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マサオの謀略
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ヒルクライムは辛いがダウンヒルは楽だ。もちろん安全に下る為、ブレーキを多用しなければならないので握力と腕力は削られるが、上りに比べれば天国だと言っても過言ではあるまい。渋山峠を一気に下ったトシヤ達は例によって麓のコンビニに立ち寄った。
「どう? リアタイヤ、大丈夫?」
トシヤがハルカに尋ねた。もちろんハルカの後ろを走っていたトシヤは後方からハルカのエモンダの挙動が乱れたりしないか見ていて大丈夫だとはわかってはいるが、気になるものは気になるのだろう。
「うん、大丈夫よ。ありがとう」
笑顔で答えるハルカ。実はやはり空気圧が低く、高速カーブでリアタイヤが捩れる感じがしていたのだがそれは秘密だ。これがリアタイヤで良かった。もしフロントタイヤだったら下りのヘアピンのブレーキングで少々怖い思いをしていたかもしれない。
「そう、良かった」
トシヤも笑顔で答えた。何とも微笑ましく、羨ましい光景だ。そんなハルカとトシヤを横目で見ながらマサオは邪なことを考えていた。
――トシヤとハルカちゃん、何か良い雰囲気だな……俺も早くルナ先輩と……――
ダメだコイツ。だが、同時にこうも思っていた。
――ルナ先輩に男として認めてもらう為にも早く渋山峠を足着き無しで上れる様にならないとな――
動機は褒められたモノでは無いが、まあ前向きな姿勢だから良いだろう。そもそもこの年頃の男子が頑張る理由は女の子に良いところを見せたいからだというのが有史以来のお決まり、ましてやマサオはハルカやルナと一緒に走りたいという理由だけで五十万以上するピナレロプリンスを買った男なのだから。
だが、ココでマサオは一つ思い出した。いつぞや四人で上ってから二人だけでもう一本上ったハルカとルナだ、今日も「もう一本上ろう」とか言い出すんじゃないかと。
「ルナ先輩、もしかして今日ももう一本上るんですか?」
恐る恐るマサオが尋ねると、ルナはハルカをチラっと見て答えた。
「ううん、今日は無しかな。ハルカちゃんのエモンダがパンクしちゃったからね」
ルナはハルカのエモンダのリアタイヤは空気圧が低く、この状態で上るのは疲れるだろうし、危険だと判断したのか、それともトシヤとハルカの様子を見て今日はもう少し一緒に居させてあげようと思ったのか……
だが、どちらにしてもコレはマサオにとっては好都合だ。
「それじゃメシでも食べて行きません? もう昼前ですし」
さり気なく(そうか?)誘ったマサオ。するとルナは少し考える素振りを見せた。別にマサオと一緒にランチに行くのが嫌なのでは無い。ココからだと安心してロードバイクを置いて食事が出来るのはフレンドリージェニファーズカフェが一番近い。と言うか、フレンドリージェニファーズカフェぐらいしか無い。だが、フレンドリージェニファーズカフェでランチとなるとフードとドリンクで千円オーバーは確実だ。コレは高校生のルナにとって厳しい。何しろ先週来た時は、落ち込んだハルカの分も出しているのだから。
だが、それを言ってしまうとマサオの事だ、「じゃあ、俺が出しますよ」と言いかねない。いや、間違い無く言うだろう。困ってしまったルナにマサオが悲しそうな顔で言った。
「ダメ……っすか?」
こんな顔をされたら断るに断れない。ルナが「そんな事無いわよ」とでも言おうとした時、トシヤが口を挟んだ。
「悪い、俺、金そんなに無ぇわ」
一応トシヤも五千円ぐらい持って来てはいる。だが、それはトシヤの全財産(貯金は除く)だ。もうすぐ夏休み、調子に乗ってポンポンお金を使えば遊びに行けなくなってしまう。
「ごめんなさい、私も予備のチューブ買わないといけないから……」
ハルカも申し訳なさそうに言った。ちなみにロードバイクのチューブは一本千円弱だ。もちろんパンクしたチューブを修理して使うのも良いが、パッチを貼ったチューブは折り畳んで携帯しにくいし、何と言っても信頼性に欠ける。やはりチューブは新品を使うに越した事は無いのだ。
普通ならココで諦めるものだが、それでも諦めないのがマサオと言う男だ。
「じゃあ一回解散して、その後皆でチューブ買いに行くのに付き合うか」
つまり要するに食事だろうが買い物だろうがルナと一緒に居れたらそれで良いのだろう。マサオが言うとルナが言い出した。
「じゃあ、私がいつも行ってるショップに行ってみる?」
トシヤとマサオがいつも行っているのは全国チェーンの大手ショップで、少し離れた大きな町にある。対してルナとハルカの馴染みの店は二人の家から自転車で数分走った所にあるらしい。
大手ショップの最大のメリットは在庫処分品があれば完成車を安く買える事だろう。実際トシヤもリアクトの在庫処分品を買ったのだから。それにホイール等もセールで安くなっている事が多い。だが、その他のパーツや小物、用品となると基本的には定価販売だ。たまに行く分には少し離れた町まで出るのも楽しいが、気が向いた時にちょろっと行くのであれば近いに越したことはないし、もとよりマサオは行く場所などドコでも良いのだ。四人はルナとハルカの馴染みの店に行く事になった。
「どう? リアタイヤ、大丈夫?」
トシヤがハルカに尋ねた。もちろんハルカの後ろを走っていたトシヤは後方からハルカのエモンダの挙動が乱れたりしないか見ていて大丈夫だとはわかってはいるが、気になるものは気になるのだろう。
「うん、大丈夫よ。ありがとう」
笑顔で答えるハルカ。実はやはり空気圧が低く、高速カーブでリアタイヤが捩れる感じがしていたのだがそれは秘密だ。これがリアタイヤで良かった。もしフロントタイヤだったら下りのヘアピンのブレーキングで少々怖い思いをしていたかもしれない。
「そう、良かった」
トシヤも笑顔で答えた。何とも微笑ましく、羨ましい光景だ。そんなハルカとトシヤを横目で見ながらマサオは邪なことを考えていた。
――トシヤとハルカちゃん、何か良い雰囲気だな……俺も早くルナ先輩と……――
ダメだコイツ。だが、同時にこうも思っていた。
――ルナ先輩に男として認めてもらう為にも早く渋山峠を足着き無しで上れる様にならないとな――
動機は褒められたモノでは無いが、まあ前向きな姿勢だから良いだろう。そもそもこの年頃の男子が頑張る理由は女の子に良いところを見せたいからだというのが有史以来のお決まり、ましてやマサオはハルカやルナと一緒に走りたいという理由だけで五十万以上するピナレロプリンスを買った男なのだから。
だが、ココでマサオは一つ思い出した。いつぞや四人で上ってから二人だけでもう一本上ったハルカとルナだ、今日も「もう一本上ろう」とか言い出すんじゃないかと。
「ルナ先輩、もしかして今日ももう一本上るんですか?」
恐る恐るマサオが尋ねると、ルナはハルカをチラっと見て答えた。
「ううん、今日は無しかな。ハルカちゃんのエモンダがパンクしちゃったからね」
ルナはハルカのエモンダのリアタイヤは空気圧が低く、この状態で上るのは疲れるだろうし、危険だと判断したのか、それともトシヤとハルカの様子を見て今日はもう少し一緒に居させてあげようと思ったのか……
だが、どちらにしてもコレはマサオにとっては好都合だ。
「それじゃメシでも食べて行きません? もう昼前ですし」
さり気なく(そうか?)誘ったマサオ。するとルナは少し考える素振りを見せた。別にマサオと一緒にランチに行くのが嫌なのでは無い。ココからだと安心してロードバイクを置いて食事が出来るのはフレンドリージェニファーズカフェが一番近い。と言うか、フレンドリージェニファーズカフェぐらいしか無い。だが、フレンドリージェニファーズカフェでランチとなるとフードとドリンクで千円オーバーは確実だ。コレは高校生のルナにとって厳しい。何しろ先週来た時は、落ち込んだハルカの分も出しているのだから。
だが、それを言ってしまうとマサオの事だ、「じゃあ、俺が出しますよ」と言いかねない。いや、間違い無く言うだろう。困ってしまったルナにマサオが悲しそうな顔で言った。
「ダメ……っすか?」
こんな顔をされたら断るに断れない。ルナが「そんな事無いわよ」とでも言おうとした時、トシヤが口を挟んだ。
「悪い、俺、金そんなに無ぇわ」
一応トシヤも五千円ぐらい持って来てはいる。だが、それはトシヤの全財産(貯金は除く)だ。もうすぐ夏休み、調子に乗ってポンポンお金を使えば遊びに行けなくなってしまう。
「ごめんなさい、私も予備のチューブ買わないといけないから……」
ハルカも申し訳なさそうに言った。ちなみにロードバイクのチューブは一本千円弱だ。もちろんパンクしたチューブを修理して使うのも良いが、パッチを貼ったチューブは折り畳んで携帯しにくいし、何と言っても信頼性に欠ける。やはりチューブは新品を使うに越した事は無いのだ。
普通ならココで諦めるものだが、それでも諦めないのがマサオと言う男だ。
「じゃあ一回解散して、その後皆でチューブ買いに行くのに付き合うか」
つまり要するに食事だろうが買い物だろうがルナと一緒に居れたらそれで良いのだろう。マサオが言うとルナが言い出した。
「じゃあ、私がいつも行ってるショップに行ってみる?」
トシヤとマサオがいつも行っているのは全国チェーンの大手ショップで、少し離れた大きな町にある。対してルナとハルカの馴染みの店は二人の家から自転車で数分走った所にあるらしい。
大手ショップの最大のメリットは在庫処分品があれば完成車を安く買える事だろう。実際トシヤもリアクトの在庫処分品を買ったのだから。それにホイール等もセールで安くなっている事が多い。だが、その他のパーツや小物、用品となると基本的には定価販売だ。たまに行く分には少し離れた町まで出るのも楽しいが、気が向いた時にちょろっと行くのであれば近いに越したことはないし、もとよりマサオは行く場所などドコでも良いのだ。四人はルナとハルカの馴染みの店に行く事になった。
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