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突撃! ハルカの教室へ
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「はろー」
マサオは何の躊躇も無くハルカの教室の扉を開けると、にこやかに入って行った。突然の珍客に、まだ下校せず教室に残っていた者達の目が集中した。
「何だ、マサオじゃねーか。どーした? 喧嘩でも売りに来たか?」
「人をヤンキー漫画のキャラと一緒にせんでくれ。実はな……」
どうやらマサオはハルカのクラスにも友人が居る様だ。マサオの意外なコミュ力の高さに驚くトシヤの前でマサオは更に驚くべき行動に出た。
「おっ、居た居た。ハルカちゃん、やっほー」
マサオはハルカの姿を見つけると、手を振って呼びかけたのだ。
「おいマサオ、お前何を……」
トシヤは焦った。マサオの呼びかけに応えてハルカが自分達のところに来たとしても何を話せば良いかわからないし、他所の教室に乗り込んで最近可愛くなったと評判のハルカに堂々と声をかけたのだ。下手すればこのクラスの男子を敵に回す事になりかねない。だが、そんなトシヤの心配は杞憂に終わった。
「何だマサオ、何かと思ったらあの男女に用でもあるのかよ?」
マサオの友人らしき男子がトシヤ以上に驚いた声で言いながらマサオを信じられないといった目で見たのだ。
「ああ。俺達、ロードバイク仲間なんだ。最近雨ばっかで走って無いからよ、ちょびっとハルカちゃんの様子を見に来たって寸法だ」
「ロードバイクって、自転車だろ? お前も物好きだな。まあ良いけどよ」
トシヤはマサオとその友人の会話に違和感を憶えた。カオリの話ではハルカは可愛くなったと評判の筈。しかしマサオの友人の言葉を聞く限り、とてもそうとは思えない。
「何よ、どうしたっての? わざわざ他人の教室まで来たりして」
悩んでいるトシヤと何も考えていないであろうマサオの前にハルカがやって来た。乙女スイッチの入っていない素のハルカだ。
「いやな、雨でずっと乗れてないだろ? トシヤが不景気な顔して鬱陶しいんだよ。梅雨のローディーの過ごし方ってのを教えてもらおうと思ってさ」
臆面も無くマサオが言った。ベテランだろうが初心者だろうが梅雨時期にロードバイクに乗れないのは同じだ。もちろん雨の中を走る猛者も居るだろうが、ハルカはそこまでのガチ勢では無いだろう。
「雨で乗れないものはどうしようも無いじゃない。早く梅雨が明ける事を願いながら家で自転車に跨ったり本を見たりしてるわよ」
ハルカが呆れた声で言った。それはそうだろう、と言うか、それ以外はどうしようも無い。ベテランだろうが初心者だろうが天気には勝てないのだ。するとマサオは腕組みをし、ハルカの言葉に大きく頷いた。
「うんうん、やってる事は一緒かー。天気ばかりはどうしようも無いもんな」
そしてこんな事も言い出した。
「ってコトは、休みの日なんかは暇してるワケだ。じゃあさ、日曜日にドコが遊びにいこうぜ」
よくもまあ、他所のクラスに来てそんな事が言えるなとトシヤが感心した様な呆れた様な目でマサオを見ていると、ハルカが見透かした様に言った。
「アンタ、どうせルナ先輩が目当てなんでしょ?」
今回に限ってはそんな事は考えず、純粋にトシヤの為に動いたマサオだったがハルカからすればやはりそういう風に思えるのだろう。だが、これはマサオにとってある意味チャンスでもある。
「まあ、良いじゃあないか。とにかく俺もトシヤも退屈してるんだ、ルナ先輩によろしく伝えといてくれよな」
和やかに言うマサオにハルカの口から溜息が漏れたが、これはハルカにとっても悪い話では無い。いや、むしろ都合の良い話だ。トシヤと休日を過ごせるきっかけになるのだから。
「はいはい、わかったわよ。でもあまり期待はしないでよね」
そうと悟られない様、敢えて素っ気ない言い方をするハルカに軽い調子で「頼むぜ」と言うマサオ。そんな二人をトシヤは混乱した頭で見ていた。マサオの友人の反応を見る限り、ハルカが最近可愛くなったと評判だとは思えない。カオリはトシヤに嘘を吐いたのか? もしそうだとしたら、いったい何の為に? 普通ならわかりそうなものだし、わからないまでも自分の都合の良い様に考えるのが健康な高校男子というものだが鈍いと言うかバカだと言うか、実に残念な事にトシヤはそのどちらでも無かった。リアクションに困って立ち尽くすトシヤの腕をマサオが引っ張った。
「お前からも何か言うコトあるだろうが」
ハルカの前に引きずり出されてしまったトシヤはハルカと目を合わせる事も出来ず、俯き加減で思いっきり間抜けな発言をしてしまった。
「あの……えっと……よろしくお願いします」
それを聞いたハルカは思わず吹き出した。
「どうしちゃったのよ、トシヤ君。そんな言い方しなくても大丈夫よ。ルナ先輩にはちゃんと伝えておくから」
どうやらハルカの乙女スイッチはトシヤと二人きりにならないと入らない様だ。もちろんハルカ自身も楽しみな事は間違い無い。
「おう、頼むぜ。んじゃ、俺達行くわ。邪魔したな」
何故か偉そうにマサオが言い、トシヤとマサオはハルカの教室を後にした。
マサオは何の躊躇も無くハルカの教室の扉を開けると、にこやかに入って行った。突然の珍客に、まだ下校せず教室に残っていた者達の目が集中した。
「何だ、マサオじゃねーか。どーした? 喧嘩でも売りに来たか?」
「人をヤンキー漫画のキャラと一緒にせんでくれ。実はな……」
どうやらマサオはハルカのクラスにも友人が居る様だ。マサオの意外なコミュ力の高さに驚くトシヤの前でマサオは更に驚くべき行動に出た。
「おっ、居た居た。ハルカちゃん、やっほー」
マサオはハルカの姿を見つけると、手を振って呼びかけたのだ。
「おいマサオ、お前何を……」
トシヤは焦った。マサオの呼びかけに応えてハルカが自分達のところに来たとしても何を話せば良いかわからないし、他所の教室に乗り込んで最近可愛くなったと評判のハルカに堂々と声をかけたのだ。下手すればこのクラスの男子を敵に回す事になりかねない。だが、そんなトシヤの心配は杞憂に終わった。
「何だマサオ、何かと思ったらあの男女に用でもあるのかよ?」
マサオの友人らしき男子がトシヤ以上に驚いた声で言いながらマサオを信じられないといった目で見たのだ。
「ああ。俺達、ロードバイク仲間なんだ。最近雨ばっかで走って無いからよ、ちょびっとハルカちゃんの様子を見に来たって寸法だ」
「ロードバイクって、自転車だろ? お前も物好きだな。まあ良いけどよ」
トシヤはマサオとその友人の会話に違和感を憶えた。カオリの話ではハルカは可愛くなったと評判の筈。しかしマサオの友人の言葉を聞く限り、とてもそうとは思えない。
「何よ、どうしたっての? わざわざ他人の教室まで来たりして」
悩んでいるトシヤと何も考えていないであろうマサオの前にハルカがやって来た。乙女スイッチの入っていない素のハルカだ。
「いやな、雨でずっと乗れてないだろ? トシヤが不景気な顔して鬱陶しいんだよ。梅雨のローディーの過ごし方ってのを教えてもらおうと思ってさ」
臆面も無くマサオが言った。ベテランだろうが初心者だろうが梅雨時期にロードバイクに乗れないのは同じだ。もちろん雨の中を走る猛者も居るだろうが、ハルカはそこまでのガチ勢では無いだろう。
「雨で乗れないものはどうしようも無いじゃない。早く梅雨が明ける事を願いながら家で自転車に跨ったり本を見たりしてるわよ」
ハルカが呆れた声で言った。それはそうだろう、と言うか、それ以外はどうしようも無い。ベテランだろうが初心者だろうが天気には勝てないのだ。するとマサオは腕組みをし、ハルカの言葉に大きく頷いた。
「うんうん、やってる事は一緒かー。天気ばかりはどうしようも無いもんな」
そしてこんな事も言い出した。
「ってコトは、休みの日なんかは暇してるワケだ。じゃあさ、日曜日にドコが遊びにいこうぜ」
よくもまあ、他所のクラスに来てそんな事が言えるなとトシヤが感心した様な呆れた様な目でマサオを見ていると、ハルカが見透かした様に言った。
「アンタ、どうせルナ先輩が目当てなんでしょ?」
今回に限ってはそんな事は考えず、純粋にトシヤの為に動いたマサオだったがハルカからすればやはりそういう風に思えるのだろう。だが、これはマサオにとってある意味チャンスでもある。
「まあ、良いじゃあないか。とにかく俺もトシヤも退屈してるんだ、ルナ先輩によろしく伝えといてくれよな」
和やかに言うマサオにハルカの口から溜息が漏れたが、これはハルカにとっても悪い話では無い。いや、むしろ都合の良い話だ。トシヤと休日を過ごせるきっかけになるのだから。
「はいはい、わかったわよ。でもあまり期待はしないでよね」
そうと悟られない様、敢えて素っ気ない言い方をするハルカに軽い調子で「頼むぜ」と言うマサオ。そんな二人をトシヤは混乱した頭で見ていた。マサオの友人の反応を見る限り、ハルカが最近可愛くなったと評判だとは思えない。カオリはトシヤに嘘を吐いたのか? もしそうだとしたら、いったい何の為に? 普通ならわかりそうなものだし、わからないまでも自分の都合の良い様に考えるのが健康な高校男子というものだが鈍いと言うかバカだと言うか、実に残念な事にトシヤはそのどちらでも無かった。リアクションに困って立ち尽くすトシヤの腕をマサオが引っ張った。
「お前からも何か言うコトあるだろうが」
ハルカの前に引きずり出されてしまったトシヤはハルカと目を合わせる事も出来ず、俯き加減で思いっきり間抜けな発言をしてしまった。
「あの……えっと……よろしくお願いします」
それを聞いたハルカは思わず吹き出した。
「どうしちゃったのよ、トシヤ君。そんな言い方しなくても大丈夫よ。ルナ先輩にはちゃんと伝えておくから」
どうやらハルカの乙女スイッチはトシヤと二人きりにならないと入らない様だ。もちろんハルカ自身も楽しみな事は間違い無い。
「おう、頼むぜ。んじゃ、俺達行くわ。邪魔したな」
何故か偉そうにマサオが言い、トシヤとマサオはハルカの教室を後にした。
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