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デュラエースは憧れの逸品だが……
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マサオはプリンスを買ってまだ間もないというのに……するとマサオの言葉を聞いて男の目が変わった。『デュラエース』と言えばシマノのコンポの最上級グレードで、セカンドグレードの『アルテグラ』との価格差は恐ろしく大きい。フルデュラエース化となればパーツ代だけでも二十万円オーバーなのだから、男が商売っ気を出したのだろうか? いや、そうでは無かった。
「デュラエースねぇ……アルテグラに不満でもあるのかい?」
男が渋い顔でマサオに尋ねた。もちろんマサオにはアルテグラに不満などあるワケが無い。正直に答えたマサオに男は尚も言い続けた。
「デュラエースは最高の機材だと思うけど、少し値が張り過ぎるかな。コストパフォーマンスを考えたら電動のアルテグラをお薦めするけどね」
男の話ではフルデュラ化するよりもクランクとスプロケットは原状のアルテグラのままでブレーキのみデュラエースにし、変速を電動のアルテグラにするのが性能的にも値段的にもお薦めらしい。だが、マサオは恥ずかしそうに言った。
「電動にしてもあんまり意味無いんですよね。どうせ渋山峠じゃインナーローしか使わないっすから」
正しくは『使わない』では無く『使えない』なのだが……まあそれはさておきマサオの言葉に男は面白そうに笑った。
「そうか。まあ、デュラエースにすれば軽くなるし、気分も上がるからね。換装するのなら、その時はよろしく」
ロードバイクのショップには他店で買った車体の面倒は見ないという店が意外と多いが、ここはそんな事は無いみたいだ。後は金額だが……まあ今すぐというワケでは無いのでそれ以上突っ込んだ話はしなかったが、ルナとハルカの通ってる店だからぼったくられるなんて事は無いだろう。
「おいマサオ……お前、本当にデュラエース組むつもりか?」
トシヤが漏らした言葉にマサオの目がキラリと光った。そう、マサオはこの言葉を待っていたのだ。
「ああ、前から思ってたんだけどな。その事で皆と話したいんだが、メシでも食いながらどうだ?」
何の事はない、マサオはただご飯に誘うきっかけを作りたかっただけだ。もっともマサオの事だから本当にデュラエースを組む可能性も十分に考えられるが。
「でも、ご飯行くったって、この辺にはロードバイク置ける店なんて無いわよ」
ハルカが言うが、それを聞いた男は笑顔で言った。
「ご飯食べに行くぐらいだったら置いといて構わないよ。皆で行っといで」
男の言葉にマサオは喜びの声を上げた。
「ありがとうございます! じゃあ決まりだな。それじゃ行こうぜ」
幸いこの店は駅に比較的近く、駅と言えば駅前にショッピングモールがある。結局トシヤ達は男の好意に甘えてご飯を食べに行く事となった。これでマサオの本懐は遂げられた? いいや、まだだ。遂げられたのは現時点でのマサオの本懐でしか無い。マサオの最終目標はルナを彼女にする事なのだから。
ショップを出て駅前に向かって歩くトシヤ達だが、どうも周囲からの視線が集まっている気がしてならない。と言うか、実際にチラチラと見られている。理由は言うまでもあるまい、トシヤ達の格好だ。サイクルジャージにレーシングパンツ、そして足元はビンディングシューズとフル装備の四人は駅前の風景からはどう見ても浮いている。そしてサイクルジャージとレーシングパンツはピッチピチなのだ。ルナとハルカに中高生男子はキラキラした目を、中年のおっさんはねっとりした視線を送ってしまうのは致し方あるまい。もっともハルカもルナもそんな視線には慣れっこで然程気にしてはいない様だが。
駅前のショッピングモールに入っても、やはりトシヤ達は浮きまくっている。日曜日の昼時なのでフードコートやファストフード店はダダ混みだ。少しでも早く席に着きたいとトシヤ達は比較的空いているコーヒーショップに入った。
コーヒーショップのランチと言えばカレーやスパゲティ、そしてサンドイッチが定番だ。となると、ドリンクとセットで千円近い金額になる。高校生のトシヤ達にとってこれは結構な出費だ。もちろんマサオは「自分が出すから心配するな」と言うが、ルナとしてはいつもいつもマサオに出してもらうのもいかがなものかと考えてしまう。そこで折衷案としてマサオが提案した。
「じゃあさ、ファストフードだったら五百円ぐらいだから、皆五百円だけ出してくれれば良いからさ」
マサオ……毎度毎度気前の良い男だ。必死なだけ? いや、これがルナとハルカが一緒の時だけだったらともかく、トシヤと二人だけの時もこんな感じなのだからそういう事ではあるまい。まあ、自分で稼いだお金では無く、親のお金なのであまり褒められたものでは無いかもしれないが。
ともかくそれで話は決まり、トシヤとマサオはカレーのセットを、ルナとハルカはスパゲティのセットを注文した。
「デュラエースねぇ……アルテグラに不満でもあるのかい?」
男が渋い顔でマサオに尋ねた。もちろんマサオにはアルテグラに不満などあるワケが無い。正直に答えたマサオに男は尚も言い続けた。
「デュラエースは最高の機材だと思うけど、少し値が張り過ぎるかな。コストパフォーマンスを考えたら電動のアルテグラをお薦めするけどね」
男の話ではフルデュラ化するよりもクランクとスプロケットは原状のアルテグラのままでブレーキのみデュラエースにし、変速を電動のアルテグラにするのが性能的にも値段的にもお薦めらしい。だが、マサオは恥ずかしそうに言った。
「電動にしてもあんまり意味無いんですよね。どうせ渋山峠じゃインナーローしか使わないっすから」
正しくは『使わない』では無く『使えない』なのだが……まあそれはさておきマサオの言葉に男は面白そうに笑った。
「そうか。まあ、デュラエースにすれば軽くなるし、気分も上がるからね。換装するのなら、その時はよろしく」
ロードバイクのショップには他店で買った車体の面倒は見ないという店が意外と多いが、ここはそんな事は無いみたいだ。後は金額だが……まあ今すぐというワケでは無いのでそれ以上突っ込んだ話はしなかったが、ルナとハルカの通ってる店だからぼったくられるなんて事は無いだろう。
「おいマサオ……お前、本当にデュラエース組むつもりか?」
トシヤが漏らした言葉にマサオの目がキラリと光った。そう、マサオはこの言葉を待っていたのだ。
「ああ、前から思ってたんだけどな。その事で皆と話したいんだが、メシでも食いながらどうだ?」
何の事はない、マサオはただご飯に誘うきっかけを作りたかっただけだ。もっともマサオの事だから本当にデュラエースを組む可能性も十分に考えられるが。
「でも、ご飯行くったって、この辺にはロードバイク置ける店なんて無いわよ」
ハルカが言うが、それを聞いた男は笑顔で言った。
「ご飯食べに行くぐらいだったら置いといて構わないよ。皆で行っといで」
男の言葉にマサオは喜びの声を上げた。
「ありがとうございます! じゃあ決まりだな。それじゃ行こうぜ」
幸いこの店は駅に比較的近く、駅と言えば駅前にショッピングモールがある。結局トシヤ達は男の好意に甘えてご飯を食べに行く事となった。これでマサオの本懐は遂げられた? いいや、まだだ。遂げられたのは現時点でのマサオの本懐でしか無い。マサオの最終目標はルナを彼女にする事なのだから。
ショップを出て駅前に向かって歩くトシヤ達だが、どうも周囲からの視線が集まっている気がしてならない。と言うか、実際にチラチラと見られている。理由は言うまでもあるまい、トシヤ達の格好だ。サイクルジャージにレーシングパンツ、そして足元はビンディングシューズとフル装備の四人は駅前の風景からはどう見ても浮いている。そしてサイクルジャージとレーシングパンツはピッチピチなのだ。ルナとハルカに中高生男子はキラキラした目を、中年のおっさんはねっとりした視線を送ってしまうのは致し方あるまい。もっともハルカもルナもそんな視線には慣れっこで然程気にしてはいない様だが。
駅前のショッピングモールに入っても、やはりトシヤ達は浮きまくっている。日曜日の昼時なのでフードコートやファストフード店はダダ混みだ。少しでも早く席に着きたいとトシヤ達は比較的空いているコーヒーショップに入った。
コーヒーショップのランチと言えばカレーやスパゲティ、そしてサンドイッチが定番だ。となると、ドリンクとセットで千円近い金額になる。高校生のトシヤ達にとってこれは結構な出費だ。もちろんマサオは「自分が出すから心配するな」と言うが、ルナとしてはいつもいつもマサオに出してもらうのもいかがなものかと考えてしまう。そこで折衷案としてマサオが提案した。
「じゃあさ、ファストフードだったら五百円ぐらいだから、皆五百円だけ出してくれれば良いからさ」
マサオ……毎度毎度気前の良い男だ。必死なだけ? いや、これがルナとハルカが一緒の時だけだったらともかく、トシヤと二人だけの時もこんな感じなのだからそういう事ではあるまい。まあ、自分で稼いだお金では無く、親のお金なのであまり褒められたものでは無いかもしれないが。
ともかくそれで話は決まり、トシヤとマサオはカレーのセットを、ルナとハルカはスパゲティのセットを注文した。
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