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第二章:くっころの女騎士?は助けない

風乱のソォラと迷宮と二人

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強烈なエロフとのすれ違い?を得て、一行は迷宮へ。

S級迷宮ダンジョン──その脅威がどれほどのものか…期待と興奮とちょっとした不安を胸に杏樹は兄と共にそこへと踏み入れる。

 「…ちょっと遊んで行こ?お兄ちゃん♪」
 「おぅ」
短い返答に見上げれば…杏樹同様期待と興奮にきらきらと輝いているのが分かった。
 「迷宮探索なんてシーリアンテ以来だよな…あの時ほど悲壮感も使命感や義務感やらはない、間う事なき迷宮探索!楽しみに決まってるじゃないか!!」
 「…」
と、力強く断言した愛しの兄の子供っぽい仕草に杏樹は悶えていた。
(お兄ちゃん…やばっ、かわ…っ!!これが…これが、“萌え”って言う奴!?)
内心、兄の新たな一面に悶え萌え惚れ直していた杏樹は頬を真っ赤に染め口元を押さえながらぷるぷる震えていた。
 「…杏樹?」
《主ら…はあ。何処のバカップルか》
杏樹の内心をなんとなく分かるアデルは空洞の目を白けながら、呆れていた。
宙に浮かびながらやれやれと言わんばかりに身体を左右に揺らしている。
 「…お、お兄ちゃん…かわいい…好き…♡」
 「お?おお…俺も好きだぜ…ん?なんか変な単語が聞こえたような…」
 「かわいい…」
ぽっと頬を染める杏樹に錬夜は怪訝に思いつつも自分へと好意を向けてるのに変わりはないので、特に気にはしなかった。

チュッと杏樹の額にキスをして手を引く。
 「はわ…っ!?」
 「ほら、行くぞ?杏樹」
 《…半身がバカップル過ぎて辛い》
嘆くアデルを尻目に桃色結界が展開され迷宮の暗く淀んだ空気が焼け爛れるようだ…。





 「楽しい…っ!!」
 「おぅ…おっ♪罠の弓矢が…ほっ、ほいっ、とっ!」

…盛大に迷宮の罠を発動させてその全てをかわしながら、嬉々として魔物部屋モンスターハウスへ突っ込む二人に魔王アデルは辟易していた。
 《はあ~~~~っ。》
矢が錬夜の四方から狙い打ちにするも、全てを華麗に避けて…まるでどこぞのダンサーのようだ。
軽快でアップテンポな曲が聴こえてきそうだ。
 「良いわね!…こう言うの、ゲームに使えるわ」
 「…矢だけじゃなく頭上から盥…!?この発想…もしかして転生者!?」
壁にこれ見よがしな紐を引くと天井から金盥が落下…華麗にバックステップでかわして、そんな見解を述べる錬夜…気分はとごかの身体は子供、頭脳は大人──な名探偵。

罠と併せて現れた魔物の群れも二人の相手ではなくて。

楽しそうに罠を発動させながら、その罠すらも戦術に組み込みながら対峙して行く杏樹の度量の高さ。
小太刀を両手に持って飛び掛かる杏樹に何やらぶつぶつと考察しながらも振り下ろされる日本刀──“草薙剣クサナギノツルギ”は錬夜が手ずから鍛えた厨二眉唾の伝説の剣。

聖剣だと闇属性や不死魔物にしか効かないから不便、だからだ。

自由度がなくてつまらん──と零したのはいつだったか。

元は魔を祓い邪を滅する為の聖剣武器

それ以外の魔物には過剰武装となる。

ただ、強ければいい──と言うものでもないのだ。
戦闘は。


 
 「あっはっはっ…!!」
 「何処を狙っている?俺はこっちだ…らあっ!!」

小太刀を二本持って無双する杏樹と、草薙剣を華麗に振り回す錬夜…日頃の不満を魔物にぶつけていた。

 《…もういやだ…この二人…》

ハニワが独り黄昏ていた。

S級迷宮がたったの二人に蹂躙されるなんて…誰が思うだろうか?
S級魔物が多く蔓延るこの迷宮を罠も込みで全力で楽しむ戦闘狂──本人達に言うと全力で否定されそうだが──は迷宮を踏破している。
全100層もあるこの迷宮を僅か30分で90層まで降りてきた二人とアデル。

 「あと少しね、お兄ちゃん♪」
 「おぅ…にしても、ここに来るまで冒険者の一人とも会わなかったな」
 「うん…ひょっとしてこの世界の冒険者ってチキンで雑魚なのかな?」
 《…そう言えば父上が存命の頃はもう少し冒険者も強かったと言っていたな…時期はちょうど“人族至上主義”を掲げる星法教会が出来てから──》
そこまで口にしたアデルは気付いたようだ。
 「間違いなくその馬鹿の所為せいね。
本来人間は弱いものよ?それを他の種族──獣人から拳や蹴りを用いた武闘術を教えて貰い、弓や薬草に強いエルフから薬師の知識を教えて貰い、魔法の得意な魔族から教授され、ドーワフからは武器の作り方、その扱い方を教えて貰う。
反対に人間は彼らにそれらの技術を応用&変容した新たな知識、道具を彼らに還元する──そんな相互理解の関係だったのよ…それを、人族至上主義ボンクラ共は…ッ!」
…魔王城の蔵書は中々のものである。
こう言う歴史もつまびらかに記された歴史書も事細かく書かれている。
アデルに引っ張られる事もあるが…杏樹は『杏樹』を保っている。
 「お兄ちゃん、あとちょっとだね♪」
 「…おぅ。なんか可笑しかったぞ、杏樹?」
 《…》
魔王アデルは何か思い当たる節があるのか、沈黙を保っている。
 「そう?…ひょっとしたら魔王アデルの影響が少しあるのかもね?」
ちらり、とハニワに目を向ける。
 《…!?》
 「…それは…平気、なのか…?杏樹…」
 「大丈夫♪よ…ただアデルの思考…ううん、感情を少し受けるだけだわ」
心配そうに杏樹の白く柔らかな頬を撫でて見詰める。
 「杏樹…お前に何かあったら…俺は…この世界を破壊し尽くしてもし足りない」
 「お兄ちゃん…もう」
二人の視線が絡まる…。
錬夜はそっと杏樹の腰を抱く。
杏樹は小太刀を鞘に納めて、その細い指を錬夜あにの胸板に這わせる。
 「杏樹…」
 「お兄ちゃん…」
二人の瞳の輝きが妖しい…
この二人、まさか──

錬夜が杏樹の顎を持ち上げて、そっと重ねる。

 「ん…ふっ、ぁ…っ。」

…口付けはすぐに舌を絡ませ、唾液を交換する激しいものとなった。

 《…主ら…はあ、仕方ない…私は向こうのセーフエリアで待っていよう》

因みに二人が居るのは宝箱がある小部屋。
この隣が下へ続く階段と右隣にセーフエリア──安全地帯がある。

 「…愛している、俺の最愛」
 「お兄ちゃん…錬夜…っ!」

戦闘で昂った身体を鎮めるため、二人は愛撫もそこそこに早々と繋がる。

 「はぁ…っ、ぁぁっ!!」
 「杏樹…杏樹っ!」

壁に手を付いた杏樹に後ろからペニスを突き入れてどろどろの膣内を堪能する錬夜。
 「…すき、お兄ちゃん…ゃぁんっ!ふぁっ…ぁぁっ!!」
 「杏樹…ッ、好すぎる…っ!」
ぐちゃぐちゃ、パンパンパンッと肌と肌がぶつかる音と湿った粘膜の音が室内を満たす。
 「杏樹…気持ちいい…もっと聴かせてくれ…っ!」
 「お兄ちゃん…お兄ちゃんっ!!」
繋いだ手の熱が、繋がった下腹部が熱くて…心地よい快感の波が高くて…。
体位を変えても、最愛のひとに求められるのが、たまらなく嬉しい。
 「射精して…お兄ちゃんの子種を私の膣内なかに…ぁぁっ!!」
 「ああ、射精すぞ…杏樹──っ!!」

ドクドクドク、ドピュッドピュッドクンッ!!

白くどろどろとした白濁液が杏樹の膣と言わず、膣壁、子宮口、子宮へと放たれる。

 「んぁぁああんん~~っ!!」

熱い精子の放流に杏樹もまた絶頂を迎えた。

びくびくと震える身体を抱きすくめながら、確かにある最愛の人のぬくもりにほっと安堵の溜め息を吐いて杏樹の呼吸が整うのを待つ。
 「…錬夜…」
 「ん?どうした…?」
 「…りない」
 「?」
 「足りない…もっと…して…?」
 「!!」
頬を染めてそんなかわいいに錬夜の理性が耐えられる筈がない!完・墜ち・だ・!!

 「ぁっ、ぁぁっ…お兄ちゃん、お兄ちゃゃぁぁん~~!!」
 「杏樹、杏樹…ッ!」
狂戦士バーサーカー錬夜は理性があっという間に崩壊し、杏樹を抱くだけのセックスマシーンと化した。
 「孕ませる!孕ませるからな!杏樹…俺の子種で…っ!!」
 「お兄ちゃん…はぁっ、やぁんっ♡…愛しているわ…ぁぁっ!!」

どろどろとした子種を何度受け止めたのだろうか…
…。



少なくとも時属性の杏樹が張った結界の中で10発も射精したのだから…6時間は普通に経過しているはず、だ。
…それも結界の外では僅か5分しか経過していないのだから、杏樹の結界の高さにある。
 「…浄化クリーン。はい、これで証拠隠滅よ♪」
 「…色々と搾られた」
つやつやの杏樹と何処か疲れたような錬夜が壁に凭れていた。
 「お兄ちゃん♪」
 「…おぅ。」
 「愛しているわ!」
 「…っ、おぅ。」
腕に抱きつく妹の頭を撫でながら、錬夜はほんのり赤らむ頬を掻いて『敵わないな』と内心零すのだった。
…。







最深部──100層、ボス部屋攻略後。

ドロップ品をアイテムボックスに回収してから現れたのは…
黄緑色の髪の豊満な胸を揺らした白地に紺縁のドレスワンピの女性──その頭には山羊の角。
瞳はきりりと吊り上がった紫色の猫目。
左目の下に泣き黒子がある。
綺麗目な顔立ち、モデル顔負けの180㎝はある長身。
腰は括れ、手足は長い。

 「…ようこそ、魔王様。」
凜、と涼やかな女性の声が響く。
 「あなたが、風乱のソォラ?」
 「あなたは…ん?魔王様が二人…!?」
杏樹とは違った美女に錬夜は思わず言葉を無くす。
構わず杏樹とソォラの話は続く。
 「…事情を話すわね…」
かくかくしかじか~と事情説明が為される中、ハニワは呆れた眼差しを錬夜に向けていた。

 「…つまり、賢者の石に私の魔力を籠めればいいのね?」
 「そう言うこと」
 「分かったわ」
スッと杏樹を指差して、蠱惑的な笑みを浮かべる。
 「──貴女、杏樹…だったかしらね?」
 「なに?」
 「一対一で私に勝てたら協力するわよ」
 「…つまり、血が騒いだから相手しろってこと?」
 「…そうよ。なんか戦闘狂みたいね、これじゃ」
 「事実じゃない」
そう言葉の応酬を続けながら、ソォラと杏樹はボス部屋の中央に向かい合わせで対峙する。
 「勝利条件はどちらか一方が“参った”と言うか、HPの9割損失。魔法はどちらもMPの3割しか使用不可、アイテムの使用は水以外禁止」
 「MPのドレインは魔法・スキル共に使用禁止、HPは…まあ可、でいいでしょ?」
ソォラの後を杏樹が続けると同意するように頷くソォラ。
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