170 / 368
本編
ちょっと行ってきます
しおりを挟む
さてはて三巳がロウ村長に相談してから3日後。ようやく村のこれからを大まかに決める事が出来ました。
「村の事は心配せんで良い。三巳は思う様にしてくれ」
「ありがとうロウ村長。それじゃあちょっと行ってくるんだよ」
数年前と同じ様に村の入り口広場で三巳達は送り出して貰っています。
前回と違うのはハンナが仲間に加わっている事と、今回は外遊感覚なので皆の気が楽な所でしょうか。
「ハンナや、道中リリの事を良く守っておくれ」
「勿論。姫様の身はわたくしが命を掛けてお守り致します」
決然とした態度で胸を張るハンナに、ロキ医師はフルフルと首を横に振りました。
「それは違うよ。2人とも無事に元気な姿で帰っておいで。それがひいてはリリを守る事でもあるのだからね」
ロキ医師は目を細め、ニッコリと皺を深くして言います。
これにハンナは目を大きく開けました。そして隣のリリを見ると、ロキ医師の言葉に同調してコックリ頷かれます。
「そうよハンナ。私を守るって事はハンナ自身も守るって事なのよ。
だって、ハンナは私の大切な家族だもの。もうこれ以上家族を失う悲しみは味わいたくないわ」
リリにニコッと微笑まれ、手をそっと握られたハンナは愕然としました。命を投げ打つ覚悟は時に人を追い詰めるのだと気付いたからです。
「申し訳ございません姫様……わたくし……」
「それも、ね。ハンナは私と一緒にロキ医師の家族となるのでしょう?ならお姉様に姫様なんて呼ばれるのは寂しいわ」
リリは珍しく腰に手を当て、人差し指を「めっ」と言わんばかりに立てました。
「はい……」
ハンナは何とか返事を返したものの、
(出来る気がしません)
と弱気に眉を下げるのでした。
「大丈夫だよ。リリもハンナも僕が守るから」
ロダは結局命をかけそうなハンナを見抜いていました。2人の肩を叩いて言うと、力強い笑みで頷いてみせます。
リリはロダの強さを知っています。数年前でさえ村の年長組で一番だったのを、この数年の外の生活でさらに磨きが掛かっていました。だからこそロダに言われると安心します。
「ありがとうロダ。それじゃあ私は皆が怪我をしても直ぐに治せる様に準備を怠らないわね」
「うわあっ、それはとっても頼りになるね!」
小さく拳で気合を入れるリリに、ロダは
(僕が中衛で、リリが回復役。ハンナは回復役の守護で、ネルビーは前衛で特攻、三巳は魔法でドッカン。これって本当に冒険者パーティーみたい!)
と少しばかり興奮しました。
ただし思ってるだけで、三巳がいると戦闘らしい戦闘が起きないんですけどね。
そんなこんなで今回はちょっとそこまで感覚で
「「「いってきまーす!」」」
と元気に手を振り村を後にするのでした。
「村の事は心配せんで良い。三巳は思う様にしてくれ」
「ありがとうロウ村長。それじゃあちょっと行ってくるんだよ」
数年前と同じ様に村の入り口広場で三巳達は送り出して貰っています。
前回と違うのはハンナが仲間に加わっている事と、今回は外遊感覚なので皆の気が楽な所でしょうか。
「ハンナや、道中リリの事を良く守っておくれ」
「勿論。姫様の身はわたくしが命を掛けてお守り致します」
決然とした態度で胸を張るハンナに、ロキ医師はフルフルと首を横に振りました。
「それは違うよ。2人とも無事に元気な姿で帰っておいで。それがひいてはリリを守る事でもあるのだからね」
ロキ医師は目を細め、ニッコリと皺を深くして言います。
これにハンナは目を大きく開けました。そして隣のリリを見ると、ロキ医師の言葉に同調してコックリ頷かれます。
「そうよハンナ。私を守るって事はハンナ自身も守るって事なのよ。
だって、ハンナは私の大切な家族だもの。もうこれ以上家族を失う悲しみは味わいたくないわ」
リリにニコッと微笑まれ、手をそっと握られたハンナは愕然としました。命を投げ打つ覚悟は時に人を追い詰めるのだと気付いたからです。
「申し訳ございません姫様……わたくし……」
「それも、ね。ハンナは私と一緒にロキ医師の家族となるのでしょう?ならお姉様に姫様なんて呼ばれるのは寂しいわ」
リリは珍しく腰に手を当て、人差し指を「めっ」と言わんばかりに立てました。
「はい……」
ハンナは何とか返事を返したものの、
(出来る気がしません)
と弱気に眉を下げるのでした。
「大丈夫だよ。リリもハンナも僕が守るから」
ロダは結局命をかけそうなハンナを見抜いていました。2人の肩を叩いて言うと、力強い笑みで頷いてみせます。
リリはロダの強さを知っています。数年前でさえ村の年長組で一番だったのを、この数年の外の生活でさらに磨きが掛かっていました。だからこそロダに言われると安心します。
「ありがとうロダ。それじゃあ私は皆が怪我をしても直ぐに治せる様に準備を怠らないわね」
「うわあっ、それはとっても頼りになるね!」
小さく拳で気合を入れるリリに、ロダは
(僕が中衛で、リリが回復役。ハンナは回復役の守護で、ネルビーは前衛で特攻、三巳は魔法でドッカン。これって本当に冒険者パーティーみたい!)
と少しばかり興奮しました。
ただし思ってるだけで、三巳がいると戦闘らしい戦闘が起きないんですけどね。
そんなこんなで今回はちょっとそこまで感覚で
「「「いってきまーす!」」」
と元気に手を振り村を後にするのでした。
11
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる