255 / 329
本編
2年目のバレンタイン
しおりを挟む
さてはて元リファラ組の子供達が村の寒さに馴染んできた頃、村ではソワソワする人達が見え始めました。
ちょっと家の中を覗いてみれば一生懸命に何かを作っている様子が伺えます。そして良く見ればその何かは薔薇だと直ぐにわかる事でしょう。
そうです。もう直ぐ2度目のバレンタインデーがやって来るのです。
「へー。ヴィーナは面白いな。てかイベント多過ぎじゃねえか?」
「そうかな。楽しいは無限に広がるもんじゃねえの?」
今日はロハスの家にディオとロノロが集まっています。女の子達はいません。
「ほら、ロハス。僕達の場合は三巳姉ちゃんが楽しいの伝道師だからだよ。一応獣神様なんだしさ、きっと僕達人族の知らない事をいっぱい知ってるんだ」
ロノロは器用に本物そっくりな薔薇の花弁を付けながらゆったりとした物言いで言います。
その言葉に一度ロノロに視線が行きますが、直ぐに視界に入ったロノロの薔薇に目を奪われます。
「やっぱロノロは器用だよな」
「え?へへ。そうかな?僕は彫刻師になりたいからそうだと嬉しいな」
ロハスに褒められてロノロは嬉しそうにはにかみます。
それにディオが目をパチクリしました。
「ロノロはもう将来の夢があるのか」
「うん。温泉施設の彫刻格好良いでしょ?あれ見てからずっと憧れなんだ」
「へー、良いなそういうの。ロハスは?」
「俺?俺はまだ無いな~。そう言うディオは無いのかよ」
「……俺は……前は騎士だったけど」
ロハスの質問返しにディオは悩みます。
(大切な人達は守りたい。でも、争いは、嫌だな)
「今は、俺も無い」
俯き自分の掌を見るディオに、ロハスとロノロは顔を見合わせました。
2人には事情はわかりません。けれどもディオにもまた、将来の夢が出来れば良いと本当に思います。
「そんじゃさ。俺と一緒に色々やってみようぜ」
ロハスは作り終わったちょっとヨレているけれど、一生懸命に作ったとわかる薔薇の造花をディオに向けて言います。
「それなら僕もやりたいよ。彫刻師になるにも経験は大切だと思うし」
ロノロは本物と見紛う程見事な薔薇の造花をディオに向けて言います。
2人に薔薇を差し出されたディオは思わず吹き出してしまいました。
「ぶっは!何だよそれ、キザだな!てか俺に薔薇差し出してどーすんだよ!」
ケラケラとお腹を抱えて笑うディオに、ロハスはニカリと、ロノロはニコリと笑います。
「良いじゃん別に。だってバレンタインは好きな人に薔薇やる日なんだぜ」
「そうだよ。ならディオにだってあげても当たり前だよ」
そこまで別々に言ったロハスとロノロですが、最後の言葉は被りました。
「「ディオは大好きな友達なんだから!」」
と。
その言葉にディオはジンとしたものが込み上げてきます。
故郷に置いて来た大切な思い。色々なものが混ざり絡まり、悪夢を見る日もある。将来の夢も曖昧になり、自分を見失いそうになる日々。
そんなものから逃げる様に来た三巳とリリのいる山で、しかしディオはここで見失い掛けた夢をもう一度取り戻せそうだと胸を温かくするのでした。
「おう!ありがとな!」
快活な笑顔を咲かせ、ディオは気恥ずかしげに鼻を掻きます。そして差し出された薔薇を2つとも手に取ります。
「うし。んじゃディオも作ろうぜ」
「え?俺も?」
「僕達もまだ作らないとだしね」
「いや、でも作った事ねーし」
「大丈夫だよ。一緒に作ろう」
「俺だって上手かねぇけどさ。こういうのって気持ちじゃん」
「うぐ。ま、まあ。俺も、ロハスとロノロは友達だからな」
という事でディオも薔薇の造花に挑戦です。
主にロノロに教えてもらい、四苦八苦しながらもゆっくりと丁寧に作っていきます。教え上手なロノロのお陰でロハス同様の不器用だけど気持ちの篭った薔薇が出来ました。そしてそれはロハスとロノロに受け取って貰えたのでした。
ディオは他に新しい家族とリリと三巳の分を作ります。そして一番出来の良い薔薇は何となくミナミにあげようと思いました。
チラリとロハスとロノロを見れば同じく家族の分と三巳の分があります。けれどもそれだけではなく、特別にラッピングされた薔薇が一輪づつありました。
「ロハスとロノロのそれは?」
「ん?あー、まあ。あれだ。これは特別な奴にあげるやつ」
歯に物が詰まった様な言いようです。でも照れてる様子からディオはピンときました。
「ミオラにか」
「う゛。改めて友達に言われると恥ずかしいもんがあるな」
「ミオラ本人には堂々としてるのにね」
頭を掻くロハスに、ロノロは微笑ましく笑って言います。
ディオもロハスがミオラを好きなのなんてお見通しです。実はもう恋人同士だと言われても疑いません。
「そういうロノロだってミナにやるんだろ」
「うん。受け取ってくれるといいな」
ロノロは照れながらラッピングされた薔薇を大事そうに持ちます。
ディオはロハスとロノロを交互に見て、そしてミナミにあげるつもりの薔薇を見ました。何となくそっと手に持ってジッと見つめています。
(いやいやいや。ミナミ姉は姉ちゃんだし。でもまだ正式に家族として決まった訳じゃないし。そしたらミナミ姉は姉ちゃんじゃなくて女の人で……。いやいやいや。ミナミ姉はロイド兄が好きって聞いたし)
訥々と考え耽っていたディオですが、最後に思った事でツキリと胸が痛くなってしまいます。何故かわからないディオは胸に手を当てて揉みました。
「どうかしたの?」
その様子にいち早く気付いたロノロが訪ねます。
「いや、何でもない」
けれども自分でもわからないディオは首を横に振るのでした。
ちょっと家の中を覗いてみれば一生懸命に何かを作っている様子が伺えます。そして良く見ればその何かは薔薇だと直ぐにわかる事でしょう。
そうです。もう直ぐ2度目のバレンタインデーがやって来るのです。
「へー。ヴィーナは面白いな。てかイベント多過ぎじゃねえか?」
「そうかな。楽しいは無限に広がるもんじゃねえの?」
今日はロハスの家にディオとロノロが集まっています。女の子達はいません。
「ほら、ロハス。僕達の場合は三巳姉ちゃんが楽しいの伝道師だからだよ。一応獣神様なんだしさ、きっと僕達人族の知らない事をいっぱい知ってるんだ」
ロノロは器用に本物そっくりな薔薇の花弁を付けながらゆったりとした物言いで言います。
その言葉に一度ロノロに視線が行きますが、直ぐに視界に入ったロノロの薔薇に目を奪われます。
「やっぱロノロは器用だよな」
「え?へへ。そうかな?僕は彫刻師になりたいからそうだと嬉しいな」
ロハスに褒められてロノロは嬉しそうにはにかみます。
それにディオが目をパチクリしました。
「ロノロはもう将来の夢があるのか」
「うん。温泉施設の彫刻格好良いでしょ?あれ見てからずっと憧れなんだ」
「へー、良いなそういうの。ロハスは?」
「俺?俺はまだ無いな~。そう言うディオは無いのかよ」
「……俺は……前は騎士だったけど」
ロハスの質問返しにディオは悩みます。
(大切な人達は守りたい。でも、争いは、嫌だな)
「今は、俺も無い」
俯き自分の掌を見るディオに、ロハスとロノロは顔を見合わせました。
2人には事情はわかりません。けれどもディオにもまた、将来の夢が出来れば良いと本当に思います。
「そんじゃさ。俺と一緒に色々やってみようぜ」
ロハスは作り終わったちょっとヨレているけれど、一生懸命に作ったとわかる薔薇の造花をディオに向けて言います。
「それなら僕もやりたいよ。彫刻師になるにも経験は大切だと思うし」
ロノロは本物と見紛う程見事な薔薇の造花をディオに向けて言います。
2人に薔薇を差し出されたディオは思わず吹き出してしまいました。
「ぶっは!何だよそれ、キザだな!てか俺に薔薇差し出してどーすんだよ!」
ケラケラとお腹を抱えて笑うディオに、ロハスはニカリと、ロノロはニコリと笑います。
「良いじゃん別に。だってバレンタインは好きな人に薔薇やる日なんだぜ」
「そうだよ。ならディオにだってあげても当たり前だよ」
そこまで別々に言ったロハスとロノロですが、最後の言葉は被りました。
「「ディオは大好きな友達なんだから!」」
と。
その言葉にディオはジンとしたものが込み上げてきます。
故郷に置いて来た大切な思い。色々なものが混ざり絡まり、悪夢を見る日もある。将来の夢も曖昧になり、自分を見失いそうになる日々。
そんなものから逃げる様に来た三巳とリリのいる山で、しかしディオはここで見失い掛けた夢をもう一度取り戻せそうだと胸を温かくするのでした。
「おう!ありがとな!」
快活な笑顔を咲かせ、ディオは気恥ずかしげに鼻を掻きます。そして差し出された薔薇を2つとも手に取ります。
「うし。んじゃディオも作ろうぜ」
「え?俺も?」
「僕達もまだ作らないとだしね」
「いや、でも作った事ねーし」
「大丈夫だよ。一緒に作ろう」
「俺だって上手かねぇけどさ。こういうのって気持ちじゃん」
「うぐ。ま、まあ。俺も、ロハスとロノロは友達だからな」
という事でディオも薔薇の造花に挑戦です。
主にロノロに教えてもらい、四苦八苦しながらもゆっくりと丁寧に作っていきます。教え上手なロノロのお陰でロハス同様の不器用だけど気持ちの篭った薔薇が出来ました。そしてそれはロハスとロノロに受け取って貰えたのでした。
ディオは他に新しい家族とリリと三巳の分を作ります。そして一番出来の良い薔薇は何となくミナミにあげようと思いました。
チラリとロハスとロノロを見れば同じく家族の分と三巳の分があります。けれどもそれだけではなく、特別にラッピングされた薔薇が一輪づつありました。
「ロハスとロノロのそれは?」
「ん?あー、まあ。あれだ。これは特別な奴にあげるやつ」
歯に物が詰まった様な言いようです。でも照れてる様子からディオはピンときました。
「ミオラにか」
「う゛。改めて友達に言われると恥ずかしいもんがあるな」
「ミオラ本人には堂々としてるのにね」
頭を掻くロハスに、ロノロは微笑ましく笑って言います。
ディオもロハスがミオラを好きなのなんてお見通しです。実はもう恋人同士だと言われても疑いません。
「そういうロノロだってミナにやるんだろ」
「うん。受け取ってくれるといいな」
ロノロは照れながらラッピングされた薔薇を大事そうに持ちます。
ディオはロハスとロノロを交互に見て、そしてミナミにあげるつもりの薔薇を見ました。何となくそっと手に持ってジッと見つめています。
(いやいやいや。ミナミ姉は姉ちゃんだし。でもまだ正式に家族として決まった訳じゃないし。そしたらミナミ姉は姉ちゃんじゃなくて女の人で……。いやいやいや。ミナミ姉はロイド兄が好きって聞いたし)
訥々と考え耽っていたディオですが、最後に思った事でツキリと胸が痛くなってしまいます。何故かわからないディオは胸に手を当てて揉みました。
「どうかしたの?」
その様子にいち早く気付いたロノロが訪ねます。
「いや、何でもない」
けれども自分でもわからないディオは首を横に振るのでした。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
110
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる