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第一章:波乱の結婚式
政略ではない、恋愛結婚ですよ?
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ゴーン、ゴーン、ゴーン…
教会の鐘が厳かに告げる、言祝を。
天使が宙を舞い、水の精霊が華麗なダンスを踊る。
リュグティカルト王国王都のリュクレイシアの街の教会で朗々と神父の声が響く。
「…汝、リリアージュ・ラグド・リュグティカルトは病める時も健やかなる時も富する時も貧する時もこれを愛し、敬い、時に支える事を誓いますか?」
純白の花嫁衣装を身に纏った金髪の少女が神父の宣言に堂々と答える。
「はい、誓います」
透明なヴェールは魔を祓う、魔除けのヴェール。
花嫁を拐いに来る悪魔から花嫁を護るための装備だ。
「よろしい──汝、ラインハルト・フォン・ハッシェアーノは病める時も健やかなる時も富する時も貧する時もこれを愛し、敬い、時に支える事を誓いますか?」
「誓います。」
ハッシェアーノの正装──黒襟の軍服…袖口とボタンにハッシェアーノの国章が描かれている──を身に纏い、銀髪に赤い目の青年が答える。
「では、誓いの口付けを。」
この二人の結婚式を見守るのは彼らの両親だけではない。
上位貴族や、友人、出入りの商人──は教会の外に招かれている。
そんな二人の歴史的な結婚式を一人の騎士が見守って?いる。
神父の前、ヴェールを剥いで仲睦まじくキスして──
パチパチパチパチッ──…
溢れんばかりの拍手が教会内を包む。
至上類を見ない王家の第一王位継承権同士の婚姻が為された。
…。
「──この結婚は間違っている!」
と、いつかの日──花嫁の護衛騎士と花婿の護衛騎士と“影”は同じ言葉を同じタイミングで呟いていた。
「なんで?」
コテン、と小首を傾げる金髪の主に内心半ばイライラしながらも顔には出さないように、その低い美声を唸らせる。
「──あなた方は何時、何処で逢ったのですか!?親馬鹿の耄碌爺──陛下が徹底的に縁談拒否していたでしょう!?」
「やだ、恥ずかしいわ…」
ぽっ、と頬を赤く染め、銀色の扇で口元を隠すリリアージュ。
「──っ、!」
ぎりっと“主”であるはずのリリアージュを睨み付ける護衛騎士──
「うふふ♪」
「──殿下っ」
ちっちゃい「っ」が見えている所が、リリアージュ曰くかわいいらしい。
水色の髪は肩の所までバッサリと切り揃えており、深緑色の切れ長の瞳はしかめられている。
赤い騎士服に腰にはいた騎士剣の柄に利き手の左手が伸びている。
「あら、私とハルトは結婚式が初対面よ?」
「──どこが?」
寧ろ、長年連れ添った老夫婦のように息ぴったりだったじゃないか、と視線で訴える護衛騎士。
「──けど“リリィ”としてなら初めてお見掛けしたのは5歳の頃だったかしらね…」
あ。
これ、回想入るパターンだ…。
…。
当時、リリアージュ5さい。
「あ、失敗失敗♪」
軽やかに紡がれた言葉と突然現れた金髪&蒼瞳の少女に唖然とするラインハルト少年。
それもそのはず──ここは彼の寝室…ベッドの上に現れたから。
「…お前は、誰だ?」
…これが二人の初顔合わせだった。
「えっとね~…」
少年はばつが悪そうに頬を掻く少女の手を思わず手に取った。
「…もしかして、“転移魔法”か?」
…この時、既に聡い子供だったラインハルト少年。
少ない情報とリリアージュの表情で悟ったラインハルト少年はあっさりと正解を引いた。
「…うん。本当はこの国の謁見の間に転移しようとしていたのよ…失敗しちゃった♪」
幾ら友好国であろうとも無断で他国の謁見の間──つまり、“玉座”──に転移しようとは。
問題外だ。外交問題になる。
「…一応、聞こうか?」
ほんの少し頬を染めて、晴れ晴れとした笑みで。
「玉座に座って“王、討ち取ったり!”ってやってみたかったからよ♪」
「…悪戯…?」
「うん♪」
♪が語尾で飛びまくる。
まったく悪いと思って居ないところが、リリアージュ5さいにはわからない…否分かるが敢えて分からないフリをしているのだ。
“かなりのお転婆姫”である、リリアージュと言うお姫様は。
ラインハルト少年、当時8歳の少年はそんなリリアージュの笑顔に毒気を抜かれ、気付いたら思いっきり声をあげて笑っていた。
「はは…くくっ、く…それは幾ら何でも許可は降りんだろうな」
訊けば、一度自身の護衛騎士に訊ねた事があるらしい。
他国の玉座に座らせて貰えるか?と。
そんな馬鹿な要求──通る訳ない。
「だから、こうして“転移魔法”で玉座に飛ぼうとしたのよ…失敗したけど」
「それはそうだろう」
「ん?原因分かったの!?」
「…玉座には強力な結界が掛けられているからな…弾かれたのだろう」
「…くっ、そうだったのか…!!」
本気で悔しがるリリアージュにラインハルトは益々笑い声を荒らげて笑う。
「はははっ!…面白いヤツだな…俺の名はラインハルト──この国の第一王子だ」
「私はリリアージュ…リリィって呼んで!ハルト♪」
「リリアージュ…隣の第一王女の名じゃないか…くくっ、良いだろう。」
「協力してくれるの?」
「…いや」
「むっ」
「…見掛けてもさりげなくフォローしてやる」
「…っ!ありがとう♪」
特段、危険はない、と判断した。
だから見逃すと口にした。
この日から二人は“魔法”の練習をこっそりと夜にしたり、“転移”で飛んできたリリアージュを出迎えて度々“夜のお茶会”を開いては友情を育んでいた。
時にはテラスに出てダンスを踊った事もある。
それが、いつの間にか…“恋慕”になるとは思いも寄らなかった。
「…殿下、一言良いですか?」
「なぁに?」
その蒼の瞳はきらきらと何かを期待していた。
「他国の玉座に無断で座っては行けません!
と言うかあの当時本気で実行しようとしていたので!?」
「ええ、そうね。」
あっけらかん、と認めてニヤニヤと底意地の悪い笑みを称える桜色の口元。
「殿下!」
「なによ、アレク?」
「玉座は“王”のみに許された場所です!」
「そうね」
「それを…例え、陛下の娘である殿下でも触れる事は愚かましてや座るなど…しかも自国所か、他国の玉座に…っ!人によってはそれだけで侵略行為、戦争に発展する場合だってあるのですよ!?」
「そうね♪」
あまりにも楽しそうに声を弾ませるものだから…出来る護衛はその考えに行き着いてしまった。
まさか。
まさか、そんな事は──
「──殿下、貴女、まさか…」
「なによ、はっきり言ってくれないと分からないわ♪」
さっと顔を青ざめる護衛騎士。
端正な顔立ちが絶望に打ち菱枯れている。
「…たのですか?」
「うん?聞こえないわ♪」
ニコニコ笑顔のリリアージュと顔面蒼白の護衛騎士。
「…他国の玉座に…座ったのですか…?」
「良く出来ました」と言わんばかりにアレクセイの頭を撫でる。
「…っ、」
「ええ!もちろんよ♪
先ず始めに行ったのが、ハッシェアーノ王国の玉座を誰が結界魔法を掛けたのか特定する事から始めてね?」
「…聞かなければ良かった」
アレクセイは心の声が盛大に口から漏れていた事にも気付いていないようだ。
「…それで、どうにか宮廷魔術師マクスウェルが術を施した、と判明(ハルトに訊いて貰った)して…その結界に私の結界を捩じ込めないか二人で試行錯誤していたわ…ふふっ、今となっては良い想い出ね♪」
…まあ、明かされる“悪戯で済まない悪戯”の話を延々永遠とされれば…白く燃え尽きたとしても仕方ない。
「もう、やだ…この主っ!」
「ちょっと、聞いてるの?!ハルトと二人で魔法の練習と研究をして…どうにか玉座の結界に風穴を開けれた時はとても嬉しかったわ!」
「…風穴…って。嫌だ、聞きたくない…!!」
護衛騎士の領分をあっさり飛び越える話にアレクセイはもう瀕死である。
誰か、誰か…アレクセイに胃薬を…!!
「うふふ♪」
ドSである。
優雅にソファに腰掛けながら、対面に座るアレクセイに話して聞かせる内容は過去の悪戯話。
しかも、一つ間違えれば外交問題に発展する特大事案──他国の王女の自国の一時的玉座侵略…もう、字面だけで恐ろしい。
「…この結婚は間違っている!」
何度この言葉を口にする事になるのか…時を同じくして、ハッシェアーノの王城──ラインハルト王太子の執務室でも護衛と“影”、側近はこの話をラインハルトの口から聞かされていた。
「…そう言う訳で俺は彼女の悪戯──魔法練習に付き合う事にしたんだ。
それから3年…玉座にリリィが座ったのを見届けるのに掛かってしまったな…まあ、お蔭で有意義な時間を過ごせた」
「「「…」」」
「…主、それは…その…本当の事で…?」
滅多に口を開かない“影”の少年が恐る恐る訊ねる。
ニヤッとこれまた何処かの悪戯お転婆姫と同じような笑みを張り付けて寛容に頷く腹黒王子。
「ああ、事実だ。
とても面白く素晴らしい女性だよ、リリィは」
「…ハルト、おま──はぁ、もう過ぎた事だもんな…」
「ああ、クロードが気にする事じゃないさ」
「…殿下の同類だったのですね、リリアージュ姫は」
「まあ、そうだな…くくっ。」
しれっとトンデモない過去を暴露をした男は楽しくて仕方ない、と言う表情で更に続ける。
…因みに今は執務と執務の間の休憩時間でソファに皆座っているのだ。
銀髪腹黒王子の暴露は続く…。
両国同時発表した“転移陣”の設置事業──それによって敷かれた王国法第179条─…“街と街の間で転移陣以外での転移魔法の使用禁止”は軽度なのから重度になると死罪も有り得る法が敷かれた。
スパイと暗殺の防止の為である。
リリアージュとラインハルトの寝室は互いに行き来出来るように見えない二人だけの転移陣が設置されている。
…まあ、最もそれはラインハルトがリリアージュの元へ通う為のものだが。
…ラインハルトはどういう理由か、転移魔法は習得出来なかったのだ。…結婚した今でも。
…仕方ないので、転移術式を施した転移石を幾つも作って販売した。
…因みに王都と各街や村には結界を張っている。
宮廷魔術師が音頭を取り、各街や村に転移装置──ポータルを設置して。
この時、不正を働いていた貴族の大半がポータルの設置候補から外され、酷い者は捕縛&粛正され闇に葬られた。
「…この結婚は間違っている!」
と、護衛と側近と影が思わず呟いても無理はない。
「若気の至りじゃないか」
「「「「…そんなのは40年は経ってから言え「「言って下さい」」!!」」」」
護衛と側近と影の心は一つだった…。
…。
教会の鐘が厳かに告げる、言祝を。
天使が宙を舞い、水の精霊が華麗なダンスを踊る。
リュグティカルト王国王都のリュクレイシアの街の教会で朗々と神父の声が響く。
「…汝、リリアージュ・ラグド・リュグティカルトは病める時も健やかなる時も富する時も貧する時もこれを愛し、敬い、時に支える事を誓いますか?」
純白の花嫁衣装を身に纏った金髪の少女が神父の宣言に堂々と答える。
「はい、誓います」
透明なヴェールは魔を祓う、魔除けのヴェール。
花嫁を拐いに来る悪魔から花嫁を護るための装備だ。
「よろしい──汝、ラインハルト・フォン・ハッシェアーノは病める時も健やかなる時も富する時も貧する時もこれを愛し、敬い、時に支える事を誓いますか?」
「誓います。」
ハッシェアーノの正装──黒襟の軍服…袖口とボタンにハッシェアーノの国章が描かれている──を身に纏い、銀髪に赤い目の青年が答える。
「では、誓いの口付けを。」
この二人の結婚式を見守るのは彼らの両親だけではない。
上位貴族や、友人、出入りの商人──は教会の外に招かれている。
そんな二人の歴史的な結婚式を一人の騎士が見守って?いる。
神父の前、ヴェールを剥いで仲睦まじくキスして──
パチパチパチパチッ──…
溢れんばかりの拍手が教会内を包む。
至上類を見ない王家の第一王位継承権同士の婚姻が為された。
…。
「──この結婚は間違っている!」
と、いつかの日──花嫁の護衛騎士と花婿の護衛騎士と“影”は同じ言葉を同じタイミングで呟いていた。
「なんで?」
コテン、と小首を傾げる金髪の主に内心半ばイライラしながらも顔には出さないように、その低い美声を唸らせる。
「──あなた方は何時、何処で逢ったのですか!?親馬鹿の耄碌爺──陛下が徹底的に縁談拒否していたでしょう!?」
「やだ、恥ずかしいわ…」
ぽっ、と頬を赤く染め、銀色の扇で口元を隠すリリアージュ。
「──っ、!」
ぎりっと“主”であるはずのリリアージュを睨み付ける護衛騎士──
「うふふ♪」
「──殿下っ」
ちっちゃい「っ」が見えている所が、リリアージュ曰くかわいいらしい。
水色の髪は肩の所までバッサリと切り揃えており、深緑色の切れ長の瞳はしかめられている。
赤い騎士服に腰にはいた騎士剣の柄に利き手の左手が伸びている。
「あら、私とハルトは結婚式が初対面よ?」
「──どこが?」
寧ろ、長年連れ添った老夫婦のように息ぴったりだったじゃないか、と視線で訴える護衛騎士。
「──けど“リリィ”としてなら初めてお見掛けしたのは5歳の頃だったかしらね…」
あ。
これ、回想入るパターンだ…。
…。
当時、リリアージュ5さい。
「あ、失敗失敗♪」
軽やかに紡がれた言葉と突然現れた金髪&蒼瞳の少女に唖然とするラインハルト少年。
それもそのはず──ここは彼の寝室…ベッドの上に現れたから。
「…お前は、誰だ?」
…これが二人の初顔合わせだった。
「えっとね~…」
少年はばつが悪そうに頬を掻く少女の手を思わず手に取った。
「…もしかして、“転移魔法”か?」
…この時、既に聡い子供だったラインハルト少年。
少ない情報とリリアージュの表情で悟ったラインハルト少年はあっさりと正解を引いた。
「…うん。本当はこの国の謁見の間に転移しようとしていたのよ…失敗しちゃった♪」
幾ら友好国であろうとも無断で他国の謁見の間──つまり、“玉座”──に転移しようとは。
問題外だ。外交問題になる。
「…一応、聞こうか?」
ほんの少し頬を染めて、晴れ晴れとした笑みで。
「玉座に座って“王、討ち取ったり!”ってやってみたかったからよ♪」
「…悪戯…?」
「うん♪」
♪が語尾で飛びまくる。
まったく悪いと思って居ないところが、リリアージュ5さいにはわからない…否分かるが敢えて分からないフリをしているのだ。
“かなりのお転婆姫”である、リリアージュと言うお姫様は。
ラインハルト少年、当時8歳の少年はそんなリリアージュの笑顔に毒気を抜かれ、気付いたら思いっきり声をあげて笑っていた。
「はは…くくっ、く…それは幾ら何でも許可は降りんだろうな」
訊けば、一度自身の護衛騎士に訊ねた事があるらしい。
他国の玉座に座らせて貰えるか?と。
そんな馬鹿な要求──通る訳ない。
「だから、こうして“転移魔法”で玉座に飛ぼうとしたのよ…失敗したけど」
「それはそうだろう」
「ん?原因分かったの!?」
「…玉座には強力な結界が掛けられているからな…弾かれたのだろう」
「…くっ、そうだったのか…!!」
本気で悔しがるリリアージュにラインハルトは益々笑い声を荒らげて笑う。
「はははっ!…面白いヤツだな…俺の名はラインハルト──この国の第一王子だ」
「私はリリアージュ…リリィって呼んで!ハルト♪」
「リリアージュ…隣の第一王女の名じゃないか…くくっ、良いだろう。」
「協力してくれるの?」
「…いや」
「むっ」
「…見掛けてもさりげなくフォローしてやる」
「…っ!ありがとう♪」
特段、危険はない、と判断した。
だから見逃すと口にした。
この日から二人は“魔法”の練習をこっそりと夜にしたり、“転移”で飛んできたリリアージュを出迎えて度々“夜のお茶会”を開いては友情を育んでいた。
時にはテラスに出てダンスを踊った事もある。
それが、いつの間にか…“恋慕”になるとは思いも寄らなかった。
「…殿下、一言良いですか?」
「なぁに?」
その蒼の瞳はきらきらと何かを期待していた。
「他国の玉座に無断で座っては行けません!
と言うかあの当時本気で実行しようとしていたので!?」
「ええ、そうね。」
あっけらかん、と認めてニヤニヤと底意地の悪い笑みを称える桜色の口元。
「殿下!」
「なによ、アレク?」
「玉座は“王”のみに許された場所です!」
「そうね」
「それを…例え、陛下の娘である殿下でも触れる事は愚かましてや座るなど…しかも自国所か、他国の玉座に…っ!人によってはそれだけで侵略行為、戦争に発展する場合だってあるのですよ!?」
「そうね♪」
あまりにも楽しそうに声を弾ませるものだから…出来る護衛はその考えに行き着いてしまった。
まさか。
まさか、そんな事は──
「──殿下、貴女、まさか…」
「なによ、はっきり言ってくれないと分からないわ♪」
さっと顔を青ざめる護衛騎士。
端正な顔立ちが絶望に打ち菱枯れている。
「…たのですか?」
「うん?聞こえないわ♪」
ニコニコ笑顔のリリアージュと顔面蒼白の護衛騎士。
「…他国の玉座に…座ったのですか…?」
「良く出来ました」と言わんばかりにアレクセイの頭を撫でる。
「…っ、」
「ええ!もちろんよ♪
先ず始めに行ったのが、ハッシェアーノ王国の玉座を誰が結界魔法を掛けたのか特定する事から始めてね?」
「…聞かなければ良かった」
アレクセイは心の声が盛大に口から漏れていた事にも気付いていないようだ。
「…それで、どうにか宮廷魔術師マクスウェルが術を施した、と判明(ハルトに訊いて貰った)して…その結界に私の結界を捩じ込めないか二人で試行錯誤していたわ…ふふっ、今となっては良い想い出ね♪」
…まあ、明かされる“悪戯で済まない悪戯”の話を延々永遠とされれば…白く燃え尽きたとしても仕方ない。
「もう、やだ…この主っ!」
「ちょっと、聞いてるの?!ハルトと二人で魔法の練習と研究をして…どうにか玉座の結界に風穴を開けれた時はとても嬉しかったわ!」
「…風穴…って。嫌だ、聞きたくない…!!」
護衛騎士の領分をあっさり飛び越える話にアレクセイはもう瀕死である。
誰か、誰か…アレクセイに胃薬を…!!
「うふふ♪」
ドSである。
優雅にソファに腰掛けながら、対面に座るアレクセイに話して聞かせる内容は過去の悪戯話。
しかも、一つ間違えれば外交問題に発展する特大事案──他国の王女の自国の一時的玉座侵略…もう、字面だけで恐ろしい。
「…この結婚は間違っている!」
何度この言葉を口にする事になるのか…時を同じくして、ハッシェアーノの王城──ラインハルト王太子の執務室でも護衛と“影”、側近はこの話をラインハルトの口から聞かされていた。
「…そう言う訳で俺は彼女の悪戯──魔法練習に付き合う事にしたんだ。
それから3年…玉座にリリィが座ったのを見届けるのに掛かってしまったな…まあ、お蔭で有意義な時間を過ごせた」
「「「…」」」
「…主、それは…その…本当の事で…?」
滅多に口を開かない“影”の少年が恐る恐る訊ねる。
ニヤッとこれまた何処かの悪戯お転婆姫と同じような笑みを張り付けて寛容に頷く腹黒王子。
「ああ、事実だ。
とても面白く素晴らしい女性だよ、リリィは」
「…ハルト、おま──はぁ、もう過ぎた事だもんな…」
「ああ、クロードが気にする事じゃないさ」
「…殿下の同類だったのですね、リリアージュ姫は」
「まあ、そうだな…くくっ。」
しれっとトンデモない過去を暴露をした男は楽しくて仕方ない、と言う表情で更に続ける。
…因みに今は執務と執務の間の休憩時間でソファに皆座っているのだ。
銀髪腹黒王子の暴露は続く…。
両国同時発表した“転移陣”の設置事業──それによって敷かれた王国法第179条─…“街と街の間で転移陣以外での転移魔法の使用禁止”は軽度なのから重度になると死罪も有り得る法が敷かれた。
スパイと暗殺の防止の為である。
リリアージュとラインハルトの寝室は互いに行き来出来るように見えない二人だけの転移陣が設置されている。
…まあ、最もそれはラインハルトがリリアージュの元へ通う為のものだが。
…ラインハルトはどういう理由か、転移魔法は習得出来なかったのだ。…結婚した今でも。
…仕方ないので、転移術式を施した転移石を幾つも作って販売した。
…因みに王都と各街や村には結界を張っている。
宮廷魔術師が音頭を取り、各街や村に転移装置──ポータルを設置して。
この時、不正を働いていた貴族の大半がポータルの設置候補から外され、酷い者は捕縛&粛正され闇に葬られた。
「…この結婚は間違っている!」
と、護衛と側近と影が思わず呟いても無理はない。
「若気の至りじゃないか」
「「「「…そんなのは40年は経ってから言え「「言って下さい」」!!」」」」
護衛と側近と影の心は一つだった…。
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