獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

ちょっと行ってきます

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 さてはて三巳がロウ村長に相談してから3日後。ようやく村のこれからを大まかに決める事が出来ました。

 「村の事は心配せんで良い。三巳は思う様にしてくれ」
 「ありがとうロウ村長。それじゃあちょっと行ってくるんだよ」

 数年前と同じ様に村の入り口広場で三巳達は送り出して貰っています。
 前回と違うのはハンナが仲間に加わっている事と、今回は外遊感覚なので皆の気が楽な所でしょうか。

 「ハンナや、道中リリの事を良く守っておくれ」
 「勿論。姫様の身はわたくしが命を掛けてお守り致します」

 決然とした態度で胸を張るハンナに、ロキ医師はフルフルと首を横に振りました。

 「それは違うよ。2人とも無事に元気な姿で帰っておいで。それがひいてはリリを守る事でもあるのだからね」

 ロキ医師は目を細め、ニッコリと皺を深くして言います。
 これにハンナは目を大きく開けました。そして隣のリリを見ると、ロキ医師の言葉に同調してコックリ頷かれます。

 「そうよハンナ。私を守るって事はハンナ自身も守るって事なのよ。
 だって、ハンナは私の大切な家族だもの。もうこれ以上家族を失う悲しみは味わいたくないわ」

 リリにニコッと微笑まれ、手をそっと握られたハンナは愕然としました。命を投げ打つ覚悟は時に人を追い詰めるのだと気付いたからです。

 「申し訳ございません姫様……わたくし……」
 「それも、ね。ハンナは私と一緒にロキ医師の家族となるのでしょう?ならお姉様に姫様なんて呼ばれるのは寂しいわ」

 リリは珍しく腰に手を当て、人差し指を「めっ」と言わんばかりに立てました。

 「はい……」

 ハンナは何とか返事を返したものの、

 (出来る気がしません)

 と弱気に眉を下げるのでした。

 「大丈夫だよ。リリもハンナも僕が守るから」

 ロダは結局命をかけそうなハンナを見抜いていました。2人の肩を叩いて言うと、力強い笑みで頷いてみせます。
 リリはロダの強さを知っています。数年前でさえ村の年長組で一番だったのを、この数年の外の生活でさらに磨きが掛かっていました。だからこそロダに言われると安心します。

 「ありがとうロダ。それじゃあ私は皆が怪我をしても直ぐに治せる様に準備を怠らないわね」
 「うわあっ、それはとっても頼りになるね!」

 小さく拳で気合を入れるリリに、ロダは

 (僕が中衛で、リリが回復役。ハンナは回復役の守護で、ネルビーは前衛で特攻、三巳は魔法でドッカン。これって本当に冒険者パーティーみたい!)

 と少しばかり興奮しました。
 ただし思ってるだけで、三巳がいると戦闘らしい戦闘が起きないんですけどね。

 そんなこんなで今回はちょっとそこまで感覚で

 「「「いってきまーす!」」」

 と元気に手を振り村を後にするのでした。
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