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誘ったのは良いけれども……
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「お前、どーゆーつもりなんだよ?」
自分達の教室に戻ると同時にトシヤは大胆な行動に出たマサオに詰め寄るが、マサオは涼しい顔でさらりと答えた。
「良かったじゃん、休みの日にハルカちゃんと遊ぶ事が出来る事になって。嬉しいだろ?」
はっきり言って答えになっていない。だが、マサオの言う通りトシヤが嬉しいのは紛れもない事実だ。
「そりゃそうだけどよ、遊ぶったってドコ行くんだよ? 何か考えがあってのコトなんだろうな?」
トシヤも往生際の悪い事を言うものだ。せっかくマサオが男気を出してハルカを誘った(そうか?)のだから素直に喜べば良いのに。だが、マサオはとんでもない事を言い出した。
「うーん、どーすっかなー? トシヤ、何か良いアイデア無いか?」
どうせそんな事だろうと思っていたトシヤは突っ込む気にもならず大きな溜息を一つ吐いた。
「だと思ったよ。とりあえず宿題にして明日また話しようぜ」
「だな」
いくら考えても埒が明かないのは明白だ。ちなみに今日は木曜日、次の休みの日曜日までは少し時間がある。今夜一晩お互いに考えて、明日意見を出し合おうと言う事にして、今日のところは帰る事となった。
家に帰ったトシヤは色々と考えてはみたものの、そう易々と名案が浮かぶものでは無い。となるとスマホで情報を集めるのが良かろうとトシヤがスマホに手を伸ばした時、メール受信の音と共にスマホがブルブルと震えた。
――ハルカちゃんかな? ――
ドキドキしながらメールの画面を開いたトシヤだったが、その期待は見事に裏切られた。
「マサオかよ!」
トシヤは一人、スマホに向かって毒づいた。もっともマサオに罪は無く、ただ単にトシヤが勝手に期待しただけなのだが。しかしまあ、わざわざメールを送ってきたのだ。何か名案でも浮かんだのかと期待してトシヤがマサオからのメールを開くと、そこには呆れた短文が記されていた。
『何か良い企画は思い付いたか? 俺はちょっと思い付いたぜ。詳しくは明日な』
「プレッシャーかよ!」
トシヤは思わずスマホをベッドに投げ捨てた。だが、マサオが何か思い付いたからにはトシヤも何か案を出さなければならない。気を取り直してスマホに手を伸ばすと、またメール受信の音と共にスマホが振動を始めた。
「しつこい!」
ぼやきながらトシヤが画面を見ると、今度はハルカからのメールが届いていた。心を躍らせてメールを開いたトシヤの目に映ったのは例によって素っ気ない一文だった。
『日曜日、ルナ先輩OKだけど、何するのかしら?』
素っ気ないと言えば素っ気ない文面だが、今までは用件だけが書かれていたのに対し、今回のメールには『何するのかしら?』とプラスアルファが付け加えられている。これは一歩前進か? と期待したトシヤだったが、まだ何も決まっていない。
『それは日曜日のお楽しみ。楽しみにしててよ』
自らハードルを上げてしまったトシヤ。明日、マサオと話を詰めるまでに何か良い案を考え付く事が出来るのだろうか?
翌日、トシヤが教室に入ると、待ちかねた様にマサオが駆け寄ってきた。
「どうだ? 何か良いアイデアは思い付いたか?」
前置きも無くストレートに聞いてきたマサオにトシヤは言いにくそうに答えた。
「……映画なんてどうだろう?」
思いっきり無難と言うか、何の捻りも無いトシヤの言葉にマサオは眉間に皺を寄せた。
「おいおいトシヤ君、君は何か勘違いをしていないかい?」
マサオによると映画と言うモノは予め前売り券を用意した上で「映画のチケットがあるんだけど、一緒に行かない?」と誘うべきものだそうで、今回は既に遊びに行く事が決まっているので映画と言う選択肢は外すべきだという事だ。もちろんコレはマサオの個人的見解でしか無い。
「じゃあ、お前は何か名案でもあるのかよ?」
今度は自分の意見を一蹴されたトシヤが眉間に皺を寄せた。するとマサオは勝ち誇った顔で答えた。
「ボルダリングだ!」
「はあっ?」
予想だにしなかったマサオの言葉にトシヤの口から間抜けな声が出た。もちろんトシヤだってボルダリングぐらいは知っている。だが、知っているだけで自分とは関係無い世界だと思っていたのだ。
「ボルダリングなんてドコで出来るんだよ?」
「電車で市内に出りゃ、出来るトコあるみたいだぜ。名案だろ?」
「道具はどーすんだよ?」
「靴は貸してくれるし、動きやすい服装ならオッケーみたいだから大丈夫だよ」
訝るトシヤに対し、マサオはヤル気満々だ。他に良い案など出せないトシヤは結局マサオに押し切られる形で同意するしか無かった。
「とりあえず何をするかは秘密にしておいて、動きやすい服装で来る様に伝えといてくれ。まあ、ハルカちゃんなら大丈夫だと思うが、ルナ先輩がスカート履いて来たら困るからな」
「ああ、わかった」
勿体を付けようとするマサオにトシヤは面倒くさそうに頷くと、ポケットからスマホを取り出した。
「待ち合わせは十時で良いよな?」
言うとトシヤはハルカにメールを打ち出した。
『日曜日、駅に十時集合で良いかな? ドコに行くのかはお楽しみ。動きやすい服装で来てね』
後は明日の日曜日を待つばかりだ。ボルダリングに挑戦だと知ったハルカはどんな顔をするだろう? そう思うとトシヤの胸はドキドキしてきた。今までハルカと約束をして楽しみだという気持ちはあったが、ドキドキしたのは初めてだ。何故こんな気持ちになるのか? もちろんトシヤの中に答えは出ている。ただ、前に進む勇気が無いだけだ。もっともそれが一番難しいのだけれども。
自分達の教室に戻ると同時にトシヤは大胆な行動に出たマサオに詰め寄るが、マサオは涼しい顔でさらりと答えた。
「良かったじゃん、休みの日にハルカちゃんと遊ぶ事が出来る事になって。嬉しいだろ?」
はっきり言って答えになっていない。だが、マサオの言う通りトシヤが嬉しいのは紛れもない事実だ。
「そりゃそうだけどよ、遊ぶったってドコ行くんだよ? 何か考えがあってのコトなんだろうな?」
トシヤも往生際の悪い事を言うものだ。せっかくマサオが男気を出してハルカを誘った(そうか?)のだから素直に喜べば良いのに。だが、マサオはとんでもない事を言い出した。
「うーん、どーすっかなー? トシヤ、何か良いアイデア無いか?」
どうせそんな事だろうと思っていたトシヤは突っ込む気にもならず大きな溜息を一つ吐いた。
「だと思ったよ。とりあえず宿題にして明日また話しようぜ」
「だな」
いくら考えても埒が明かないのは明白だ。ちなみに今日は木曜日、次の休みの日曜日までは少し時間がある。今夜一晩お互いに考えて、明日意見を出し合おうと言う事にして、今日のところは帰る事となった。
家に帰ったトシヤは色々と考えてはみたものの、そう易々と名案が浮かぶものでは無い。となるとスマホで情報を集めるのが良かろうとトシヤがスマホに手を伸ばした時、メール受信の音と共にスマホがブルブルと震えた。
――ハルカちゃんかな? ――
ドキドキしながらメールの画面を開いたトシヤだったが、その期待は見事に裏切られた。
「マサオかよ!」
トシヤは一人、スマホに向かって毒づいた。もっともマサオに罪は無く、ただ単にトシヤが勝手に期待しただけなのだが。しかしまあ、わざわざメールを送ってきたのだ。何か名案でも浮かんだのかと期待してトシヤがマサオからのメールを開くと、そこには呆れた短文が記されていた。
『何か良い企画は思い付いたか? 俺はちょっと思い付いたぜ。詳しくは明日な』
「プレッシャーかよ!」
トシヤは思わずスマホをベッドに投げ捨てた。だが、マサオが何か思い付いたからにはトシヤも何か案を出さなければならない。気を取り直してスマホに手を伸ばすと、またメール受信の音と共にスマホが振動を始めた。
「しつこい!」
ぼやきながらトシヤが画面を見ると、今度はハルカからのメールが届いていた。心を躍らせてメールを開いたトシヤの目に映ったのは例によって素っ気ない一文だった。
『日曜日、ルナ先輩OKだけど、何するのかしら?』
素っ気ないと言えば素っ気ない文面だが、今までは用件だけが書かれていたのに対し、今回のメールには『何するのかしら?』とプラスアルファが付け加えられている。これは一歩前進か? と期待したトシヤだったが、まだ何も決まっていない。
『それは日曜日のお楽しみ。楽しみにしててよ』
自らハードルを上げてしまったトシヤ。明日、マサオと話を詰めるまでに何か良い案を考え付く事が出来るのだろうか?
翌日、トシヤが教室に入ると、待ちかねた様にマサオが駆け寄ってきた。
「どうだ? 何か良いアイデアは思い付いたか?」
前置きも無くストレートに聞いてきたマサオにトシヤは言いにくそうに答えた。
「……映画なんてどうだろう?」
思いっきり無難と言うか、何の捻りも無いトシヤの言葉にマサオは眉間に皺を寄せた。
「おいおいトシヤ君、君は何か勘違いをしていないかい?」
マサオによると映画と言うモノは予め前売り券を用意した上で「映画のチケットがあるんだけど、一緒に行かない?」と誘うべきものだそうで、今回は既に遊びに行く事が決まっているので映画と言う選択肢は外すべきだという事だ。もちろんコレはマサオの個人的見解でしか無い。
「じゃあ、お前は何か名案でもあるのかよ?」
今度は自分の意見を一蹴されたトシヤが眉間に皺を寄せた。するとマサオは勝ち誇った顔で答えた。
「ボルダリングだ!」
「はあっ?」
予想だにしなかったマサオの言葉にトシヤの口から間抜けな声が出た。もちろんトシヤだってボルダリングぐらいは知っている。だが、知っているだけで自分とは関係無い世界だと思っていたのだ。
「ボルダリングなんてドコで出来るんだよ?」
「電車で市内に出りゃ、出来るトコあるみたいだぜ。名案だろ?」
「道具はどーすんだよ?」
「靴は貸してくれるし、動きやすい服装ならオッケーみたいだから大丈夫だよ」
訝るトシヤに対し、マサオはヤル気満々だ。他に良い案など出せないトシヤは結局マサオに押し切られる形で同意するしか無かった。
「とりあえず何をするかは秘密にしておいて、動きやすい服装で来る様に伝えといてくれ。まあ、ハルカちゃんなら大丈夫だと思うが、ルナ先輩がスカート履いて来たら困るからな」
「ああ、わかった」
勿体を付けようとするマサオにトシヤは面倒くさそうに頷くと、ポケットからスマホを取り出した。
「待ち合わせは十時で良いよな?」
言うとトシヤはハルカにメールを打ち出した。
『日曜日、駅に十時集合で良いかな? ドコに行くのかはお楽しみ。動きやすい服装で来てね』
後は明日の日曜日を待つばかりだ。ボルダリングに挑戦だと知ったハルカはどんな顔をするだろう? そう思うとトシヤの胸はドキドキしてきた。今までハルカと約束をして楽しみだという気持ちはあったが、ドキドキしたのは初めてだ。何故こんな気持ちになるのか? もちろんトシヤの中に答えは出ている。ただ、前に進む勇気が無いだけだ。もっともそれが一番難しいのだけれども。
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