1 / 40
彼女が欲しい!!
しおりを挟む
草食系男子という言葉があるが、そうは言っても女の子が気になるのが男子と言う悲しい生き物だ。もちろん異論は認める。
対して肉食系女子なんて言葉もある。だがしかし前述の草食系男子がそこらじゅうに蔓延しているのというのに肉食系女子なんて正直なところお目にかかった事が無い。そうだ、肉食系女子なんて都市伝説に過ぎ無いのだ。女の子はみんな白馬に乗った王子様が現れるのを待っているんだ。うん、きっとそうだ、そうに違い無い。これについては異論は認めない。
*
とある町の高校に通う少年、名前は浩輔。彼もそんな草食系男子の一人だった。ただ、幸か不幸か彼は中性的な顔立ち、しかも細身で身長は166センチと絶妙な低さ。子犬と言う表現がぴったりな美少年。クラスの女の子や一部の上級生女子からは人気が無い訳では無いが、残念ながらそれはあくまでペット感覚、恋愛対象としてでは無かった。
そんな浩輔が二年に進級し、始業式の日に宣言した。
「ボクも彼女を作る!」
もちろん宣言したと言っても教室中に響く様な声で宣言した訳では無い。友人達との話の流れで思わず言ってしまっただけだ。
言ってしまっただけとは言っても浩輔は本気だった。彼女いない歴=年齢ではあるが、女子に嫌われている訳では無い。いや、それどころか前述の様にペット感覚としてではあるが人気があると言えばある。ペットの子犬は狼になろうと野望を抱いたのだった。
「でも、彼女作るったってどーするんだよ?」
もっともな疑問を口に出したのは郁雄。ちなみに彼も彼女いない歴=年齢だ。
「クラスの女の子からかなぁ?」
浩輔が何の考えも無く答えると、それに異を唱えたのが信弘。もちろんコイツも彼女いない歴=年齢であることは言うまでもあるまい。
「それは難しいな。クラスの女を狙うんなら、仲の良い女子と自然な流れで付き合う様にもって行かないとな」
「確かに。大して仲良くも無いクラスのヤツにいきなり言い寄っても難しいだろうな」
信弘の意見に郁雄は頷いた。「じゃあどうすれば良いんだ?」と頭を抱える三人だったが彼等三人の頭の中には既に同じ結論が出ていた。ただ、それを言い出す事が出来なかったのだ。何故か?
それは三人が彼女いない歴=年齢と言う忌まわしい十字架を背負った重度のチェリーボーイであり、それを口に出せば非常に困難な試練に立ち向かわなければならなくなってしまうからだ。
しかし、その重い空気に耐え切れなくなったのか、遂に郁雄が重い口を開いた。
「やっぱりアレしか無いか」
「アレ……と言うと?」
とぼけた顔で聞き返す信弘に郁雄は渋い顔で言う。
「お前なぁ、わかってるくせに聞くんじゃねぇよ。ナンパだよナンパ」
『ナンパ』それは見ず知らずの女の子に声をかけ、あわよくばお持ち帰り……いやいや、仲良くなる為の有用な手段だ。
「うわっ、やっぱり」
浩輔はこれから行わなければならない試練に不安でいっぱいだ。だが、情けない顔の浩輔を励ます様に郁雄が言った。
「お前はペットの子犬から狼になるんだろ? そんな顔してちゃダメだ」
「そうだ。心配するな。俺達が付いてるぜ」
信弘も頼もしい言葉を吐く。持つべきものは頼もしい友達だ。しかし浩輔の質問に頼もしい二人は声を揃えて答えた。
「ところで郁雄と信弘って、ナンパしたことあるの?」
「ねえよ」
残念。一人でもナンパ成功者、いやせめて経験者がいれば……浩輔の不安はより一層大きくなるばかりだった。だが、郁雄と信弘は涼しい顔と言うより楽しげな顔をしている。
「よくそんな顔してられるね。郁雄と信弘は怖く無いの?」
「怖い? 何が?」
浩輔が尋ねると口を揃えて言う郁雄と信弘。浩輔の不安な表情は悲愴とも思えるものに変わった。
「だってナンパって、全然知らない女の子に声かけるんだよ。恥ずかしいとか思わない?」
確かに見ず知らずの女の子に声をかけるのは勇気が要るし、断られる可能性も高い。いや、断られる可能性の方が高いだろう。
「そんな事言ってるからお前は彼女いない歴=年齢なんだよ」
不敵な笑いを浮かべる郁雄に《それは郁雄も同じじゃないか》と浩輔は思ったが、そこは突っ込まずに目を瞑っていると、信弘も自信満々に言った。
「初めは誰だって初心者だ。俺達だって何度も声かけてるうちに上手くなるさ」
《いや、ここに居る三人全員初心者だから。せめて一人でも経験者が居れば……》途方に暮れる浩輔だったが、郁雄と信弘は何かもうやる気満々だ。
「とにかく次の日曜だ。モールでも行って声かけまくろうぜ」
『モール』と言うのは駅前に出来た大型のショッピングモールの事だ。ここなら暇を持て余した女の子がぶらぶらしてるに違い無い。
だが、モールと聞いて浩輔に別の不安が湧き出した。
「モールって、知ってる人いっぱい居るんじゃない?」
「大丈夫。知ってるヤツが居たら適当にやり過ごせば良いんだよ。なんとかなるさ」
「でも……」
浩輔がその不安を口にすると郁雄は思いっ切り適当な答えを返した。益々不安になった浩輔を諭す様に信弘が言い、郁雄が決断を迫った。
「浩輔、狼ってのは肉食なんだぞ。肉食だったら狩りをしないとな」
「四の五の言っててもしょうがないだろ。行くのか行かないのか?」
ノリノリの二人に浩輔はこう答えるしか無かった。
「……行くよ」
対して肉食系女子なんて言葉もある。だがしかし前述の草食系男子がそこらじゅうに蔓延しているのというのに肉食系女子なんて正直なところお目にかかった事が無い。そうだ、肉食系女子なんて都市伝説に過ぎ無いのだ。女の子はみんな白馬に乗った王子様が現れるのを待っているんだ。うん、きっとそうだ、そうに違い無い。これについては異論は認めない。
*
とある町の高校に通う少年、名前は浩輔。彼もそんな草食系男子の一人だった。ただ、幸か不幸か彼は中性的な顔立ち、しかも細身で身長は166センチと絶妙な低さ。子犬と言う表現がぴったりな美少年。クラスの女の子や一部の上級生女子からは人気が無い訳では無いが、残念ながらそれはあくまでペット感覚、恋愛対象としてでは無かった。
そんな浩輔が二年に進級し、始業式の日に宣言した。
「ボクも彼女を作る!」
もちろん宣言したと言っても教室中に響く様な声で宣言した訳では無い。友人達との話の流れで思わず言ってしまっただけだ。
言ってしまっただけとは言っても浩輔は本気だった。彼女いない歴=年齢ではあるが、女子に嫌われている訳では無い。いや、それどころか前述の様にペット感覚としてではあるが人気があると言えばある。ペットの子犬は狼になろうと野望を抱いたのだった。
「でも、彼女作るったってどーするんだよ?」
もっともな疑問を口に出したのは郁雄。ちなみに彼も彼女いない歴=年齢だ。
「クラスの女の子からかなぁ?」
浩輔が何の考えも無く答えると、それに異を唱えたのが信弘。もちろんコイツも彼女いない歴=年齢であることは言うまでもあるまい。
「それは難しいな。クラスの女を狙うんなら、仲の良い女子と自然な流れで付き合う様にもって行かないとな」
「確かに。大して仲良くも無いクラスのヤツにいきなり言い寄っても難しいだろうな」
信弘の意見に郁雄は頷いた。「じゃあどうすれば良いんだ?」と頭を抱える三人だったが彼等三人の頭の中には既に同じ結論が出ていた。ただ、それを言い出す事が出来なかったのだ。何故か?
それは三人が彼女いない歴=年齢と言う忌まわしい十字架を背負った重度のチェリーボーイであり、それを口に出せば非常に困難な試練に立ち向かわなければならなくなってしまうからだ。
しかし、その重い空気に耐え切れなくなったのか、遂に郁雄が重い口を開いた。
「やっぱりアレしか無いか」
「アレ……と言うと?」
とぼけた顔で聞き返す信弘に郁雄は渋い顔で言う。
「お前なぁ、わかってるくせに聞くんじゃねぇよ。ナンパだよナンパ」
『ナンパ』それは見ず知らずの女の子に声をかけ、あわよくばお持ち帰り……いやいや、仲良くなる為の有用な手段だ。
「うわっ、やっぱり」
浩輔はこれから行わなければならない試練に不安でいっぱいだ。だが、情けない顔の浩輔を励ます様に郁雄が言った。
「お前はペットの子犬から狼になるんだろ? そんな顔してちゃダメだ」
「そうだ。心配するな。俺達が付いてるぜ」
信弘も頼もしい言葉を吐く。持つべきものは頼もしい友達だ。しかし浩輔の質問に頼もしい二人は声を揃えて答えた。
「ところで郁雄と信弘って、ナンパしたことあるの?」
「ねえよ」
残念。一人でもナンパ成功者、いやせめて経験者がいれば……浩輔の不安はより一層大きくなるばかりだった。だが、郁雄と信弘は涼しい顔と言うより楽しげな顔をしている。
「よくそんな顔してられるね。郁雄と信弘は怖く無いの?」
「怖い? 何が?」
浩輔が尋ねると口を揃えて言う郁雄と信弘。浩輔の不安な表情は悲愴とも思えるものに変わった。
「だってナンパって、全然知らない女の子に声かけるんだよ。恥ずかしいとか思わない?」
確かに見ず知らずの女の子に声をかけるのは勇気が要るし、断られる可能性も高い。いや、断られる可能性の方が高いだろう。
「そんな事言ってるからお前は彼女いない歴=年齢なんだよ」
不敵な笑いを浮かべる郁雄に《それは郁雄も同じじゃないか》と浩輔は思ったが、そこは突っ込まずに目を瞑っていると、信弘も自信満々に言った。
「初めは誰だって初心者だ。俺達だって何度も声かけてるうちに上手くなるさ」
《いや、ここに居る三人全員初心者だから。せめて一人でも経験者が居れば……》途方に暮れる浩輔だったが、郁雄と信弘は何かもうやる気満々だ。
「とにかく次の日曜だ。モールでも行って声かけまくろうぜ」
『モール』と言うのは駅前に出来た大型のショッピングモールの事だ。ここなら暇を持て余した女の子がぶらぶらしてるに違い無い。
だが、モールと聞いて浩輔に別の不安が湧き出した。
「モールって、知ってる人いっぱい居るんじゃない?」
「大丈夫。知ってるヤツが居たら適当にやり過ごせば良いんだよ。なんとかなるさ」
「でも……」
浩輔がその不安を口にすると郁雄は思いっ切り適当な答えを返した。益々不安になった浩輔を諭す様に信弘が言い、郁雄が決断を迫った。
「浩輔、狼ってのは肉食なんだぞ。肉食だったら狩りをしないとな」
「四の五の言っててもしょうがないだろ。行くのか行かないのか?」
ノリノリの二人に浩輔はこう答えるしか無かった。
「……行くよ」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる