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本編
あんまん食べたい
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「肉まん♪あんまん♪カレーまーん♪ピザまんチーズららーらん♪」
雪が高く積もる村の中。三巳が調子っぱずれな歌を歌いながらザクザク歩いています。音程は一応アンコなヒーローのテーマソングです。馴染み深い日本人がいてもきっと気付くのに時間が掛かるでしょうが。三巳的にはアンコなヒーローなんです。
「にゅー。こーも寒いとあったかいあんまん食べたくなるんだよ」
エアあんまんをパクリと食べていると虚しさがお腹の中を巡ります。おかげで「ぐー」とお腹の虫が鳴きました。
「にゅにゅ……。むー……。まん♪まん♪まんじゅう食べたいな♪」
お腹を両手で押さえた三巳は、今度はコンニャクなゼリーのCMの音程。のつもりで歌いました。
すると「ぐぐー」とまたもお腹の虫が鳴いています。
「歌うと歌うだけあんまん腹になるんだよ……」
空腹で耳と尻尾がシオシオと垂れてしまいます。
元気を無くした三巳はトボトボと雪道を歩いて行きます。学校が始まった今、歩いていても「三巳ねーちゃん」と駆け寄り慕う子供達がいないので独りです。
「にゅ……。いかん。孤独は空腹をより強調させるんだよ」
しょぼしょぼぐー。となっていた気持ちを振り払う為にプルプル首を振って力強く雪を踏みしめました。
そんな時です。
ふと三巳の鼻に誘う様な芳しい匂いが掠めて行きました。
三巳はハッとして目も鼻の穴も開いてキョロキョロクンクンします。そうすれば匂いは先程よりも鮮明に鼻の奥を駆け抜けていきます。
「この匂いは!」
勢いよくピーン!と耳と尻尾を立てた三巳はダッと駆け出しました。向かう先は勿論匂いの発生源です。
除雪機もかくやという勢いで雪を蹴散らして行く姿に山の民達もほんわか見守っています。
「今日も元気ねぇ」
「三巳だからなぁ」
そんな声をBGMに着いた先はパン屋です。
「ミクス新作!?新作だろ!?むしろ中華まん!絶対そう!」
窓から身を乗り出して鼻息荒く言う姿に、ミクスもカラカラ笑って中に招き入れてくれます。そして三巳の肩や頭に乗った雪をパラパラ落としながら頷きます。
「ちゅーかまんは知らないけれど新作だよ。どうにか温かいパンを提供出来ないかと思ってね」
雪を落とし終えたら早速蒸し器を見せてくれたので覗き込むと、中には予想通りの中華まんが並んでいました。
三巳は直ぐにでも食べたくて何かないかと尻尾収納を探ります。
「にゅっ。にゅっ。にゅお」
暫くわさわさ動かしてお目当てを見つけると三巳の顔はパァッと花が咲きます。直ぐにそれを取り出してミクスに渡しました。
「これで交換出来る?」
期待に胸膨らんだ顔にミクスもほっこりして頷きました。
「勿論。肉パンとあんパンとツナパンがあるよ」
「パン……」
ミクスは中華まんを知らないのであくまでパンと言っています。
何処からどう見ても中華まんですが三巳は実は違うかも知れないと不安になります。取り敢えずあんパンとやらを貰って恐る恐る齧り付きました。
モグモグとすればお口に広がるのは懐かしい冬の味。三巳はうっとりとして耳と尻尾を脱力させて、ピピクピクと震わせました。
夢中で食べ切ると「はふー」と長く息を吐いて恍惚とした表情を見せています。
「あんまんだー……」
お腹の底から漏れ出た喜びの声に、ミクスは破顔します。
「こりゃ大成功だね。それじゃあ皆にも広めたいけど、このパンはちゅーかまんってシリーズなのかい?」
「うにゅ。これはあんまんでこっちは肉まん」
「ならこれはツナまんだね」
名前が決まったら冷めないように蓋をします。そして木の板を取り出すと文字を書きました。
"ちゅうかまん始めました"
(冷やし中華かな?)
その文字に三巳はさも可笑しいとニマニマします。
「敬語ってのはこれでいいのかねぇ」
ハンナやミンミの影響で村には敬語の概念が芽生えています。今は移住したばかりのリファラの民やオーウェンギルド長がいるので、ミクスも敬語にチャレンジしてみたのです。
「うにゅ、大丈夫。三巳も村中に宣伝しとくんだよ」
「おや、じゃあ看板娘には前払いしないとね。ちゅうかまんもっと食べるかい?」
「やったー!食べるー♪」
こうして中華まんをたらふく食べた三巳の宣伝もあって、ヴィーナ村に中華まんが広まったのでした。
雪が高く積もる村の中。三巳が調子っぱずれな歌を歌いながらザクザク歩いています。音程は一応アンコなヒーローのテーマソングです。馴染み深い日本人がいてもきっと気付くのに時間が掛かるでしょうが。三巳的にはアンコなヒーローなんです。
「にゅー。こーも寒いとあったかいあんまん食べたくなるんだよ」
エアあんまんをパクリと食べていると虚しさがお腹の中を巡ります。おかげで「ぐー」とお腹の虫が鳴きました。
「にゅにゅ……。むー……。まん♪まん♪まんじゅう食べたいな♪」
お腹を両手で押さえた三巳は、今度はコンニャクなゼリーのCMの音程。のつもりで歌いました。
すると「ぐぐー」とまたもお腹の虫が鳴いています。
「歌うと歌うだけあんまん腹になるんだよ……」
空腹で耳と尻尾がシオシオと垂れてしまいます。
元気を無くした三巳はトボトボと雪道を歩いて行きます。学校が始まった今、歩いていても「三巳ねーちゃん」と駆け寄り慕う子供達がいないので独りです。
「にゅ……。いかん。孤独は空腹をより強調させるんだよ」
しょぼしょぼぐー。となっていた気持ちを振り払う為にプルプル首を振って力強く雪を踏みしめました。
そんな時です。
ふと三巳の鼻に誘う様な芳しい匂いが掠めて行きました。
三巳はハッとして目も鼻の穴も開いてキョロキョロクンクンします。そうすれば匂いは先程よりも鮮明に鼻の奥を駆け抜けていきます。
「この匂いは!」
勢いよくピーン!と耳と尻尾を立てた三巳はダッと駆け出しました。向かう先は勿論匂いの発生源です。
除雪機もかくやという勢いで雪を蹴散らして行く姿に山の民達もほんわか見守っています。
「今日も元気ねぇ」
「三巳だからなぁ」
そんな声をBGMに着いた先はパン屋です。
「ミクス新作!?新作だろ!?むしろ中華まん!絶対そう!」
窓から身を乗り出して鼻息荒く言う姿に、ミクスもカラカラ笑って中に招き入れてくれます。そして三巳の肩や頭に乗った雪をパラパラ落としながら頷きます。
「ちゅーかまんは知らないけれど新作だよ。どうにか温かいパンを提供出来ないかと思ってね」
雪を落とし終えたら早速蒸し器を見せてくれたので覗き込むと、中には予想通りの中華まんが並んでいました。
三巳は直ぐにでも食べたくて何かないかと尻尾収納を探ります。
「にゅっ。にゅっ。にゅお」
暫くわさわさ動かしてお目当てを見つけると三巳の顔はパァッと花が咲きます。直ぐにそれを取り出してミクスに渡しました。
「これで交換出来る?」
期待に胸膨らんだ顔にミクスもほっこりして頷きました。
「勿論。肉パンとあんパンとツナパンがあるよ」
「パン……」
ミクスは中華まんを知らないのであくまでパンと言っています。
何処からどう見ても中華まんですが三巳は実は違うかも知れないと不安になります。取り敢えずあんパンとやらを貰って恐る恐る齧り付きました。
モグモグとすればお口に広がるのは懐かしい冬の味。三巳はうっとりとして耳と尻尾を脱力させて、ピピクピクと震わせました。
夢中で食べ切ると「はふー」と長く息を吐いて恍惚とした表情を見せています。
「あんまんだー……」
お腹の底から漏れ出た喜びの声に、ミクスは破顔します。
「こりゃ大成功だね。それじゃあ皆にも広めたいけど、このパンはちゅーかまんってシリーズなのかい?」
「うにゅ。これはあんまんでこっちは肉まん」
「ならこれはツナまんだね」
名前が決まったら冷めないように蓋をします。そして木の板を取り出すと文字を書きました。
"ちゅうかまん始めました"
(冷やし中華かな?)
その文字に三巳はさも可笑しいとニマニマします。
「敬語ってのはこれでいいのかねぇ」
ハンナやミンミの影響で村には敬語の概念が芽生えています。今は移住したばかりのリファラの民やオーウェンギルド長がいるので、ミクスも敬語にチャレンジしてみたのです。
「うにゅ、大丈夫。三巳も村中に宣伝しとくんだよ」
「おや、じゃあ看板娘には前払いしないとね。ちゅうかまんもっと食べるかい?」
「やったー!食べるー♪」
こうして中華まんをたらふく食べた三巳の宣伝もあって、ヴィーナ村に中華まんが広まったのでした。
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