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本編
南の国だからあったかいところに向かえば行けるんだよ(多分!)
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サクサク、サクリ。
何処までも続く平原を行く獣三巳です。最初は草木が生い茂っていましたが、少しづつその数を減らして今は乾いた剥き出しの土が多いです。
『なんだか土がサラサラしてきたんだよ』
三巳は前脚に付いた砂を確認して地平線を見ました。
地面の色は茶色よりも薄くて象牙色に近くなっています。
『砂漠かな?サソリと会えるかもなんだよ』
三巳はとってもワクワクしてきました。タッと速度を上げて地平線を目指します。そしてあっという間に辿り着いた場所はやっぱり砂漠でした。
砂漠の真ん中では突風が吹いたのでしょう。砂のカーテンがサーっと流れているのが見えます。
三巳は脚元の砂をふみふみしました。
『ゆふふふひゅ!ふかふかのさらさらなんだよっ♪』
楽しくなった三巳は4本脚で器用にスキップ踏んで砂地を肉球で堪能しながら前へ前へと進みました。すると砂の山からピョコンと勾玉みたいな丸くて先が尖った赤茶色の物体が現れました。
『サソリ!』
まさにサソリそのものの形に三巳は目を輝かせて近寄ります。驚かさない様にゆっくり歩いて行きますが、それでも獣三巳の歩幅は大きいです。直ぐにサソリの元へと行けると思っていました。
しかし……。
『んにゅぅ?思ったより遠い』
小さい尻尾が見える位です。目と鼻の先にいると思っていたので歩きながら首を傾げます。
気持ち速度を上げて歩いてやっと尻尾が近付いた気がしました。
『およ?』
けれどもそれはそれで疑問が浮かびました。
『サソリの尻尾って……こんなに、大きかったんだよ……?』
そうです。近付けば近付く程サソリの尻尾は大きくなり、到頭三巳の頭位の大きさになってしまいました。
『ワタシはサソリはサソリだけど、人族がモンスターに分類してる方のサソリよん』
ピョコりんと顔と鋏を出したサソリ。全長は三巳と同じかそれ以上ありました。
『こんにちはーなんだよサソリさん……。さん、で良いのか?君のが良いのか?』
『あらヤダ!イイ子!さんでお願いするワ』
バチコーン!と星を散らしてウインクするサソリ。言葉遣いは女らしいですが、三巳の鼻は誤魔化せません。
『そうかーじゃー、サリーちゃんだな!』
『マァ!可愛い呼び名ネ。嬉しいワ』
野太い声で体をくねらせるサソリことサリーちゃんは、オスだったのです。
『サリーちゃんはこの辺詳しいのか?』
『ソォヨ~。これでもこの辺のボス的存在やってるワ』
冒険者達にとってはエリアボス的存在という事でしょう。エヘンと胸を張って、けれども鋏を胸に添えて優美に魅せます。
でも三巳の前世は昭和な生まれのお婆ちゃんだし、今世は引き篭もっていたのでエリアボスがどういうものかわかっていません。わかっていないけどボスという事は取締役的存在だと認識しました。
『そうなのかー。三巳は三巳なんだよ。一応篩の……んとこっち風だと迷いの?森の山にすんでるんだよ』
『アラ、じゃあアナタがウワサの獣神娘ネ』
クスクスと笑うサリーちゃんに、三巳は耳をピコンと立てます。
『ウワサ?』
『半引き篭もりの珍しい獣神って聞いてるワ』
『うぬ。概ね合ってる。外に出てこあい思いするならまったり寝ていたいんだよ』
『ホント面白い子ネ。世界最強種の神族より怖いモノなんてナイじゃない』
『!?何を言う!ハラハラ上司と煽り系となんかやたらと声掛けてくる店員さんとあと怒った母ちゃんはこあいんだぞ!?』
『ソ、ソおなのネ……』
必死に言い募る三巳に、サリーちゃんは引き気味で、でも愛想笑いで頷いてくれます。
(ナニを経験して来たのかしらこの子。まだ若いのに不憫ネ)
とか思われています。
可哀想な子認定された当の本人はそうとは知らずに、理解してくれたとドヤ顔で首を縦に振りました。
『ところでサリーちゃんはカカオの国はどっち方向か知ってるか?』
『カカオ?有名な産地は"グラン"ネ。此処からだと太陽が沈む方向よりやや南に向かえば着くわヨ』
そう言いながらサリーちゃんは尻尾で指し示してくれます。
三巳はその尻尾の後ろから目を凝らしましたが、見える範囲は端から端まで砂漠です。至る所に生き物が生活している姿は見てとれますがそれだけです。
『何も見えないんだよ』
ガッカリしてペショリと耳を垂らしてしまう三巳です。
その姿があまりに悲しそうだったのでサリーちゃんはクスクスと笑いながら頭を撫でてくれました。硬い鋏は砂漠にあってもヒンヤリ冷たくて気持ちが良いです。よく見ないとわかりませんが、表面に霜が付いているのでそういう力を使っているのでしょう。
『コノ砂漠は世界で一番広いのヨ。迷いの森と並んで帰らずの砂漠って言われてるワ。マァ、獣神ちゃんなら一足飛びで行けちゃうから安心してネ』
『うにゅ、そーなのかー。ありがとうなんだよ!』
行き先も決まり、行き方も太鼓判を押して貰えた三巳は安心して先へと進みます。
鋏を振って見送ってくれるサリーちゃんとバイバイして、向かう先はグランに決めたのでした。
何処までも続く平原を行く獣三巳です。最初は草木が生い茂っていましたが、少しづつその数を減らして今は乾いた剥き出しの土が多いです。
『なんだか土がサラサラしてきたんだよ』
三巳は前脚に付いた砂を確認して地平線を見ました。
地面の色は茶色よりも薄くて象牙色に近くなっています。
『砂漠かな?サソリと会えるかもなんだよ』
三巳はとってもワクワクしてきました。タッと速度を上げて地平線を目指します。そしてあっという間に辿り着いた場所はやっぱり砂漠でした。
砂漠の真ん中では突風が吹いたのでしょう。砂のカーテンがサーっと流れているのが見えます。
三巳は脚元の砂をふみふみしました。
『ゆふふふひゅ!ふかふかのさらさらなんだよっ♪』
楽しくなった三巳は4本脚で器用にスキップ踏んで砂地を肉球で堪能しながら前へ前へと進みました。すると砂の山からピョコンと勾玉みたいな丸くて先が尖った赤茶色の物体が現れました。
『サソリ!』
まさにサソリそのものの形に三巳は目を輝かせて近寄ります。驚かさない様にゆっくり歩いて行きますが、それでも獣三巳の歩幅は大きいです。直ぐにサソリの元へと行けると思っていました。
しかし……。
『んにゅぅ?思ったより遠い』
小さい尻尾が見える位です。目と鼻の先にいると思っていたので歩きながら首を傾げます。
気持ち速度を上げて歩いてやっと尻尾が近付いた気がしました。
『およ?』
けれどもそれはそれで疑問が浮かびました。
『サソリの尻尾って……こんなに、大きかったんだよ……?』
そうです。近付けば近付く程サソリの尻尾は大きくなり、到頭三巳の頭位の大きさになってしまいました。
『ワタシはサソリはサソリだけど、人族がモンスターに分類してる方のサソリよん』
ピョコりんと顔と鋏を出したサソリ。全長は三巳と同じかそれ以上ありました。
『こんにちはーなんだよサソリさん……。さん、で良いのか?君のが良いのか?』
『あらヤダ!イイ子!さんでお願いするワ』
バチコーン!と星を散らしてウインクするサソリ。言葉遣いは女らしいですが、三巳の鼻は誤魔化せません。
『そうかーじゃー、サリーちゃんだな!』
『マァ!可愛い呼び名ネ。嬉しいワ』
野太い声で体をくねらせるサソリことサリーちゃんは、オスだったのです。
『サリーちゃんはこの辺詳しいのか?』
『ソォヨ~。これでもこの辺のボス的存在やってるワ』
冒険者達にとってはエリアボス的存在という事でしょう。エヘンと胸を張って、けれども鋏を胸に添えて優美に魅せます。
でも三巳の前世は昭和な生まれのお婆ちゃんだし、今世は引き篭もっていたのでエリアボスがどういうものかわかっていません。わかっていないけどボスという事は取締役的存在だと認識しました。
『そうなのかー。三巳は三巳なんだよ。一応篩の……んとこっち風だと迷いの?森の山にすんでるんだよ』
『アラ、じゃあアナタがウワサの獣神娘ネ』
クスクスと笑うサリーちゃんに、三巳は耳をピコンと立てます。
『ウワサ?』
『半引き篭もりの珍しい獣神って聞いてるワ』
『うぬ。概ね合ってる。外に出てこあい思いするならまったり寝ていたいんだよ』
『ホント面白い子ネ。世界最強種の神族より怖いモノなんてナイじゃない』
『!?何を言う!ハラハラ上司と煽り系となんかやたらと声掛けてくる店員さんとあと怒った母ちゃんはこあいんだぞ!?』
『ソ、ソおなのネ……』
必死に言い募る三巳に、サリーちゃんは引き気味で、でも愛想笑いで頷いてくれます。
(ナニを経験して来たのかしらこの子。まだ若いのに不憫ネ)
とか思われています。
可哀想な子認定された当の本人はそうとは知らずに、理解してくれたとドヤ顔で首を縦に振りました。
『ところでサリーちゃんはカカオの国はどっち方向か知ってるか?』
『カカオ?有名な産地は"グラン"ネ。此処からだと太陽が沈む方向よりやや南に向かえば着くわヨ』
そう言いながらサリーちゃんは尻尾で指し示してくれます。
三巳はその尻尾の後ろから目を凝らしましたが、見える範囲は端から端まで砂漠です。至る所に生き物が生活している姿は見てとれますがそれだけです。
『何も見えないんだよ』
ガッカリしてペショリと耳を垂らしてしまう三巳です。
その姿があまりに悲しそうだったのでサリーちゃんはクスクスと笑いながら頭を撫でてくれました。硬い鋏は砂漠にあってもヒンヤリ冷たくて気持ちが良いです。よく見ないとわかりませんが、表面に霜が付いているのでそういう力を使っているのでしょう。
『コノ砂漠は世界で一番広いのヨ。迷いの森と並んで帰らずの砂漠って言われてるワ。マァ、獣神ちゃんなら一足飛びで行けちゃうから安心してネ』
『うにゅ、そーなのかー。ありがとうなんだよ!』
行き先も決まり、行き方も太鼓判を押して貰えた三巳は安心して先へと進みます。
鋏を振って見送ってくれるサリーちゃんとバイバイして、向かう先はグランに決めたのでした。
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