子猫のおかげで出会った陰キャのぼっち少女が実はワケあり超絶美少女で、結果俺が世界一の幸せ者(俺調べ)になった件

すて

文字の大きさ
上 下
18 / 37
夏休みまでにしておかなければならない事

観覧車ってカップルがキスする為の乗り物だと思うのは偏見だろうか?

しおりを挟む
 俺と岩橋さんはコーヒーカップから降りたんだが、さて何と声をかければ良いのだろう。


『怖かったね』            ……絶叫マシーンかよ。

『楽しかったね』           ……楽しかったのは俺だけかもしれない。

『岩橋さんと密着できて嬉しかったよ』 ……いや、それは絶対言っちゃダメだろ。


 言葉選びに頭を悩ませる俺だったが、俺と岩橋さんの間に流れる微妙な空気を破ったのは意外な事に岩橋さんだった。

「ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」

 うわっ、また謝られちまったよ。そもそも迷惑どころか、俺は思いっきり嬉しかったんだけど。やっぱり岩橋さん、俺と密着しちゃって恥ずかしいんだろうな、気まずいんだろうな……俺が岩橋さんの立場だったらダッシュで逃げてしまうかもしれない。
 俺の頭に絶望の二文字が浮かんだ。だが、その二文字は一瞬にして『希望』と言う二文字に変わった。

「でも、楽しかった。また一緒に乗ってくれる?」

 乗る! 乗ります! 何なら今すぐにでも。いや、落ち着け俺。岩橋さんに『もっとはしゃごうよ』と言ったが、はしゃぐにも限度ってモンがあるぞ。
俺は小躍りしたい気持ちを抑えてポケットからくしゃくしゃになった園内マップを取り出して広げた。

「もちろん! じゃあ、次は何に乗ろうか?」

 俺が言うと、岩橋さんは嬉しそうに俺が手にしている園内マップを覗き込んだ。同時に俺も岩橋さんが乗れそうなアトラクションを探したのだが、コーヒーカップ程度のスピードで慌てて帽子が飛ばされない様に押さえる岩橋さんだ。スピードが出るアトラクションは全て却下だ。と、なるとメリーゴーランドとか観覧車ぐらいか……って、観覧車!?

 観覧車と言えばカップルがキスをする為のアトラクションだ。えっ、違う? だって、男女が密室で二人っきりなんだぜ。ま、まさかキス以上の事をしようってんじゃ無いだろうな? そんなの、彼女いない歴=年齢の俺には想像すら出来なかったぜ。

 いやいや、次にドコに行くか、何に乗るかは俺が決める事じゃ無い。岩橋さんに決めさせてあげないと。

「どうする?」

 優しく聞いた俺に岩橋さんは少し考える様な仕草の後、園内マップの一点を指差して小さな声で言った。

「観覧車に乗りたいな」

 来たよ、来ちゃったよ。麻雀で言えばリーチ一発高めってヤツだ。岩橋さん、わかってるのかな? 俺と二人で観覧車に乗るって事は、俺と密室で二人っきりになるって事なんだぜ。それとも岩橋さんにはそれだけの覚悟があるって事なのか……なんて、俺の考え過ぎだろうな。

 俺と岩橋さんは園内マップを頼りに観覧車のある方へと歩いた。観覧車はGSJの中でも一番背の高いアトラクションだ。暫く歩くとすぐにその姿を現した。

「すごーい、大きいね」

 岩橋さんのテンションが少し上がったみたいだ。俺が腕時計をちらっと見ると、和彦達と別れてから三十分ってところだ。観覧車って一周何分ぐらいで回るんだろう? 

「行こっ、加藤君!」

 さすがに今度は駆け出しこそしなかったが、岩橋さんは凄く楽しそうに歩く速度を速めた。歩く速度を速めたと言っても所詮は女の子の歩く速さだ、置いて行いかれる訳は無いのだが、どうせなら手を取って欲しかったな……って、何を他力本願な事を言ってるんだよ俺は。自分から攻めるのが男ってモンじゃねーか。

 だが、もちろん俺にそんな勇気がある筈が無い。とりあえず足を速めて岩橋さんと並んで歩いた。あと数センチ手を伸ばす事が出来無い自分の腑甲斐無さを情けなく思いながら。

 観覧車も少し並べばすぐに乗れそうな雰囲気だった。それを確認した俺の頭をコーヒーカップの時と同じく一つの問題が悩ませた。
 今回もシンプルな二択問題だ。一つ目の選択肢は『隣に座る』そしてもう一つの選択肢は『向かい合って座る』だ。

 もちろん隣に座りたい。できればさっきの様に密着して。だが、そんな勇気があればとっくに手ぐらい握ってるって。
 さてどうしたものか。この際俺が先にゴンドラに乗り込んで、岩橋さんに座る場所を選んでもらうか? いや、それはダメだ。男として恥ずかし過ぎる。やはりココはレディファーストで岩橋さんに先に乗ってもらわないとな。

 いよいよ次にゴンドラに乗るのは俺と岩橋さんとなった。係員がドアを開け、先客を降ろすと、まず、岩橋さんをゴンドラに乗ってもらった。さあ、問題はココからだ。岩橋さんが二人並んで座れるベンチシートの真ん中あたりに座れば悩む事は無い。向かいに座るしか無いからな。また、ベンチシートの手前つまり扉側に座っても俺は向かいに座るしか無い。岩橋さんの前を横切って隣に座るなんて芸当は俺には到底無理。だが、もしベンチシートの奥側に座ったら……


① 向かい側の手前、つまり対角線上に座る。

② 向かい側の奥、つまり正面に座る。

③ 隣に座る。


 おい、選択肢が増えてるじゃないか。二択じゃ無かったのかよ! しかも①②③と数字が大きくなるに連れて難易度が高くなってるし。もちろん俺の希望は③なんだけどな。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

隣の家の幼馴染は学園一の美少女だが、ぼっちの僕が好きらしい

四乃森ゆいな
ライト文芸
『この感情は、幼馴染としての感情か。それとも……親友以上の感情だろうか──。』  孤独な読書家《凪宮晴斗》には、いわゆる『幼馴染』という者が存在する。それが、クラスは愚か学校中からも注目を集める才色兼備の美少女《一之瀬渚》である。  しかし、学校での直接的な接触は無く、あってもメッセージのやり取りのみ。せいぜい、誰もいなくなった教室で一緒に勉強するか読書をするぐらいだった。  ところが今年の春休み──晴斗は渚から……、 「──私、ハル君のことが好きなの!」と、告白をされてしまう。  この告白を機に、二人の関係性に変化が起き始めることとなる。  他愛のないメッセージのやり取り、部室でのお昼、放課後の教室。そして、お泊まり。今までにも送ってきた『いつもの日常』が、少しずつ〝特別〟なものへと変わっていく。  だが幼馴染からの僅かな関係の変化に、晴斗達は戸惑うばかり……。  更には過去のトラウマが引っかかり、相手には迷惑をかけまいと中々本音を言い出せず、悩みが生まれてしまい──。  親友以上恋人未満。  これはそんな曖昧な関係性の幼馴染たちが、本当の恋人となるまでの“一年間”を描く青春ラブコメである。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

わたしの愉快な旦那さん

川上桃園
恋愛
 あまりの辛さにブラックすぎるバイトをやめた。最後塩まかれたけど気にしない。  あ、そういえばこの店入ったことなかったな、入ってみよう。 「何かお探しですか」  その店はなんでも取り扱うという。噂によると彼氏も紹介してくれるらしい。でもそんなのいらない。彼氏だったらすぐに離れてしまうかもしれないのだから。  店員のお兄さんを前にてんぱった私は。 「旦那さんが欲しいです……」  と、斜め上の回答をしてしまった。でもお兄さんは優しい。 「どんな旦那さんをお望みですか」 「え、えっと……愉快な、旦那さん?」  そしてお兄さんは自分を指差した。 「僕が、お客様のお探しの『愉快な旦那さん』ですよ」  そこから始まる恋のお話です。大学生女子と社会人男子(御曹司)。ほのぼのとした日常恋愛もの

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...