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本編
結局最後はお祭り騒ぎ
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ゆったりと座る三巳達の前に、次々とご飯物からデザートまで所狭しと並べられていきます。その種類は豊富で、和食に中華、イタリアンやらフランス料理など多岐に渡ります。
「知らない料理ばかりだ。
ウチの子はこんなにも料理上手なんだね。私はとっても鼻が高いよ」
クロは待ち侘びた愛娘の全てに感動し、その度に三巳の頭を撫でて褒め称えています。三巳は褒め過ぎだと思いましたが、生まれて初めて対面出来た父親に褒められて悪い気はしません。むしろパアっと輝かしい満面の笑みを浮かべてもっと褒めてと言わんばかりに尻尾を振っています。
「我も食事などいつ振りであろう」
美女母も初めて体験する子のいる家族の雰囲気にふんわり微笑みを称えました。
「全部三巳の大好物なんだっ。全部お勧めなんだよ」
三巳が言えば美女母は「どれ」と手近の肉じゃがをヒョイと口に運びます。手を使わず浮かせて食べる辺り神らしいです。
良く噛み締め味わっていた美女母は、コクンと飲み込むと長く深く艶やかに息を吐き出します。そして目をキラリと光らせて、見えない尻尾をブンブンと振り出しました。
「これは、美味よの。どれ、こっちは……。うむ、これも美味い。ほれ、クロも食べてみよ」
次に食べたフルーツサンドをクロの元まで浮かせていくと、クロにしな垂れかかり口元に一口サイズのフルーツサンドを持っていきます。
クロはフルーツサンドにアムと食い付き咀嚼します。すると直ぐに目をいっぱいまで見開いて、嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らしました。
「とても美味しいね!パンに瑞々しいフルーツを挟むのにクリームを使うなんて誰が思いついたのだろう!是非会ってお礼が言いたいね!」
「ふふふ、クロのはしゃぐ姿など久方振りにみるのう」
「母ちゃんも父ちゃんも気に入ってくれた様で三巳も嬉しいんだよ」
「うん。とっても気に入ったよ。
三巳が一番好きなのはどれだい?次はそれを食べよう」
「ひじき!胡桃入り!旨味と歯応えが絶妙なんだよっ。
あ、でもコッコーバンも捨て難い。いやいやナポリタンも家庭の味で好きだな。本当は竹の子汁もだけどまだ竹の子狩り出来る程生えてなくて断念したんだよ。」
嬉しそうにはしゃぐ三巳は、次々と料理を指差して結局どれも決められず「うー」と悩み出してしまいました。
「クックック。なあに、ゆっくり全て平らげれば宜しい。
先ずは先に挙げたヒジキとやらを頂こうかの」
娘の可愛らしさにメロメロになるクロに変わり、美女母はリリの持って来てくれたひじきをパクリと食べました。
モグモグすれば先程と同じ様に目をキラキラに輝かせて思わず隠した尻尾も現れそうになります。
「私も……うん。これもとっても美味しいね!味の染みたヒジキと、これはなんだろう。茶色くてフヨフヨの」
「油揚か?」
「そうか。油揚というんだね。ヒジキと油揚げの味が口いっぱいに広がって、それに胡桃のコリコリした歯応えが絶妙な風味を作り出している」
クロは大満足で始終喉をゴロゴロ鳴らしてご満悦です。
美女母とクロはあれも美味しい、これも美味しいと並んだ料理を全て味わいました。それでも沢山作った料理は大量に残っています。
「うぅん。ゴメンよ、三巳。愛しい子の料理だから全部平らげたかったんだけど、もうお腹がいっぱいになってしまった」
クロは申し訳なく髭を垂らします。
「んんん!三巳が加減間違えただけたからっ。大丈夫!これ位なら三巳が全部食べれるしっ」
三巳は慌てて両手を横にブンブン振りました。
「我もこの位食べ切れるがの。折角だ、其処もとに居る人族達も共に食せばよかろうよ」
美味しいご飯とクロの満面の笑顔ですっかり上機嫌の美女母は、チラチラ覗き見る山の民達に声を掛けました。
それに否と答えないのが山の民です。
お祭り好きの山の民達は、喜びの声を上げると一斉に広場に集まって来ました。何人かは村中の山の民に声を掛けに駆けて行きました。広場に集まった山の民達は、立食形式で三巳の手作り料理に舌鼓を打ちます。
ロウ村長だけは初めに美女母とクロの前まで来ると礼を取りました。
「私共もお招き頂き感謝致します。娘様にはいつも助けて頂き、誠に」
「堅苦しいぞ、ロウ村長。そんなに畏まられちゃ三巳の背中はゾクゾク毛虫が這っちゃうんだよ」
普段には見れないとても畏まったロウ村長に、三巳は「うへ~」っと体を掻き毟る仕草をします。
「……三巳、お前な……。
親しき中にも礼儀ありと言うだろう。三巳の親御さんに挨拶せん訳にはいかんだろうが」
呆れるロウ村長は、ほとほと困り果てた顔で三巳を窘めます。
「クックック。構わぬよ。大方、世話になってるのは三巳の方故な。
のう?随分と甘やかされておるようじゃ」
美女母はちんまりとした三巳の体を下から上まで咎む様に見ました。
三巳は美女母の言わんとしている事が正確にわかりました。毛を逆立てて明後日の方向を向いて聞こえなかった振りをします。
「まあ良い。それは明日、と言うたしの」
問題を先延ばしにしただけで全く防げていないけれど、三巳は明らかにホッとして取り繕う様にウンウンと調子良く頷くのでした。
「知らない料理ばかりだ。
ウチの子はこんなにも料理上手なんだね。私はとっても鼻が高いよ」
クロは待ち侘びた愛娘の全てに感動し、その度に三巳の頭を撫でて褒め称えています。三巳は褒め過ぎだと思いましたが、生まれて初めて対面出来た父親に褒められて悪い気はしません。むしろパアっと輝かしい満面の笑みを浮かべてもっと褒めてと言わんばかりに尻尾を振っています。
「我も食事などいつ振りであろう」
美女母も初めて体験する子のいる家族の雰囲気にふんわり微笑みを称えました。
「全部三巳の大好物なんだっ。全部お勧めなんだよ」
三巳が言えば美女母は「どれ」と手近の肉じゃがをヒョイと口に運びます。手を使わず浮かせて食べる辺り神らしいです。
良く噛み締め味わっていた美女母は、コクンと飲み込むと長く深く艶やかに息を吐き出します。そして目をキラリと光らせて、見えない尻尾をブンブンと振り出しました。
「これは、美味よの。どれ、こっちは……。うむ、これも美味い。ほれ、クロも食べてみよ」
次に食べたフルーツサンドをクロの元まで浮かせていくと、クロにしな垂れかかり口元に一口サイズのフルーツサンドを持っていきます。
クロはフルーツサンドにアムと食い付き咀嚼します。すると直ぐに目をいっぱいまで見開いて、嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らしました。
「とても美味しいね!パンに瑞々しいフルーツを挟むのにクリームを使うなんて誰が思いついたのだろう!是非会ってお礼が言いたいね!」
「ふふふ、クロのはしゃぐ姿など久方振りにみるのう」
「母ちゃんも父ちゃんも気に入ってくれた様で三巳も嬉しいんだよ」
「うん。とっても気に入ったよ。
三巳が一番好きなのはどれだい?次はそれを食べよう」
「ひじき!胡桃入り!旨味と歯応えが絶妙なんだよっ。
あ、でもコッコーバンも捨て難い。いやいやナポリタンも家庭の味で好きだな。本当は竹の子汁もだけどまだ竹の子狩り出来る程生えてなくて断念したんだよ。」
嬉しそうにはしゃぐ三巳は、次々と料理を指差して結局どれも決められず「うー」と悩み出してしまいました。
「クックック。なあに、ゆっくり全て平らげれば宜しい。
先ずは先に挙げたヒジキとやらを頂こうかの」
娘の可愛らしさにメロメロになるクロに変わり、美女母はリリの持って来てくれたひじきをパクリと食べました。
モグモグすれば先程と同じ様に目をキラキラに輝かせて思わず隠した尻尾も現れそうになります。
「私も……うん。これもとっても美味しいね!味の染みたヒジキと、これはなんだろう。茶色くてフヨフヨの」
「油揚か?」
「そうか。油揚というんだね。ヒジキと油揚げの味が口いっぱいに広がって、それに胡桃のコリコリした歯応えが絶妙な風味を作り出している」
クロは大満足で始終喉をゴロゴロ鳴らしてご満悦です。
美女母とクロはあれも美味しい、これも美味しいと並んだ料理を全て味わいました。それでも沢山作った料理は大量に残っています。
「うぅん。ゴメンよ、三巳。愛しい子の料理だから全部平らげたかったんだけど、もうお腹がいっぱいになってしまった」
クロは申し訳なく髭を垂らします。
「んんん!三巳が加減間違えただけたからっ。大丈夫!これ位なら三巳が全部食べれるしっ」
三巳は慌てて両手を横にブンブン振りました。
「我もこの位食べ切れるがの。折角だ、其処もとに居る人族達も共に食せばよかろうよ」
美味しいご飯とクロの満面の笑顔ですっかり上機嫌の美女母は、チラチラ覗き見る山の民達に声を掛けました。
それに否と答えないのが山の民です。
お祭り好きの山の民達は、喜びの声を上げると一斉に広場に集まって来ました。何人かは村中の山の民に声を掛けに駆けて行きました。広場に集まった山の民達は、立食形式で三巳の手作り料理に舌鼓を打ちます。
ロウ村長だけは初めに美女母とクロの前まで来ると礼を取りました。
「私共もお招き頂き感謝致します。娘様にはいつも助けて頂き、誠に」
「堅苦しいぞ、ロウ村長。そんなに畏まられちゃ三巳の背中はゾクゾク毛虫が這っちゃうんだよ」
普段には見れないとても畏まったロウ村長に、三巳は「うへ~」っと体を掻き毟る仕草をします。
「……三巳、お前な……。
親しき中にも礼儀ありと言うだろう。三巳の親御さんに挨拶せん訳にはいかんだろうが」
呆れるロウ村長は、ほとほと困り果てた顔で三巳を窘めます。
「クックック。構わぬよ。大方、世話になってるのは三巳の方故な。
のう?随分と甘やかされておるようじゃ」
美女母はちんまりとした三巳の体を下から上まで咎む様に見ました。
三巳は美女母の言わんとしている事が正確にわかりました。毛を逆立てて明後日の方向を向いて聞こえなかった振りをします。
「まあ良い。それは明日、と言うたしの」
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