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お友達から始めよう
とりあえず第一段階はクリア出来たかな?
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楽しい昼休みが終わると次のお楽しみは放課後だ。弁当を四人で食べたって事は、今日は四人で帰るんだろうか? 俺の胸は期待で膨らんだ。あー、早く授業終わんねえかな。
外を見ると綺麗な青空。もうすぐセミが鳴き出すんだろうな。今年の夏は岩橋さんとプールとか、一緒に行けたら良いのにな。
などと考えてその日、俺の耳には先生の言葉など全く入らなかった。まあ、先生の言葉なんて耳に入る日の方が少ないんだけどな。
「カズ君、帰ろ」
由美ちゃんの声だ。放課後、俺と喋っていた和彦を誘いに来たのだ。っていう事は岩橋さんも……って、居ない!?
由美ちゃんは一人だった。じゃあ岩橋さんは?
「沙織ちゃんならメグ達と帰るわよ」
俺の心を見透かしたかの様に由美ちゃんが言った。和彦と由美ちゃん、二人揃ってエスパーかよ? いや、俺が分かりやすいだけなんだろうな。
ちなみに『メグ』というのは藤崎恵さん、現国の授業で岩橋さんに助けてもらった子だ。
由美ちゃんによると、これは言わば最後の試練。由美ちゃんが居なくても岩橋さんが友達と寄り道をして帰れるかどうか。これが出来ればもう安心だと言う事だ。
俺はこっそり後を付けようかなんて考えたが、先に釘を刺されてしまった。
「加藤君、コソコソ後を付けたりするんじゃ無いわよ」
やっぱり由美ちゃんもエスパーだよ。まあ明日の朝、岩橋さんがどんな顔をしてるかだな。笑ってたら良いんだけどな。
*
翌朝、俺は速足で学校に、いや、岩橋さんのマンションに向かった。岩橋さんはどんな顔をしているだろう? 由美ちゃんが居なくて、友達の中で自分の居場所が見つけられなくて寂しい思いをしてなかっただろうか? 心配しながら歩く俺の目にマンションのエントランスに立つ岩橋さんの姿が映った。
「加藤君、おはよう」
大丈夫、いつもの岩橋さんだ。『いつもの』と言っても教室で一人寂しそうにしていた岩橋さんじゃ無い。最近友達が出来て明るくなったと評判の岩橋さんだ。
岩橋さんは俺が聞くまでも無く、自分から昨日の事を話し出した。
「……それでね、みんなでショッピングモールに寄ってね、ペットコーナーの子猫が凄く可愛かったの」
昨日は本当に楽しかったんだな。前髪で隠れて見えないが、きっと目をキラキラさせて話してるんだろう。ああ、ちゃんと岩橋さんの顔が見たいなぁ。あんなに綺麗な目をしてるのに隠すなんてもったいない……
そう思いながら相槌を打ちつつ岩橋さんの話を聞いていた俺の耳に信じられない言葉が飛び込んできた。
「私と加藤君がこうして話す様になったのも子猫がきっかけだったよね。子猫を見てたらね、何か加藤君の事を思い出しちゃって……」
マジか! 岩橋さんが俺の事を!?
俺は感動のあまり言葉を失ってしまったのだが、これは失敗だった。
「あっ、ごめんなさい、変な事言っちゃって」
頬を赤くして岩橋さんは顔を背け、俯いてしまった。
違う、違うんだ。全然変な事じゃ無い。寧ろめっちゃ嬉しい! どうしよう、この際、思い切って言ってしまおうか? 「俺はいつも岩橋さんの事ばかり考えてる」って。
だが、そんな事を言う勇気など俺にある訳が無い。
「そ、そうなんだ。何だか嬉しいな」
うわっ、俺、何を偉そうに上から目線で言ってんだよ。俺が本当に言いたい事はそんな事じゃ無いだろ!
だが一度口から出た言葉は戻せない。俺は猛烈に後悔したが、沈黙が容赦無く襲ってきた。
「正直言うとね、不安だったんだ。由美ちゃんが居なかったから」
岩橋さんのポツリと呟く様な言葉でその沈黙は意外にも早く破られた。本来なら男の俺が何とかしないといけないというのに……俺ってつくづく情けない男だなぁ。
「でも、みんなちゃんと仲良くしてくれたし、これもみんな加藤君のおかげよね。本当にありがとう」
岩橋さんは顔を上げ、俺の目を見て(と言っても例によって前髪で目は隠れてるんだが)嬉しそうに言った。
含羞んで言う岩崎さんのあまりの可愛さに、抱き締めたいという衝動と必死になって戦う俺。それを知ってか知らずか岩橋さんは尚も笑顔で言った。
「加藤君と友達になれて本当に良かったな」
俺としては友達以上になりたいんだけど……だが、そんな事を今言ってしまうとどうなるだろう? もう恋愛フラグは立っているんだろうか? いや、ここで変な事を言って、せっかく築いた関係を壊す訳にはいかない。『焦るな』って和彦も言ってたしな。
「そうだね。俺も岩橋さんと仲良くなれて嬉しいよ」
無難な言葉を選んだつもりだが、これで正解なんだろうか? ちなみに岩橋さんが『友達』と言ったのに対し、俺が『仲良くなれて』という言葉を使ったのは好意を仄めかせてみたつもりだったのだが、岩橋さんはそれに気付いただろうか?
教室に入ると岩橋さんは女の子のグループの輪に入っていった。由美ちゃんの言う通り、これで第一関門の『女の子の友達作り』はクリア出来たと思って良いのだろう。さあ、ここからは俺のターンだ。とは言ってもさて、どう攻めたら良いものやら。もし振られたら、同じクラスなだけに辛さは倍増だからな。ここは慎重に行かないと。バッドエンドだけは勘弁願いたいからな。
外を見ると綺麗な青空。もうすぐセミが鳴き出すんだろうな。今年の夏は岩橋さんとプールとか、一緒に行けたら良いのにな。
などと考えてその日、俺の耳には先生の言葉など全く入らなかった。まあ、先生の言葉なんて耳に入る日の方が少ないんだけどな。
「カズ君、帰ろ」
由美ちゃんの声だ。放課後、俺と喋っていた和彦を誘いに来たのだ。っていう事は岩橋さんも……って、居ない!?
由美ちゃんは一人だった。じゃあ岩橋さんは?
「沙織ちゃんならメグ達と帰るわよ」
俺の心を見透かしたかの様に由美ちゃんが言った。和彦と由美ちゃん、二人揃ってエスパーかよ? いや、俺が分かりやすいだけなんだろうな。
ちなみに『メグ』というのは藤崎恵さん、現国の授業で岩橋さんに助けてもらった子だ。
由美ちゃんによると、これは言わば最後の試練。由美ちゃんが居なくても岩橋さんが友達と寄り道をして帰れるかどうか。これが出来ればもう安心だと言う事だ。
俺はこっそり後を付けようかなんて考えたが、先に釘を刺されてしまった。
「加藤君、コソコソ後を付けたりするんじゃ無いわよ」
やっぱり由美ちゃんもエスパーだよ。まあ明日の朝、岩橋さんがどんな顔をしてるかだな。笑ってたら良いんだけどな。
*
翌朝、俺は速足で学校に、いや、岩橋さんのマンションに向かった。岩橋さんはどんな顔をしているだろう? 由美ちゃんが居なくて、友達の中で自分の居場所が見つけられなくて寂しい思いをしてなかっただろうか? 心配しながら歩く俺の目にマンションのエントランスに立つ岩橋さんの姿が映った。
「加藤君、おはよう」
大丈夫、いつもの岩橋さんだ。『いつもの』と言っても教室で一人寂しそうにしていた岩橋さんじゃ無い。最近友達が出来て明るくなったと評判の岩橋さんだ。
岩橋さんは俺が聞くまでも無く、自分から昨日の事を話し出した。
「……それでね、みんなでショッピングモールに寄ってね、ペットコーナーの子猫が凄く可愛かったの」
昨日は本当に楽しかったんだな。前髪で隠れて見えないが、きっと目をキラキラさせて話してるんだろう。ああ、ちゃんと岩橋さんの顔が見たいなぁ。あんなに綺麗な目をしてるのに隠すなんてもったいない……
そう思いながら相槌を打ちつつ岩橋さんの話を聞いていた俺の耳に信じられない言葉が飛び込んできた。
「私と加藤君がこうして話す様になったのも子猫がきっかけだったよね。子猫を見てたらね、何か加藤君の事を思い出しちゃって……」
マジか! 岩橋さんが俺の事を!?
俺は感動のあまり言葉を失ってしまったのだが、これは失敗だった。
「あっ、ごめんなさい、変な事言っちゃって」
頬を赤くして岩橋さんは顔を背け、俯いてしまった。
違う、違うんだ。全然変な事じゃ無い。寧ろめっちゃ嬉しい! どうしよう、この際、思い切って言ってしまおうか? 「俺はいつも岩橋さんの事ばかり考えてる」って。
だが、そんな事を言う勇気など俺にある訳が無い。
「そ、そうなんだ。何だか嬉しいな」
うわっ、俺、何を偉そうに上から目線で言ってんだよ。俺が本当に言いたい事はそんな事じゃ無いだろ!
だが一度口から出た言葉は戻せない。俺は猛烈に後悔したが、沈黙が容赦無く襲ってきた。
「正直言うとね、不安だったんだ。由美ちゃんが居なかったから」
岩橋さんのポツリと呟く様な言葉でその沈黙は意外にも早く破られた。本来なら男の俺が何とかしないといけないというのに……俺ってつくづく情けない男だなぁ。
「でも、みんなちゃんと仲良くしてくれたし、これもみんな加藤君のおかげよね。本当にありがとう」
岩橋さんは顔を上げ、俺の目を見て(と言っても例によって前髪で目は隠れてるんだが)嬉しそうに言った。
含羞んで言う岩崎さんのあまりの可愛さに、抱き締めたいという衝動と必死になって戦う俺。それを知ってか知らずか岩橋さんは尚も笑顔で言った。
「加藤君と友達になれて本当に良かったな」
俺としては友達以上になりたいんだけど……だが、そんな事を今言ってしまうとどうなるだろう? もう恋愛フラグは立っているんだろうか? いや、ここで変な事を言って、せっかく築いた関係を壊す訳にはいかない。『焦るな』って和彦も言ってたしな。
「そうだね。俺も岩橋さんと仲良くなれて嬉しいよ」
無難な言葉を選んだつもりだが、これで正解なんだろうか? ちなみに岩橋さんが『友達』と言ったのに対し、俺が『仲良くなれて』という言葉を使ったのは好意を仄めかせてみたつもりだったのだが、岩橋さんはそれに気付いただろうか?
教室に入ると岩橋さんは女の子のグループの輪に入っていった。由美ちゃんの言う通り、これで第一関門の『女の子の友達作り』はクリア出来たと思って良いのだろう。さあ、ここからは俺のターンだ。とは言ってもさて、どう攻めたら良いものやら。もし振られたら、同じクラスなだけに辛さは倍増だからな。ここは慎重に行かないと。バッドエンドだけは勘弁願いたいからな。
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