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トシヤとマサオ、初めてのプリクラ(BLでは無い)
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大きなクマのぬいぐるみが取れたので店員を呼び、クレジットに残った分を返金してもらったマサオのポケットがまた小銭で一杯になった。だが、実はそれはマサオの計算の内だった。その計算とは『小銭を余らせたのを口実にルナとプリクラを撮る』という事だ。もっとも合計で五千円分も両替したのは計算外だったが。
大きなクマのぬいぐるみを抱いてご満悦なハルカを見てマサオの頭に名案が浮かんだ。それは、プライズゲットが出来た事をダシにすれば自然な感じでプリクラを撮ろうと誘えるんじゃないかという考えと言うか、企みだ。
「良かったね、ハルカちゃん。そうだ、記念にみんなでプリクラでも撮ろうぜ」
がっついていると悟られない様に、さりげない感じでマサオが言うと、上機嫌なハルカはマサオの奸計など全く気付かず満面の笑みで賛同した。
「良いねー! 行こ行こっ!」
だが、トシヤは何故か渋い反応を見せた。
「記念って、わざわざプリクラなんか撮らなくても良いだろ、金かかるし。スマホで撮りゃ良いじゃん」
――このバカチンがぁっ!! ――
マサオは心の中で叫んだ。
そんな事は百も承知だ。だが、ここは敢えてのプリクラだという事がトシヤはわからないのか?
焦るマサオだったが、ここで狼狽えるのは愚の骨頂。
「大量に両替しちまったからな、重くてしょうがねぇんだよ」
ポケットから小銭を一掴み取り出してジャラジャラ言わせながらマサオが平静を装って言うと、ハルカの目がまたギラリと輝いた。
「マサオ君がお金出してくれるんだって! 早く行きましょ!」
ハルカはマサオに散々お金を使わせて(もっともこれはマサオが勝手に使っただけだが)おいて、まだたかるつもりの様だ。だが、これはマサオにとって渡りに船だ。
「任せとけ! じゃあ行こうぜ」
得意げな顔でマサオが言った。ルナが「マサオ君、本当に良いの?」と気を遣って聞くが、マサオとしてはプライズが取れるまでいくらかかるかわからないクレーンゲームより、決められた金額で確実にシールがゲット出来るプリクラの方が都合が良いし、何と言ってもルナと一緒にプリクラが撮れるのだ。
「もちろんっすよ」とマサオは最高の笑顔で答え、プリクラのコーナー目指して歩き出した。
プリクラのコーナーは、今までトシヤにとってもマサオにとっても忌避するべき場所だった。女の子同士なら絵にもなるが、男二人でプリクラなんて、想像するだけでもぞっとする。そんな二人が初めてプリクラのコーナーへと足を踏み入れた今日は記念すべき日だ。
「どれにしよっかな?」
ハルカが沢山並んだ機械の中から一台を選ぼうと、キョロキョロしているが、マサオとしては正直なところ機械などどれだって良い。大事なのは『ルナと撮る』事なのだから。もちろん「二人で撮ろう」と言う根性までは持ち合わせていないので、トシヤとハルカも入れた四人で撮るのだが。
ソワソワするマサオだが、それを表に出すわけにはいかないし、ましてや「早く決めてくれ」などとは口が裂けても言えない。ハルカはそんなマサオの気持ちも知らず、プリクラコーナーを彷徨き、やっと足を止めた。
「コレにしよっ!」
ハルカが選んだのは、何の変哲も無い機械だった。マサオは「コレだったら別に考えるまでも無いじゃないか」と思ったが、ハルカは笑顔で言った。
「コレ、旧型だから百円安くなってるんだよ」
ハルカも一応は気を遣っていたのだった。もっとも既に三千円弱使い、手元には二千円分以上の小銭が残っているマサオにとって百円安いからと言って大勢に影響は無いのだが、大切なのは気持ちだ。
「そっか、気を遣ってくれたんだな。んじゃ、コイツで撮るか」
「うん!」
マサオの声にハルカは元気良く頷くと、そそくさと撮影ブースに入った。
マサオもハルカに続いて入ろうとしたが、カーテンに手をかけ、ルナに次に入る様促した。コレだけ見れば、マサオが紳士的態度を取った様に思えるが、実際のところはマサオの頭の中では次の様な思考が超高速で展開していたのだ。
ハルカに続いて入るという事は、撮影ポジション的にはハルカの後ろか隣になる。マサオとしてはハルカよりルナの隣に居たいわけだが、次にトシヤを入れたところでハルカの隣に陣取る事など100%あり得ない。そうなると、マサオがルナと並んでプリクラを撮れるチャンスはゼロに等しい。
そうなると次にルナに入ってもらって、ハルカの後ろに立ってくれる事を願うばかりだ。これならルナがハルカの隣に行ったとしても、マサオがルナの後ろに、トシヤがハルカの後ろに立つ事で二組のカップルに見えない事も無い。
マサオは祈る様な思いで撮影ブースに入るルナを見つめたが、予想通りルナはハルカの隣にポジションを取った。
――ですよね! ――
マサオはがっかりしながらもトシヤを先に撮影ブースに入れてハルカの後ろに立たせると、自分もルナの後ろに立った。だが、ココで女神がマサオに微笑んだ。そう、プリクラを撮るにはお金を入れなければならないのだ。そしてお金を出すマサオは後列に立っているのでお金を入れる事は出来無い。つまり、マサオは前列の二人のどちらかにお金を渡す事になるのだが、もしかしたらこの時に手が触れるかもしれない。
当然マサオがお金を渡すのはルナだ。
「はい、ルナ先輩。コレ、入れて下さい」
マサオが右手でポケットから小銭を取り出すと、ルナは「ありがとう」と両手を差し出した。さあ、ここからが勝負だ。マサオは小銭を握った手の小指をそっとルナの掌に触れさせると、小銭を滑らせる様にルナの掌に流すとルナは微笑んだ。とりあえずマサオは勝負に勝ったと思って良いのだろう。手が触れても嫌な顔をされなかったのだから。
このまま左手でルナの手を包み込んでしまいたい衝動に駆られたマサオだったが、ハルカが「ルナ先輩、早くー」と催促したのでルナの手はマサオの手から離れ、小銭の投入口へと移動してしまった。
ルナが料金を入れたのを確認したハルカが慣れた手付きで画面を操作し、撮影が始まった。正面のモニターに映った自分達の姿を見て、トシヤは気恥ずかしくなってしまった。遠足とかで女の子と写真を撮った事は無いわけでは無い。だが、それは大勢のグループで撮ったに過ぎない。今はプリクラの撮影ブースと言う密室に近い場所で女の子と四人で居るのだ。
「トシヤ君、もっとひっつかないと私の顔が大きく見えちゃうじゃない!」
思わず上体を仰け反らせてしまったトシヤにハルカの声が飛んだ。そう、上体を仰け反らせると、必然的に顔がカメラから遠くなり小顔効果が生まれるのだ。それを嫌ったハルカだが、トシヤはそれ以上にハルカと接近するのに恥ずかしさを憶えていたのだ。
だが、マサオはこれ幸いとルナにぐっと近付いた。さすがに密着するまでには至らなかったが、それでも十分マサオには幸せで、ルナの髪から放たれる良い香りを満喫しながらトシヤに言った。
「トシヤももっと寄らないとはみ出しちまうぞ」
言われてみればトシヤの頭は少しフレームからはみ出ている。トシヤが思い切ってハルカに近付いたところでフラッシュが光り、モニターは確認画面へと切り替わった。
「良いんじゃない?」
ハルカが満足そうに言って、OKのボタンを押した。後は『落書き』だが、それはハルカに任せ、プリクラは完成した。
取り出し口から吐き出されたシールをハサミで四等分したハルカはルナとトシヤ、そしてマサオに渡した。女の子と撮った初めてのプリクラをトシヤは恥ずかしくて真っ直ぐに見れなかったが、マサオはしげしげと見つめて嬉しそうだ。
「マサオ君、嬉しい? ルナ先輩とプリクラ撮れて嬉しい?」
それをいち早く発見したハルカがマサオをからかう様に言った。せっかくそれまで平静を装っていたというのに、マサオも詰めが甘いものだ。何も言い返せずマサオが顔を赤くすると、ルナが困った声で言った。
「ハルカちゃん何言ってるの、マサオ君が困ってるじゃない」
意外にも、ルナも顔を少し赤くしていた。恐らくルナはハルカが妙な事を言い出したから顔を赤くしただけなのだろうが、「コレは脈有りと思って良いのか?」と思ったマサオは幸せな男なのだろう。
大きなクマのぬいぐるみを抱いてご満悦なハルカを見てマサオの頭に名案が浮かんだ。それは、プライズゲットが出来た事をダシにすれば自然な感じでプリクラを撮ろうと誘えるんじゃないかという考えと言うか、企みだ。
「良かったね、ハルカちゃん。そうだ、記念にみんなでプリクラでも撮ろうぜ」
がっついていると悟られない様に、さりげない感じでマサオが言うと、上機嫌なハルカはマサオの奸計など全く気付かず満面の笑みで賛同した。
「良いねー! 行こ行こっ!」
だが、トシヤは何故か渋い反応を見せた。
「記念って、わざわざプリクラなんか撮らなくても良いだろ、金かかるし。スマホで撮りゃ良いじゃん」
――このバカチンがぁっ!! ――
マサオは心の中で叫んだ。
そんな事は百も承知だ。だが、ここは敢えてのプリクラだという事がトシヤはわからないのか?
焦るマサオだったが、ここで狼狽えるのは愚の骨頂。
「大量に両替しちまったからな、重くてしょうがねぇんだよ」
ポケットから小銭を一掴み取り出してジャラジャラ言わせながらマサオが平静を装って言うと、ハルカの目がまたギラリと輝いた。
「マサオ君がお金出してくれるんだって! 早く行きましょ!」
ハルカはマサオに散々お金を使わせて(もっともこれはマサオが勝手に使っただけだが)おいて、まだたかるつもりの様だ。だが、これはマサオにとって渡りに船だ。
「任せとけ! じゃあ行こうぜ」
得意げな顔でマサオが言った。ルナが「マサオ君、本当に良いの?」と気を遣って聞くが、マサオとしてはプライズが取れるまでいくらかかるかわからないクレーンゲームより、決められた金額で確実にシールがゲット出来るプリクラの方が都合が良いし、何と言ってもルナと一緒にプリクラが撮れるのだ。
「もちろんっすよ」とマサオは最高の笑顔で答え、プリクラのコーナー目指して歩き出した。
プリクラのコーナーは、今までトシヤにとってもマサオにとっても忌避するべき場所だった。女の子同士なら絵にもなるが、男二人でプリクラなんて、想像するだけでもぞっとする。そんな二人が初めてプリクラのコーナーへと足を踏み入れた今日は記念すべき日だ。
「どれにしよっかな?」
ハルカが沢山並んだ機械の中から一台を選ぼうと、キョロキョロしているが、マサオとしては正直なところ機械などどれだって良い。大事なのは『ルナと撮る』事なのだから。もちろん「二人で撮ろう」と言う根性までは持ち合わせていないので、トシヤとハルカも入れた四人で撮るのだが。
ソワソワするマサオだが、それを表に出すわけにはいかないし、ましてや「早く決めてくれ」などとは口が裂けても言えない。ハルカはそんなマサオの気持ちも知らず、プリクラコーナーを彷徨き、やっと足を止めた。
「コレにしよっ!」
ハルカが選んだのは、何の変哲も無い機械だった。マサオは「コレだったら別に考えるまでも無いじゃないか」と思ったが、ハルカは笑顔で言った。
「コレ、旧型だから百円安くなってるんだよ」
ハルカも一応は気を遣っていたのだった。もっとも既に三千円弱使い、手元には二千円分以上の小銭が残っているマサオにとって百円安いからと言って大勢に影響は無いのだが、大切なのは気持ちだ。
「そっか、気を遣ってくれたんだな。んじゃ、コイツで撮るか」
「うん!」
マサオの声にハルカは元気良く頷くと、そそくさと撮影ブースに入った。
マサオもハルカに続いて入ろうとしたが、カーテンに手をかけ、ルナに次に入る様促した。コレだけ見れば、マサオが紳士的態度を取った様に思えるが、実際のところはマサオの頭の中では次の様な思考が超高速で展開していたのだ。
ハルカに続いて入るという事は、撮影ポジション的にはハルカの後ろか隣になる。マサオとしてはハルカよりルナの隣に居たいわけだが、次にトシヤを入れたところでハルカの隣に陣取る事など100%あり得ない。そうなると、マサオがルナと並んでプリクラを撮れるチャンスはゼロに等しい。
そうなると次にルナに入ってもらって、ハルカの後ろに立ってくれる事を願うばかりだ。これならルナがハルカの隣に行ったとしても、マサオがルナの後ろに、トシヤがハルカの後ろに立つ事で二組のカップルに見えない事も無い。
マサオは祈る様な思いで撮影ブースに入るルナを見つめたが、予想通りルナはハルカの隣にポジションを取った。
――ですよね! ――
マサオはがっかりしながらもトシヤを先に撮影ブースに入れてハルカの後ろに立たせると、自分もルナの後ろに立った。だが、ココで女神がマサオに微笑んだ。そう、プリクラを撮るにはお金を入れなければならないのだ。そしてお金を出すマサオは後列に立っているのでお金を入れる事は出来無い。つまり、マサオは前列の二人のどちらかにお金を渡す事になるのだが、もしかしたらこの時に手が触れるかもしれない。
当然マサオがお金を渡すのはルナだ。
「はい、ルナ先輩。コレ、入れて下さい」
マサオが右手でポケットから小銭を取り出すと、ルナは「ありがとう」と両手を差し出した。さあ、ここからが勝負だ。マサオは小銭を握った手の小指をそっとルナの掌に触れさせると、小銭を滑らせる様にルナの掌に流すとルナは微笑んだ。とりあえずマサオは勝負に勝ったと思って良いのだろう。手が触れても嫌な顔をされなかったのだから。
このまま左手でルナの手を包み込んでしまいたい衝動に駆られたマサオだったが、ハルカが「ルナ先輩、早くー」と催促したのでルナの手はマサオの手から離れ、小銭の投入口へと移動してしまった。
ルナが料金を入れたのを確認したハルカが慣れた手付きで画面を操作し、撮影が始まった。正面のモニターに映った自分達の姿を見て、トシヤは気恥ずかしくなってしまった。遠足とかで女の子と写真を撮った事は無いわけでは無い。だが、それは大勢のグループで撮ったに過ぎない。今はプリクラの撮影ブースと言う密室に近い場所で女の子と四人で居るのだ。
「トシヤ君、もっとひっつかないと私の顔が大きく見えちゃうじゃない!」
思わず上体を仰け反らせてしまったトシヤにハルカの声が飛んだ。そう、上体を仰け反らせると、必然的に顔がカメラから遠くなり小顔効果が生まれるのだ。それを嫌ったハルカだが、トシヤはそれ以上にハルカと接近するのに恥ずかしさを憶えていたのだ。
だが、マサオはこれ幸いとルナにぐっと近付いた。さすがに密着するまでには至らなかったが、それでも十分マサオには幸せで、ルナの髪から放たれる良い香りを満喫しながらトシヤに言った。
「トシヤももっと寄らないとはみ出しちまうぞ」
言われてみればトシヤの頭は少しフレームからはみ出ている。トシヤが思い切ってハルカに近付いたところでフラッシュが光り、モニターは確認画面へと切り替わった。
「良いんじゃない?」
ハルカが満足そうに言って、OKのボタンを押した。後は『落書き』だが、それはハルカに任せ、プリクラは完成した。
取り出し口から吐き出されたシールをハサミで四等分したハルカはルナとトシヤ、そしてマサオに渡した。女の子と撮った初めてのプリクラをトシヤは恥ずかしくて真っ直ぐに見れなかったが、マサオはしげしげと見つめて嬉しそうだ。
「マサオ君、嬉しい? ルナ先輩とプリクラ撮れて嬉しい?」
それをいち早く発見したハルカがマサオをからかう様に言った。せっかくそれまで平静を装っていたというのに、マサオも詰めが甘いものだ。何も言い返せずマサオが顔を赤くすると、ルナが困った声で言った。
「ハルカちゃん何言ってるの、マサオ君が困ってるじゃない」
意外にも、ルナも顔を少し赤くしていた。恐らくルナはハルカが妙な事を言い出したから顔を赤くしただけなのだろうが、「コレは脈有りと思って良いのか?」と思ったマサオは幸せな男なのだろう。
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