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激戦

突入! ガイザス城

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 ガイザスの城に攻め込むのは明日の午前二時。それまでは宿でゆっくりしようとソルドは連泊の手続きをし、夕食までは各自が自由に過ごし、そして日付が変わる直前、ルーク達はガイザスの城へ向かった。

          *

 時刻はまもなく午前二時になろうとしている。月明かりに照らされたガイザス城は独特の凄みを感じさせる。

「この城に突っ込むんだよな、俺達」

 ゴクリと生唾を飲み込んでデイブが言った。それはそうだろう、デイブ達はソルドとは違い、戦いとは無縁な学生なのだ。

「ビビってんなら帰った方が良いぞ。今ならまだ間に合う」

 ソルドがデイブにボソっと言った。それは半分は本音だった。出来ればデイブ達を巻き込みたくは無い。今ならまだ間に合う。だがデイブは引き攣った笑顔で答えた。

「嫌だなぁソルドさん。友達捨てて帰れる訳無いでしょ」

 デイブの言葉にミレアとエディ、シーナもコクリと頷いた。
デイブ達がルークの事をそこまで親身に思ってくれている事をソルド、そしてそれを聞いていたステラとルーク自身は涙が出そうになる程嬉しく思った。しかしそんな感傷に浸っている場合では無い。ワイン達ルフトの元騎士達があちこちに潜んでいるのは確認済み、後は城に攻め込むタイミングだけだ。

 とは言うものの、城門は固く閉ざされている。外からコレを破るのは並大抵の事では無い。

「さて、なんとかするとは言ったが、どうすっかな……」

「ええっ。ソルドさん、ソレ、今考える事なんですか?」

 困った顔で呟いたソルドにデイブが驚きの声を上げた。まさかソルドがこんな行き当たりばったりな事を言う人だなんてデイブは思っていなかったのだ。するとミレアが自信ありげにソルドに言った。

「ソルドさん、ココは私に任せてください」

「おいおい、女の子がどうしようってんだ?」

 ミレアは城門を護る番兵を色仕掛けで篭絡しようとでも言うのか? などと思ったソルドだったが、さすがにそんな事は口に出しては言えやしない。当たり障りのない事を言いながら見守るソルドの横でミレアは呪文詠唱を始めた。

「ちょっと派手に行くわよ」

 呪文の詠唱を終えたミレアが不敵に微笑んだかと思うと局地的な大地震が発生した。

「うわっ地震だ!」

「でかいぞ!」

 突然の地震に番兵達は慌てふためくばかりで何も出来無い。そして地震が収まった時には城壁が所々崩壊し、侵入する隙が出来ていた。

「す、凄いなミレア……」

 恐れ入った顔で言うルークにミレアは笑顔で答えた。

「コレがサラマンダーの言ってた『ノームの脅威』よ」

 局地的にとは言え地震を引き起こして城壁を破壊したノームの能力も凄いが、それを実現させて笑顔を見せるミレアも大したタマだ。

「よぉっし、行くぞおぉぉぉぉ!」

 雄叫びを上げるソルドを先頭にルーク達が城郭に突入すると、分散していたワイン達もわらわらと集まり、続いて突入した。

 ガイザス側としては、夜中にいきなり地震が起こったかと思えば敵が攻めてきたのだから堪ったものでは無い。だがそこは武闘派を売りにしているだけあり、すぐさま大勢の兵士が侵入者を排除するべく城門に送り込んだ。

「ここは俺達に任せて君達は城内へ! ソルド、ルーク様を頼むぞ!」

「おう、任せとけ! 行きますよ、ルーク様」

 乱戦が始まり、ワインが剣を振りながら叫ぶとソルドは待ってましたとばかりにガイザス王の居る宮殿への血路を開くべく鬼神のごとく突き進み、ルーク達が後に続いた。
宮殿にたどり着いたソルドの目に映ったのは先刻の地震で外れてしまっている入口の扉だった。

「絶対待ち伏せしてやがるよな。だが、行くしか無ぇよな。ルーク様、暫しお待ちを」

 呟いて一人で扉に飛び込んだソルドに何本もの矢が降り注いだ。

「やっぱりな」

 ソルドは余裕の表情で剣を振るい、降り注ぐ矢を叩き落とした。だが、間髪を入れずに二の矢三の矢が放たれソルドを襲う。

 さすがのソルドもこれを全て躱すのは難しい。いや、不可能だろう。それでも一本でも多く矢を叩き落とそうとソルドが身構えた瞬間、一迅の風が吹き、矢を全て押し戻した。

「ボクも役に立てたかな?」

 エディがにっこり笑って言った。どうやら今の風はエディが風の精霊シルフに呼びかけて吹かせてもらった様だ。

「俺だって」

 デイブも負けてはいない。ウンディーネに呼びかけて大量の水を湧き出させた。豪流となった水は宮殿の入口で待ち伏せていたガイザスの兵を洗い流した。

「……魔法って、マジで凄ぇな」

 ソルドは呆気に取られて思わず口にしてしまいながらもクリアになったエントランスを突っ切り、王の間を目指して廊下を走り抜け、階段を駆け上がった。

「ソルドさん、王の間ってドコにあるか知ってるんですか?」

 走りながらデイブが質問するとソルドは走りながら答えた。

「知らん。だが、王の間なんてモンは宮殿の上の階の奥の方って相場は決まってんだよ」

 目指す王の間の場所はわからない! ただ闇雲に走って宮殿の奥を目指すのみ。なんという杜撰な作戦……いや、こんなのは作戦とは言えない。単なる出たとこ勝負だ。城門を突破する時から行き当たりばったりだったのだから、もしかするとソルドは作戦など全く考えて無かったのかもしれない。



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