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本編
三巳とカカオと父ちゃんと
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リファラとサヨナラして正式に山に帰って来て直ぐの事です。
ロキ医師の家はハンナも加わった事で手狭になったし、三巳の両親も自分達の家を用意していたので三巳もそっちにお引越ししていました。
前ほどリリとは会わなくなったけれど、今の三巳にはとっても重要且つ綿密な計画が頭を占有しているので忙しいのです。
「ぬふふふふ~♪
来たぞ来たぞ三巳の時代が来たんだよ♪」
いつもの調子の外れた音程に、尻尾がワサワサ振られて楽しいが伝わってきます。
そんな三巳の前には木の実が山となって積まれています。
「ちょこれーと!作るんだよ!」
そうです。カカオです。
リファラに行商に来ていた南の国の人から買えるだけ買えたのです。三巳は鼻息荒くふんすふんすと興奮をしています。していますが一向に行動を起こしません。
「…………どーやって作るんだ?」
そうです。三巳はチョコレートの作り方を知らなかったのです。
当たり前といえば当たり前の話でした。普通のOLがカカオからチョコレートを自作する機会なんて極稀でしょう。
「しまった。困ったんだよ」
大量のカカオを前に腕を組んだ三巳は、右にコテン。左にコテンとうんうん唸りながら悩んでしまいます。
『どうした三巳よ』
そこへ声を掛けたのは小さなサイズの母獣です。
三巳は視線をカカオから母獣へ移して困り眉毛に下げました。
「三巳……チョコレートの作り方知らなかったんだよ……」
しょんぼりしょもも。三巳の耳も尻尾も力無くタランと垂れ下がってしまっています。
母獣は片眉を器用に上げると口に前脚を当てて『ふむ』と思います。そして徐に踵を返すとお外へ出て行ってしまいました。
「母ちゃん?」
三巳はポカンとして母獣の出て行った先を見ています。
暫くして母獣が帰ってきました。隣にはニコニコ笑顔のクロも一緒です。
「??父ちゃん?お仕事行ったんじゃなかったのか?」
「お仕事よりも三巳の方が大事だよ」
そう言ってクロは三巳の隣に腰掛けました。しょんもりしょももな三巳尻尾に、クロの長くて細い尻尾が労わる様にぽんぽんと重なります。
「私はあちこちを放浪としていたからね。色んな事を学んで来たんだよ」
クロは慈愛の目で三巳を見て言います。それだけで母獣が三巳の為にクロに話を通してくれていたとわかります。
三巳は嬉しくなって耳と尻尾をピコピコ振りました。
「三巳はチョコレート食べたいんだよ」
そう言った三巳は目をキラキラさせて、前世で堪能してきたアレやコレやのショコラスイーツをクロに教えます。どういう美味しさかを身振り手振りで語る三巳は、とっても幸せそうで、クロはその望みを叶えてあげたくなりました。
「成る程、それはとっても幸せになりそうな味だね」
愛娘の頭を撫で撫でするクロは、「ふふふ」と笑みを漏らして頷きます。ニャンコなお目々を細くして、お口で弧を描き、長いお髭をピコンピコン揺らしてクロの方が幸せそうです。
そんなクロの姿に母獣もニッコリニコニコ幸せそうに横で伏せています。
和やかな家族の一時は、
「ちょこけーきはわからないけれど、チョコレートなら作れるよ」
とクロの言った一言で終わりを告げました。何故なら三巳が大興奮にピョンコピョンコと跳ね回り始めたからです。
「ホントか!?父ちゃん!チョコ!三巳チョコ食べれるのか!?バレンタイン今度こそ広めれるのか!?」
「ばれんたいんはわからないけれど、三巳の為に美味しく作るよ」
『クロよ、我にも作ってくれるのだろ?』
「勿論だとも愛しいひと」
クロは長い時間を母獣と過ごす為、彼方此方に居を移して生活していました。それはつまり南の国にも住んだ事があったという事です。
こうして三巳の三巳による三巳と大好きな人達の為のチョコ食べる日大計画が始動したのでした。
ロキ医師の家はハンナも加わった事で手狭になったし、三巳の両親も自分達の家を用意していたので三巳もそっちにお引越ししていました。
前ほどリリとは会わなくなったけれど、今の三巳にはとっても重要且つ綿密な計画が頭を占有しているので忙しいのです。
「ぬふふふふ~♪
来たぞ来たぞ三巳の時代が来たんだよ♪」
いつもの調子の外れた音程に、尻尾がワサワサ振られて楽しいが伝わってきます。
そんな三巳の前には木の実が山となって積まれています。
「ちょこれーと!作るんだよ!」
そうです。カカオです。
リファラに行商に来ていた南の国の人から買えるだけ買えたのです。三巳は鼻息荒くふんすふんすと興奮をしています。していますが一向に行動を起こしません。
「…………どーやって作るんだ?」
そうです。三巳はチョコレートの作り方を知らなかったのです。
当たり前といえば当たり前の話でした。普通のOLがカカオからチョコレートを自作する機会なんて極稀でしょう。
「しまった。困ったんだよ」
大量のカカオを前に腕を組んだ三巳は、右にコテン。左にコテンとうんうん唸りながら悩んでしまいます。
『どうした三巳よ』
そこへ声を掛けたのは小さなサイズの母獣です。
三巳は視線をカカオから母獣へ移して困り眉毛に下げました。
「三巳……チョコレートの作り方知らなかったんだよ……」
しょんぼりしょもも。三巳の耳も尻尾も力無くタランと垂れ下がってしまっています。
母獣は片眉を器用に上げると口に前脚を当てて『ふむ』と思います。そして徐に踵を返すとお外へ出て行ってしまいました。
「母ちゃん?」
三巳はポカンとして母獣の出て行った先を見ています。
暫くして母獣が帰ってきました。隣にはニコニコ笑顔のクロも一緒です。
「??父ちゃん?お仕事行ったんじゃなかったのか?」
「お仕事よりも三巳の方が大事だよ」
そう言ってクロは三巳の隣に腰掛けました。しょんもりしょももな三巳尻尾に、クロの長くて細い尻尾が労わる様にぽんぽんと重なります。
「私はあちこちを放浪としていたからね。色んな事を学んで来たんだよ」
クロは慈愛の目で三巳を見て言います。それだけで母獣が三巳の為にクロに話を通してくれていたとわかります。
三巳は嬉しくなって耳と尻尾をピコピコ振りました。
「三巳はチョコレート食べたいんだよ」
そう言った三巳は目をキラキラさせて、前世で堪能してきたアレやコレやのショコラスイーツをクロに教えます。どういう美味しさかを身振り手振りで語る三巳は、とっても幸せそうで、クロはその望みを叶えてあげたくなりました。
「成る程、それはとっても幸せになりそうな味だね」
愛娘の頭を撫で撫でするクロは、「ふふふ」と笑みを漏らして頷きます。ニャンコなお目々を細くして、お口で弧を描き、長いお髭をピコンピコン揺らしてクロの方が幸せそうです。
そんなクロの姿に母獣もニッコリニコニコ幸せそうに横で伏せています。
和やかな家族の一時は、
「ちょこけーきはわからないけれど、チョコレートなら作れるよ」
とクロの言った一言で終わりを告げました。何故なら三巳が大興奮にピョンコピョンコと跳ね回り始めたからです。
「ホントか!?父ちゃん!チョコ!三巳チョコ食べれるのか!?バレンタイン今度こそ広めれるのか!?」
「ばれんたいんはわからないけれど、三巳の為に美味しく作るよ」
『クロよ、我にも作ってくれるのだろ?』
「勿論だとも愛しいひと」
クロは長い時間を母獣と過ごす為、彼方此方に居を移して生活していました。それはつまり南の国にも住んだ事があったという事です。
こうして三巳の三巳による三巳と大好きな人達の為のチョコ食べる日大計画が始動したのでした。
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