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本編
グッタリ三巳
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村の数有る公園の中でも四阿のあるお洒落に整えられた公園に、三巳を囲って女性陣が詰めています。
その四阿の中心では、グランでの出来事を一部始終包み隠さず話し切った三巳が撃沈していました。
「うにゅぅ~……。だから、だからラオ君はかっちょいーけど恋バナとは違うんだよ……」
話の中心は如何にレオが格好良いかを力説するものでした。
それを聞いた女性陣が三巳にも春が来た!と色めき立ったものですからさあ大変。三巳は恋バナを聞くのは好きですが、自身がそうなるのは苦手だった様です。
きっとクラスの格好良い男子とかアイドルとかそんな存在だと力説するのですが、暖簾に腕押しが如く女性陣の中ではもうレオと三巳のピンク色の未来に胸を高鳴らせていました。
「獣神とモンスターとの恋物語……」
「素敵ねぇ……」
ほぅっと恋愛小説を読み切った後の乙女モードが漂っています。
「ライオーガのレオだっけ?早く山に来ないかしら」
「そうね~。来たらいっぱい歓迎しなくちゃ」
「そして三巳とのことを聞かなくちゃね!」
三巳そっちのけで話が進んでいきます。
恋バナが娯楽だと認識している三巳もタジタジしています。
「だから。恋と違う……」
静止の声も力がありません。
「あら、三巳がそんなに素敵だって言うモンスターなんて今迄聞いた事無いわ」
「そうよ。それってとっても特別って事じゃない」
違うと否定する側から否定返しされていき、三巳も
(え?そうなのかな?恋ってこういうのなのかな?)
と自分の気持ちに自信がなくなってしまいます。
ちょっとそうかもと思い始めた頃にリリが三巳の手をキュッと握り締めて視線を合わせてきました。
「恋だと素敵ね。でもお友達も同じ位素敵。三巳は三巳の思う通りにしてて欲しいな。
それがどちらでも私は三巳の気持ちが大事だから」
「リリ……」
ニコッと微笑むリリに三巳は感激してジーンと涙腺が緩みます。
「うぬ!やっぱしラオ君はかっちょいーんだよ!一緒にいると心地良くて離れるのヤーになるけど恋じゃ無いんだよ!」
自信を取り戻した三巳はリリの手を握り返し、力強い意志を顔に乗せて言い切りました。
それを聞いていた女性陣達はもうそれ以上話をつつくのは止めてくれます。しかしその顔は生暖かく慈愛に満ちた微笑みをしています。
(((いやー、恋でしょ)))
そして満場一致で三巳の言葉を信じていませんでした。
リリも周囲の心の声を正確に読み取りましたが何も言いません。心の中で困った様に微笑むに留めました。
周りがもう何も言わなくなったので、三巳はやっと通じたとムフンと満足気な鼻息を漏らします。
「それじゃあ三巳はカカオの木を植える準備してくるからバイバイなんだよ」
話す事は話したので今の三巳の優先順位はカカオの木一択になっています。
シュバッと立ち上がると生暖かい目に見送られてタッタカ自宅の温室へ駆けて行きました。残された女性陣がその場で三巳の恋バナに花を咲かせ始めた事なんて知りもしません。
唯一リリだけは三巳の後を追いました。
「三巳~!私も手伝うわ!」
「ありがとー♪そいじゃ一緒に行こー」
追い付いたリリは三巳と並んで歩きます。すると三巳はある事に気付きました。
「また背が伸びたなー」
そうです。最近は一緒に過ごす機会が減ったのでたまに会うと違いが良くわかります。
リリは嬉しそうにはにかみました。
因みに三巳の背はちっとも伸びていません。リリとリファラで過ごしていた時にちょびっと伸びたきりです。
(三巳は、三巳はきっと遅咲きなんだよ……!)
三巳は自分で自分を鼓舞しました。いつまで経っても子供っぽいのをちょっぴし気にしているのです。
「三巳は毛並みが艶々ね。リファラの皆にして貰ったんでしょう?」
「うぬ。皆の目がキラキラよりギラギラに感じてこあかった」
リファラを出る前にとまたもや囲まれ揉みくちゃに洗われた事を思い出し、三巳は思わず尻尾を丸めて股下に潜らせました。
「ふふ、いつもはふわふわだから艶々にしたのね。皆も相変わらずで安心したわ。私もトリートメント作ろうかしら」
「リリの手作りは気持ち良ーから好きなんだよ」
「あら、ふふふ。それじゃあ張り切って作るわね」
丸めていた尻尾をふわりと上げてわさわさ振る姿に、リリはクスクスと楽しそうに笑います。最近は中々グルーミング出来なかったので心の中では如何にもふもふを最高にするかでいっぱいです。
そんなリリの心内を知らず、三巳は
「カカオにトリートメントに楽しみいっぱいで幸せなんだよ」
と小踊りしながら進みます。
そんな三巳の、出会った時よりも下になった頭をリリが見下ろしています。頭上にチョコンと飛び出た毛の束が踊りに合わせてピョコンピョコンと動くのがなんだか可愛らしいです。
「あ!リリあのな、三巳グランで南の国のダンスをマスターしたから見て欲しいんだよ」
踊っている自分に気付き、そして踊りと言えばと思い出した三巳はクルンと回転してリリの正面に向きます。
リリはキョトンとしました。元々お姫様をしていて世界の国々は知っています。グランと言えばカカオの一大産地です。行った事は無いけれど行商のおじさんから何度もお話を聞かせて貰った記憶があります。
「グランのダンスか~。ふふ、三巳が踊ったらとっても可愛いわね。是非見たいわ」
「うぬ!服もな、パメに貰ってな。それでな」
先程のレオの話には出て来たけれど、恋バナ故に掘り下げられなかった人達の事を話し始める三巳です。恋バナの時と違って明るく元気で生き生きとしています。
「あら、まあ、ふふふ。そうなのね」
それをリリはとても愛おしそうに見守ります。話の合間に頷き、時に驚き最後まで好きな様に話す三巳を内心で
(とっても可愛い!)
と悶えながら聞き役に徹するのでした。
その四阿の中心では、グランでの出来事を一部始終包み隠さず話し切った三巳が撃沈していました。
「うにゅぅ~……。だから、だからラオ君はかっちょいーけど恋バナとは違うんだよ……」
話の中心は如何にレオが格好良いかを力説するものでした。
それを聞いた女性陣が三巳にも春が来た!と色めき立ったものですからさあ大変。三巳は恋バナを聞くのは好きですが、自身がそうなるのは苦手だった様です。
きっとクラスの格好良い男子とかアイドルとかそんな存在だと力説するのですが、暖簾に腕押しが如く女性陣の中ではもうレオと三巳のピンク色の未来に胸を高鳴らせていました。
「獣神とモンスターとの恋物語……」
「素敵ねぇ……」
ほぅっと恋愛小説を読み切った後の乙女モードが漂っています。
「ライオーガのレオだっけ?早く山に来ないかしら」
「そうね~。来たらいっぱい歓迎しなくちゃ」
「そして三巳とのことを聞かなくちゃね!」
三巳そっちのけで話が進んでいきます。
恋バナが娯楽だと認識している三巳もタジタジしています。
「だから。恋と違う……」
静止の声も力がありません。
「あら、三巳がそんなに素敵だって言うモンスターなんて今迄聞いた事無いわ」
「そうよ。それってとっても特別って事じゃない」
違うと否定する側から否定返しされていき、三巳も
(え?そうなのかな?恋ってこういうのなのかな?)
と自分の気持ちに自信がなくなってしまいます。
ちょっとそうかもと思い始めた頃にリリが三巳の手をキュッと握り締めて視線を合わせてきました。
「恋だと素敵ね。でもお友達も同じ位素敵。三巳は三巳の思う通りにしてて欲しいな。
それがどちらでも私は三巳の気持ちが大事だから」
「リリ……」
ニコッと微笑むリリに三巳は感激してジーンと涙腺が緩みます。
「うぬ!やっぱしラオ君はかっちょいーんだよ!一緒にいると心地良くて離れるのヤーになるけど恋じゃ無いんだよ!」
自信を取り戻した三巳はリリの手を握り返し、力強い意志を顔に乗せて言い切りました。
それを聞いていた女性陣達はもうそれ以上話をつつくのは止めてくれます。しかしその顔は生暖かく慈愛に満ちた微笑みをしています。
(((いやー、恋でしょ)))
そして満場一致で三巳の言葉を信じていませんでした。
リリも周囲の心の声を正確に読み取りましたが何も言いません。心の中で困った様に微笑むに留めました。
周りがもう何も言わなくなったので、三巳はやっと通じたとムフンと満足気な鼻息を漏らします。
「それじゃあ三巳はカカオの木を植える準備してくるからバイバイなんだよ」
話す事は話したので今の三巳の優先順位はカカオの木一択になっています。
シュバッと立ち上がると生暖かい目に見送られてタッタカ自宅の温室へ駆けて行きました。残された女性陣がその場で三巳の恋バナに花を咲かせ始めた事なんて知りもしません。
唯一リリだけは三巳の後を追いました。
「三巳~!私も手伝うわ!」
「ありがとー♪そいじゃ一緒に行こー」
追い付いたリリは三巳と並んで歩きます。すると三巳はある事に気付きました。
「また背が伸びたなー」
そうです。最近は一緒に過ごす機会が減ったのでたまに会うと違いが良くわかります。
リリは嬉しそうにはにかみました。
因みに三巳の背はちっとも伸びていません。リリとリファラで過ごしていた時にちょびっと伸びたきりです。
(三巳は、三巳はきっと遅咲きなんだよ……!)
三巳は自分で自分を鼓舞しました。いつまで経っても子供っぽいのをちょっぴし気にしているのです。
「三巳は毛並みが艶々ね。リファラの皆にして貰ったんでしょう?」
「うぬ。皆の目がキラキラよりギラギラに感じてこあかった」
リファラを出る前にとまたもや囲まれ揉みくちゃに洗われた事を思い出し、三巳は思わず尻尾を丸めて股下に潜らせました。
「ふふ、いつもはふわふわだから艶々にしたのね。皆も相変わらずで安心したわ。私もトリートメント作ろうかしら」
「リリの手作りは気持ち良ーから好きなんだよ」
「あら、ふふふ。それじゃあ張り切って作るわね」
丸めていた尻尾をふわりと上げてわさわさ振る姿に、リリはクスクスと楽しそうに笑います。最近は中々グルーミング出来なかったので心の中では如何にもふもふを最高にするかでいっぱいです。
そんなリリの心内を知らず、三巳は
「カカオにトリートメントに楽しみいっぱいで幸せなんだよ」
と小踊りしながら進みます。
そんな三巳の、出会った時よりも下になった頭をリリが見下ろしています。頭上にチョコンと飛び出た毛の束が踊りに合わせてピョコンピョコンと動くのがなんだか可愛らしいです。
「あ!リリあのな、三巳グランで南の国のダンスをマスターしたから見て欲しいんだよ」
踊っている自分に気付き、そして踊りと言えばと思い出した三巳はクルンと回転してリリの正面に向きます。
リリはキョトンとしました。元々お姫様をしていて世界の国々は知っています。グランと言えばカカオの一大産地です。行った事は無いけれど行商のおじさんから何度もお話を聞かせて貰った記憶があります。
「グランのダンスか~。ふふ、三巳が踊ったらとっても可愛いわね。是非見たいわ」
「うぬ!服もな、パメに貰ってな。それでな」
先程のレオの話には出て来たけれど、恋バナ故に掘り下げられなかった人達の事を話し始める三巳です。恋バナの時と違って明るく元気で生き生きとしています。
「あら、まあ、ふふふ。そうなのね」
それをリリはとても愛おしそうに見守ります。話の合間に頷き、時に驚き最後まで好きな様に話す三巳を内心で
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と悶えながら聞き役に徹するのでした。
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