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本編
女子会は会話が弾む
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ヴィーナで成人した若い女の子達が集まってお茶をしています。女子会です。
「リリ!こっちこっち~」
「ごめん、遅れた~」
「お疲れ~。珍しいね、診療所に怪我人?」
「うん。リファラやウィンブルドンから来た子達は怪我しやすいから」
「あー。そうだった。これからは診療所勤めでも忙しいのか」
「大分山の暮らしに慣れて来てるから、その内また暇になるわ」
ミナミの言葉にリリが「ふふふ」と笑いながら席に着きます。そして貰ったお茶を一口飲みました。
ヴィーナにはカフェが無いので青空お茶会です。広場に岩を砕いて作ったテーブルと椅子があるので、そこに各自持ち寄ったお茶やお菓子を並べています。
「あら、これ初めて飲むわ」
「お茶だけだと味気ないでしょ?だからドライフルーツと一緒に入れてみたの」
「美味しいわ。村でカフェが開けそうな位よ」
「かふぇ?って外の街には外で飲んだり食べたりする所があるんだっけ」
「そうよ。ウィンブルドンなら数日で行けるから、今度一緒に行ってみましょうよ」
「う~ん。でもまだ怖いわ。危ない人達が沢山いるんでしょう?」
「逸れなければ大丈夫。ロダにも一緒に行って貰うわ」
「あ!それ良いね!私も彼氏と行きたいわ」
「あら、それじゃ独り身の私はお留守番かしら」
「私もまだ全然ロイドに振り向いて貰えてないのよね」
「ミナミも純愛よね。でもロイドもお相手いないし、まだまだチャンスは有るわよ。今回誘ってみても良いんじゃないかしら」
リリが言うとミナミは逡巡しながらも頬を赤らめて頷きました。
「うん。誘ってみる」
「私もそろそろ結婚相手考えなきゃかなー」
ミナミの決意に、独り身の子が溜め息を吐いて意味もなくお茶をクルクル回します。
リリは眉尻を下げて微笑むと、その子の手にソッと触れました。
「ミルルがどうしても結婚したいならきっと良い人と出会えるわ。
でももし別に結婚したい訳じゃないなら気にしなくて良いんじゃないかしら。だってそんな事を言ったらハンナだって他のお姉様方だって独り身がいるのよ」
「リリ~っ」
独り身の子、ミルルは涙を潤ませます。そして片手にコップを持ったままリリに抱き付きました
リリはクスクス笑ってミルルの背をヨシヨシと撫でます。
「ハンナといえばオーウェンとは如何なの?全然進展無し?」
ミナミもミルルの様子にクスクス笑って話を飛ばします。
リリはミルルを撫でる手をそのままに肩を竦めました。
「全然よ。ハンナは絶対オーウェンギルド長の事好きなのに、憧れてるだけだって言うのよ」
「オーウェンも色恋沙汰には興味無いって感じ出してるのよね」
比較的ギルドとの絡みが多いのがミナミです。ロダに次ぐ実力者なので山の見回りをします。そうするとオーウェンギルド長との接点は多くなったのです。
「ドワーフの血が入ってるんだけっけ」
「先祖返りって言ってたから随分古い血だと思うけど」
「ドワーフって恋愛に疎いのかな」
「此処には居ないもの、謎の種族だわ」
ミナミ達は次々にドワーフのイメージを想像するけれど上手くいきません。
この中で会った事が有りそうなのはリリだけです。ミナミ達が期待する目で顔を向けるのでリリは顎に指を当てて思い出します。
「そうね。恋愛感が無い訳じゃ無い様よ。でも道具作りの方が好きみたい」
「「「あちゃー」」」
希望のない現実にミナミ達は頭を抱えます。
「ハンナも苦労するわね」
「本当。学校で頑張ってくれてるから幸せになって欲しいのに」
「いっそ嗾けちゃう?」
ミルルがボソリと言うと、ミナミ達はニヤリと悪戯っ子の笑みを浮かべました。
そしてクスクスうふふと怪し……いえ愉しげな笑いをたてます。
「腕が鳴るわあ」
「相手にとって不足は無いわね」
「今までで一番の強敵よ」
その様子は歴戦の戦士です。
リリはその様子を一歩引いた所で慈愛に満ちた笑みで見ています。参加する気は無いのです。だって何だか怖いもの。
でもやっぱり愛すべきハンナには幸せになって欲しいです。だからきっとお節介は焼いちゃうかもしれません。
「あ、でもその前にリリの結婚のが早いわよね」
ミナミがふと気付いてリリを見ます。
するとリリは幸せそうにはにかむとコクリと頷きました。
「三巳が帰って来たら式を上げるの」
「「「ふわぁ~良いわね~」」」
ミナミ達も幸せが伝播して、異口同音で夢見る乙女の顔をします。
「リファラ流を取り入れるんでしょう?」
ミナミの問いにリリは頷きます。
「私はヴィーナ流でも良かったんだけど、ロダが折角だからって」
「ロダやるじゃん。見直したわ」
ミルルが惜しい男を逃したと、パチリと指を鳴らします。
「結婚したら住む場所はどうするの?」
「私は診療所を継ぐからロダが来てくれるの」
「ホント!?良かった~。リリが来るまでロキ医師の後継が中々いなくて、不安だったのよ」
「そういえばロキ医師の家族っていないわね。お弟子さんもいないし」
「う~ん。結婚自体はしてた筈。お母さんに聞いた話だから詳しくは知らないけど」
「私も聞いたわ。でも子供はいなくて、診療所って暇が多いのに覚える事は多いから成りたい人も少ないって」
「そうなんだ?薬学は面白いんだけどな」
「そう思うのってリリ位よ」
不思議そうに首を傾げるリリですが、ミナミ達には呆れた笑いをされてしまいます。それ程薬師の道は厳しいのです。
「あら、お茶無くなったわね。次何入れようかしら」
「この前来た商人から仕入れたのは?」
「此処には無いお花のお茶ね!そうするわ」
乙女達の女子会は新たなお茶を淹れてなおも続いていきます。気付いたら夕方なんて何時もの事です。
この日も良く飛んで戻っては織り交ぜる様に話は弾んだのでした。
「リリ!こっちこっち~」
「ごめん、遅れた~」
「お疲れ~。珍しいね、診療所に怪我人?」
「うん。リファラやウィンブルドンから来た子達は怪我しやすいから」
「あー。そうだった。これからは診療所勤めでも忙しいのか」
「大分山の暮らしに慣れて来てるから、その内また暇になるわ」
ミナミの言葉にリリが「ふふふ」と笑いながら席に着きます。そして貰ったお茶を一口飲みました。
ヴィーナにはカフェが無いので青空お茶会です。広場に岩を砕いて作ったテーブルと椅子があるので、そこに各自持ち寄ったお茶やお菓子を並べています。
「あら、これ初めて飲むわ」
「お茶だけだと味気ないでしょ?だからドライフルーツと一緒に入れてみたの」
「美味しいわ。村でカフェが開けそうな位よ」
「かふぇ?って外の街には外で飲んだり食べたりする所があるんだっけ」
「そうよ。ウィンブルドンなら数日で行けるから、今度一緒に行ってみましょうよ」
「う~ん。でもまだ怖いわ。危ない人達が沢山いるんでしょう?」
「逸れなければ大丈夫。ロダにも一緒に行って貰うわ」
「あ!それ良いね!私も彼氏と行きたいわ」
「あら、それじゃ独り身の私はお留守番かしら」
「私もまだ全然ロイドに振り向いて貰えてないのよね」
「ミナミも純愛よね。でもロイドもお相手いないし、まだまだチャンスは有るわよ。今回誘ってみても良いんじゃないかしら」
リリが言うとミナミは逡巡しながらも頬を赤らめて頷きました。
「うん。誘ってみる」
「私もそろそろ結婚相手考えなきゃかなー」
ミナミの決意に、独り身の子が溜め息を吐いて意味もなくお茶をクルクル回します。
リリは眉尻を下げて微笑むと、その子の手にソッと触れました。
「ミルルがどうしても結婚したいならきっと良い人と出会えるわ。
でももし別に結婚したい訳じゃないなら気にしなくて良いんじゃないかしら。だってそんな事を言ったらハンナだって他のお姉様方だって独り身がいるのよ」
「リリ~っ」
独り身の子、ミルルは涙を潤ませます。そして片手にコップを持ったままリリに抱き付きました
リリはクスクス笑ってミルルの背をヨシヨシと撫でます。
「ハンナといえばオーウェンとは如何なの?全然進展無し?」
ミナミもミルルの様子にクスクス笑って話を飛ばします。
リリはミルルを撫でる手をそのままに肩を竦めました。
「全然よ。ハンナは絶対オーウェンギルド長の事好きなのに、憧れてるだけだって言うのよ」
「オーウェンも色恋沙汰には興味無いって感じ出してるのよね」
比較的ギルドとの絡みが多いのがミナミです。ロダに次ぐ実力者なので山の見回りをします。そうするとオーウェンギルド長との接点は多くなったのです。
「ドワーフの血が入ってるんだけっけ」
「先祖返りって言ってたから随分古い血だと思うけど」
「ドワーフって恋愛に疎いのかな」
「此処には居ないもの、謎の種族だわ」
ミナミ達は次々にドワーフのイメージを想像するけれど上手くいきません。
この中で会った事が有りそうなのはリリだけです。ミナミ達が期待する目で顔を向けるのでリリは顎に指を当てて思い出します。
「そうね。恋愛感が無い訳じゃ無い様よ。でも道具作りの方が好きみたい」
「「「あちゃー」」」
希望のない現実にミナミ達は頭を抱えます。
「ハンナも苦労するわね」
「本当。学校で頑張ってくれてるから幸せになって欲しいのに」
「いっそ嗾けちゃう?」
ミルルがボソリと言うと、ミナミ達はニヤリと悪戯っ子の笑みを浮かべました。
そしてクスクスうふふと怪し……いえ愉しげな笑いをたてます。
「腕が鳴るわあ」
「相手にとって不足は無いわね」
「今までで一番の強敵よ」
その様子は歴戦の戦士です。
リリはその様子を一歩引いた所で慈愛に満ちた笑みで見ています。参加する気は無いのです。だって何だか怖いもの。
でもやっぱり愛すべきハンナには幸せになって欲しいです。だからきっとお節介は焼いちゃうかもしれません。
「あ、でもその前にリリの結婚のが早いわよね」
ミナミがふと気付いてリリを見ます。
するとリリは幸せそうにはにかむとコクリと頷きました。
「三巳が帰って来たら式を上げるの」
「「「ふわぁ~良いわね~」」」
ミナミ達も幸せが伝播して、異口同音で夢見る乙女の顔をします。
「リファラ流を取り入れるんでしょう?」
ミナミの問いにリリは頷きます。
「私はヴィーナ流でも良かったんだけど、ロダが折角だからって」
「ロダやるじゃん。見直したわ」
ミルルが惜しい男を逃したと、パチリと指を鳴らします。
「結婚したら住む場所はどうするの?」
「私は診療所を継ぐからロダが来てくれるの」
「ホント!?良かった~。リリが来るまでロキ医師の後継が中々いなくて、不安だったのよ」
「そういえばロキ医師の家族っていないわね。お弟子さんもいないし」
「う~ん。結婚自体はしてた筈。お母さんに聞いた話だから詳しくは知らないけど」
「私も聞いたわ。でも子供はいなくて、診療所って暇が多いのに覚える事は多いから成りたい人も少ないって」
「そうなんだ?薬学は面白いんだけどな」
「そう思うのってリリ位よ」
不思議そうに首を傾げるリリですが、ミナミ達には呆れた笑いをされてしまいます。それ程薬師の道は厳しいのです。
「あら、お茶無くなったわね。次何入れようかしら」
「この前来た商人から仕入れたのは?」
「此処には無いお花のお茶ね!そうするわ」
乙女達の女子会は新たなお茶を淹れてなおも続いていきます。気付いたら夕方なんて何時もの事です。
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