチロがノソリとその長い巨体を陸に上げました。
『『うん?』』
そこで両者は気付きます。
同時に動き出した者が居る事に。
サラちゃんは精霊らしい尊大さでバサリと羽ばたき、太陽を背に地上を見下ろします。見るべきは気になる気配のする川辺です。
チロチロは尾っぽの方で巨体を支えて、長い体を高く持ち上げ天を見上げます。太陽に映る影にそれは居ると確信しています。
『ほう。龍種か』
『竜種か』
互いに互いを呼んだのは同時。交わされた視線は鋭い雷光を伴い、交わる中点で火花が散ります。
まさに一触即発の空気です。
此処が三巳の山で無ければの話ですが。
『我の他にも居るのは知っていたが!いやはや、会うのは初めてだな!』
『初めてだ』
『我は火口。汝は川底とな。確かに会わぬ訳だ。しかしこうして相まみえるのも縁。来年は我等の年だし話さぬか?』
『良いだろう』
こうして竜と龍の邂逅はとっても穏やかになされました。
チロチロはサラちゃんが降り立ちやすい川原へと移動し、サラちゃんはチロチロの尾っぽ誘導に従って静かに降ります。
ズシリと地に脚を付けると両者の体格差が良くわかります。
トグロを巻いたチロチロを見下ろすサラちゃんは、竜らしくズッシリとしています。しかしチロチロも全長でいうならサラちゃんを悠に凌ぎます。巻き付かれたらサラちゃんも堪ったものではありません。
『来年はこの山を守護しようと思うのだ』
『奇遇だ』
『何とお主もそうであったか!それは良い!ここはコンビを組むのも良いな』
『水を守護出来る』
『我は火だな。竜と龍。火と水。対極のチームで面白い。三巳様風で言えばチームドラドラだな』
サラちゃんはお腹を叩いて愉快そうにカラカラと笑います。
『っふ……。想像出来るな』
チロチロも楽しそうに笑う三巳を想像して口端をあげます。
『しかしそれならば他に居るともっと面白いであろう』
燻る炎を抑えるかの様にお腹を摩るサラちゃんは、知り合いの竜達を思い浮かべます。
チロチロもそれは良い考えだとばかりに頷き、知り合いの龍達を思い浮かべました。
『神龍は無理がある』
『当たり前だ』
いきなり神に連なる名が出てサラちゃんも真顔で肯定です。
『違う属性が良いのではないか?』
『地、もしくは土。風。雷。光に闇か』
『おお!良いではないか!シルフィードなどは良く通るから声を掛けてみよう』
『知り合いは土竜だけだ。しかし普段は山の外に住む』
『竜種の方のだな。人族は動物の方も土竜と言うからややこしいな』
同じ字に同じ読みをする珍しいパターンです。
チロチロは遠い昔に畑に出た巨大土竜……紛らわしいので動物の方はモグラとします。そのモグラを土竜と勘違いした農民によって広まったと、嘆かわし気に話す知り合いの土竜を思います。そして眉間に皺を寄せて神妙に頷きました。
『まあ良い。我等は互いを判るからな。これで風と土か。あと雷と光と闇だが』
『人格者でないと山には入れん』
『だなぁ。竜種は血の気が多いのが多いのが困ったものだ』
『龍種もだ』
お互いに「ううむ」と腕を組んで、いえ、チロチロは腕が無いのでトグロを引き締めて唸りを上げます。
『まあ現状我等だけでも山だけなら問題なかろう。仲間は順次募集の方向で頑張ろうではないか!』
『良いだろう』
こうしてサラちゃんとチロチロによる、山の守護隊コンビドラドラの結成はなされました。
今後、もしも各属性が揃った場合、赤、青、緑、黄色、白、黒という色合いとうカラフルな色合いになるでしょう。そしてそれを知った三巳が「レンジャーじゃん!」と子供向け番組を思い出して笑いそうです。
果たして山の守護戦隊ドラドラは、誕生するのでしょうか。それはまだ誰も知らない未来のお話です。
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