上 下
21 / 85
魔法王国アルテナでの日々

ホームルームでのデイブとウォレフ

しおりを挟む
 始業のベルが鳴り、教師のウォレフが教室にやって来て、ホームルームが始まった。

「みんなもだいぶ精霊を感じられる様になった筈だから、来週野外授業に出るからそのつもりで」

 野外授業! 何だか楽しそうな響きだが、いったい何をするのだろう? ルークが思ったのも束の間、デイブがウォレフにストレートに質問した。

「先生、野外授業ってのは何をするんですか?」

「教室じゃ無く、野外つまりお外での授業だ」

「先生、それぐらいはわかりますよ。俺だってそこまでアホじゃ無いんですから。具体的にどういう事をするんですかと聞いてるんですよ」

 まるで子供を相手にしているみたいなウォルフにデイブが不満を口にした。するとウォレフは楽しそうに笑いながらも詫びを入れる様な事を言った。

「おお、すまんすまん。君の顔をみていると、どうしてもな。ま、小粋なジョークだ」

「全然小粋じゃないっすよ。むしろ殺意が芽生えましたが」

 ムスっとして言うデイブにウォレフの楽しそうな顔が益々楽しそうになった。

「おお、私に殺意とは頼もしい。だが、今の君では返り討ちに遭うのがオチだな」

 それはそうだろう、まだロクに精霊と対話する事さえままならないデイブと魔法学園の教師ウォレフでは実力差は歴然だ。

「んな事は自分が一番よくわかってますって」

 苦虫を噛み潰した様な顔のデイブにウォレフは手を叩き、称賛の言葉を送った。

「素晴らしい! 己の弱さを認める事は難しいものだ。君はまだまだ伸びるよ。早く私を倒せるぐらい成長してくれたまえ」

「はいはいありがとうございます。で、野外授業ってのは何するんですか?」

 デイブは相手にしていられないといった顔で言った。教師がふざけた生徒に対して相手にしていられないと思うのはよくある話だが……これでは立場がまるっきり逆だ。

「おっとそうだったな。この教室にもたくさんの精霊が来てくれているが、場所によっては君達がまだ出会った事の無い精霊も居る。今回の野外授業では湖の畔で新たな精霊との出会いを体験してもらう。朝から行くから各自弁当を用意する様に」

 ふざけた態度から一転して真面目な顔で説明するウォレフにデイブが納得した様に言った。

「なるほど。つまり要するにピクニックですね」

 さっきまでふざけた事を言っていたウォレフに対する意趣返しでは無い。デイブは本気でそう思った。するとウォレフは怒るわけでも無く、呆れた顔で言った。

「やっぱり君はアホだな。今の話しからどうやったらピクニックという結論に結び付くんだ?」

「いや、湖の畔で弁当ったらピクニックでしょ。いやー、楽しみっすねぇ」

 野外授業の目的はウォレフの説明にもあった様に新たな精霊との出会いだ。だが、デイブはそれよりも弁当の方が重要らしく、目を輝かせて答えた。そんなデイブにウォレフは溜息しか出て来ない。

「……君は本当にアホだな」

 呟く様に言うとホームルームを終え、授業を開始した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。 お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。 これからどうやって暮らしていけばいいのか…… 子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに…… そして………

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

結婚式で王子を溺愛する幼馴染が泣き叫んで婚約破棄「妊娠した。慰謝料を払え!」花嫁は王子の返答に衝撃を受けた。

window
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の結婚式に幼馴染が泣き叫んでかけ寄って来た。 式の大事な場面で何が起こったのか? 二人を祝福していた参列者たちは突然の出来事に会場は大きくどよめいた。 王子は公爵令嬢と幼馴染と二股交際をしていた。 「あなたの子供を妊娠してる。私を捨てて自分だけ幸せになるなんて許せない。慰謝料を払え!」 幼馴染は王子に詰め寄って主張すると王子は信じられない事を言って花嫁と参列者全員を驚かせた。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...