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本編
もー直ぐクリスマス♪
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しんしんと白い雪が舞い降りる冬の始まり。山頂はもうすっかり白いお化粧で顔を隠しています。
「ぬふー。空気がキンと冷える今日この頃ー」
お洋服はぬくぬくコートを羽織った三巳ですが、相変わらず裸足で歩いています。
『空間調整位せぬのか』
両手に「はー」と息をかけて擦り合わせる三巳に、隣を歩く母獣が見上げて言いました。
「季節感は楽しみたいんだよ」
『そういうものか』
寒いのも楽しむ三巳ですが、怪我も病気もしないから無茶も出来てるのです。
とはいえ矢張り寒いのは少し耐え難いものがある様です。隣を歩く白銀の毛だまりに温さを見出し誘惑に駆られます。
「母ちゃん抱っこして歩いて良いか?」
ソワソワして聞く三巳に、母獣は半眼です。
『自身の尻尾でも巻き付ければ良かろう』
ふいとそっぽを向いて断る母獣に、三巳は成る程確かにそうだと尻尾をふわりと膨らませます。わさわさと軽く振って毛並みを良い感じに整えたらクルンと体に巻き付けました。
「ぬふー、ぬくぬくなんだよ♪」
肩まですっぽり尻尾で覆ったらまるで雪男の様な姿です。けれども自分の姿を客観的に見えない三巳は温かい尻尾コートにご満悦です。
『それでクリスマスだったかの』
「うぬ。三巳がいない間良い子のプレゼント母ちゃんに頼んでたろ。どんな塩梅だった?」
『ふむ、初めて体験したが中々興味深いものだったのう。プレゼントも概ね好評であったぞ』
「それは良かったんだよ!母ちゃんに代理頼んで良かった!」
『プレゼントを考えたのはクロだがの。我の用意した物は何故か笑顔で横にやられてな。何がいけなかったのかのう』
本気でわからない母獣は首を傾げています。
勿論それを見ていない三巳もわからず首を傾げました。
「父ちゃんも楽しめたなら良かったんだよ」
わからないけど皆が楽しいなら良いかと頷き納得します。
「今年からは三巳のプレゼント復活だからな。張り切るんだよ」
尻尾コートから出した両拳をブンと振って気合充填すると、ムフンと鼻息も漏らします。そして山中を散策しながらキョロキョロして、キラリと光る良い物を探して回りました。
「ちみっ子達は何が喜ぶかなー。竹とんぼはもう沢山あるしー、お手玉は大分解れてたけど大人組が直してくれるしなー」
既にある物を指折り数える三巳を、隣の母獣は優しい目で見守っています。
(クロの言う、子はいくつになっても子だと言うのが何となくわかるの)
大きくなっても、一人で出来る事が増えてても、やっぱり自分の子供はどこか特別なんだと感じる母獣なのでした。そして同時に神ではなく母として三巳にしてやりたい事は何だろうと考え、取り敢えず差し当たってやりたい事を直ぐに思い付いて目を細めて「ふっ」と笑うのでした。
「ぬふー。空気がキンと冷える今日この頃ー」
お洋服はぬくぬくコートを羽織った三巳ですが、相変わらず裸足で歩いています。
『空間調整位せぬのか』
両手に「はー」と息をかけて擦り合わせる三巳に、隣を歩く母獣が見上げて言いました。
「季節感は楽しみたいんだよ」
『そういうものか』
寒いのも楽しむ三巳ですが、怪我も病気もしないから無茶も出来てるのです。
とはいえ矢張り寒いのは少し耐え難いものがある様です。隣を歩く白銀の毛だまりに温さを見出し誘惑に駆られます。
「母ちゃん抱っこして歩いて良いか?」
ソワソワして聞く三巳に、母獣は半眼です。
『自身の尻尾でも巻き付ければ良かろう』
ふいとそっぽを向いて断る母獣に、三巳は成る程確かにそうだと尻尾をふわりと膨らませます。わさわさと軽く振って毛並みを良い感じに整えたらクルンと体に巻き付けました。
「ぬふー、ぬくぬくなんだよ♪」
肩まですっぽり尻尾で覆ったらまるで雪男の様な姿です。けれども自分の姿を客観的に見えない三巳は温かい尻尾コートにご満悦です。
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「うぬ。三巳がいない間良い子のプレゼント母ちゃんに頼んでたろ。どんな塩梅だった?」
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「それは良かったんだよ!母ちゃんに代理頼んで良かった!」
『プレゼントを考えたのはクロだがの。我の用意した物は何故か笑顔で横にやられてな。何がいけなかったのかのう』
本気でわからない母獣は首を傾げています。
勿論それを見ていない三巳もわからず首を傾げました。
「父ちゃんも楽しめたなら良かったんだよ」
わからないけど皆が楽しいなら良いかと頷き納得します。
「今年からは三巳のプレゼント復活だからな。張り切るんだよ」
尻尾コートから出した両拳をブンと振って気合充填すると、ムフンと鼻息も漏らします。そして山中を散策しながらキョロキョロして、キラリと光る良い物を探して回りました。
「ちみっ子達は何が喜ぶかなー。竹とんぼはもう沢山あるしー、お手玉は大分解れてたけど大人組が直してくれるしなー」
既にある物を指折り数える三巳を、隣の母獣は優しい目で見守っています。
(クロの言う、子はいくつになっても子だと言うのが何となくわかるの)
大きくなっても、一人で出来る事が増えてても、やっぱり自分の子供はどこか特別なんだと感じる母獣なのでした。そして同時に神ではなく母として三巳にしてやりたい事は何だろうと考え、取り敢えず差し当たってやりたい事を直ぐに思い付いて目を細めて「ふっ」と笑うのでした。
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