75 / 135
おっさんは財力で体力をカバーする
しおりを挟む
前に来た事のあるサイクルラックが設置してあるカフェに到着した。今日も既に数台のロードバイクがラックに掛けられている。そのうちの二台を見て、ハルカとルナが声を上げた。
「あらっ、タイムのVXRSじゃない」
「もう一台はルックの695ね。こんな所で往年の名車を見られるなんて」
二台ともフランスの高額なロードバイクで、クライマー垂涎の逸品だ。
「すごーい、見て見て! このタイム、カンパのスーパーレコードで組んであるわよ」
「ルックはデュラエースね。一度で良いからこんなの乗ってみたいわね」
ハルカが騒ぐのはいつもの事だが、珍しくルナも興奮して他人様のロードバイクを舐め回す様に観察している。マサオのプリンスも合わせるとピナレロにタイムにルックと言う中々お目にかかれないブランドのロードバイクが三車種揃っているのだ。ここにコルナゴとかデローザとかが現れてもしたら大騒ぎになるかもしれない。
するとカフェのドアが開き、二人の中年男が出て来た。二人共サイクルジャージに身を包んだローディーだ。ハルカとルナがそれに気付き、タイムとルックから離れると、二人の男は笑顔で話しかけてきた。
「お嬢ちゃん達もロード乗りなんだね。エモンダに乗ってるって事はクライマーかな?」
「おっ、そっちのお兄ちゃんはリアクトにプリンスか。やっぱり飛ばし屋かい?」
乗っている車種で決め付けるのはどうかとは思うが、やはり普通はそう思うだろう……もっともロードバイクに興味の無い人からすれば軽量ロードもエアロロードも一緒だと思うのだろうが。
「はい。渋山峠上ってます!」
ハルカが元気良く答えると男達は目を細めた。
「そうか。若いから元気に上るんだろうな」
「まったく。若い者は羨ましいねぇ。おっと、ゴメンよ。今、場所空けるから」
言うと男達がサイクルラックから下ろしたロードバイクはタイムとルックだった。
「凄く良いロードバイクに乗ってらっしゃるんですね」
ルナが言うと男達はニヤリと笑った。
「おっさんだから機材頼りなだけだよ」
「そうそう。若い者はクロスバイクでも上るからな」
『クロスバイク』とはマウンテンバイクのコンポを積み、舗装路用のタイヤを履いたフラットバーハンドルの自転車だ。乗り易く、ロードバイクよりも安価なので若い人に人気がある。この男は『クロスバイクでも上る』と言うが、マウンテンバイクのコンポを積んでいるのでキア比が低いのでスピードこそ出ないものの意外と山は上れたりする……重くてしんどいけれども。まあ、ロードバイクでもしんどいのだが。
「じゃあ、気を付けてな」
言い残して二人の中年男はタイムとルックに跨り、走り去って行った。
「格好良いなあ。ウチの親父とは大違いだ」
マサオがボヤく様に言った。マサオの父は会社経営をしていて、忙しくて運動などする暇が無いのか、正に『ザ・中年』と言った雰囲気だ。ルナが「そんな事を言うものじゃ無いわよ」と咎めるが、やはり自分の父親と同じぐらいの年齢の人が颯爽とロードバイクに乗っているのを見てしまうと、どうしても比べてしまう。だが、続くルナの言葉にマサオは黙って頷くしか無かった。
「でも、そのお父さんのおかげでプリンスに乗れてるのよ。感謝しないとね」
「あらっ、タイムのVXRSじゃない」
「もう一台はルックの695ね。こんな所で往年の名車を見られるなんて」
二台ともフランスの高額なロードバイクで、クライマー垂涎の逸品だ。
「すごーい、見て見て! このタイム、カンパのスーパーレコードで組んであるわよ」
「ルックはデュラエースね。一度で良いからこんなの乗ってみたいわね」
ハルカが騒ぐのはいつもの事だが、珍しくルナも興奮して他人様のロードバイクを舐め回す様に観察している。マサオのプリンスも合わせるとピナレロにタイムにルックと言う中々お目にかかれないブランドのロードバイクが三車種揃っているのだ。ここにコルナゴとかデローザとかが現れてもしたら大騒ぎになるかもしれない。
するとカフェのドアが開き、二人の中年男が出て来た。二人共サイクルジャージに身を包んだローディーだ。ハルカとルナがそれに気付き、タイムとルックから離れると、二人の男は笑顔で話しかけてきた。
「お嬢ちゃん達もロード乗りなんだね。エモンダに乗ってるって事はクライマーかな?」
「おっ、そっちのお兄ちゃんはリアクトにプリンスか。やっぱり飛ばし屋かい?」
乗っている車種で決め付けるのはどうかとは思うが、やはり普通はそう思うだろう……もっともロードバイクに興味の無い人からすれば軽量ロードもエアロロードも一緒だと思うのだろうが。
「はい。渋山峠上ってます!」
ハルカが元気良く答えると男達は目を細めた。
「そうか。若いから元気に上るんだろうな」
「まったく。若い者は羨ましいねぇ。おっと、ゴメンよ。今、場所空けるから」
言うと男達がサイクルラックから下ろしたロードバイクはタイムとルックだった。
「凄く良いロードバイクに乗ってらっしゃるんですね」
ルナが言うと男達はニヤリと笑った。
「おっさんだから機材頼りなだけだよ」
「そうそう。若い者はクロスバイクでも上るからな」
『クロスバイク』とはマウンテンバイクのコンポを積み、舗装路用のタイヤを履いたフラットバーハンドルの自転車だ。乗り易く、ロードバイクよりも安価なので若い人に人気がある。この男は『クロスバイクでも上る』と言うが、マウンテンバイクのコンポを積んでいるのでキア比が低いのでスピードこそ出ないものの意外と山は上れたりする……重くてしんどいけれども。まあ、ロードバイクでもしんどいのだが。
「じゃあ、気を付けてな」
言い残して二人の中年男はタイムとルックに跨り、走り去って行った。
「格好良いなあ。ウチの親父とは大違いだ」
マサオがボヤく様に言った。マサオの父は会社経営をしていて、忙しくて運動などする暇が無いのか、正に『ザ・中年』と言った雰囲気だ。ルナが「そんな事を言うものじゃ無いわよ」と咎めるが、やはり自分の父親と同じぐらいの年齢の人が颯爽とロードバイクに乗っているのを見てしまうと、どうしても比べてしまう。だが、続くルナの言葉にマサオは黙って頷くしか無かった。
「でも、そのお父さんのおかげでプリンスに乗れてるのよ。感謝しないとね」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる