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運動会のメインはお昼の弁当だよな
ミレアも弁当を作ってきていたのだが……
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美味しそうな弁当を囲んで楽しそうなルーク達だが、ミレアだけは一人浮かない顔をしている。
「どうしたミレア? 暗い顔してよ」
それに気付いたデイブが心配そうに聞くとミレアは小さな声で答え、背中に隠していたカバンから弁当箱を取り出した。
「……私もお弁当、作ってきたんだけど……」
そう、シーナとステラの作ってきた弁当はご開帳されたが、ミレアは作ってきた弁当をまだお披露目していない。実はデイブはもしかしたらミレアは弁当を作ってこれなかったんじゃないか? などと思ったりしていたのだ。
「おおっ! ミレアも作ってきてくれたんだな。早く出してくれよ」
喜んだデイブがミレアの弁当箱に手を伸ばすが、ミレアは弁当箱を離そうとしない。
「おいミレア、手ぇ離してくれよ。食えないじゃんかよ」
デイブの声にミレアは弁当箱を胸に抱き抱えると泣きそうな声で言った。
「……やだ」
「おいおいミレア、どうしたんだ? 弁当タイム終わっちまうじゃんかよ」
「だって……」
正直言ってミレアが弁当箱を離したがらない理由は想像がつく。シーナの工夫の凝らされたかわいいい弁当やステラの豪華なサンドイッチと比べると、どうしても見劣りがすると思っているのだろう。だが、そんな事はデイブにとってどうでも良い事だ。大事なのは誰が作ったか。デイブが一番食べたいのはかわいい弁当でも豪華なサンドイッチでも無いくミレアの作った弁当なのだ。
「隙有り!」
こうなったら強硬手段しか無い、デイブの手がミレアの手から弁当箱を奪い取ろうと伸びた。
「あっ、嫌っ!」
ミレアは反射的に引っ張り返し、デイブの手から弁当箱を奪い返す事には成功したが、その反動で後ろにひっくり返り、弁当箱を投げ出してしまった。
「だ、大丈夫かミレア?」
「あいたた……あ……」
焦っておろおろするデイブの目の前でミレアの目から涙がぼろぼろと零れ落ちた。その視線の先にあったもの、それは投げ出されて蓋が開き、中身をぶち撒けてしまった弁当箱だった。
「……だから嫌だって言ったのに」
鳴き声で言海レアの涙を拭う手の指には絆創膏が何枚も貼ってあった。
「やっぱり私なんかにお弁当作りは無理だったのよ。一応頑張ってはみたけど……二人のお弁当見た後で、こんなの出せないわよ」
散乱している焦げた玉子焼に形の歪なおにぎり。そして変な形のハンバーグや彩を添える為に串に刺されたキュウリとプチトマト……どれもが見事なまでに不格好だ。
だが、そんな事はどうでも良い。デイブは地面に転がってしまったおにぎりをひとつ手にすると、砂を払い、口に放り込んだ。
「おお、なかなか美味いじゃないか」
いくら払ったところでおにぎりに付いた砂が全て払える訳が無い。噛む度にジャリジャリと砂を噛む音が聞こえる。
「デイブ……あんた……」
涙に震える声のミレアにデイブは笑顔で言った。
「お前が作った。それだけで俺には一番のご馳走だ」
デイブがルーク達の前で初めて素直にな気持ちを口にしたのだ。
「……バカ。そんなもん食べたらお腹壊すわよ」
嬉しいやら恥ずかしいやらで真っ赤な顔のミレアが止めようとするが、デイブは涼しい顔だ。
「大丈夫だ。砂を噛む思いなら慣れてるぜ」
「いいから。メイティとシーナがたくさん作ってくれてるから、そっちをいただきましょうよ」
泣き叫ぶ様に言うミレアにさすがのデイブも地面に転がったミレアの弁当を食べるのをやめるしか無い。そこでデイブはミレアに言った。
「じゃあ、また作ってくれよな」
「はいはい、わかったわよ」
『しゃあなし』といった感じで答えたミレアだが、嬉しく無いわけが無い。これで丸く収まったかと思われたが、そうはいかないのがこの二人だ。デイブが余計な一言を口にした。
「ただ、ひとつだけリクエストしても良いか?」
「何よ?」
デイブとミレアは幼い頃からの付き合いだ。デイブ好きなハンバーグは入ってるけど……などと想うミレアの耳にとんでも無い言葉が届いた。
「玉子焼は焦げてないのを頼むぜ」
ミレアの肩が小刻みに震え出し、そして声が響いた。
「……デイブのバカぁ!!」
*
「じゃあ、気を取り直していただきましょうか」
ステラの言葉を聞いた瞬間、エディはもの凄い勢いでシーナの弁当に手を伸ばした。本当は早く食べたくてしょうがなかったのだが、思わぬ展開が繰り広げられた為に『お預け』をくらっていたのだから無理も無い。
「これで昼からの競技も頑張れるな」
笑いながら言うデイブの手にはミレアの弁当箱があった。
「デイブ、バカ。そんなもん置いときなさいよ」
ミレアが注意するがデイブは涼しい顔で応えた。
「いや、全部こぼれたワケじゃないからな。お前、頑張って作ったんだろ」
「……バカ」
言いながらも嬉しそうなミレアを冷やかす様にエディが言った。
「あーあーお熱い事で」
もちろん心の中では羨ましくて仕方が無い。
「まったく、いつもは素直じゃ無いくせに」
「本当。いつもこうだったら良いのですけどね」
「きっと二人っきりの時はラブラブなんですよ」
ルークが言うとステラがシーナもクスクスと笑い出し、冷やかされたデイブとミレアがお馴染みのフレーズを響かせた。
「腐れ縁だ!」
「腐れ縁よ!」
「どうしたミレア? 暗い顔してよ」
それに気付いたデイブが心配そうに聞くとミレアは小さな声で答え、背中に隠していたカバンから弁当箱を取り出した。
「……私もお弁当、作ってきたんだけど……」
そう、シーナとステラの作ってきた弁当はご開帳されたが、ミレアは作ってきた弁当をまだお披露目していない。実はデイブはもしかしたらミレアは弁当を作ってこれなかったんじゃないか? などと思ったりしていたのだ。
「おおっ! ミレアも作ってきてくれたんだな。早く出してくれよ」
喜んだデイブがミレアの弁当箱に手を伸ばすが、ミレアは弁当箱を離そうとしない。
「おいミレア、手ぇ離してくれよ。食えないじゃんかよ」
デイブの声にミレアは弁当箱を胸に抱き抱えると泣きそうな声で言った。
「……やだ」
「おいおいミレア、どうしたんだ? 弁当タイム終わっちまうじゃんかよ」
「だって……」
正直言ってミレアが弁当箱を離したがらない理由は想像がつく。シーナの工夫の凝らされたかわいいい弁当やステラの豪華なサンドイッチと比べると、どうしても見劣りがすると思っているのだろう。だが、そんな事はデイブにとってどうでも良い事だ。大事なのは誰が作ったか。デイブが一番食べたいのはかわいい弁当でも豪華なサンドイッチでも無いくミレアの作った弁当なのだ。
「隙有り!」
こうなったら強硬手段しか無い、デイブの手がミレアの手から弁当箱を奪い取ろうと伸びた。
「あっ、嫌っ!」
ミレアは反射的に引っ張り返し、デイブの手から弁当箱を奪い返す事には成功したが、その反動で後ろにひっくり返り、弁当箱を投げ出してしまった。
「だ、大丈夫かミレア?」
「あいたた……あ……」
焦っておろおろするデイブの目の前でミレアの目から涙がぼろぼろと零れ落ちた。その視線の先にあったもの、それは投げ出されて蓋が開き、中身をぶち撒けてしまった弁当箱だった。
「……だから嫌だって言ったのに」
鳴き声で言海レアの涙を拭う手の指には絆創膏が何枚も貼ってあった。
「やっぱり私なんかにお弁当作りは無理だったのよ。一応頑張ってはみたけど……二人のお弁当見た後で、こんなの出せないわよ」
散乱している焦げた玉子焼に形の歪なおにぎり。そして変な形のハンバーグや彩を添える為に串に刺されたキュウリとプチトマト……どれもが見事なまでに不格好だ。
だが、そんな事はどうでも良い。デイブは地面に転がってしまったおにぎりをひとつ手にすると、砂を払い、口に放り込んだ。
「おお、なかなか美味いじゃないか」
いくら払ったところでおにぎりに付いた砂が全て払える訳が無い。噛む度にジャリジャリと砂を噛む音が聞こえる。
「デイブ……あんた……」
涙に震える声のミレアにデイブは笑顔で言った。
「お前が作った。それだけで俺には一番のご馳走だ」
デイブがルーク達の前で初めて素直にな気持ちを口にしたのだ。
「……バカ。そんなもん食べたらお腹壊すわよ」
嬉しいやら恥ずかしいやらで真っ赤な顔のミレアが止めようとするが、デイブは涼しい顔だ。
「大丈夫だ。砂を噛む思いなら慣れてるぜ」
「いいから。メイティとシーナがたくさん作ってくれてるから、そっちをいただきましょうよ」
泣き叫ぶ様に言うミレアにさすがのデイブも地面に転がったミレアの弁当を食べるのをやめるしか無い。そこでデイブはミレアに言った。
「じゃあ、また作ってくれよな」
「はいはい、わかったわよ」
『しゃあなし』といった感じで答えたミレアだが、嬉しく無いわけが無い。これで丸く収まったかと思われたが、そうはいかないのがこの二人だ。デイブが余計な一言を口にした。
「ただ、ひとつだけリクエストしても良いか?」
「何よ?」
デイブとミレアは幼い頃からの付き合いだ。デイブ好きなハンバーグは入ってるけど……などと想うミレアの耳にとんでも無い言葉が届いた。
「玉子焼は焦げてないのを頼むぜ」
ミレアの肩が小刻みに震え出し、そして声が響いた。
「……デイブのバカぁ!!」
*
「じゃあ、気を取り直していただきましょうか」
ステラの言葉を聞いた瞬間、エディはもの凄い勢いでシーナの弁当に手を伸ばした。本当は早く食べたくてしょうがなかったのだが、思わぬ展開が繰り広げられた為に『お預け』をくらっていたのだから無理も無い。
「これで昼からの競技も頑張れるな」
笑いながら言うデイブの手にはミレアの弁当箱があった。
「デイブ、バカ。そんなもん置いときなさいよ」
ミレアが注意するがデイブは涼しい顔で応えた。
「いや、全部こぼれたワケじゃないからな。お前、頑張って作ったんだろ」
「……バカ」
言いながらも嬉しそうなミレアを冷やかす様にエディが言った。
「あーあーお熱い事で」
もちろん心の中では羨ましくて仕方が無い。
「まったく、いつもは素直じゃ無いくせに」
「本当。いつもこうだったら良いのですけどね」
「きっと二人っきりの時はラブラブなんですよ」
ルークが言うとステラがシーナもクスクスと笑い出し、冷やかされたデイブとミレアがお馴染みのフレーズを響かせた。
「腐れ縁だ!」
「腐れ縁よ!」
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