Night Street Dream

友達

 今日は学校の友達が来る日。と言っても2年の時のクラスメイトだけどね。
 「あっ、里奈、これ学校の進路相談の日程と、進路希望表。一応渡しとくね。」
と友達の1人、新山咲希は2枚のプリントを渡してきた。
 「ありがとう、咲希。わざわざ持ってきてくれたのね。」
 と、明るくお礼を言った。
  「でもさぁ、里奈は何で学校に来ないん？」
と、もう1人の友達、杉山沙織は不思議そうに聞いてきた。
 「うーん、何でやろ………？多分、学校という名の環境に合わないんかな。」
と、少し言葉を濁して答えた。
 実際に里奈自身にも理由は分からなかった。 学校内でいじめられてもいないし、先生やクラスメイト達の人間関係も特に問題があるわけでも無いからだ。それに成績面でも上位グループに入る程の優等生。 どの角度から見ても不登校になる要素は見当たらない。
 恐らく里奈自身の言う通り平凡な日常生活に退屈に感じているのかもしれない。
  「咲希、沙織さぁ、最近どうなの？」
 と里奈は近況を聞いてみた。
 「ん？何が？」と聞き返す2人。
 「いや、学校とか家とかだよ」と答える里奈。
 「あー、そういう事。うーん……、最近憂鬱な事ばっかだよね。」と答える咲希。
 「何かあったの？」と聞く里奈。
「あたしら受験の時期だよね。あたしの両親が毎日の様に『良い高校に入って欲しい』って言ってきて圧力をかけてくるから嫌になるのよ。あたしの家は学歴至上主義の家系だから。」と溜め息混じりに答える咲希。
 「そうだったんだ。気疲れするよね」と答える沙織。
 「うん。んで、沙織の方は？」と聞く咲希。
「私の方かぁ………｡ 話す前にこれを見て欲しい。」と沙織は話しながら制服の左袖を捲って華奢な左腕を2人に見せた。
「えっ!!? どうしたのその腕っ!!?」と驚きながら聞く2人。 2人が驚くのも無理はない。 沙織の左腕は、タバコを押し付けられたような火傷の痕が5ヶ所があった。それに左手首にはリストカットの痕もあった。
「実は、私のお母さんが再婚したんだよね。その相手がタチが悪い人でお酒が飲んだ後でいつも暴力を振るってくるんだ。」と泣きそうになりながら話す沙織。
「本当は左腕だけでなく、身体中に殴られた痣もあるんだ。」と更に続けて話す沙織。
そんな姿に見兼ねた2人は
「ごめん、そんな酷い目に遭っているなんて知らなかった。」「気づいてあげられなくてごめんね。」とバツ悪そうに謝る。
「ううん、大丈夫。誰も話してない、いや、話せない事だから」と答える沙織。
咲希は学歴至上主義の両親、沙織は暴力を振るってくる義父の事で悩んでいた。
そんな2人に里奈は
「ねぇ、2人とも家出とか考えてない？」とあまりにも唐突過ぎる事を聞いてみた。
「家出!!?」と声を上げる2人。
「本当に今思い付いた事なんだけど、こんな日常なんてもう要らないよね？ だったら家出しようよ」と話す里奈。
「確かに今の生活は息が詰まるよね」「本当に自由になりたいね」と口々に話す咲希と沙織。
「んじゃ、決まりね。早速計画を立てよう。」と話す里奈。
こうして里奈、咲希、沙織3人の家出の計画を立てる事になった。