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本編
リファラの総理大臣みたいな人
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三巳の目の前には所狭しと料理が並んでいます。
「にゅ~……。にゅ~……」
そして三巳は其れらを前にお預けを食らっていました。
「食べるのは話が終わってからだ」
無論食らわせたのはオーウェンギルド長です。
大事なお話を食べながらするのは些かお行儀が悪いと「めっ」されてしまったのです。
「にゅ~……」
お陰でさっきから三巳の目が恨みがましくオーウェンギルド長を見ています。大量の涎を垂らしながら。
「はっはっは。気にせず食べて構わないよ」
目の前に座ったリドルは優しく言ってくれました。
それに顔を輝かせた三巳は、けれど半眼のオーウェンギルド長を見て俯き唇を噛み締めました。
「……大丈夫なんだよ……。三巳だって大人だから我慢出来るんだよ……」
と、全然大丈夫じゃなさそうに言いましたが、決して涙は見せません。血の涙は心の中で流すのです。
尻尾を丸めてピルピル震える三巳に、オーウェンギルド長は盛大な溜息を吐きました。
「獣神娘が耐えてる内に話しちまおう」
「そうだね、それじゃあ改めて」
頭を抱えるオーウェンギルド長に、リドルも頷き居住まいを正しました。
「今日は私個人ではなく、リファラの統轄としてお話したいんだったね」
リドルはそう言って眼鏡を光らせます。
そうです。気の良いおいちゃんにしか見えないこの人こそ、現在リファラの政治を取り纏めている国のトップなのです。立ち位置的には総理大臣や大統領が近いです。
「うぬ。そうなんだよ。だからリリの父ちゃんのはとこのリドルおいちゃんは今はお休みしててなんだよ」
そしてリドルはリリの親戚のおじさんでもありました。リリのお父さんのはとこで、名前はリドル・リフィルです。
リドルはリリがリファラに帰って来た時には一番大怪我を負っていました。何故なら国民を守る為に体を張って頑張っていたからです。ホロホロで作った薬とリリの回復魔法で今ではすっかり元気の筈ですが、今でも政務を頑張り過ぎて目の下にクマさんを飼っている事が多い人です。
三巳は元気になったリドルにしか会っていませんが、当時の事を話すリリが涙目なのできっと相当に酷かったのだろうと感じています。
「でもまたお仕事頑張り過ぎてクマさん飼わないようになー。程々のお話で終わらすんだよ」
三巳はお母さんの気分でリドルの目の下を鋭く凝視しました。化粧で誤魔化していても、その下にクマさんを飼っているのはお見通しなのです。
「あはー、やっぱり三巳ちゃんに隠し事は出来ないねぇ。
でも三巳ちゃんとお話するのは私にとってとても良い息抜きになっているからね。出来れば沢山お話聞きたいな」
リドルは参った参ったと降参のポーズを取ると、お茶目にウィンクをしてニッコリ微笑みました。
「うぬ。ならば聞かせてしんぜよー。三巳は今日はいっぱい山の事お話するんだよ!」
むふーと嬉しさに胸を膨らませた三巳は、そう言うと膨らませた胸を更に逸らして尻尾と耳をピーン!と立たせました。
そうして山の事とロウ村長とお話した今後のお付き合いの事を、身振り手振りを交えて楽しく語るのでした。
「にゅ~……。にゅ~……」
そして三巳は其れらを前にお預けを食らっていました。
「食べるのは話が終わってからだ」
無論食らわせたのはオーウェンギルド長です。
大事なお話を食べながらするのは些かお行儀が悪いと「めっ」されてしまったのです。
「にゅ~……」
お陰でさっきから三巳の目が恨みがましくオーウェンギルド長を見ています。大量の涎を垂らしながら。
「はっはっは。気にせず食べて構わないよ」
目の前に座ったリドルは優しく言ってくれました。
それに顔を輝かせた三巳は、けれど半眼のオーウェンギルド長を見て俯き唇を噛み締めました。
「……大丈夫なんだよ……。三巳だって大人だから我慢出来るんだよ……」
と、全然大丈夫じゃなさそうに言いましたが、決して涙は見せません。血の涙は心の中で流すのです。
尻尾を丸めてピルピル震える三巳に、オーウェンギルド長は盛大な溜息を吐きました。
「獣神娘が耐えてる内に話しちまおう」
「そうだね、それじゃあ改めて」
頭を抱えるオーウェンギルド長に、リドルも頷き居住まいを正しました。
「今日は私個人ではなく、リファラの統轄としてお話したいんだったね」
リドルはそう言って眼鏡を光らせます。
そうです。気の良いおいちゃんにしか見えないこの人こそ、現在リファラの政治を取り纏めている国のトップなのです。立ち位置的には総理大臣や大統領が近いです。
「うぬ。そうなんだよ。だからリリの父ちゃんのはとこのリドルおいちゃんは今はお休みしててなんだよ」
そしてリドルはリリの親戚のおじさんでもありました。リリのお父さんのはとこで、名前はリドル・リフィルです。
リドルはリリがリファラに帰って来た時には一番大怪我を負っていました。何故なら国民を守る為に体を張って頑張っていたからです。ホロホロで作った薬とリリの回復魔法で今ではすっかり元気の筈ですが、今でも政務を頑張り過ぎて目の下にクマさんを飼っている事が多い人です。
三巳は元気になったリドルにしか会っていませんが、当時の事を話すリリが涙目なのできっと相当に酷かったのだろうと感じています。
「でもまたお仕事頑張り過ぎてクマさん飼わないようになー。程々のお話で終わらすんだよ」
三巳はお母さんの気分でリドルの目の下を鋭く凝視しました。化粧で誤魔化していても、その下にクマさんを飼っているのはお見通しなのです。
「あはー、やっぱり三巳ちゃんに隠し事は出来ないねぇ。
でも三巳ちゃんとお話するのは私にとってとても良い息抜きになっているからね。出来れば沢山お話聞きたいな」
リドルは参った参ったと降参のポーズを取ると、お茶目にウィンクをしてニッコリ微笑みました。
「うぬ。ならば聞かせてしんぜよー。三巳は今日はいっぱい山の事お話するんだよ!」
むふーと嬉しさに胸を膨らませた三巳は、そう言うと膨らませた胸を更に逸らして尻尾と耳をピーン!と立たせました。
そうして山の事とロウ村長とお話した今後のお付き合いの事を、身振り手振りを交えて楽しく語るのでした。
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