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本編
三巳の力と木の変化
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森の中にポツンと広がる空間に、木が一本真っ直ぐお日様に向かって伸びています。
根本を見ても立派な太い幹と根が見えますが、この木が以前倒れてしまった跡は殆どわかりません。言われなければ気付かなかった事でしょう。
「成る程ー。確かにここん所が幹別れしてるね。でも確かに同じ木だ」
植物と共に育っただいやんが言うのだから過去に倒れた木と、今目の前に立つ木は同じ木です。
『三巳様のお力の残滓が見えますね』
「うぬ。三巳が倒しちゃったからな。早く元気になる様にゴメンねって気持ち込めて力を注いだんだよ」
『それでですね。この木は神気を内包しています』
「だねー。この子ってば半ば世界樹になりかけてる」
「そっかー。三巳の所為で世界樹に……。世界樹?」
だいやんのなんて事ない風な物言いに流しそうになった三巳です。けれど何かおかしい気がしてキョトンと首を傾げました。
やっぱり意味が分かってないネルビーもキョトンとシンクロしていて可愛らしいです。
『世界樹ってリリが良く読んでた絵本に出てたやつか?』
ネルビーがお座りして鼻を高く上げて思い出そうと必死になります。
「世界樹って世界を支える一本の木?」
三巳が地球の神話を思い出して反対に首を傾げます。
その1人と1匹の姿にだいやんはサラちゃんと顔を見合わせます。
「ネルビーの絵本は知らないよー。おいらこの山から出た事ないしね。
三巳の世界樹の認識って何処の誤情報さー。いやある意味支えてるのかもしれないけど世界樹って数は少ないけどそこそこ生えてるってもんだよ」
『ですね。私の知る限りでは現在世界に4本ありますね』
妖精種と精霊種共に良く知り得ていそうな物言いに、三巳は
(まー地球の世界樹は空想上のものだしなー)
と遠い目をして世界感の違いを感じました。
「それじゃあ世界樹って何なのか教えて欲しいんだよ」
「マナを生み出し世界に満たす循環機関で属性的には精霊族に近いかな?」
『世界樹はその同身体となる精霊が生まれて初めて世界樹となるのです』
「そそ。有名な所だとユグドラシルとかかなー」
『最古の世界樹と言われていますからね』
『マナって何だ?』
難しいお話にネルビーはポカンと口を開けて目を回しています。
三巳は苦笑してネルビーの頭をワシワシと撫でました。
「それ位は三巳でも知ってる。何物にも属さない、何物にもなれる純然たる見えざる力そのもの。で合ってるよな?」
知ってはいましたが世界樹の例があった為に念の為に確認します。
「あってるあってる~♪」
軽い調子で親指上げて答えてくれただいやんに、三巳はニコッとして頷きました。
「そっかー。この子ももしかしたらもしかするんだなー」
『三巳様のお膝元ですからね。ほぼ確定でしょう』
「うにゅ?三巳がいると何が違うんだ?」
「三巳って言うよりか神族って言った方が良いかな」
『良くも悪くも神々はそれ以外の種に影響を及ぼすのですよ』
だいやんとサラちゃんの言葉に三巳はそういうものかと思い、しかも今は母獣もいるからそうかもしれないとも思いました。そして改めて木を見上げます。
「あの時はごめんなさいなんだよ。元気に育ってくれてありがとうなんだよ」
もふりと尻尾を揺らして言うと、世界樹になりかけている木が「サワワ。サワサワワ」と揺れました。
「んへ。ありがとうなー」
『??何言われたんだ?』
木の揺れに合わせてお礼を言った三巳に、ネルビーが首を傾げて聞きます。
「んとなー、『私達は踏まれても、葉っぱが枯れても何度でも根っこからもっと強く大きくなれるから気にしないで』って言ってくれたんだよ」
「そーそ。植物は繊細なよーで案外強いのさ」
『無理矢理枯らそうとしない限りは何度でも甦る生命力を持っている』
『そうか!よくわかんないけど強いんだな!』
ネルビーが元気よく吠えると、木も合わせてサワサワ揺れるのでした。
「ところで三巳は良い企画考え付いたんだよ」
そしてポツリと漏らしたニヤリ顔三巳がいるのでした。
根本を見ても立派な太い幹と根が見えますが、この木が以前倒れてしまった跡は殆どわかりません。言われなければ気付かなかった事でしょう。
「成る程ー。確かにここん所が幹別れしてるね。でも確かに同じ木だ」
植物と共に育っただいやんが言うのだから過去に倒れた木と、今目の前に立つ木は同じ木です。
『三巳様のお力の残滓が見えますね』
「うぬ。三巳が倒しちゃったからな。早く元気になる様にゴメンねって気持ち込めて力を注いだんだよ」
『それでですね。この木は神気を内包しています』
「だねー。この子ってば半ば世界樹になりかけてる」
「そっかー。三巳の所為で世界樹に……。世界樹?」
だいやんのなんて事ない風な物言いに流しそうになった三巳です。けれど何かおかしい気がしてキョトンと首を傾げました。
やっぱり意味が分かってないネルビーもキョトンとシンクロしていて可愛らしいです。
『世界樹ってリリが良く読んでた絵本に出てたやつか?』
ネルビーがお座りして鼻を高く上げて思い出そうと必死になります。
「世界樹って世界を支える一本の木?」
三巳が地球の神話を思い出して反対に首を傾げます。
その1人と1匹の姿にだいやんはサラちゃんと顔を見合わせます。
「ネルビーの絵本は知らないよー。おいらこの山から出た事ないしね。
三巳の世界樹の認識って何処の誤情報さー。いやある意味支えてるのかもしれないけど世界樹って数は少ないけどそこそこ生えてるってもんだよ」
『ですね。私の知る限りでは現在世界に4本ありますね』
妖精種と精霊種共に良く知り得ていそうな物言いに、三巳は
(まー地球の世界樹は空想上のものだしなー)
と遠い目をして世界感の違いを感じました。
「それじゃあ世界樹って何なのか教えて欲しいんだよ」
「マナを生み出し世界に満たす循環機関で属性的には精霊族に近いかな?」
『世界樹はその同身体となる精霊が生まれて初めて世界樹となるのです』
「そそ。有名な所だとユグドラシルとかかなー」
『最古の世界樹と言われていますからね』
『マナって何だ?』
難しいお話にネルビーはポカンと口を開けて目を回しています。
三巳は苦笑してネルビーの頭をワシワシと撫でました。
「それ位は三巳でも知ってる。何物にも属さない、何物にもなれる純然たる見えざる力そのもの。で合ってるよな?」
知ってはいましたが世界樹の例があった為に念の為に確認します。
「あってるあってる~♪」
軽い調子で親指上げて答えてくれただいやんに、三巳はニコッとして頷きました。
「そっかー。この子ももしかしたらもしかするんだなー」
『三巳様のお膝元ですからね。ほぼ確定でしょう』
「うにゅ?三巳がいると何が違うんだ?」
「三巳って言うよりか神族って言った方が良いかな」
『良くも悪くも神々はそれ以外の種に影響を及ぼすのですよ』
だいやんとサラちゃんの言葉に三巳はそういうものかと思い、しかも今は母獣もいるからそうかもしれないとも思いました。そして改めて木を見上げます。
「あの時はごめんなさいなんだよ。元気に育ってくれてありがとうなんだよ」
もふりと尻尾を揺らして言うと、世界樹になりかけている木が「サワワ。サワサワワ」と揺れました。
「んへ。ありがとうなー」
『??何言われたんだ?』
木の揺れに合わせてお礼を言った三巳に、ネルビーが首を傾げて聞きます。
「んとなー、『私達は踏まれても、葉っぱが枯れても何度でも根っこからもっと強く大きくなれるから気にしないで』って言ってくれたんだよ」
「そーそ。植物は繊細なよーで案外強いのさ」
『無理矢理枯らそうとしない限りは何度でも甦る生命力を持っている』
『そうか!よくわかんないけど強いんだな!』
ネルビーが元気よく吠えると、木も合わせてサワサワ揺れるのでした。
「ところで三巳は良い企画考え付いたんだよ」
そしてポツリと漏らしたニヤリ顔三巳がいるのでした。
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