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第一章:魔導人形(オートマタ)を口説く嘗ての恋した方(愚者)

好きだと仰有られても…。

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 「好きだ、アルティナ!」
真剣な青色の瞳が魔導人形を写す。
…今日は。わたし、No.1コードネーム【イブ】は…大変に当惑しております。
…って?
それは無論、この──愚か者王太子殿下の事でしょうか。
…真剣に口説かれているこの場所、王城の中庭の、噴水広場の前なのです。
…加えて我が主アルティナ様は母君のアリアスフィア様と共に領地視察に朝から出掛けて居られます。
 「…?わたくしなど御座いませんわ、王太子殿下」
 「そのなどではない!」
 「?仰有られている事が分かりませんわ。王太子殿下」
太陽光を反射して非常識にも眩しい──こほん、“華やかな”金髪と能天気な空を思わせる青色の瞳は…まだ淀んではいない──当然だ。10歳の子供でしかないこの少年が……。
──とてもとても我が主アルティナ様にあのような…ギロチンの刑に処したり処したり処したり処したりするなど…思っていたなら──私はこの者を万死に値すると…を為していたでしょう。…良かったですね?王太子殿下愚か者

にこり。

私は微笑みます。
…主の表情で。主の顔で。
心は裏腹ですが。

ゾクリッ!
王太子殿下の背筋に悪寒が 走ったようだ。
少しびくついて怯えたような殿下愚者に思わず溜飲が下がる。

 「…っ!?ねぇ、アルティナ…君…ひょっとして……僕の事、嫌いなの?」
 「おほほ…」
 「目が笑ってないよね?!こ、怖いんだけど…っ!!」
 「うふふ…」
私は笑って誤魔化します。
だって──…、ねぇ?



 「…嫌い、でありませよ。ええ。ふふ…」
 「!アルティナ…っ!!」

私は溜めます。

王太子が何か勘違い?を起こしたのか… とします。

──が“許す”とでも?

 「ふんっ!!」

ダンッ!!

石畳のタイル張りの床に背負い投げました。はい。背中からどっさりと。

パンパンと両手を叩いて、冷たい眼で睥睨へいげいします。

 「──私に触れないでくれます?四肢から腐ったらどうするのです?下郎」
 「…う、ぐ……ぅぅっ!!」

真面に取れない愚者に無機質な一瞥をくれてやり、その場を立ち去る。

 「どうして…ッ、なぜなんだ……っ!アルティナ…。昔はもっと……」

『もっと…』なんでしょうね?
主の記憶を引き継いだ私には──その先の言葉は推測出来ますが…ではない、と思いますし。
『本当に』好きなら──が本人でないと…いい加減気付けよ。愚者。
……おっと、言葉が乱れました。故障エラーですかね?
………。

(勝手に)帰りの公爵家の馬車に乗り込み城を後にします。

魔導人形オートマタの私達151体は全員アルティナ様寄りです。贔屓です。忖度です。忖度しますともー!

…主が起動してくれなければ…ずっと物言わぬ瓦礫──ガラクタの山でしたから。

それに主からも『好きにして良い』と許可が降りてます。
アルティナ様の口調で、アルティナ様の表情で、アルティナ様の感情が言葉にいれば構わない、と…。

…出逢いは5歳、でしたっけ?
既に──いえ、我が主は赤ん坊の頃から母以外に会う時はを代用してましたね。
…どれだけ嫌いなんですか、〝血縁上の父親〟を。
赤ん坊の身体ボディーを造るアルティナ様に私は戦慄を憶えましたね…。
変化した姿で魔導人形の身体を組み立てる貴女様──ガクブルガクブル…ッ!!
…………。



はい、到着です。
王都公爵邸です。
ゴテゴチしたアクセサリーも、ドレスも脱ぎ捨てて…。
私は中庭で普段着の軽いゆったりしたドレスに髪は侍女さんに下ろして貰いました。

この「侍女さん」は極一部を除きロー某と我が主の母君の離縁が成立した直後刷新した「侍女さん」のお一人様です。

魔導人形イブ御主人様マスターか。
変わらず「相対」する…侍女さんの鏡です。
ロー某が雇っていた使用人家具は揃いも揃って屑ばかりで…使えない、と。我が主は嘆いて居られました。
“せめて仕事のできる使用人を雇いなさいよ!”と何度も溢されて居りました。
…魔導人形である己含め他の魔導人形もまた…排泄と睡眠は本来必要としません。
そもそもが機械ですからね。
魔素マナ霊子エーテルに換えて──私達は「戦闘機構キャノン」を使う。

戦闘機構──物理攻撃・魔術攻撃を併せた超強力霊子砲レールガンは強力無比。射程距離最大30㎞。
…ここ王都なら余裕綽々で王太子を狙い撃ちできる。しませんが。

魔術や魔法を使う際は大気中に漂う魔素マナ魔力MPへと変換して使用します…、が。
私達〝魔導人形〟は霊子…即ち精霊が魔法を行使する時に類似する…“精霊力”、「霊子エーテル」を『霊力EP』へと変換し、を引き起こします。

太古の文明──今は「超古代文明」とか「太古の魔導文明」とか…色々と言われてますね。
人々の間で言われた時代の魔術や魔法は現代ではほぼほぼ再現できる者は居ないそうです。…残念ですね。
わたしが王都からアルティナ様が心穏やかに居られます。
私が領地に事に…何を勘違いをしているのか…あの愚物はアルティナ様が好いているから…と、勘違いを、起こしているのですよ。迷惑な事に。
王太子筆頭に愚物戦隊レンジャーは全部で5人…。
アルティナ様も私も欠片も興味がないので……誰が教育するのだろうか?
まあ、アルティナ様に害が無いのなら…なんでもいいか。
ローズヒップティーの薫りが鼻腔を通り過ぎる…香り高い薔薇の花の香りと色は魔導人形である己の瞳をも癒すものだ。味も美味しいし。
…本当に優秀な『侍女さん』ですね。
インとは違う人の手で淹れたにしては…凄く美味しい部類です。合格ですね。

イブは何故か上から目線でほくそ笑む。
…いや、魔導人形が何を言っているのか。
…まあ、心中でどう思おうと自由ではあるのだが。
……。


?私がなぜ、王城に居たのか…って?
お仕事ビジネスですよ、お仕事ビジネス…。

アルティナ様から頂いていた商品──王妃様と王女様方の下着と化粧品、公爵家の領地で取れた茶葉の新作。
…それらを『売り付けた』のですよ、ええ。
市場に出ていない…“特別な”商品……『自分』初めに売りますよ~と言うお誘いを。
……適正価格で売りましたので問題ありません。
が曲がりにも王族ですので。
忖度なしで売りましたともー!
…その帰りに中庭でばったりと遭遇しただけです──王た──おっと、“第一王子”様と、でしたね。いけませんね…どうにも我が主の『記憶』が邪魔をします…王太子ではないと言うのに…。
まあ、気にしてないでしょう。我が主…アルティナ様の御心を傷付けやがった糞など。
…アルティナ様…。
お逢いしたいです。イブは…イブは、アルティナ様にお逢いしたい。世話がしたい。抱きたい。吸いたい。啜りたい。……はっ!?(゜ロ゜;!?
い、いけません…ッ、こ、こんな…同性愛者のような…危険な発言は。
私は魔導人形私は魔導人形私は魔導人形私は魔導人形私は魔導人形……でも人を愛せる。
──我が主に頼んで男性型に変えて貰えれば…! 
……。
…それは辞めておきましょう。
我が主が何度も悩んで無数の部品パーツから悩みに悩んで決めた身体ボディーです。
それに私は我が主の影武者…。迂闊にのでした。

 「………。」
人肌に見えているこの二の腕、日焼けの一つもしないのは…が人肌ではなくで白磁の、我が主と寸分の狂いも無く同色の肌は…塗料である。

を使うよりも劣化も抑えられていいのだ。

このイブ含め魔導人形は沈黙を苦にはしないし、ずっと立ったままも座ったままも…疲れないし、苦痛とは思わない。
が現代に残るゴーレムは魔導人形からしたらゴーレムあちらが子供が作った泥人形で、魔導人形自分達の方がちゃんとした「人形」である、と自負している。
魔素マナが一つ所に留まって…地面の土塊つちくれと結合して形を為したのが「ゴーレム」だ。
が下りてから近年…ゴーレムに限らず魔物の分布にが多く見られるようになった。

まあ、然もありなん。
としているのに、富ませる理由もない。
…とは言えどうこうなったりはしない。

──聖ネプチューン歴2016年1月1日。

…滅びの時までは精々そのを無駄にすればいい。

この惑星ほし原点回帰リセットして、「創り変える」そうで…。
アルティナ様がお会いした【神】とやらは──“よっぽど”サービス精神旺盛と言うか何と言うか…。
【祝福】が強力ですし、気楽に「逢う」し。
………。

 「お嬢様、そろそろお身体が冷えます…中にお戻り下さいませ」
 「…あら?そう。そんな時間なのね…うふふ、あんまりに居心地が良いから…時間を忘れてましたわ。」
 「左様ですか」
暖かな「侍女さん」の眼差しに席を静かに立つと邸内の自室へと戻った…。
寝るには早い…私はアルティナ様らしく振る舞いながら、自室へと戻った…。
夕方5時──中庭に来たのが午後2時半頃。
王都公爵邸に帰ってきたのは…午後1時頃。
………え?無言の時間が多い…って。
知りませんよ。私、魔導人形ですから。
…………。








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