10 / 23
第一章:漸く?旅をする二人は
喚ばれた二人は確信犯
しおりを挟む
1週間後─『魔王』との話し合いも終わり、二人は再び異世界に召還ばれた。
「・・・・」
「やっほ~☆」
《わっはっはっ!我の復活も近いぞ、人間の王よ!!》
「権象・異界移動」
瞬間─広がる五芒星の魔方陣・・・
「ま、待ってください!?」
「帰らないで!後生だから!!」
「話を…話を聞いてくれ…」
そんな人々…星巫女、宮廷魔導師長、王の言葉を二人とハニワは聞く耳持たずその帰還を見送るしかなかった。
「ほい、到着♪」
《ん?ここは…まさか─》
「ああ、お前達の魔王城だ」
《──ッ!!》
赤の絨毯に吹き抜けの天井、青色の壁、道行く廊下の端に壷や彫刻品が飾られている。
「ほら、行くぞ」
《あ、ああ…我は、我は…帰ってきた、のだな…》
「我が家が懐かしい?」
《ああ…!我はずっと帰りたかったのだ…ずっとっ!!》
空洞の瞳は今にも感激の涙を流すほどだ。
「用は図書だ…何かしらの知識が手に入るかもしれん」
「そそ。気持ちは分かるけど今は情報収集が肝心よ」
《──っ、分かっている…っ!》
宙に浮くハニワ──じゃない、魔王はキリッと?した眼差しを前方に向ける。
「ここはアデルが一番良く知ってんだから、しっかり案内頼むわね?」
《うむ!任されよ!!》
どこか、嬉しそうな張り切っているような声がする…いや、正しくは“声”ではないが。
そもそもハニワにそんな機能はない。電子盤も回路もない。なーんもない。粘土だ。ただの。
では、なぜしゃべっているのか?
簡単である。
「しっかし、ここはわりと綺麗な造りしてるんだな」
《ふふん!そうであろ、そうであろう!!》
<念話>である。
所謂、テレパシー。頭に直接言葉が流れるのだ。
先を行くアデルに錬夜は静かな城内を歩く。隣を杏樹は歩きながら、周囲への索敵を行う。
「ん~~、下の階に魔族が結構いるみたい…逆にこの階にはそんなに居ない──なんで?アデル」
《それは今が食事時だからな》
「あー…確かに今昼ね」
《うむ、下の階は広い食堂があるのだ、皆そこで食べている頃だろう…逆にこの階は図書室や研究室や実験室、植物園があるだけだからな》
そう、『メニュー』には確かにこの世界に合わせて時刻が記載されている。
12:30、と。
窓から見える空は快晴。ぽかぽか陽気できっと木陰で昼寝したらきっと気持ち良い。
「時間が微妙にズレてるよね~」
「おぅ、そうだな…日本はまだ部活中だったもんな」
《部活?とはなんだ?》
「授業後の放課後の活動だよ♪」
《授業後…とは、この前教えてくれた「学校」での後の話か》
「うん、皆好きに選べるんだよ~♪運動したり、歌を歌ったり楽器を奏でたり…もちろんそのまま帰っても良いしバイト─仕事をしてお金を稼いでも良いんだよ♪」
《ほう、自由なのか》
「まあ、部活はそれなりにお金が掛かるから…時間とお金に余裕がある人がするかな」
《ふむ…我ら魔族にも「学校」はあるが、そのようなものはないな…我が復活した暁にはぜひ取り入れたいものだな!》
「学校、あるんだ…」
《あるぞ…まぁ、魔族の世界は実力次第だからな…“魔王”だって弱ければ我ですら蹴落とされる》
「“血縁主義”じゃないのね」
《血など長命な我らには必要の無いことよ》
「ほーそりゃ良かった」
なかなか興味のある話が聞けた。
あの王城の王よりも好感が持てる。
アデルはそれから、簡単に魔族のものの見方や価値観を話してくれた。
魔族は魔物を操るが、それで人族を害した事はないそうだ。
では、なぜあの王様があんな話をしたのか?
《それは我らではない…ほら、どこにでも居るだろ?》
「?どゆこと?」
首を傾げる杏樹にアデルが続きを話す。
《自分の力を誇示して悦に入る奴》
「あーー、それは面倒だね」
「だな」
《だろう?一応あれらも我らの同胞なのだからな…見付け次第、酷い奴は地下牢にぶちこんでるのだが…はぁ、減らないんだアホは。》
つまり、下っ派雑魚魔族の癖に多少魔法や力が有るくらいで悦に入って周りに迷惑を掛けてしまう、と。
問い詰めたら『あれはアホな人間が遣ったことだ!自分は悪くない!』と他人に責任転換して自分の罪を認めないバカがやらかしたことらしい。
なまじ寿命が人族より長い為、暇潰しと人の上に立ちたいと言う支配欲や顕示欲が顕著に出る者もいる…一部だが。
「…それで村一つ、街一つ潰されてもね~~。そりゃ人間の“王様”も魔族は危険ーとか、魔王憎し~ってなるわ」
《まったく持ってその件に関しては申し開きようもない…はぁ、ああ言うバカは潰しても潰しても出るんだ…どうすれば良い?我には他にも仕事があると言うのに》
「知らんがな」
「知らんし」
溜め息を吐く?ハニワに杏樹と錬夜は大体同じ感想を口にする。
《はぁ~~~。分かってるんだ…完全な“犯罪”は無くならないって…どんなに目を光らせても全ての魔族を監視する事は不可能だ》
肩を落としたように見えるアデルにぽんぽんと頭を撫でる。
「気にすんな…その辺は俺達も同じだ」
《錬夜殿…》
「うんうん♪日本だって時々ニュースで学校や市役所に爆弾を仕掛けたーとか、自分が死刑になりたい為に何も関係ない一般人を刺し殺す人時々居るから」
《そうか…どこも変わらないんだな》
「そそ。気にするだけ無駄よ!犯罪者の心理は犯罪者にしか分からないわよ」
《杏樹殿…二人共ありがとう》
「おぅ。気にすんな」
そんな事を話していると…いつの間にか“図書室”とこの世界の言語で書かれたプレートが書かれた扉の前に来た。
扉は観音開きでアデルが止まる。
《ここが我ら魔王城の書庫─“王立図書館”だ。歓迎するぞ、錬夜と杏樹。》
錬夜と杏樹がそれぞれ左右に別れて扉を外側に引く。
ギィィイイ──
少し古い木が擦れるような音がして扉は開いた。
《この図書館は父上─先代魔王の書斎でもあったのだ…まぁ、それ以前からこの城と共にあった施設だが、誰でも利用が可能なんだ》
「受付が一人だが…良いのか?」
《ああ、昼休憩だろう?基本三人で二部構成で交代なんだ。休憩もローテーションで取っているし、この利用する者は少ない…彼も後で代わるだろうな》
「ふぅん」
《それに、城に悪意のある奴は入ってこれん》
「結界、か」
錬夜の言葉に頭を縦に振って肯定する。
《かなり強力な結界を張っている。先ず人間にも見つからんし悪意ある魔族の侵入も一切弾く》
「具体的には?」
《身体が四散するな、その時点で》
ぱぁん、と魔族…悪魔がりんごが潰れたような想像をしてしまった。
「うっわ──っ、それはまた…」
《悪意さえ持たなければ良い。ここは有事の際の避難所なのだからな》
「確かに城が出入り自由なんて危な過ぎだもんな」
《うむ。ほら、入るぞ》
宙に浮いたハニワが二人が開けた扉の中に入って行く…。
「いらっしゃ──い!?」
頭に山羊の角、人族のような容姿に服装、尾が生えた男性は驚きに目を見開いた。
《うむ。ウィル、久しぶりだな》
「ま、ままま魔王、様…!!?」
《訳合ってな…そこの二人に助けられたんだ》
「えっ!?でも…そのお姿は」
《済まないが…それは後にしてほしいんだ》
「──ッ!?わ、分かりました…魔王様の御意のままに」
スッと略式の挨拶をして、受付の男性はさっと錬夜と杏樹の二人に向いて軽く自己紹介をした。
「私は魔王様より、この図書館の管理を任された職員の一人でウィルソン・バーレンです…魔王様をお助け頂きありがとうございます」
「いえいえ。私は杏樹…こっちは私の兄の錬夜。よろしくね~♪♪」
「杏樹様に錬夜様ですね…後で詳しい事情は教えて頂けると助かります」
《うむ。それは勿論だ…同胞にも手伝って貰うことも有るかも知れんからな》
「…見た目ハニワなのに、良く“魔王様”って分かるのね?」
「はい、我々魔族は“魔力”でその者の価値を見極めるのです。多少外見が変わろうとも身に秘めた魔力の強さ、輝きは生涯変わる事はないのですよ」
「へぇ~~。
外見に惑わされないなんて凄いわね」
図書館の中はこれまた吹き抜けになった天井には豪華なシャンデリアが掛けられて下り、爛々と光を届けている。
天井近くまで本棚はあって、地面が無い所にまで壁に打ち付けたような棚にも本はびっしりと詰まっていた。
「あんなの“人間”は届かないわね…」
「いえいえ。そうでもないですよ?」
《うむ。ほれ、あそこ…》
アデルが身体を向けた先─宙にタッチパネルが浮いている。
そこに丁度、利用者と思わしき魔族がパネルを何事か操作して近くに半透明な水色の床が現れ、彼はそこに乗る…
「へぇ~床が浮いた…っ!凄い、ファンタジーっぽい!!」
《そうだろ、そうだろう!》
「…何で魔王様が得意気なんですか…まあ、ああやってほしい本の所まで床が動いて目当ての本はほんのり光を放つから見付けやすいのですよ」
「へぇ~、凄いわね~!!」
「本から光ってくれるのか…便利だな」
やがて…目当ての本を取って彼は受付のウィルソンの所まで向かってきた。
「…おや、魔王様?」
《おお、ダレンか》
ウィルソンに貸し出しカードを差し出すと手際良く手続きを済ませて、判を押して返す。
「それでは、そちらの棚に貸し出しカードを置いて下さい」
「はい…それにしても魔王様がどうしてこちらに?…それにその格好は」
《うむ。それに関しては後で説明する…今はそこの二人に必要な知恵を授けたいのでな》
「…分かりました。」
一礼してその魔族…ダレンは図書館を去って行った。
「それでじゃ、探すのは蘇生魔法と錬成や合成にについての本とこの世界の常識や地理、かな?お兄ちゃんも手伝って~?」
「おぅ、先ずは端末で必要そうな本をピックアップ、な」
「・・・・」
「やっほ~☆」
《わっはっはっ!我の復活も近いぞ、人間の王よ!!》
「権象・異界移動」
瞬間─広がる五芒星の魔方陣・・・
「ま、待ってください!?」
「帰らないで!後生だから!!」
「話を…話を聞いてくれ…」
そんな人々…星巫女、宮廷魔導師長、王の言葉を二人とハニワは聞く耳持たずその帰還を見送るしかなかった。
「ほい、到着♪」
《ん?ここは…まさか─》
「ああ、お前達の魔王城だ」
《──ッ!!》
赤の絨毯に吹き抜けの天井、青色の壁、道行く廊下の端に壷や彫刻品が飾られている。
「ほら、行くぞ」
《あ、ああ…我は、我は…帰ってきた、のだな…》
「我が家が懐かしい?」
《ああ…!我はずっと帰りたかったのだ…ずっとっ!!》
空洞の瞳は今にも感激の涙を流すほどだ。
「用は図書だ…何かしらの知識が手に入るかもしれん」
「そそ。気持ちは分かるけど今は情報収集が肝心よ」
《──っ、分かっている…っ!》
宙に浮くハニワ──じゃない、魔王はキリッと?した眼差しを前方に向ける。
「ここはアデルが一番良く知ってんだから、しっかり案内頼むわね?」
《うむ!任されよ!!》
どこか、嬉しそうな張り切っているような声がする…いや、正しくは“声”ではないが。
そもそもハニワにそんな機能はない。電子盤も回路もない。なーんもない。粘土だ。ただの。
では、なぜしゃべっているのか?
簡単である。
「しっかし、ここはわりと綺麗な造りしてるんだな」
《ふふん!そうであろ、そうであろう!!》
<念話>である。
所謂、テレパシー。頭に直接言葉が流れるのだ。
先を行くアデルに錬夜は静かな城内を歩く。隣を杏樹は歩きながら、周囲への索敵を行う。
「ん~~、下の階に魔族が結構いるみたい…逆にこの階にはそんなに居ない──なんで?アデル」
《それは今が食事時だからな》
「あー…確かに今昼ね」
《うむ、下の階は広い食堂があるのだ、皆そこで食べている頃だろう…逆にこの階は図書室や研究室や実験室、植物園があるだけだからな》
そう、『メニュー』には確かにこの世界に合わせて時刻が記載されている。
12:30、と。
窓から見える空は快晴。ぽかぽか陽気できっと木陰で昼寝したらきっと気持ち良い。
「時間が微妙にズレてるよね~」
「おぅ、そうだな…日本はまだ部活中だったもんな」
《部活?とはなんだ?》
「授業後の放課後の活動だよ♪」
《授業後…とは、この前教えてくれた「学校」での後の話か》
「うん、皆好きに選べるんだよ~♪運動したり、歌を歌ったり楽器を奏でたり…もちろんそのまま帰っても良いしバイト─仕事をしてお金を稼いでも良いんだよ♪」
《ほう、自由なのか》
「まあ、部活はそれなりにお金が掛かるから…時間とお金に余裕がある人がするかな」
《ふむ…我ら魔族にも「学校」はあるが、そのようなものはないな…我が復活した暁にはぜひ取り入れたいものだな!》
「学校、あるんだ…」
《あるぞ…まぁ、魔族の世界は実力次第だからな…“魔王”だって弱ければ我ですら蹴落とされる》
「“血縁主義”じゃないのね」
《血など長命な我らには必要の無いことよ》
「ほーそりゃ良かった」
なかなか興味のある話が聞けた。
あの王城の王よりも好感が持てる。
アデルはそれから、簡単に魔族のものの見方や価値観を話してくれた。
魔族は魔物を操るが、それで人族を害した事はないそうだ。
では、なぜあの王様があんな話をしたのか?
《それは我らではない…ほら、どこにでも居るだろ?》
「?どゆこと?」
首を傾げる杏樹にアデルが続きを話す。
《自分の力を誇示して悦に入る奴》
「あーー、それは面倒だね」
「だな」
《だろう?一応あれらも我らの同胞なのだからな…見付け次第、酷い奴は地下牢にぶちこんでるのだが…はぁ、減らないんだアホは。》
つまり、下っ派雑魚魔族の癖に多少魔法や力が有るくらいで悦に入って周りに迷惑を掛けてしまう、と。
問い詰めたら『あれはアホな人間が遣ったことだ!自分は悪くない!』と他人に責任転換して自分の罪を認めないバカがやらかしたことらしい。
なまじ寿命が人族より長い為、暇潰しと人の上に立ちたいと言う支配欲や顕示欲が顕著に出る者もいる…一部だが。
「…それで村一つ、街一つ潰されてもね~~。そりゃ人間の“王様”も魔族は危険ーとか、魔王憎し~ってなるわ」
《まったく持ってその件に関しては申し開きようもない…はぁ、ああ言うバカは潰しても潰しても出るんだ…どうすれば良い?我には他にも仕事があると言うのに》
「知らんがな」
「知らんし」
溜め息を吐く?ハニワに杏樹と錬夜は大体同じ感想を口にする。
《はぁ~~~。分かってるんだ…完全な“犯罪”は無くならないって…どんなに目を光らせても全ての魔族を監視する事は不可能だ》
肩を落としたように見えるアデルにぽんぽんと頭を撫でる。
「気にすんな…その辺は俺達も同じだ」
《錬夜殿…》
「うんうん♪日本だって時々ニュースで学校や市役所に爆弾を仕掛けたーとか、自分が死刑になりたい為に何も関係ない一般人を刺し殺す人時々居るから」
《そうか…どこも変わらないんだな》
「そそ。気にするだけ無駄よ!犯罪者の心理は犯罪者にしか分からないわよ」
《杏樹殿…二人共ありがとう》
「おぅ。気にすんな」
そんな事を話していると…いつの間にか“図書室”とこの世界の言語で書かれたプレートが書かれた扉の前に来た。
扉は観音開きでアデルが止まる。
《ここが我ら魔王城の書庫─“王立図書館”だ。歓迎するぞ、錬夜と杏樹。》
錬夜と杏樹がそれぞれ左右に別れて扉を外側に引く。
ギィィイイ──
少し古い木が擦れるような音がして扉は開いた。
《この図書館は父上─先代魔王の書斎でもあったのだ…まぁ、それ以前からこの城と共にあった施設だが、誰でも利用が可能なんだ》
「受付が一人だが…良いのか?」
《ああ、昼休憩だろう?基本三人で二部構成で交代なんだ。休憩もローテーションで取っているし、この利用する者は少ない…彼も後で代わるだろうな》
「ふぅん」
《それに、城に悪意のある奴は入ってこれん》
「結界、か」
錬夜の言葉に頭を縦に振って肯定する。
《かなり強力な結界を張っている。先ず人間にも見つからんし悪意ある魔族の侵入も一切弾く》
「具体的には?」
《身体が四散するな、その時点で》
ぱぁん、と魔族…悪魔がりんごが潰れたような想像をしてしまった。
「うっわ──っ、それはまた…」
《悪意さえ持たなければ良い。ここは有事の際の避難所なのだからな》
「確かに城が出入り自由なんて危な過ぎだもんな」
《うむ。ほら、入るぞ》
宙に浮いたハニワが二人が開けた扉の中に入って行く…。
「いらっしゃ──い!?」
頭に山羊の角、人族のような容姿に服装、尾が生えた男性は驚きに目を見開いた。
《うむ。ウィル、久しぶりだな》
「ま、ままま魔王、様…!!?」
《訳合ってな…そこの二人に助けられたんだ》
「えっ!?でも…そのお姿は」
《済まないが…それは後にしてほしいんだ》
「──ッ!?わ、分かりました…魔王様の御意のままに」
スッと略式の挨拶をして、受付の男性はさっと錬夜と杏樹の二人に向いて軽く自己紹介をした。
「私は魔王様より、この図書館の管理を任された職員の一人でウィルソン・バーレンです…魔王様をお助け頂きありがとうございます」
「いえいえ。私は杏樹…こっちは私の兄の錬夜。よろしくね~♪♪」
「杏樹様に錬夜様ですね…後で詳しい事情は教えて頂けると助かります」
《うむ。それは勿論だ…同胞にも手伝って貰うことも有るかも知れんからな》
「…見た目ハニワなのに、良く“魔王様”って分かるのね?」
「はい、我々魔族は“魔力”でその者の価値を見極めるのです。多少外見が変わろうとも身に秘めた魔力の強さ、輝きは生涯変わる事はないのですよ」
「へぇ~~。
外見に惑わされないなんて凄いわね」
図書館の中はこれまた吹き抜けになった天井には豪華なシャンデリアが掛けられて下り、爛々と光を届けている。
天井近くまで本棚はあって、地面が無い所にまで壁に打ち付けたような棚にも本はびっしりと詰まっていた。
「あんなの“人間”は届かないわね…」
「いえいえ。そうでもないですよ?」
《うむ。ほれ、あそこ…》
アデルが身体を向けた先─宙にタッチパネルが浮いている。
そこに丁度、利用者と思わしき魔族がパネルを何事か操作して近くに半透明な水色の床が現れ、彼はそこに乗る…
「へぇ~床が浮いた…っ!凄い、ファンタジーっぽい!!」
《そうだろ、そうだろう!》
「…何で魔王様が得意気なんですか…まあ、ああやってほしい本の所まで床が動いて目当ての本はほんのり光を放つから見付けやすいのですよ」
「へぇ~、凄いわね~!!」
「本から光ってくれるのか…便利だな」
やがて…目当ての本を取って彼は受付のウィルソンの所まで向かってきた。
「…おや、魔王様?」
《おお、ダレンか》
ウィルソンに貸し出しカードを差し出すと手際良く手続きを済ませて、判を押して返す。
「それでは、そちらの棚に貸し出しカードを置いて下さい」
「はい…それにしても魔王様がどうしてこちらに?…それにその格好は」
《うむ。それに関しては後で説明する…今はそこの二人に必要な知恵を授けたいのでな》
「…分かりました。」
一礼してその魔族…ダレンは図書館を去って行った。
「それでじゃ、探すのは蘇生魔法と錬成や合成にについての本とこの世界の常識や地理、かな?お兄ちゃんも手伝って~?」
「おぅ、先ずは端末で必要そうな本をピックアップ、な」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
175
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる