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第二章:くっころの女騎士?は助けない

結婚式の二人

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 「という訳で結婚式を挙げようと思うの♪」
 「……あー、ハイハイ」
 「むっ、信じてないわね!?小夜!弘輝も!!」
翌朝、開口一番そんな事を宣った杏樹に友人二人は白けた目を向ける。

 「…何事かと思ったら…そんな事で・・・・・呼び出したの?杏樹」
 「舞まで…!?」

朝9時に呼び出されて、皆眠そうだ。
そりゃ、こんな対応にもなるだろう。

日曜日朝─町内会の運動会宜しく朝早くにLINEで呼び出されたら、誰だって良い顔はしないだろう。

 「…おぅ。で?なんでそんな事言い出したんだ?」
ふっふっふっ、と気色悪い笑い方をした杏樹に怪訝な目を向ける。
 「嘘じゃないわ♪」
 「…はぁ。」
溜め息を吐く弘輝を無視して傍らの錬夜が言う。
 「場所はラスペリア、魔王国のミルセ、教会で行う…当日でも受け付けてくれる」
 「ラスペリア…って異世界の?」
 「うん、そこの魔族の国では近親婚が認められているのよ♪」
 「…だから、俺達も呼ばれているのか?錬夜よ」
 「おぅ。俺の友人はお前らだろ?」
 「…(嬉)」
秋人は無言でほくそ笑んだ。
その隣で朔夜が「…ひょっとして、今から行くのか?」と、眉間に皺を寄せる。
 「私は別に構わないわよ」
と、真白はあっさりと承諾した。
 「…けど、負担にならないか?」
朔夜の問い掛けに答えたのは錬夜。
 「そこは、ほれ…うちの優秀な召還師様がドッペルゲンガーを人数分召還するから大丈夫だぞ」
 「ドッペルゲンガー?」
 「…うん。ドッペルゲンガーを間に挟む事で私もラスペリアに行ける」
ドッペルゲンガー…それは、こっちでも知られている“もう一人の自分”。

だが、“魔物”としての彼らは両性具有で─乳白色の人形、ぶよぶよとした体躯は180㎝ほど。

 「…私が召還する際は“制約”と“隷属”を重ね掛けするわ…それに操作するのは私達。
ドッペルゲンガーはオブザーバー」
 「…なんで俺達のまで?」
 「向こうの神・・・・・に目を付けられるわよ?そしたらめでたく便利屋勇者サマね」
 「げっ、それって…激しく面倒なんだが…っ!?」
嫌そうな顔の弘輝に頷く。
 「あいつら、自重なんてしないから…きっと死ぬまでこき使われるわよ?」
 「しかも帰れない…とか抜かしやがるから…オススメはせんぞ」
 「…いや、二人の苦労を思えば、一概に“異世界転移”も良いもんじゃねぇな」
 「片道切符なんて、死にに行くようなものね」
 「…それなら、“勇者”にされる事もないんだろ?」
 「ええ」
 「皆に祝って欲しいから」
 「来てくれると嬉しい」
秋人の言葉に久美が頷いて、杏樹が朗らかに微笑わらう。
錬夜がそう締めくくると…友人達は頷いて了承した─

 「…我が求めに応じよ、ドッペルゲンガー」

久美がそう口にすると六芒星の魔方陣が浮き上がる…

杏樹の友人と錬夜の友人、それからその友人の両親、杏樹達の両親、祖父母合わせて─
計19人。
 「どう?初めてのドッペルゲンガーとの同調は?」
 「…なんか、変な感じがするな」
 「ええ、自分の身体が脱け殻みたいになってるのをみるなんて…ね」
 「…違和感が無いのが違和感だな」
 「秋人はこう言うのを好きだと思ったわ」
 「あくまでもゲームの中なら歓迎なんだが、な」
秋人と真白がそう言うと錬夜が全員を一ヵ所に集める。

 「おい、皆集まれ」
 「おっ、異界移動か?」
 「いーから、集まれ」

豊城家のリビングに19人もの人間が集まっていると普通は窮屈だろう…

だが、錬夜の“空間掌握”によって本来のリビングより空間が広がるのだ。

 「んじゃ、魔王城にまず行くぞ~?」
 「おぅ。やってくれ♪」
 「わくわく」
 「…声に出すな、キモい」
 「真白が酷いんだけど!?」
 「朔夜、うるさい」

 「権象・異界移動─」
 
 「座標・固定─“ラスペリア魔王城”寝室─」

錬夜の後に杏樹の詠唱が重なる…。

五芒星の上に六芒星の魔方陣が重なって…多面体になって行く─

ふわり、と一瞬身体が浮き上がると“世界”は一変した。

 「…ほい、到着☆」
 「アデルと手続きをしてくるから…ちょっと待ってくれよ?」
 ≪うむ…?今回は随分と大所帯だな…?≫
 「おぅ、結婚式がしたくてな?」
 ≪ああ─なるほどの。…案内しよう…けど、その前に≫
 「ほい、この前渡して無かったでしょ?25万ラスア」
スッとアイテムボックスから金貨の入った袋を渡す。
 ≪う、うむ…ぬっ?増えているぞ?≫
 「それは利子だと思って…私も忘れてたし」
 ≪そうか?…なら、もらっておく…ああ、そこの棚に入れてくれ≫
 「りょーかい」
杏樹から渡された金貨の入った袋を棚に収納する錬夜。
 ≪…では、案内する。付いて参れ…客人はここから出ないように≫
 「分かった」
 「りょーかい~♪」
 「分かりました」
 「…分かったわ」
 「お手数お掛けします」
 「決して部屋から出ないように俺達で見張っておく」
 「任せて下さいね」
 「…なんだか、不本意だけど」

どそれぞれ了承してソファに腰掛ける面々。

…。
暫くして、馬車の手配が城の裏口に用意された。
 ≪街には一緒に案内すればいいのだろう?≫
 「おぅ。」
  ≪ドレスや指輪は?≫
 「なんか、いいのある?」
  ≪うむ、あるぞ?≫
絆の指輪エンゲージリングと言われる魔族に伝わる魔道具──

互いの危機を察することが出来るこの指輪は魔族の間でも重宝されている物だ。

魔力と血で登録されるこの指輪は生涯使用者の魔力で動き続けるのだ…そして、使用者が死ぬと光を失い砕ける。

 「良いわね、それ!」
 ≪なら、先ずは宝飾店か?≫
 「その前に教会の予約でしょう?」
  ≪そちらは既に押さえておいた≫
 「本当?ありがと♪」
嬉々として駆け出す杏樹の後を追い掛けるようにして仲間の待つ魔王の寝室へと戻るのだった…。

 「…と、言う訳で馬車の手配をしたから行くわよ?」
 「やった!」
 「よっしゃ~~!!」
 「めくるめく異世界の街…楽しみだ…」
 「…基本、馬車からは出ないわよ?」
 「そんな…!?」
 「なに…?」
久美の言葉に衝撃を受けているのは…弘輝と秋人の二人だ。 
 「お上りさんだってバレるのは構わないけど…この世界のに目を付けられたくはないからね」
 「…馬車の中は結界を張るから、絶対見えない・・・・・・わ」
杏樹の言葉の後に久美がそう言う。

態々杏樹と錬夜以外のメンバーはドッペルゲンガーを使ってまで予防線を張ったのだ。
姿を“神”に晒す訳にはいかない。
…興味を持たれたら、どうする?
これ以上余計な仕事を増やしたくない。

 《皆の者、こっちだ》
先導するアデルが城の裏口に停めてある黒塗りの馬車数台を顎でしゃくる。

 「さ、行くわよ?」
 「おぅ。」
 「分かった」
黒塗りの馬車は紋章も何も無いが…見る者が見たらしっかりとした造りで…高そう。←ここがポイントだ。

100%高いものダメだが…王城から出ても問題ないほどそこそこ・・・・の人物が馬車に乗っている…そう示す事で余計な者の介入を防ぐのだ。

…でないと“結婚式”所ではなくなる。

そうして全員が乗り込むと…馬車は動き出す。
5、6人用の馬車5台ほど。
もちろん、これらはチャーターでアデルに即金で払っている。
記録にも残しているので問題ない。
ガラガラと馬車は進む…
扇状の街を窓越しに目を細めて眺める友人達。

 「綺麗…」
 「のどかで良いところね」
 「ああ、街を歩きた─」
 「弘輝、似たような所なら地球にもあるから…夏に行ってみないか?」
 「マジ…!?それって…どこで○ドア─じゃなかった、杏樹兄の“転移”か?」
 「おぅ。…まあ、似たような事は杏樹も出来るが、極力負担を減らしたいからな」
ちらっと隣の杏樹に視線を向ける。
 「?なぁに、お兄ちゃん?」
 「いや…馬車の中でポーカーしてんのか?」
 「うん。久美、意外と手強いのよ!…油断してると反撃に遭っちゃう」
 「…遭っちゃうって…」
 「杏樹と久美ちゃんの二人は次元が違うと思う」
杏樹の不満あり気な言葉に秋人と朔夜が苦笑を浮かべる。

 「…具体的には?」
錬夜が問うと、答えたのは小夜だ。
 「先ず杏樹が“私達には”見えない速さでガードを抜くのよ─山札から」
 「おぅ。」
 「んで、7の5ファイブカードにする」
続きを弘輝。
錬夜は僅かに首を傾げる。
 「…おぅ?」
またまた小夜が先を口にする。
 「察した久美ちゃんが自分の手札と山札・・をそっくり“入れ替えて”─」
小夜は楽しそうに話す。
錬夜はすかさずストップを掛けた。
 「…おい、それってイカサマじゃないのか?」
 「…バレなければイカサマじゃない、って本人達は言っているわよ」
とは、舞の言葉。
淡々とした口調ながらも既に諦めているようだ…二人の説得。
出鼻を挫かれた小夜だが、構わず嬉々として語る。

 「なんと…ロイヤルストレートフラッシュを出して、ドローに持ち込んだのよ~!もう凄いのなんの♪」
 「…。」
小夜の剣幕に押し黙る錬夜。
…なんだ、その“イカサマ合戦”は。

一応勝負が終わる度に解説はしているが…誰も理解出来ないし、目では追えない。

 「…杏樹姉は強い。油断大敵」
 「あら、姉として妹に殺られる訳にはいかないのよ?」
 「…ふふっ、“姉”を越えるのが“妹”と言うものよ、杏樹姉?」
 「…尚更、負けるわけにはいかないわね!」
 「ええ─」
 「「…もう一勝負!!」」
杏樹と久美の掛け声が重なる。
 「…はぁ、もう勝手にしろ。」

ポーカーの為に集まった一同は明らかに許容オーバーな為、ほとんどが馬車から降りて隣の馬車へと戻って行った。

残ったのは杏樹と久美、錬夜…それから小夜と秋人くらいのものだ。

これから“結婚”するのだと言うのに…子供のようにはしゃいでいる杏樹の笑顔を眺めながら苦笑する。

 「…日本では“結婚”出来ない関係だけど…せめて“ここ”では夫婦になれる…何が変わる訳じゃないが…守って行きたいな、この幸せを」
ぽつり、と呟かれた一言は杏樹の勝利の雄叫びに掻き消えた。


 「…うしっ!!」
 「…負けた!!」
がくっ、と項垂れた久美とガッツポーズを取ってwinnerする杏樹。

…7回もしたのか?二人。

 「杏樹姉、次までに修行するね!」
 「ふふっ、受けて立つわよ!久美♪」
ガッシ、と手を繋いで握手を交わす二人。
 「おおう~~!美しい姉妹愛が垣間見える瞬間だ~♪♪」
ぱちぱちと拍手するのは小夜だけ。
 「ありがと、ありがとー♪」
 「…ん。次は勝つ」
ノルのは二人。
…。

流石は杏樹の“ノリ”に小学生の頃から付いていけるだけある。

場は白けているのに、この三人だけは盛り上がっている。

 「…ははっ。楽しい奴だ」
 「…似た者兄妹め」
それで済ませる錬夜も大概なのだと秋人は思った。
…。

宝飾店─

 「綺麗…幾つか私達の分も買って…?杏樹」
 「お母さん…良いわよ、後でメイクしてもらうし♪」
 「うんうん、するする~♪♪」
 「…なら、揃いのを買えば?」
 「錬夜…お、おおぅ。そう、だな…うん、珠樹は俺のだってアピールしてもしたりないしな」
 「た、鷹夜ったら…もうっ♥️♥️」
ぴたり、と寄り添い合って互いに目と目を合わせる二人…。
バカップルである。
 「…あのさ、一応私とお兄ちゃんの“結婚式”なんだけど?」
 「…はっ!?そ、そうだったわ…っっ!」
慌てて視線を反らすもその頬は朱に染まっていた。

お揃いのネックレス…月の神と星の姫をモチーフにした異世界産の伝承を元にしたアクセサリーは綺麗な物だった。

 「…指輪は俺が出す」
 「えっ、お兄ちゃん…?」
 「結婚してくれ、杏樹」
 「ぅ、は…はい…っっ♥️♥️」
絆の指輪を購入してそうプロポーズした錬夜は杏樹を抱き寄せる。
 「…おーい、二人とも~戻ってこーい?」
 「…はっ!?」
バカップル二組目である。
宝飾店を後にし、ウェディングドレスを専門にしている店へ。



ドレス選び…を終わらせて教会へと到着したのは午前11時。

花嫁の控え室─本来は懺悔室として使われる部屋─でサクラと詩音、珠樹の三人に寄って着付けとメイクを施される。

反対側の部屋では鷹夜と他二人父親ズに寄ってタキシードに着せ替えられている錬夜。

 「…綺麗よ、杏樹。」
 「…見違えたねぇ」
 「最高に綺麗な姿よ」
パシャパシャと写真を撮っているのは祖父母。
完全に撮影班と化している。
…そこに、コンコンコン、とノックが三回鳴った。

 「…入っても良いか?」
 「どうぞ」

父さんの声に答えるのは母さんだ。

ガチャッ…。

 「──ッ!!綺麗だ…珠樹の若い頃にそっくりだ」
 「そう?そうだったら嬉しいな」
 「──ッ、綺麗だ…ぞ…直視出来ん」
純白のウェディングドレス、纏められた髪、薄く化粧を施された花嫁の姿に頬を赤く染める錬夜はそう、口にして杏樹に笑われた。

 「ふふっ、もう…お兄ちゃんのバカ…一体誰の為に着飾ってると思うのよ?」
 「ぅ、い、いや…しかし…だな…っっ」
珍しく狼狽えている兄に杏樹は気を良くしてふふっ、と妖艶に微笑わらう。
 「しかしもかかしもないよ?お兄ちゃん♪」
ねっとりと艶のある眼差しで見詰められ、
どくんっ!と胸が高鳴る錬夜。
 「…そう…だ、な…」
 「うん」
視線に籠められた気持ちを正しく理解した錬夜は同じ“熱”の視線を返す。
 「…愛しているぞ、杏樹」
 「うん…私も。錬夜の事ずっとずっと愛しているわ」
二人見詰め合ってキスしそうな雰囲気にごほごほごほんっ、とわざとらしい咳払いをして遮ったのほ珠樹だ。
 「…ほーら、式が始まるわよ?錬夜は先に祭壇の前に行かないとダメじゃない?」
 「お、おぅ…そうだった…じゃあ、杏樹」
 「うん…」
目と目で会話をする二人に周囲は呆れた。

因みに友人達は既に座席に座って待っている。

去って行く錬夜の背中を見詰めて…その時が来るのを今か今かと待つ…。


 「新婦の入場です」

神父の声が朗々と静まり返った教会内に響く。

形式は概ね日本にあるのと変わらない洋式の結婚式だ。

ヴェールを纏った花嫁が父親のエスコートで一歩一歩と花婿の元まで連れられる…。

 「綺麗…」
 「素敵…」
 「美人度マックスだな」
 「儂の孫達が可愛いのじゃ!」
 「そこは“綺麗”ですよ、あなた?」
 「うん、…じゃがやはり…可愛いのじゃ!」
パシャパシャと遠慮なく撮影する祖父母。

 「…汝、豊城杏樹はこの者を愛し、この者を支え…病める時も健やかなる時も貧する時も富する時も妻としてこれを慈しみ、愛し支える事を誓いますか?」
涼しげな低い神父の声が響く。
西日が差し、キラキラとステンドグラスが輝く。
 「はい、誓います」
 「よろしい─なら、汝豊城錬夜は夫としてこの者を愛し支え…健やかなる時も病める時も貧する時も富する時もこの者を妻として愛し支える事を誓いますか?」
 「はい、誓います。」
 「では指輪の交換と誓いの口付けを女神の御前にて行いなさい」
女神の像の前で互いの左手薬指に絆の指輪を嵌め、杏樹のヴェールを捲る。

チュッ、と軽く唇を合わせた。

パシャパシャパシャパシャ!!

撮影班(祖父母)の仕事ぶりが優秀過ぎる…決定的瞬間はバッチリ撮影されている。

婚姻届と結婚証明書にそれぞれサインして全体に見せる。

 「…ここに一組の夫婦が誕生した事を女神にご報告申し上げる!」

ワァ──ッ!!

ぱちぱちぱちぱち…と拍手が鳴り止まない中を“夫婦”となった二人が寄り添って歩く。

流れるオルガンの曲は知らないものだが…結婚式に定番の曲だと、アデルに教えられそうなのか…と納得して行進する。

教会の外に出て、教会を背景に全員で写真を撮る。
見慣れない行為に周囲は注目していたが、誰一人説明はしないし、そもそも掛かるつもりもないのでシャットダウンしているが。

リーンゴーンリーンゴーン、と鳴る教会の鐘は日本で聞いた事のある音で安心した。
…。


それから、魔王城に戻ってドレスは魔王城に置かせて貰った。

日本に持って行っても着る機会等ないし、説明も面倒だ。

引き出物も披露宴もない。
本当に“最低限の”式を終えて、自宅へと帰還。

 「…杏樹、幸せになろうな?」
 「うん、お兄ちゃん…♪」
寄り添う二人の左手薬指には絆の指輪がキラキラと光を反射していた。
 「…あっという間だったなー」
 「おぅ、本当に」
 「これから披露宴は…ファミレスか?」
 「だろーね…本人達があの調子だし」
 「儂らは先に現像してくるからの。…LINEで知らせてくれ!」
 「ええ、あなた。」
撮影班─祖父母がそう言って家を飛び出して行った。

近所の写真屋─と言えばカメラのキタ○ラである。
ニ○リの二階にワンコーナーある。

自転車で5分も掛からない。

 「…二人とも。披露宴がまだよ?」
 「…無理だ。無理矢理連れてこう」
 「そうね」
ぼーとしたままの二人をずりずりと引き摺って家を後にする。

…ファミレス、レンドはそこそこな値段とメニューの多さで物部市民に愛されたレストランだ。

和洋折衷…なんでもある、子供から年寄りまで様々な年齢層に好かれるメニュー作りは3ヶ月に一度入れ替える徹底ぶり。

 「酢豚セット良いかな、私」
 「俺も」
 「ハンバーグセット」
 「…オムライスセットが良いわ」
 「焼き魚定食じゃ」
 「ジンギスカンセットよ」
 「麻婆茄子定食」
 「トマトソーススパゲッティセットで」

…と、それぞれ注文していく。

落ち着いたベージュのソファにテーブル、調度品は落ち着いた木目調。

店内は広く、ドリンクバーが併設されている。

この店は“セット”で頼むとサラダバーが付くのだ。

ご飯もお代わりし放題。
様々な地元で採れる野菜を使用…地域貢献しているのだ。

料理は全てセントラルキッチンで作られパック詰めし、即冷凍。

各店舗に運ばれる…だから、店内ではわりかし10分以内でどの料理も出てくる。

 「うん、美味しい~♪」
 「おぅ、ここのは早いし旨い。」
 「本当にねー」
香ばしい肉汁滴るステーキも、脂身も…美味しい。
ここの肉は自社で作っているこだわりの肉質なのだ。

パクパクと箸を動かす一同は
黙々と嚥下していく。
…。



夜─杏樹の寝室で。
するすると杏樹の服を脱がす錬夜の姿があった。

 「…よく、こんなそっくりなドレス、見付けたな?」
 「ふふっ、これ…母さんが着てた奴らしいの!」
 「母さんが…?」

そう言って…色褪せる事ない純白のウェディングドレスに袖を通した杏樹を抱き締めて脱がし、ヴェールとガーターベルト、コルセットだけにしたまま、組み伏せる。

 「…愛している」
 「うん…」
唇を重ね合わせ、どちらともなく舌を絡める。
 「ふ…ぁっ、ぁぁ…っ!」

邪魔なコルセットを外して床に落とす。

 「…今夜は寝かさない」
 「うん…お兄ちゃん…っ!」
 

白いシーツに杏樹の愛液がシミを作る…。

 「ふぁっ…ぁぁっ…!錬夜ぁ…っ」
 「ああ…ここにいる」

ぐちゃぐちゃと掻き混ぜて杏樹の膣穴あなに指を出し入れする。

結婚した。

日本では認められなくても…あの世界ラスぺリアでは錬夜と杏樹ふたりは“夫婦”だ。

その“事実”だけが…こんなにも嬉しい。

 「俺の初恋はお前にやるよ…だから、俺から離れんな?」

きらきと光る左薬指を見る度に、妹が…杏樹が“俺のモノ”だと再確認出来て安心する。

 「うん…私はお兄ちゃんの妻だから、離れないよ…♥️」

足を持ち上げてM字に開く。
白のストッキング、ガーターの下は脱がされ、大事な所が丸見えだ。

 「…っ、挿入れるぞ、杏樹?」
 「ん。来て…♥️」

下ろされた黒髪は透明なヴェールの魔法が掛かっていつもより2割増綺麗に見える。

ズプッ!

 「は、ぁぁっ…!」

そこはいつもより熱く濡れているような感じがした。

 「杏樹…っ、杏樹…ッ!!」
 「ふぁっ、ぁぁっ…あんっ、ゃぁっ…!!」

両手を恋人繋ぎでシーツに縫い止めて、唇を塞ぐ。

 「ぴちゃっくちゅっ、れろ…れろっ」
 「ぴちゃっ、くちゅっ…れろ…れろっ…んくっ、ふぅ。」

パンパンパンッ、と肌がぶつかる。

ぐちゃぐちゃと掻き鳴らされる杏樹の膣内なかはぴたりとくっついて離れない。

 「は、くっ…ふぅ、杏樹…っ!」
 「好き…好きよっ、ふぁあんっ!」

荒々しく突き入れた男根を前後左右に動かし掻きまわす。

純白の花嫁衣装も…こうして剥がしてやると、エロさが増す。

 「杏樹…っ、はぁっ、く…っ!」
 「ぁぁっ、ふぁっ、はぁっ…くぁっ」
 「愛している…ずっとッ!お前だけが俺の唯一だ!!」
 「うん!お兄ちゃんは私の旦那様だから…ぁぁっ!!」

パンパンパンッ、パンパンパンッ…と肌をぶつける音が射精前のストロークに変わる…。

 「──ッ!!」
 「はぁああん──っ!」

どくどくどく…と胎内に注がれる錬夜の所有の証。
“初めて”抱いたあの日から一切避妊等していない子種は過たず杏樹を孕ませていた。
 
 「ぴちゃっくちゅっれろ…れろっ、ふぁっ…お兄ちゃん…」
 「ぴちゃっくちゅっれろ…れろっ、ふぅ…杏樹、動くぞ?」
貪るような口付けを交わして錬夜は精子と愛液でぐちゃぐちゃになった膣内なかを突き進む。

 「ふぁっ…ぁんっ!気持ちいいの…ぁぁっ!!」
 「そうか…なら、もっと感じろ」
蕩けきった妹の顔を見詰め錬夜は未だ硬いままのペニスを前後左右に掻き回す。
 「ぁ、は…っぁぁっ!!」
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