205 / 368
本編
ロウ村長 山を出る
しおりを挟む
雪もすっかり解けて剥き出しの地面も乾いた頃。山の民達は動き出していました。
「さて、メンバーも決まり、準備も万端だ。向こうさんからも返事が来ていつでも大丈夫との事。という訳で明日出発する」
珍しく三巳も出席している会合の中、ロウ村長が厳かに告げました。皺が出始めたお年頃なのに意気揚々溌剌とした良い笑顔です。言葉の重さと顔が合っていません。
「「「はぁ~」」」
危険視される山の外へ行くというのにソワソワを止める気も無いロウ村長に、山の民達は諦めた目で長い溜息を吐いてしまいます。
「そんなに心配せんでもロウ村長なら大丈夫なんだよ。伊達に三巳と遊んでないし若い頃に無茶もしてない。それに往復は三巳の背の上だ。何を心配してるんだ?」
フサリと毛先を大きく振る三巳は、本気でわからず小首を傾げます。
それを横目で見た山の民は内心で“類友”という言葉が過ぎりました。
「いえね。聞いた話じゃリファラの民は大人しい人が多いというじゃないか。そこに、ロウ村長を、投入するのか、と……」
どうやら心配していたのはリファラの民の方でした。一言一句を区切って見やる先のロウ村長は、ガッハッハと笑い飛ばしながらリファラの代表の肩をバッシバッシと叩きそうです。
「アレで締める所は締める人だけど、念の為ちゃんと見ていておくれよ」
山に残る全ての山の民の気持ちを乗せた手を肩に乗せられたのは、今回同行するロザイヤです。ロザイヤは乾いた笑みで口を引くつかせます。
「まあ……何とか……無茶だけは、抑える……」
この時居残り組の皆の心が、
(頑張れ!)
という言葉で合いました。
さて、何はともあれロウ村長の初めての出張です。村の入り口ではロウ村長とその仲間達を見送る為に山の民達が集まっていました。
「ではワシが留守の間は頼んだぞ、ロダよ」
その一番前に陣取っていたのはなんとロダでした。
ロダは元々年長組の中でもトップレベルの実力者でした。それが更にロウ村長を除いて唯一山の外での経験を積んだ猛者となったのです。最早次の村長はロダだろうとみられていたのです。
とはいえまだまだやっと今年に成人を迎える若者です。今はまだ大人の師事が必要でしょう。
「ロキ医師、ロジン。良く導いてやってくれ」
「ほっほっほ。こちらは任せて安心して行って来なされ」
「ああ。ロダは出来る男だ。帰って来て村長の座が変わっているやもしれんな」
「何?それは暁光。ならワシはそのまま冒険者に……」
ロキ医師とロジンの軽口に、ロウ村長はキラリと目を光らせました。
「あなた……?」
ですがその背後で迫力のある凄み笑顔な奥さんに立たれて冷や汗が滝となって流れました。
「うおっほん!冗談はこの位にしてパッと行ってパッと帰ってくる!本当だからな!」
何とも嘘くさい誤魔化しですが、奥さんは「絶対ですよ」と念押しして見送り側に戻ります。ロウ村長の目が本気だったのは山の民全員が察しているのです。
「うむ!では行ってくるぞ!」
「「「行ってきます」」」
そそくさと踵を返したロウ村長に続き、同行する山の民達も手を振って一時お別れです。
勿論三巳もブンブカと手を振って付いて行きます。大人組は山の外への行き方を知っているので楽ちんだと、尻尾をフリフリ鼻歌フンフンさせながらお散歩気分でレッツらゴーゴー♪な三巳なのでした。
「さて、メンバーも決まり、準備も万端だ。向こうさんからも返事が来ていつでも大丈夫との事。という訳で明日出発する」
珍しく三巳も出席している会合の中、ロウ村長が厳かに告げました。皺が出始めたお年頃なのに意気揚々溌剌とした良い笑顔です。言葉の重さと顔が合っていません。
「「「はぁ~」」」
危険視される山の外へ行くというのにソワソワを止める気も無いロウ村長に、山の民達は諦めた目で長い溜息を吐いてしまいます。
「そんなに心配せんでもロウ村長なら大丈夫なんだよ。伊達に三巳と遊んでないし若い頃に無茶もしてない。それに往復は三巳の背の上だ。何を心配してるんだ?」
フサリと毛先を大きく振る三巳は、本気でわからず小首を傾げます。
それを横目で見た山の民は内心で“類友”という言葉が過ぎりました。
「いえね。聞いた話じゃリファラの民は大人しい人が多いというじゃないか。そこに、ロウ村長を、投入するのか、と……」
どうやら心配していたのはリファラの民の方でした。一言一句を区切って見やる先のロウ村長は、ガッハッハと笑い飛ばしながらリファラの代表の肩をバッシバッシと叩きそうです。
「アレで締める所は締める人だけど、念の為ちゃんと見ていておくれよ」
山に残る全ての山の民の気持ちを乗せた手を肩に乗せられたのは、今回同行するロザイヤです。ロザイヤは乾いた笑みで口を引くつかせます。
「まあ……何とか……無茶だけは、抑える……」
この時居残り組の皆の心が、
(頑張れ!)
という言葉で合いました。
さて、何はともあれロウ村長の初めての出張です。村の入り口ではロウ村長とその仲間達を見送る為に山の民達が集まっていました。
「ではワシが留守の間は頼んだぞ、ロダよ」
その一番前に陣取っていたのはなんとロダでした。
ロダは元々年長組の中でもトップレベルの実力者でした。それが更にロウ村長を除いて唯一山の外での経験を積んだ猛者となったのです。最早次の村長はロダだろうとみられていたのです。
とはいえまだまだやっと今年に成人を迎える若者です。今はまだ大人の師事が必要でしょう。
「ロキ医師、ロジン。良く導いてやってくれ」
「ほっほっほ。こちらは任せて安心して行って来なされ」
「ああ。ロダは出来る男だ。帰って来て村長の座が変わっているやもしれんな」
「何?それは暁光。ならワシはそのまま冒険者に……」
ロキ医師とロジンの軽口に、ロウ村長はキラリと目を光らせました。
「あなた……?」
ですがその背後で迫力のある凄み笑顔な奥さんに立たれて冷や汗が滝となって流れました。
「うおっほん!冗談はこの位にしてパッと行ってパッと帰ってくる!本当だからな!」
何とも嘘くさい誤魔化しですが、奥さんは「絶対ですよ」と念押しして見送り側に戻ります。ロウ村長の目が本気だったのは山の民全員が察しているのです。
「うむ!では行ってくるぞ!」
「「「行ってきます」」」
そそくさと踵を返したロウ村長に続き、同行する山の民達も手を振って一時お別れです。
勿論三巳もブンブカと手を振って付いて行きます。大人組は山の外への行き方を知っているので楽ちんだと、尻尾をフリフリ鼻歌フンフンさせながらお散歩気分でレッツらゴーゴー♪な三巳なのでした。
11
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる