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カレーと言えばココが一番?
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「えっ……まさか今の、聞こえた?」
あんな小さな呟きを聞き逃さなかったのかと驚いたトシヤだったがそうでは無かった。ハルカは後ろを走っているトシヤの姿を確認するとすぐに前に向き直って言った。
「お昼ご飯、何でも良いよね?」
何の事はない、ハルカは昼ご飯をどうするか聞きたかったのだった。もちろんトシヤとしてはハルカと一緒だったら何を食べてもご馳走だ。
「ああ」
ここからだとフレンドリー・ジェニファーズカフェか? それともいつも休憩している峠の麓のコンビニでお握りとかパンでも買って食べるのか? などと考えて軽く答えたトシヤにハルカは思いもよらないことを言い出した。
「じゃあ、カレーでも大丈夫?」
ハルカの言う『カレー』とは正確にはカレーライス、男子に大人気のメニューでトシヤもご多分に漏れず大好きな食べ物だ。しかし、女の子のハルカの口から『カレーで大丈夫?』という言葉が出るとは…… そう言えばハルカはボーイッシュな女の子だという設定だったっけ(ヲイ)。
「おっけー、わかった」
トシヤが快諾するとハルカは国道を東へ渡ったところでママチャリを止めた。この交差点を真っ直ぐ東へ走り、突き当たりを左切して北に少し走ると渋山峠のスタート地点となる交差点だ。だが、ハルカが信号を渡ってそのまま進まずに止まったということは右に曲がる、所謂『二段階右折』をするということだ。
国道を右に曲がるということはフレンドリー・ジェニファーズカフェにでも行くのか? でも、フレンドリー・ジェニファーズカフェのメニューにカレーは無かったよな……などと思いつつトシヤはハルカの隣にママチャリを止めた。
「ねぇハルカちゃん、カレーってドコで?」
トシヤが尋ねるとハルカは『あれっ?』といった顔で答えた。
「トシヤ君、この道何回も通ってるよね? 覚えてないの?」
『覚えてないの?』と事言われても、トシヤはこの国道を南へ走ることがほとんど無かった。何しろこの国道は道幅が広く、交通量が多い上に路肩には砂が大量に落ちていてロードバイクで走るにはあまりにも劣悪な環境なのだ。はっきり言ってフレンドリー・ジェニファーズカフェに行く時ぐらいしか走っていない。しかもその時は周りの風景など見てなかったものだから、途中にどんな店があったかなんて全く覚えていない。
「うん……覚えてない」
トシヤが恥ずかしそうに言った時、信号が変わった。
「まあ、すぐソコだから」
言うとハルカはペダルを踏み、ママチャリを発進させた。
広い国道を南に走る。大量の砂が落ちているので走りにくいが、ハンドルが高く安定性の高いママチャリだとスピードこそ出せないものの安心して走ることが出来るので少しばかり気が楽だ。
広い国道の路肩を少し走ったところ、フレンドリー・ジェファーズカフェの手前でトシヤは気付いた。目の前に日本で最も有名だと言っても過言では無い全国チェーンのカレー屋の大きな看板が立っていることに。
「こんな所にカレー屋が」
思わず呟いたトシヤの前でハルカは左手を横に水平に伸ばした。
左折の合図だ。という事はハルカが行こうとしていたのはあのカレー屋だ。トシヤがそう思ったのと同時にハルカはカレー屋の駐輪場へと入って行った。そしてトシヤもハルカに続いて駐輪場に入り、ママチャリから降りた。
駐輪場にママチャリを停め、店に入ると食欲をそそるカレーの匂いが二人の鼻と胃袋を刺激した。お昼時はとっくに過ぎているので店内には他のお客さんは数えるほどしかいない。トシヤとハルカはテーブル席に向かい合って座り、メニューを広げた。
このカレー屋はカレーソースとご飯の量、そしてトッピングを選んで自分好みのカレーをオーダー出来るのが売りな上に、季節によって期間限定のカレーも充実している。
ハルカはメニューを見ながら楽しそうに言った。
「私、フィッシュフライカレーにエビフライをトッピングしようっと。ご飯と辛さは普通で良いかな。トシヤ君は?」
フィッシュフライカレーにエビフライをトッピングだと海産物×海産物、しかも揚げ物×揚げ物だ。ハルカもなかなかヘビーなオーダーをするものだと思いながらもトシヤは言った。
「じゃあ、俺はハンバーグカレーにしようかな。ご飯の量と辛さは俺も普通で良いや」
前述の通り、このカレー屋は自分好みのカレーをオーダー出来るのが売りだ。だからと言って調子に乗ってトッピングをガンガン追加すると結構な金額になってしまう。トシヤにとって昼食に千円は厳しい。本当は普通のカレーライスでよかった。にもかかわらずハンバーグカレーをオーダーしたのはトシヤにとって精一杯の頑張りだったのだ。
しばらくして二人が注文した品が運ばれてきた。
「わーっ、美味しそう。いっただっきまーす!」
ハルカが両手を合わせて言い、早速カレーを食べ始めた。よっぽどお腹が空いていたのか、はたまたそんなにカレーが食べたかったのか……
「んじゃ俺も。いただきます」
トシヤもハルカに続いて食べ始めた。それを見てハルカが言った。
「腹が減っては戦が出来ぬってね」
「はあっ? 戦? 誰が? 誰と?」
おっさん臭いことを言うハルカにトシヤが突っ込んだ。だが、ハルカは意味ありげにニヤリと笑って言った。
「まあまあ良いじゃない、ヤボなことは言いっこ無しで」
ハルカは何かを企んでいる……そう思わずにいられないトシヤだった。
あんな小さな呟きを聞き逃さなかったのかと驚いたトシヤだったがそうでは無かった。ハルカは後ろを走っているトシヤの姿を確認するとすぐに前に向き直って言った。
「お昼ご飯、何でも良いよね?」
何の事はない、ハルカは昼ご飯をどうするか聞きたかったのだった。もちろんトシヤとしてはハルカと一緒だったら何を食べてもご馳走だ。
「ああ」
ここからだとフレンドリー・ジェニファーズカフェか? それともいつも休憩している峠の麓のコンビニでお握りとかパンでも買って食べるのか? などと考えて軽く答えたトシヤにハルカは思いもよらないことを言い出した。
「じゃあ、カレーでも大丈夫?」
ハルカの言う『カレー』とは正確にはカレーライス、男子に大人気のメニューでトシヤもご多分に漏れず大好きな食べ物だ。しかし、女の子のハルカの口から『カレーで大丈夫?』という言葉が出るとは…… そう言えばハルカはボーイッシュな女の子だという設定だったっけ(ヲイ)。
「おっけー、わかった」
トシヤが快諾するとハルカは国道を東へ渡ったところでママチャリを止めた。この交差点を真っ直ぐ東へ走り、突き当たりを左切して北に少し走ると渋山峠のスタート地点となる交差点だ。だが、ハルカが信号を渡ってそのまま進まずに止まったということは右に曲がる、所謂『二段階右折』をするということだ。
国道を右に曲がるということはフレンドリー・ジェニファーズカフェにでも行くのか? でも、フレンドリー・ジェニファーズカフェのメニューにカレーは無かったよな……などと思いつつトシヤはハルカの隣にママチャリを止めた。
「ねぇハルカちゃん、カレーってドコで?」
トシヤが尋ねるとハルカは『あれっ?』といった顔で答えた。
「トシヤ君、この道何回も通ってるよね? 覚えてないの?」
『覚えてないの?』と事言われても、トシヤはこの国道を南へ走ることがほとんど無かった。何しろこの国道は道幅が広く、交通量が多い上に路肩には砂が大量に落ちていてロードバイクで走るにはあまりにも劣悪な環境なのだ。はっきり言ってフレンドリー・ジェニファーズカフェに行く時ぐらいしか走っていない。しかもその時は周りの風景など見てなかったものだから、途中にどんな店があったかなんて全く覚えていない。
「うん……覚えてない」
トシヤが恥ずかしそうに言った時、信号が変わった。
「まあ、すぐソコだから」
言うとハルカはペダルを踏み、ママチャリを発進させた。
広い国道を南に走る。大量の砂が落ちているので走りにくいが、ハンドルが高く安定性の高いママチャリだとスピードこそ出せないものの安心して走ることが出来るので少しばかり気が楽だ。
広い国道の路肩を少し走ったところ、フレンドリー・ジェファーズカフェの手前でトシヤは気付いた。目の前に日本で最も有名だと言っても過言では無い全国チェーンのカレー屋の大きな看板が立っていることに。
「こんな所にカレー屋が」
思わず呟いたトシヤの前でハルカは左手を横に水平に伸ばした。
左折の合図だ。という事はハルカが行こうとしていたのはあのカレー屋だ。トシヤがそう思ったのと同時にハルカはカレー屋の駐輪場へと入って行った。そしてトシヤもハルカに続いて駐輪場に入り、ママチャリから降りた。
駐輪場にママチャリを停め、店に入ると食欲をそそるカレーの匂いが二人の鼻と胃袋を刺激した。お昼時はとっくに過ぎているので店内には他のお客さんは数えるほどしかいない。トシヤとハルカはテーブル席に向かい合って座り、メニューを広げた。
このカレー屋はカレーソースとご飯の量、そしてトッピングを選んで自分好みのカレーをオーダー出来るのが売りな上に、季節によって期間限定のカレーも充実している。
ハルカはメニューを見ながら楽しそうに言った。
「私、フィッシュフライカレーにエビフライをトッピングしようっと。ご飯と辛さは普通で良いかな。トシヤ君は?」
フィッシュフライカレーにエビフライをトッピングだと海産物×海産物、しかも揚げ物×揚げ物だ。ハルカもなかなかヘビーなオーダーをするものだと思いながらもトシヤは言った。
「じゃあ、俺はハンバーグカレーにしようかな。ご飯の量と辛さは俺も普通で良いや」
前述の通り、このカレー屋は自分好みのカレーをオーダー出来るのが売りだ。だからと言って調子に乗ってトッピングをガンガン追加すると結構な金額になってしまう。トシヤにとって昼食に千円は厳しい。本当は普通のカレーライスでよかった。にもかかわらずハンバーグカレーをオーダーしたのはトシヤにとって精一杯の頑張りだったのだ。
しばらくして二人が注文した品が運ばれてきた。
「わーっ、美味しそう。いっただっきまーす!」
ハルカが両手を合わせて言い、早速カレーを食べ始めた。よっぽどお腹が空いていたのか、はたまたそんなにカレーが食べたかったのか……
「んじゃ俺も。いただきます」
トシヤもハルカに続いて食べ始めた。それを見てハルカが言った。
「腹が減っては戦が出来ぬってね」
「はあっ? 戦? 誰が? 誰と?」
おっさん臭いことを言うハルカにトシヤが突っ込んだ。だが、ハルカは意味ありげにニヤリと笑って言った。
「まあまあ良いじゃない、ヤボなことは言いっこ無しで」
ハルカは何かを企んでいる……そう思わずにいられないトシヤだった。
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