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本編
小さい春見つけた。
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寒い季節が過ぎ風に暖かさが感じられるようになったある日の出来事です。
表層が硬くなった山頂の雪上を三巳が裸足で元気に駆け回っています。
神様仕様で丈夫な三巳には冷たさも雪の硬さも勿論へっちゃらです。
あらら、でも大変。足元にひょっこり出ている岩の頭に引っかかってしまいました。
「わっと」
それでも慌てず騒がず行動します。もう一度しっかり足を前に出して踏みしめれば良いのです。
すってーん!
だけど残念。凍った雪上にものの見事に滑って転んで、コロコロ、コロコロ。山の坂を転がり落ちてしまいます。
コロコロ、コロコロ終わらない坂を止まらず転がり落ちて、ぽーんと時折雪のこぶや岩にぶつかって跳ね上がります。
「っぷ。あはははははは!」
とうとう、三巳は面白おかしくて笑い出します。
自ら体を丸めて更に速く、コロコロ、コロリ。尻尾も丸めて毛玉団子のお通りです。
そのまま村まで来てしまいました。
それを発見した山の民は、ぎょっと驚きます。それはそうです。毛玉のお化けが猛スピードで、向かって来るのです。それも、大爆笑しながらです。怖くない人なんていない事でしょう。
「あ、いけない」
毛玉三巳は村を確認して、無理やりカックーン。向きを思いっきり変えて、そのまま村の横を猛スピードで駆け抜け……いえ、転がり落ちていきます。
これには山の民も笑うしかありません。毛玉お化けは三巳だったと、声で気付いたのです。
転がり落ちていった事には心配もしません。
だって三巳ですから。大丈夫に決まっています。
「遅くなる前に戻って来いよー!」
と両手をメガホンにして、叫びます。気分はパパです。
「わかったー!」
徐々に遠くなる声で三巳の叫び声が木霊しました。しっかり聞こえていたようです。
村も遠くに過ぎて、どこまで行くのか。コロコロ、コロン。ぽーん、ぽん。何処までも何処までも、三巳は楽しく転がります。
とうとう、三巳は山の麓まで転がり落ちてしまいました。このまま何処かへ行ったしまいそうな勢いでしたが、大きな大きな岩を発見して、カックーン。向きを無理やり変えました。
岩の方へ。
もちろんどかーん!とぶつかります。
大岩は毛玉団子によって砕けてしまいました。
「ストラーイク!」
大岩に弾かれた三巳は、きゃらきゃら笑って空中を飛んで木の上に引っかかってしまいました。
「あー。楽しかった!」
一頻り笑って満足した三巳は、木の上からぴょんと飛び降ります。
崩れた岩は魔法でぱっと直します。だって、山の動物たちの休憩場だったら申し訳ないですもんね。
直した岩を確認する為に、周囲をぐるぐる、ぐるぐる確認します。
するとその岩の周りに小さな発見をして、思わずほっこり綻びます。
そこには、土の中からひょっこり顔を出したフキノトウが生えていたのです。
「小さい春、見ーつけた」
まだまだ赤ちゃんフキノトウだったので、三巳はそのままそっとしておきます。
もう少ししたら山の民達と春の山菜狩りに精を出すことでしょう。
表層が硬くなった山頂の雪上を三巳が裸足で元気に駆け回っています。
神様仕様で丈夫な三巳には冷たさも雪の硬さも勿論へっちゃらです。
あらら、でも大変。足元にひょっこり出ている岩の頭に引っかかってしまいました。
「わっと」
それでも慌てず騒がず行動します。もう一度しっかり足を前に出して踏みしめれば良いのです。
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だけど残念。凍った雪上にものの見事に滑って転んで、コロコロ、コロコロ。山の坂を転がり落ちてしまいます。
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「あ、いけない」
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村も遠くに過ぎて、どこまで行くのか。コロコロ、コロン。ぽーん、ぽん。何処までも何処までも、三巳は楽しく転がります。
とうとう、三巳は山の麓まで転がり落ちてしまいました。このまま何処かへ行ったしまいそうな勢いでしたが、大きな大きな岩を発見して、カックーン。向きを無理やり変えました。
岩の方へ。
もちろんどかーん!とぶつかります。
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「ストラーイク!」
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「あー。楽しかった!」
一頻り笑って満足した三巳は、木の上からぴょんと飛び降ります。
崩れた岩は魔法でぱっと直します。だって、山の動物たちの休憩場だったら申し訳ないですもんね。
直した岩を確認する為に、周囲をぐるぐる、ぐるぐる確認します。
するとその岩の周りに小さな発見をして、思わずほっこり綻びます。
そこには、土の中からひょっこり顔を出したフキノトウが生えていたのです。
「小さい春、見ーつけた」
まだまだ赤ちゃんフキノトウだったので、三巳はそのままそっとしておきます。
もう少ししたら山の民達と春の山菜狩りに精を出すことでしょう。
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