208 / 368
本編
砂漠を抜けたらそこはジャングルでした
しおりを挟む
「あーああ~~~!!」
お腹の底から張り出した声が鬱蒼と茂る緑の中に響きます。
カラフルな鳥達がビックリして飛び出してしまう、そんな声の持ち主は
「たーのしぃー♪」
そう、三巳です。
サリーちゃんとお別れして教わった通りにひとっ飛びした先は、なんとジャングルでした。大きなシダっぽい植物に大きなラフレシアっぽい花がそからかしこに見えます。
そんな秘境っぽい景色に胸躍らない三巳はいません。
マングローブっぽい湿地帯に入るや、蔓植物を素早く見つけて蔓から蔓への大移動です。気分はターザンでしょうか。
「にゅふぅ~ん。腰巻姿でやってみたいんだよ」
やはりターザンごっこでした。ターザンな自分を想像し、いつもの服を引っ張るとちょっと不満顔です。しかし見た目が獣人っぽい三巳が腰巻姿になったならば、野生感が満載となる事でしょう。
「わにゃ!?危なかったー。危うく川だか池だかに落ちるとこだったんだよー」
余裕をこいて片手ターザンしていた三巳はツルッと手を滑らせてしまいました。けれどもギリギリで蔓の先っぽを両手足を絡めて難を逃れました。下にはワニやピラニアっぽい生き物達が三巳を見ています。
「ワニとかピラニアってジャングルにいたのかー?」
ワニもピラニアも動物園や水族館でしか見た事ない三巳はコテンと首を傾げました。
考えてもわからない事は考えないのが三巳です。チラリと下を見て、ウロウロしているワニ達に尻尾をワサリワサリと振ってご挨拶です。ワニはその動きに合わせてパクリ、パクリと顎を挟みますが三巳の尻尾は捕まりません。
「にゅふふん♪三巳の尻尾は手強いぞう♪ワーニーズはここいら詳しいかー?」
フリフリパックンで遊びながら三巳は下にいるワニに訊ねました。
『肉っ!肉っ!』
だけれど残念。ここのワニ達はお腹を空かせてご飯を食べる事しか考えていませんでした。一応これでも神族の一員なのに三巳がお肉に見えているようです。
「むーん。お話が通じないんだよ……」
仕方が無いので三巳は蔓をよじ登って元の定位置に戻りました。
「ミーザンはあーああ~を続行するんだよ」
キリリと眉毛を上げた三巳はお腹の底から声を出してターザンごっこを続行しました。
暫く縦横無尽に進んでいると、どうやら水辺からは離れていたのに気付きました。スルスルと蔓を滑り降り、大きな大きな三巳より大きな葉っぱの上にポフンと降りて、斜めに傾いた葉っぱを滑り降りて地面に着地します。
「ジャングルは色んな植物がビックサイズで面白いなー」
三巳は三巳を降ろした反動でミヨンミヨンと大きく揺らす葉っぱを見上げて言いました。暫くボーッと見ていて、葉っぱの揺れが止まった頃に動き出します。
「さて。どっちに行くんだよ?」
どうやら夢中になり過ぎて来た方角を見失った様です。キョロキョロと辺りを見渡して、けれども辺りは大きな葉っぱで視界が遮られています。
困ってしまった三巳は眉を八の字に下げて、ついでに耳と尻尾も垂れ下げて上を見上げました。
「ま、いっか!あっち行こー♪」
そして直ぐに困る事を止めました。困っていても何も始まらないから動けばいーじゃない♪な精神の持ち主三巳です。
気の向くままにシダっぽいのやらモンステラっぽいのやらを掻き分けて進みます。進んでいると急にパッと視界が開けました。
「にゅお?あー、崖っぷちなんだよー」
見渡す下は遥か遠くです。
ダダダダダ!ドドドドド!などと爆音が左右から聞こえます。チラリと右を見て、
「滝」
チラリと左を見て、
「滝」
左右はもの凄く勢いのある滝でした。しかも横に長いです。
「これは……!かの有名なナイアガラの滝なんだよ!凄い!迫力!かっちょいーんだよ!」
そして三巳は大興奮で観光を始めました。
右にチョロチョロと行っては落ち行く水の流れに感動し、左にチョロチョロと行ってはその勢いに見惚れます。
そしてふと下から上を覗きたくなりました。そのまま足は崖下へ向かいます。そしてあと一歩で真っ逆さまという所で襟がクンッと引かれて止まりました。
勿論喜び勇んで降りる気だった三巳はキョトンと変わらない足元を見ます。そして落ちない現状が不思議でキョトンと小首を傾げます。ここで漸く襟が引かれているという意味を理解しました。後ろを振り向いて確認です。
「んぬ?ライオン?珍しく普通サイズなんだよ」
襟を引いていたのは、いえ、咥えていたのはライオンでした。
大きい物に見慣れていた三巳にとって、地球のライオンと同じ大きさを不思議に思います。けれども筋肉はしっかりと付いているし、シュッとしてスマートな肢体は素早さと力強さを感じさせてくれます。何より頭に生えた鋭い角と額に光る赤い宝石の様な石が、彼が強いモンスターであると物語っています。あとたてがみが何だかとっても格好良いです。
その陽光に輝く金のたてがみと赤い宝石に、三巳は滝を忘れて目を輝かせるのでした。
お腹の底から張り出した声が鬱蒼と茂る緑の中に響きます。
カラフルな鳥達がビックリして飛び出してしまう、そんな声の持ち主は
「たーのしぃー♪」
そう、三巳です。
サリーちゃんとお別れして教わった通りにひとっ飛びした先は、なんとジャングルでした。大きなシダっぽい植物に大きなラフレシアっぽい花がそからかしこに見えます。
そんな秘境っぽい景色に胸躍らない三巳はいません。
マングローブっぽい湿地帯に入るや、蔓植物を素早く見つけて蔓から蔓への大移動です。気分はターザンでしょうか。
「にゅふぅ~ん。腰巻姿でやってみたいんだよ」
やはりターザンごっこでした。ターザンな自分を想像し、いつもの服を引っ張るとちょっと不満顔です。しかし見た目が獣人っぽい三巳が腰巻姿になったならば、野生感が満載となる事でしょう。
「わにゃ!?危なかったー。危うく川だか池だかに落ちるとこだったんだよー」
余裕をこいて片手ターザンしていた三巳はツルッと手を滑らせてしまいました。けれどもギリギリで蔓の先っぽを両手足を絡めて難を逃れました。下にはワニやピラニアっぽい生き物達が三巳を見ています。
「ワニとかピラニアってジャングルにいたのかー?」
ワニもピラニアも動物園や水族館でしか見た事ない三巳はコテンと首を傾げました。
考えてもわからない事は考えないのが三巳です。チラリと下を見て、ウロウロしているワニ達に尻尾をワサリワサリと振ってご挨拶です。ワニはその動きに合わせてパクリ、パクリと顎を挟みますが三巳の尻尾は捕まりません。
「にゅふふん♪三巳の尻尾は手強いぞう♪ワーニーズはここいら詳しいかー?」
フリフリパックンで遊びながら三巳は下にいるワニに訊ねました。
『肉っ!肉っ!』
だけれど残念。ここのワニ達はお腹を空かせてご飯を食べる事しか考えていませんでした。一応これでも神族の一員なのに三巳がお肉に見えているようです。
「むーん。お話が通じないんだよ……」
仕方が無いので三巳は蔓をよじ登って元の定位置に戻りました。
「ミーザンはあーああ~を続行するんだよ」
キリリと眉毛を上げた三巳はお腹の底から声を出してターザンごっこを続行しました。
暫く縦横無尽に進んでいると、どうやら水辺からは離れていたのに気付きました。スルスルと蔓を滑り降り、大きな大きな三巳より大きな葉っぱの上にポフンと降りて、斜めに傾いた葉っぱを滑り降りて地面に着地します。
「ジャングルは色んな植物がビックサイズで面白いなー」
三巳は三巳を降ろした反動でミヨンミヨンと大きく揺らす葉っぱを見上げて言いました。暫くボーッと見ていて、葉っぱの揺れが止まった頃に動き出します。
「さて。どっちに行くんだよ?」
どうやら夢中になり過ぎて来た方角を見失った様です。キョロキョロと辺りを見渡して、けれども辺りは大きな葉っぱで視界が遮られています。
困ってしまった三巳は眉を八の字に下げて、ついでに耳と尻尾も垂れ下げて上を見上げました。
「ま、いっか!あっち行こー♪」
そして直ぐに困る事を止めました。困っていても何も始まらないから動けばいーじゃない♪な精神の持ち主三巳です。
気の向くままにシダっぽいのやらモンステラっぽいのやらを掻き分けて進みます。進んでいると急にパッと視界が開けました。
「にゅお?あー、崖っぷちなんだよー」
見渡す下は遥か遠くです。
ダダダダダ!ドドドドド!などと爆音が左右から聞こえます。チラリと右を見て、
「滝」
チラリと左を見て、
「滝」
左右はもの凄く勢いのある滝でした。しかも横に長いです。
「これは……!かの有名なナイアガラの滝なんだよ!凄い!迫力!かっちょいーんだよ!」
そして三巳は大興奮で観光を始めました。
右にチョロチョロと行っては落ち行く水の流れに感動し、左にチョロチョロと行ってはその勢いに見惚れます。
そしてふと下から上を覗きたくなりました。そのまま足は崖下へ向かいます。そしてあと一歩で真っ逆さまという所で襟がクンッと引かれて止まりました。
勿論喜び勇んで降りる気だった三巳はキョトンと変わらない足元を見ます。そして落ちない現状が不思議でキョトンと小首を傾げます。ここで漸く襟が引かれているという意味を理解しました。後ろを振り向いて確認です。
「んぬ?ライオン?珍しく普通サイズなんだよ」
襟を引いていたのは、いえ、咥えていたのはライオンでした。
大きい物に見慣れていた三巳にとって、地球のライオンと同じ大きさを不思議に思います。けれども筋肉はしっかりと付いているし、シュッとしてスマートな肢体は素早さと力強さを感じさせてくれます。何より頭に生えた鋭い角と額に光る赤い宝石の様な石が、彼が強いモンスターであると物語っています。あとたてがみが何だかとっても格好良いです。
その陽光に輝く金のたてがみと赤い宝石に、三巳は滝を忘れて目を輝かせるのでした。
11
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる