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プロローグ:星の錬金術師
帝国帝都、デルタデルトより
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地球よりも遥かに凌ぐ文明の発達を果たした世界──ラグリア。
惑星名にするなら──久遠星、だろうか。
その地図上東に位置する東の魔導帝国、ティアマトの帝都・デルタデルトよりとある工房内から──少女の機嫌良さそうな鼻歌混じりの歓声が上がる。
「~~♪♪出来たーーっ!!」
そう言って少女はグッと両手を真上に突き上げた。
造り出したのは──稀なるもの──魔素を半永久的に魔力へと変換する装置──一見真四角(縦5㎝×横5㎝のサイコロのような見た目)──はその小さな見た目に反して高性能で誰も再現出来ないOnlyOne…近いものは出来るかも知れないが──先ず無理不可能な代物──を息するように製作するのが…この“工房”──ティアマト帝国所属錬金術総合工房寄宿舎ヴァルハラ機関──通称“TVA”の開発部エースは喜色をあげた。
このキューブ…仮に“魔力発生装置・まーく君”と仮呼称しよう。
これがあれば、魔素濃度の低い絶対焦土──エインヘリヤルの捜索隊が活動する手助けとなる。
絶対焦土──それは、錬金術や魔術に優れたこの惑星の最果ての東大陸の一部に点在する極端に魔素濃度も希薄で…精霊も寄り付かない草木一つ生えない不毛の地…。
未だ未調査でその謎は多くの学者、多くの冒険者の憧れが大層詰まっているそうだ──まあ、この少女にはあまり興味はないようだが。
「よし!完・成・☆お姉様にお願いして量産して貰おう♪」
…この少女──イリス・バトラクシア・フォン・アウタナ皇女──は、そう、何を隠そう──この帝国の末の“皇女様”なのである──。
まあ、本人はこの通り、魔道具作りが趣味で錬金術と魔術の研究が三度の飯の次に好きな研究バカ皇女様ではあるのだが…。
ピピピッと手元で操作した魂の端末機をポチポチしながら、目的の人物に通話を行う──因みにこの魂の端末機もイリスが創った──と、すぐにコールに出た上司は…。
『…あら?もう出来たのか…相変わらず速いな…ああ、複製許可は出して置いたぞ…。それを持って“複製工場”に向かってくれ。先方には連絡しておく…明日から1ヶ月は長期休暇だ…本当にお前は発明が好きなのだな?』
「はい!お姉様♪私は発明さえあれば何処でだって生きていけますよ♪
…作った私が言うのもなんですが…」
『ん?なんだ?』
「…絶対焦土なんか調べてどーするつもりなんかなーって。」
『…お前…』
電話越しに呆れを多分に含む溜め息が漏れた。
「…あ、呆れないで下さいよ…!頼まれたから作ったけど…正直医療施設か何かの生物実験にしか使われそうにないじゃないですか~?これ。」
『…まあ、な…分からんでもないが…お前、確実に帝国中の研究者を敵に回したぞ?』
「やっだな~!それってあの歴史を研究している変人集団──“帝都歴史調査室”の一部のマニアだけじゃない…!」
『…私としてはお前もあいつらも同じように思うぞ、妹よ』
「あっはは~、冗談キツイです、マジで♪」
『そこだけ真顔になるんじゃない』
「…ッ!?電話越しなのに…っ!?」
『お前と何年姉妹やってると思っているんだ?』
イリスと──件の“歴史マニア”──“帝都歴史調査室”の一部とは馬が合わないのだ。
件の施設は真面目に帝国の歴史を…帝国へともたらそうとしているだけの歴史学者を中心とした研究室…反対にイリスは帝都の一等地──“中央区”に居を構えている。
皇城と転移ゲートを繋いだ唯一の民間施設…まあ、規模は計り知れないが──イリスは研究者、その姉──4人いる姉の三の姉──マティカが上司としてこの機関の所長兼軍司令官として軍と皇室、双方の折り合いを付け、イリスへと“依頼”や“要請”と言う形で仕事を割り振っている。
民間施設だが──その創設には多額の公費や、イリスのポケットマネー、沢山の出資者(金だけ出して口は出さない)──の支えと共同開発&運営されているこの機関…彼女達の父でもある皇帝も密かに期待している国家事業……走り出して10年──物凄く巨大に成長した“機関”は今や帝都に機関アリ──と言わしめるほどだ。
ここでは身分よりも「発明」の出来にしか価値はなく…日夜研究員は自身の研究と開発に余念がない。
『…お前のおしめを他の姉上方と共同でやった事もあるのだぞ?…まったく、呑気なものだ』
「へへへ…お姉様…お土産、楽しみにしててくださいね?」
『…ん?温泉郷か湯治に行くのか…?』
「はい!…あ、それもありますけど…そうじゃなくて…まあ、お土産、楽しみにしててください♪」
『……。なんだか、嫌な予感がするのだが…?』
「あっはは~…気のせいですって!」
『………。』
……。
そんな会話を最後に通話を切ったイリスは──工場へと複製の依頼をしに行くと…そのまま──行方を眩ましたのだった…。
………………。
…………。
惑星名にするなら──久遠星、だろうか。
その地図上東に位置する東の魔導帝国、ティアマトの帝都・デルタデルトよりとある工房内から──少女の機嫌良さそうな鼻歌混じりの歓声が上がる。
「~~♪♪出来たーーっ!!」
そう言って少女はグッと両手を真上に突き上げた。
造り出したのは──稀なるもの──魔素を半永久的に魔力へと変換する装置──一見真四角(縦5㎝×横5㎝のサイコロのような見た目)──はその小さな見た目に反して高性能で誰も再現出来ないOnlyOne…近いものは出来るかも知れないが──先ず無理不可能な代物──を息するように製作するのが…この“工房”──ティアマト帝国所属錬金術総合工房寄宿舎ヴァルハラ機関──通称“TVA”の開発部エースは喜色をあげた。
このキューブ…仮に“魔力発生装置・まーく君”と仮呼称しよう。
これがあれば、魔素濃度の低い絶対焦土──エインヘリヤルの捜索隊が活動する手助けとなる。
絶対焦土──それは、錬金術や魔術に優れたこの惑星の最果ての東大陸の一部に点在する極端に魔素濃度も希薄で…精霊も寄り付かない草木一つ生えない不毛の地…。
未だ未調査でその謎は多くの学者、多くの冒険者の憧れが大層詰まっているそうだ──まあ、この少女にはあまり興味はないようだが。
「よし!完・成・☆お姉様にお願いして量産して貰おう♪」
…この少女──イリス・バトラクシア・フォン・アウタナ皇女──は、そう、何を隠そう──この帝国の末の“皇女様”なのである──。
まあ、本人はこの通り、魔道具作りが趣味で錬金術と魔術の研究が三度の飯の次に好きな研究バカ皇女様ではあるのだが…。
ピピピッと手元で操作した魂の端末機をポチポチしながら、目的の人物に通話を行う──因みにこの魂の端末機もイリスが創った──と、すぐにコールに出た上司は…。
『…あら?もう出来たのか…相変わらず速いな…ああ、複製許可は出して置いたぞ…。それを持って“複製工場”に向かってくれ。先方には連絡しておく…明日から1ヶ月は長期休暇だ…本当にお前は発明が好きなのだな?』
「はい!お姉様♪私は発明さえあれば何処でだって生きていけますよ♪
…作った私が言うのもなんですが…」
『ん?なんだ?』
「…絶対焦土なんか調べてどーするつもりなんかなーって。」
『…お前…』
電話越しに呆れを多分に含む溜め息が漏れた。
「…あ、呆れないで下さいよ…!頼まれたから作ったけど…正直医療施設か何かの生物実験にしか使われそうにないじゃないですか~?これ。」
『…まあ、な…分からんでもないが…お前、確実に帝国中の研究者を敵に回したぞ?』
「やっだな~!それってあの歴史を研究している変人集団──“帝都歴史調査室”の一部のマニアだけじゃない…!」
『…私としてはお前もあいつらも同じように思うぞ、妹よ』
「あっはは~、冗談キツイです、マジで♪」
『そこだけ真顔になるんじゃない』
「…ッ!?電話越しなのに…っ!?」
『お前と何年姉妹やってると思っているんだ?』
イリスと──件の“歴史マニア”──“帝都歴史調査室”の一部とは馬が合わないのだ。
件の施設は真面目に帝国の歴史を…帝国へともたらそうとしているだけの歴史学者を中心とした研究室…反対にイリスは帝都の一等地──“中央区”に居を構えている。
皇城と転移ゲートを繋いだ唯一の民間施設…まあ、規模は計り知れないが──イリスは研究者、その姉──4人いる姉の三の姉──マティカが上司としてこの機関の所長兼軍司令官として軍と皇室、双方の折り合いを付け、イリスへと“依頼”や“要請”と言う形で仕事を割り振っている。
民間施設だが──その創設には多額の公費や、イリスのポケットマネー、沢山の出資者(金だけ出して口は出さない)──の支えと共同開発&運営されているこの機関…彼女達の父でもある皇帝も密かに期待している国家事業……走り出して10年──物凄く巨大に成長した“機関”は今や帝都に機関アリ──と言わしめるほどだ。
ここでは身分よりも「発明」の出来にしか価値はなく…日夜研究員は自身の研究と開発に余念がない。
『…お前のおしめを他の姉上方と共同でやった事もあるのだぞ?…まったく、呑気なものだ』
「へへへ…お姉様…お土産、楽しみにしててくださいね?」
『…ん?温泉郷か湯治に行くのか…?』
「はい!…あ、それもありますけど…そうじゃなくて…まあ、お土産、楽しみにしててください♪」
『……。なんだか、嫌な予感がするのだが…?』
「あっはは~…気のせいですって!」
『………。』
……。
そんな会話を最後に通話を切ったイリスは──工場へと複製の依頼をしに行くと…そのまま──行方を眩ましたのだった…。
………………。
…………。
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