獣神娘と山の民

蒼穹月

文字の大きさ
上 下
3 / 368
本編

三巳のしっぽ

しおりを挟む
 三巳の尻尾はふさふさのもふもふのふわふわの大きな尻尾です。
 そんな三巳の尻尾はいつもご機嫌にあっちへゆらゆら、こっちへゆらゆら。右に左に揺れています。
 その後ろには元気なちびっ子が尻尾に釣られて、右にとてちて、左にとてちて。ちっちゃなあんよで一生懸命に付いて行きます。
 すってーん!あらら大変。1人転んでしまいました。
 何が起こったのか判らずぽかーんとしていたちびっ子ですが、痛みは確実にじわじわ、じわじわ広がります。
 ちびっ子は痛くて目に大粒の涙を溜め込み、今にも決壊してしまいそうです。
 そこへすかさず三巳の尻尾がくるん。ちびっ子を優しく包んで抱き上げます。
 
 「痛いの痛いの~、遠くのあの辺の山まで飛んでいけー」

 尻尾で抱き上げたまま、器用に尻尾の先でちびっ子をふさふさ優しく撫でて、土を落として擦ります。
 それはもう極上のもふもふのふわふわでふさふさが、なでなでしてくれます。ちびっ子の泣き虫さんは痛みと一緒に遠くのあの辺の山へ忘れ去られました。

 「きゃっきゃ。気持ちい~」

 暖かい毛布尻尾にむぎゅうっとしがみ付きすりすりほお擦りします。
 泣き止んだちびっ子に「よしよし」と安堵した三巳でしたが、後方ではちびっ子を羨ましそうに見ているちびっ子集団がいます。

 「ふっふっふ~。三巳のしっぽは最強だから、百人乗っても大丈~夫」

 三巳はちびっ子達の前で尻尾を揺らして誘惑します。
 勿論ちびっ子はお子ちゃまだからちびっ子なのです。我慢なんてまだ判りません。

 「「「きゃー!」」」

 一斉に尻尾にしがみつきます。力の加減の判らないちびっ子達ですが、三巳なので大丈夫。
 ちびっ子をぶら下げて、ぶら~ん、ぶらん。右に左に上に下に。ちびっ子達を振り回します。
 これにはちびっ子達も大喜び。

 「「「きゃー!もっとやってー!」」」

 催促の大合唱に答えない三巳ではありません。
 ぶら~り、ぶらり。ちびっ子が振り落とされない様に気を使いながらもご機嫌に揺らします。
 
 結局この日は、ご飯に呼ばれるまでちびっ子をぶら下げて村を駆けて遊んだのでした。
しおりを挟む
感想 118

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

処理中です...