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騎士の国ルフト陥落
私が死ねば良かった
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翌日、ソルドとドルフとステラは今後の事を考える為にゼクス王の部屋に集った。
「あの……お願いがあるのですが」
ソルドが少し考えた後に口を開いた。
「ルーク様の記憶を無理に取り戻させようとしないでいただきたいのです」
「何故です? どういう事ですか?」
困惑したステラがソルドに詰め寄ると、ソルドは少し暗い顔となり、考えたくもない嫌な事を言った。
「記憶を戻せばルーク様は復讐の鬼となりましょう。そしてろくに準備もしないままにガイザスに攻め入り、そして返り討ちに遭う。ステラ様はそれをお望みですか?」
もちろんそんな事を望むわけが無い。ソルドの言葉にステラが黙って首を横に振ると、ソルドは思わぬ事を言い出した。
「私個人の考えですが、ルーク様には暫く普通の民として暮らしていただきたく思います」
「ルークを一アルテナ国民として……ですか?」
「できれば、アルテナの学校に通わせていただいて魔法の勉強もさせていただきたいのです。ルーク様が立派に成長された時には私が生命をかけてガイザスからルフトを取り戻すお手伝いを致します。その為の準備期間も必要ですので」
戦いに敗れたルフトの王子ルークがアルテナに亡命するにあたってガイザスの目を欺く為にソルドはそう考えたのだろう。ソルドは自分の考えを話した後、申し訳なさそうな目をしてステラに頭を下げた。
「ステラ様の辛いお気持ちはわかります。ですが、数年間の辛抱です。なにとぞ」
「致し方ありませんね」
目を伏せたステラが呟き、悲しそうな声で言った。
「今回の件は私が原因なのですから」
「ステラ様、そんな風にご自分を責めてはなりません。あなたは何も悪い事はしてないのですから」
ソルドがなだめる様に言ったが、ステラは自分を責め続ける。
「でも、私がヒルロンの申し入れを受け入れていれば……」
「そんな事をしていたら、逆にルーク様がガイザスに攻め込んでますよ。もちろん私もね」
「でも、そうだったらルフトが勝っていたかもしれない」
「それでお姫様を取り戻してハッピーエンド……にはならないでしょうね」
「どういう事ですか?」
「優しいルーク様はステラ様を取り返しても、ヒルロンを討ち取るまではしないでしょう。と、なるとわかりますよね」
「次はガイザスがルフトに攻めて来る……のですか?」
「おそらくは。ですから、どっちにしてもこの戦争は避けられなかったのですよ」
ステラがヒルロンの求婚を拒んでも受け入れてもルフトとガイザスの戦争は避けられなかったと言うソルドにステラは悲痛な声を上げた。
「では、私が死ねばよかった……」
「それならルーク様はヒルロンを討ち取るでしょうね。となればやはり戦争は避けられませんし、第一ステラ様もルーク様も幸せになれません」
それでも戦争は避けられないと言うソルドにステラは頭を抱えてしまった。
「ならどうすれば?」
「ステラ様のなさりたい様になさればよろしいのですよ。どうすれば正解かなんてわからないのですから」
ソルドは優しく言った後、すまなさそうに言った。
「でも、ちょっとの間だけは私のお願いを聞いて下さいね。ルーク様を無駄死にさせない為に」
ソルドの言葉にステラは頷く事しか出来なかった。
「あの……お願いがあるのですが」
ソルドが少し考えた後に口を開いた。
「ルーク様の記憶を無理に取り戻させようとしないでいただきたいのです」
「何故です? どういう事ですか?」
困惑したステラがソルドに詰め寄ると、ソルドは少し暗い顔となり、考えたくもない嫌な事を言った。
「記憶を戻せばルーク様は復讐の鬼となりましょう。そしてろくに準備もしないままにガイザスに攻め入り、そして返り討ちに遭う。ステラ様はそれをお望みですか?」
もちろんそんな事を望むわけが無い。ソルドの言葉にステラが黙って首を横に振ると、ソルドは思わぬ事を言い出した。
「私個人の考えですが、ルーク様には暫く普通の民として暮らしていただきたく思います」
「ルークを一アルテナ国民として……ですか?」
「できれば、アルテナの学校に通わせていただいて魔法の勉強もさせていただきたいのです。ルーク様が立派に成長された時には私が生命をかけてガイザスからルフトを取り戻すお手伝いを致します。その為の準備期間も必要ですので」
戦いに敗れたルフトの王子ルークがアルテナに亡命するにあたってガイザスの目を欺く為にソルドはそう考えたのだろう。ソルドは自分の考えを話した後、申し訳なさそうな目をしてステラに頭を下げた。
「ステラ様の辛いお気持ちはわかります。ですが、数年間の辛抱です。なにとぞ」
「致し方ありませんね」
目を伏せたステラが呟き、悲しそうな声で言った。
「今回の件は私が原因なのですから」
「ステラ様、そんな風にご自分を責めてはなりません。あなたは何も悪い事はしてないのですから」
ソルドがなだめる様に言ったが、ステラは自分を責め続ける。
「でも、私がヒルロンの申し入れを受け入れていれば……」
「そんな事をしていたら、逆にルーク様がガイザスに攻め込んでますよ。もちろん私もね」
「でも、そうだったらルフトが勝っていたかもしれない」
「それでお姫様を取り戻してハッピーエンド……にはならないでしょうね」
「どういう事ですか?」
「優しいルーク様はステラ様を取り返しても、ヒルロンを討ち取るまではしないでしょう。と、なるとわかりますよね」
「次はガイザスがルフトに攻めて来る……のですか?」
「おそらくは。ですから、どっちにしてもこの戦争は避けられなかったのですよ」
ステラがヒルロンの求婚を拒んでも受け入れてもルフトとガイザスの戦争は避けられなかったと言うソルドにステラは悲痛な声を上げた。
「では、私が死ねばよかった……」
「それならルーク様はヒルロンを討ち取るでしょうね。となればやはり戦争は避けられませんし、第一ステラ様もルーク様も幸せになれません」
それでも戦争は避けられないと言うソルドにステラは頭を抱えてしまった。
「ならどうすれば?」
「ステラ様のなさりたい様になさればよろしいのですよ。どうすれば正解かなんてわからないのですから」
ソルドは優しく言った後、すまなさそうに言った。
「でも、ちょっとの間だけは私のお願いを聞いて下さいね。ルーク様を無駄死にさせない為に」
ソルドの言葉にステラは頷く事しか出来なかった。
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