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コンビニ前での微妙な空気、後女子は元気で男子はヘロヘロ
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そんなうちに、ルナとマサオがコンビニに到着した。
「おっ、居た居た」
コンビニの前でトシヤとハルカが仲良さそうに座っているのを見つけたマサオが言うと、ルナはそこに二人がいるのは当然だと言わんばかりに手を振り、エモンダを二人の前に止めた。
「待たせちゃったかしら? それとも、もっと二人きりで居たかった?」
冗談とも本気とも取れるルナの言葉にトシヤは絶句し、ハルカは赤くなって俯いてしまった。これはもう、後者だと答えているのも同然だ。空気を読んだルナはエモンダから降りた。
「じゃあ、私も飲み物買ってこようかしら。二人が見ててくれるから、ワイヤーロックはしなくて良いわよね」
トシヤとハルカに自転車の番を任せると、ルナとマサオは店へと入っていった。またしても二人きりになったトシヤとハルカ。しかもルナの言動のおかげでお互いにこの上無く意識してしまっている。
お互いに意識しているという事は、気恥ずかしくはあるが、同時に大チャンスどころか超チャンスでもある。ここで一気に攻めれば二人には明るい未来が開ける筈なのだが、彼女居ない歴=年齢のトシヤは非常に残念な事にそんなスキルも勇気も持ち合わせていない。もちろんそれはハルカも同じことだ。『女の子として見てもらえない』と言うだけあって、ハルカも彼氏居ない歴=年齢なのだ。
「あのさ……」
沈黙に耐え切れなくなったトシヤが口を開くが、続く言葉が出て来ない。
「な、何よ……」
ハルカもトシヤの呼びかけに応えながらも何も言う事が出来ないでいる。
「………………」
「………………」
また沈黙が二人を包んだ。
「おう、待たせたな」
男の声が沈黙を破った。言うまでもないだろうが、マサオの声だ。トシヤが声がした方を見ると、コンビニ袋をぶら下げたマサオがルナと共に歩いて来ていた。
「はい、ルナ先輩。冷たいドリンクっす」
マサオはトシヤとハルカの間に流れる空気も読まずに手に下げたコンビニ袋からスポーツドリンクを一本取り出すと、恭しくルナに手渡した。
「ありがとう。でも良いのかな? 後輩に奢ってもらっちゃって」
ルナはそれを受け取りながら複雑そうな顔をするが、マサオは胸を張って主張した。
「展望台で分けてもらったドリンクの味、アレは一生忘れられませんよ。それに比べたらそんなの安いモノっすよ。受けた恩は何倍にもして返す、それが俺って男っすから。なあ、トシヤ」
百数十円のスポーツドリンク一本で恐ろしく大層なことを言うマサオだが、話を振られたトシヤとしては何かフォローの言葉を発しなければならない。と言うか、フォローしてくれとマサオが目で訴えている。
「そうっすね。マサオはそういうヤツです。俺もマサオにはしょっちゅう奢ってもらってますしね」
トシヤがマサオを持ち上げようと何とか捻り出した言葉にマサオは満足そうに頷き、ルナは「それじゃあ遠慮無く」とスポーツドリンクのキャップを捻った。
「いただきます」
ルナは義理堅くもう一度マサオに礼を言うと、ペットボトルから直接スポーツドリンクをゴクゴクと飲みだした。サイクルボトルに移し替えてしまうと、吸った分や握った分しか出て来ないので、少しずつ水分を摂る時は良いのだが、一気に飲もうとすると意外ともどかしかったりする。ちなみにサイクルボトルをギュっと握ればコップ一杯分ぐらいのドリンクは出て来るのだが、ゴクゴクと調子良く飲むならペットボトルから直接飲んだ方が飲みやすいのだ。
ペットボトルの三分の一程を一気に喉に流し込んだルナは「ふうっ」と一息吐くと、残ったスポーツドリンクをサイクルボトルに移し、空になったペットボトルをゴミ箱に入れた。
「私はもう一本上ってくるけど、皆はどうする?」
恐ろしい事にルナはもう一度峠を上ると言う。まあ、実際にも所謂『ガチ勢』は練習だと言って何本も峠を上るらしいし、中には一日に十回以上上る事に挑戦して成功したバケモノ(褒め言葉)も居たりするのだが、ヒヨっ子のトシヤやマサオには縁遠い話だ。
「そう、じゃあ今日は解散ね。お疲れ様、また明日学校で」
尻込みするトシヤとマサオをコンビニに残し、ルナとハルカは峠へ向かってまた走り出した。
「あの二人、元気だな」
「ああ。俺達も頑張らなきゃな」
トシヤとマサオは言いながらも「やっぱり俺達も行くぜ」などと言い出す体力も気力無く、ただ呆然と彼女達の後ろ姿を見送るばかりだった。
「おっ、居た居た」
コンビニの前でトシヤとハルカが仲良さそうに座っているのを見つけたマサオが言うと、ルナはそこに二人がいるのは当然だと言わんばかりに手を振り、エモンダを二人の前に止めた。
「待たせちゃったかしら? それとも、もっと二人きりで居たかった?」
冗談とも本気とも取れるルナの言葉にトシヤは絶句し、ハルカは赤くなって俯いてしまった。これはもう、後者だと答えているのも同然だ。空気を読んだルナはエモンダから降りた。
「じゃあ、私も飲み物買ってこようかしら。二人が見ててくれるから、ワイヤーロックはしなくて良いわよね」
トシヤとハルカに自転車の番を任せると、ルナとマサオは店へと入っていった。またしても二人きりになったトシヤとハルカ。しかもルナの言動のおかげでお互いにこの上無く意識してしまっている。
お互いに意識しているという事は、気恥ずかしくはあるが、同時に大チャンスどころか超チャンスでもある。ここで一気に攻めれば二人には明るい未来が開ける筈なのだが、彼女居ない歴=年齢のトシヤは非常に残念な事にそんなスキルも勇気も持ち合わせていない。もちろんそれはハルカも同じことだ。『女の子として見てもらえない』と言うだけあって、ハルカも彼氏居ない歴=年齢なのだ。
「あのさ……」
沈黙に耐え切れなくなったトシヤが口を開くが、続く言葉が出て来ない。
「な、何よ……」
ハルカもトシヤの呼びかけに応えながらも何も言う事が出来ないでいる。
「………………」
「………………」
また沈黙が二人を包んだ。
「おう、待たせたな」
男の声が沈黙を破った。言うまでもないだろうが、マサオの声だ。トシヤが声がした方を見ると、コンビニ袋をぶら下げたマサオがルナと共に歩いて来ていた。
「はい、ルナ先輩。冷たいドリンクっす」
マサオはトシヤとハルカの間に流れる空気も読まずに手に下げたコンビニ袋からスポーツドリンクを一本取り出すと、恭しくルナに手渡した。
「ありがとう。でも良いのかな? 後輩に奢ってもらっちゃって」
ルナはそれを受け取りながら複雑そうな顔をするが、マサオは胸を張って主張した。
「展望台で分けてもらったドリンクの味、アレは一生忘れられませんよ。それに比べたらそんなの安いモノっすよ。受けた恩は何倍にもして返す、それが俺って男っすから。なあ、トシヤ」
百数十円のスポーツドリンク一本で恐ろしく大層なことを言うマサオだが、話を振られたトシヤとしては何かフォローの言葉を発しなければならない。と言うか、フォローしてくれとマサオが目で訴えている。
「そうっすね。マサオはそういうヤツです。俺もマサオにはしょっちゅう奢ってもらってますしね」
トシヤがマサオを持ち上げようと何とか捻り出した言葉にマサオは満足そうに頷き、ルナは「それじゃあ遠慮無く」とスポーツドリンクのキャップを捻った。
「いただきます」
ルナは義理堅くもう一度マサオに礼を言うと、ペットボトルから直接スポーツドリンクをゴクゴクと飲みだした。サイクルボトルに移し替えてしまうと、吸った分や握った分しか出て来ないので、少しずつ水分を摂る時は良いのだが、一気に飲もうとすると意外ともどかしかったりする。ちなみにサイクルボトルをギュっと握ればコップ一杯分ぐらいのドリンクは出て来るのだが、ゴクゴクと調子良く飲むならペットボトルから直接飲んだ方が飲みやすいのだ。
ペットボトルの三分の一程を一気に喉に流し込んだルナは「ふうっ」と一息吐くと、残ったスポーツドリンクをサイクルボトルに移し、空になったペットボトルをゴミ箱に入れた。
「私はもう一本上ってくるけど、皆はどうする?」
恐ろしい事にルナはもう一度峠を上ると言う。まあ、実際にも所謂『ガチ勢』は練習だと言って何本も峠を上るらしいし、中には一日に十回以上上る事に挑戦して成功したバケモノ(褒め言葉)も居たりするのだが、ヒヨっ子のトシヤやマサオには縁遠い話だ。
「そう、じゃあ今日は解散ね。お疲れ様、また明日学校で」
尻込みするトシヤとマサオをコンビニに残し、ルナとハルカは峠へ向かってまた走り出した。
「あの二人、元気だな」
「ああ。俺達も頑張らなきゃな」
トシヤとマサオは言いながらも「やっぱり俺達も行くぜ」などと言い出す体力も気力無く、ただ呆然と彼女達の後ろ姿を見送るばかりだった。
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