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本編
カカオの木知りませんか
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ペタペタと、白い石畳の道を裸足で歩く三巳がいます。
太陽が燦々と降り注ぎ、暑い筈なのに石畳はヒンヤリ冷たくて気持ちが良いです。
三巳の隣には人型のレオがいます。レオはキチンと靴を履いているので、歩くとコッコッカツンと石畳を叩くメロディが三巳の耳を楽しませてくれています。
「ぬにゅー。カカオっぽいの無いんだよ」
先程から熱心にキョロキョロと木を見て回っていますが目当ての木は未だ見つけられないでいました。
「カカオ、ねえ……」
レオは三巳に付いてくれていますがカカオを探してはいません。レオはカカオにあまり興味がない様です。
「あんな甘ったるいもん良く食えるよな」
「んにゅ?ラオ君甘いの苦手か?」
「まあな。一応俺は肉食獣だから塩気の強い方がどっちかってえと好きだな」
「食えねえ訳じゃねえけどよ」と続けるレオに、三巳は
(男の子だなー)
と微笑ましく思います。勿論平成にはスイーツ男子も一般的になっていましたが、昭和生まれのお婆ちゃんな三巳にとっては男の人=甘いの苦手なイメージがまだまだ残っていました。そして三巳はそういう男の人も好ましく思っていました。
(うぬ。漢って感じがかっちょいーんだよ。でも)
「苦めの大人のチョコもあるんだよ。是非食べてみて欲しい」
「へえ。甘くないのもあるのか」
甘くないならと興味を向けてくれたレオに、三巳はニッコリ笑顔です。
(帰ったら父ちゃんに作って貰おう!)
ミルク少なめカカオをどうやったらチョコとして固められるのか知らない三巳は、料理上手なクロに丸投げする気満々です。でもきっとクロなら三巳がお願いすれば喜んで作ってくれる事でしょう。
三巳は大人の味チョコはどんな種類があったかな、と思い巡らせて楽しみながらカカオの木を探し続けます。
「ぬー……。街中には無いのかな?」
目に付く範囲に見つけられない三巳は諦めて人に聞く事にしました。知っていそうな人を探してキョロキョロします。
「こんにちわー。ちょっと聞きたい事があるんだよ」
三巳は物知りそうなお爺さんを見つけて声を掛けました。
お爺さんは人当たりの良さそうな顔をニコニコさせて顔を向けてくれます。
「オヤ旅ノヒト、コンニチハ。ドウシタ」
「うぬ。三巳はカカオの木を探しているんだよ。何処にあるのか知らないか?」
「カカオ?ハハハ、ソレハ街中探シテモ見ツカラナイ。アレハ街ノ外ニ自生シテイル」
何という事でしょう。一生懸命に街の中を探しても見つからない訳です。
親切なお爺さんはどういった所に生えていて、そして密集している穴場を身振り手振りで教えてくれました。
「親切にありがとうなんだよ」
「イインダヨー。見ツカルトイーネ」
三巳は親切なお爺さんとバイバイして教えて貰った穴場へ直行します。そして教えてくれた通りにカカオの木はありました。
「ふにゅおおおっ!凄い!沢山!宝の山!」
辿り着いたのは街の外縁、丘陵地になっている場所です。街よりも広くて広大なその場所には広くて浅い川も流れていて、海と植物と川とのコントラストが旅行気分を盛り上げてくれます。
三巳はエアシャッターを切りまくりです。カメラが無いのがとても惜しいです。
一頻り自然の空気を堪能した三巳は地元の人を探してキョロキョロフンフンしだしました。目と匂いで人の気配を探すのです。そしてそれは直ぐに見つける事が出来ました。
「第一村人発見なんだよっ。こんにちわー!」
ダーツで巡る旅気分で元気良く手を上げて声を掛けてみます。
すると気付いた人がニコニコしながらペコリと挨拶を返してくれました。なんと鳥の獣人です。
人影だけで声を掛けた三巳はビックリ仰天、尻尾をビッ!と上げて改めてそのひととなりを観察します。
モンスターにも人っぽい鳥はいますが、それとはまた違った感じです。人型鳥モンスターの顔は人族寄りですが、鳥獣人は鳥寄りです。見た感じオウムに似ているでしょうか。
「今日ハ。可愛イオ嬢チャン」
鳥獣人の人は嘴をパクパクさせて上手に言葉を紡ぎました。
獣の顔で人の言葉を話せる人に初めて会った三巳は一瞬ビックリします。けれども良く考えたら地球の鳥にも言葉を話す鳥はいるので声帯的には出来なくはないと思い直しました。なんなら片言っぽいイントネーションのこの国の喋り方がマッチしている気さえしてきます。
「カカオの木の苗木が欲しいんだけど、何処かにあるのか知りたいんだよ」
鳥獣人の人の前で耳をピコピコ、尻尾をフリフリしながら問うと、鳥獣人の人は「アラマア」と手を頬に当てて微笑みます。
鳥獣人の人は人に近い手を持っていたのです。けれども羽もあるので三巳は
(手が4本なんだよ)
と思いました。
「苗木育テルハシテナイ、ケド……。ソウネ、ソウダワ。パメニ聞クトイイヨ」
「パメ?」
三巳が首をコテンと倒して聞くと、鳥獣人の人は街を指差して頷きます。そして何故か持っていた大きな木の実を差し出します。
三巳はなんとなく受け取るのが正解と感じ取り、その実を両手に納めました。しかし持った時にタプンと中身が揺れて目を見開きました。
「ココナッツジュース!?」
そう、その実は三巳がなんとなく飲めたらなーと思っていたヤシの実でした。
「道中半分コシテ飲ムトイイヨ」
鳥獣人の人はニッコリして横にいたレオを見て言いました。
「オ兄チャン偉イネ。妹ノ面倒見テ」
兄妹と勘違いされていました。
ケモ耳と人耳の違いはありますが、ハーフの多いこの国では気にならないのでしょう。だから身長差のある2人は兄と妹に見えるかもしれません。
三巳は何だかモヤッとした気持ちになりましたが、目の前のココナッツジュースを前に直ぐにそんな気持ちは忘れるのでした。
太陽が燦々と降り注ぎ、暑い筈なのに石畳はヒンヤリ冷たくて気持ちが良いです。
三巳の隣には人型のレオがいます。レオはキチンと靴を履いているので、歩くとコッコッカツンと石畳を叩くメロディが三巳の耳を楽しませてくれています。
「ぬにゅー。カカオっぽいの無いんだよ」
先程から熱心にキョロキョロと木を見て回っていますが目当ての木は未だ見つけられないでいました。
「カカオ、ねえ……」
レオは三巳に付いてくれていますがカカオを探してはいません。レオはカカオにあまり興味がない様です。
「あんな甘ったるいもん良く食えるよな」
「んにゅ?ラオ君甘いの苦手か?」
「まあな。一応俺は肉食獣だから塩気の強い方がどっちかってえと好きだな」
「食えねえ訳じゃねえけどよ」と続けるレオに、三巳は
(男の子だなー)
と微笑ましく思います。勿論平成にはスイーツ男子も一般的になっていましたが、昭和生まれのお婆ちゃんな三巳にとっては男の人=甘いの苦手なイメージがまだまだ残っていました。そして三巳はそういう男の人も好ましく思っていました。
(うぬ。漢って感じがかっちょいーんだよ。でも)
「苦めの大人のチョコもあるんだよ。是非食べてみて欲しい」
「へえ。甘くないのもあるのか」
甘くないならと興味を向けてくれたレオに、三巳はニッコリ笑顔です。
(帰ったら父ちゃんに作って貰おう!)
ミルク少なめカカオをどうやったらチョコとして固められるのか知らない三巳は、料理上手なクロに丸投げする気満々です。でもきっとクロなら三巳がお願いすれば喜んで作ってくれる事でしょう。
三巳は大人の味チョコはどんな種類があったかな、と思い巡らせて楽しみながらカカオの木を探し続けます。
「ぬー……。街中には無いのかな?」
目に付く範囲に見つけられない三巳は諦めて人に聞く事にしました。知っていそうな人を探してキョロキョロします。
「こんにちわー。ちょっと聞きたい事があるんだよ」
三巳は物知りそうなお爺さんを見つけて声を掛けました。
お爺さんは人当たりの良さそうな顔をニコニコさせて顔を向けてくれます。
「オヤ旅ノヒト、コンニチハ。ドウシタ」
「うぬ。三巳はカカオの木を探しているんだよ。何処にあるのか知らないか?」
「カカオ?ハハハ、ソレハ街中探シテモ見ツカラナイ。アレハ街ノ外ニ自生シテイル」
何という事でしょう。一生懸命に街の中を探しても見つからない訳です。
親切なお爺さんはどういった所に生えていて、そして密集している穴場を身振り手振りで教えてくれました。
「親切にありがとうなんだよ」
「イインダヨー。見ツカルトイーネ」
三巳は親切なお爺さんとバイバイして教えて貰った穴場へ直行します。そして教えてくれた通りにカカオの木はありました。
「ふにゅおおおっ!凄い!沢山!宝の山!」
辿り着いたのは街の外縁、丘陵地になっている場所です。街よりも広くて広大なその場所には広くて浅い川も流れていて、海と植物と川とのコントラストが旅行気分を盛り上げてくれます。
三巳はエアシャッターを切りまくりです。カメラが無いのがとても惜しいです。
一頻り自然の空気を堪能した三巳は地元の人を探してキョロキョロフンフンしだしました。目と匂いで人の気配を探すのです。そしてそれは直ぐに見つける事が出来ました。
「第一村人発見なんだよっ。こんにちわー!」
ダーツで巡る旅気分で元気良く手を上げて声を掛けてみます。
すると気付いた人がニコニコしながらペコリと挨拶を返してくれました。なんと鳥の獣人です。
人影だけで声を掛けた三巳はビックリ仰天、尻尾をビッ!と上げて改めてそのひととなりを観察します。
モンスターにも人っぽい鳥はいますが、それとはまた違った感じです。人型鳥モンスターの顔は人族寄りですが、鳥獣人は鳥寄りです。見た感じオウムに似ているでしょうか。
「今日ハ。可愛イオ嬢チャン」
鳥獣人の人は嘴をパクパクさせて上手に言葉を紡ぎました。
獣の顔で人の言葉を話せる人に初めて会った三巳は一瞬ビックリします。けれども良く考えたら地球の鳥にも言葉を話す鳥はいるので声帯的には出来なくはないと思い直しました。なんなら片言っぽいイントネーションのこの国の喋り方がマッチしている気さえしてきます。
「カカオの木の苗木が欲しいんだけど、何処かにあるのか知りたいんだよ」
鳥獣人の人の前で耳をピコピコ、尻尾をフリフリしながら問うと、鳥獣人の人は「アラマア」と手を頬に当てて微笑みます。
鳥獣人の人は人に近い手を持っていたのです。けれども羽もあるので三巳は
(手が4本なんだよ)
と思いました。
「苗木育テルハシテナイ、ケド……。ソウネ、ソウダワ。パメニ聞クトイイヨ」
「パメ?」
三巳が首をコテンと倒して聞くと、鳥獣人の人は街を指差して頷きます。そして何故か持っていた大きな木の実を差し出します。
三巳はなんとなく受け取るのが正解と感じ取り、その実を両手に納めました。しかし持った時にタプンと中身が揺れて目を見開きました。
「ココナッツジュース!?」
そう、その実は三巳がなんとなく飲めたらなーと思っていたヤシの実でした。
「道中半分コシテ飲ムトイイヨ」
鳥獣人の人はニッコリして横にいたレオを見て言いました。
「オ兄チャン偉イネ。妹ノ面倒見テ」
兄妹と勘違いされていました。
ケモ耳と人耳の違いはありますが、ハーフの多いこの国では気にならないのでしょう。だから身長差のある2人は兄と妹に見えるかもしれません。
三巳は何だかモヤッとした気持ちになりましたが、目の前のココナッツジュースを前に直ぐにそんな気持ちは忘れるのでした。
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